2012年2月17日の日銀総裁講演を精読しましょう | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

2012年2月17日の日銀総裁講演を精読しましょう

秘書です。
今日の日銀総裁の講演を精読しましょう。


2 0 1 2 年2 月1 7 日
日本銀行
日本銀行総裁 白川 方明
デフレ脱却へ向けた日本銀行の取り組み
── 日本記者クラブにおける講演 ──

日本銀行総裁 白川 方明
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120217a1.pdf

「こうした時間軸政策は海外の中央銀行でも採用されています。その1つに、米国FRBのように、特定の時期に言及する手法があります。すなわち、FRBは、政策金利が例外的に低い水準となると見込まれる期間について、経済・物価見通しによって変わりうるという大きな条件をつけたうえで、「少な
くとも2014 年終盤まで」という表現をとっています。これに対して、日本銀行の方法は、緩和政策の出口に関する特定の「時期」ではなく、消費者物価の上昇率という「条件」に結びつける約束です。これは、現在の日本のように経済・物価見通しについて不確実性が高い状況を踏まえると、金融緩和の
出口の時期を特定するよりも、目指している物価上昇率を示すほうが、「約束の信頼性」、ひいては金融政策の有効性という点で優れていると判断したことによるものです。経済・物価見通しが不確実である以上、緩和政策の「出口」の具体的な時期を特定することはできませんが、「出口」に至るまでの、日本銀行の金融緩和推進の姿勢は確固としたものです

→政治に例えるならば、いつ実現できるか言えませんが、核廃絶をめざします、その姿勢は確固としたものです。という感じでしょうか。時期の約束がないと、政界ではマニフェストではない、といわれますね。

「より重要な点として、今申し上げた物価安定の数値表現を政策運営において活用する際に、短期的な物価動向ではなく、中長期的にみた物価や経済・金融の安定を重視する度合いを強めてきていることです。」

→短期的な物価動向ではない、といっておきながら、「当面」という言葉が出てくるのはなぜなのでしょうか。「当面」は短期的ではないのでしょうか。

「新しい時間軸政策として、次のような方針を採用しました。すなわち、「当面、消費者物価の前年比上昇率1%を目指して、それが見通せるようになるまで、実質的なゼロ金利政策と金融資産の買入れ等の措置により、強力に金融緩和を推進していく」というものです。」

「物価安定の領域として「消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラス」としたうえで、「当面は1%を目途とする」ことを明確にしました。」

→そしてインフレターゲットについて。

「もし、今回のFRBの金融政策運営の枠組みをインフレーション・ターゲティングと呼ぶのであれば、日本銀行の方法もそれに近いと言えると思います。」

→金融政策でインフレ水準を決められるとの決心の有無が違いますから、「近い」とは言えませんね。日銀総裁は2月14日の記者会見で以下のように述べています。

「非常にインフレ率が高い時にインフレを抑制していくということ、これは、景気への影響等を無視すれば、強力に金融引締めをやればインフレ率が下がっていくということで、そういう意味では、究極的、最終的に、金融政策が物価を決定していく、それはその通りだと思います。
また、米国の1930年代のように、中央銀行が最後の貸し手として積極的に行動しなかった結果、金融が大きく縮小する場合には、経済活動を大きく縮小させ、その結果、当時のアメリカは、物価が確か3割ぐらい下落しました。そういう意味で、金融政策、あるいは中央銀行の行動が、物価の長期的な経路を決めていく上で非常に重要であることは、私はそうだと思っています。しかし、現在問われている問題は、今の日本経済、物価の上昇率が概ねゼロ近傍という世界で、中央銀行がお金の量を供給することだけで直ちに物価上昇率がゼロから1%、1%から2%へ上がっていくかという問いであるとすれば、それは必ずしもそうではないと思います。」(白川日銀総裁、2月14日記者会見)

→つまり、物価上昇率を上げるときには金融政策には限界があるといっている。だから、「近い」とはいえませんね。

→日銀擁護派のみなさんは日本のおカネがジャブジャブにでているとおっしゃいます。総裁も講演で以下のように述べています。


「実際、わが国の企業経営者の皆さんに直面する経営上の問題を聞いてみても、手元流動性が不足しているという声はほとんど聞かれません。仕事の量あるいは需要そのものが不足していることを訴える方が多いのが実情です。」

「日本経済の問題は、おカネの量が足りないということではなく、むしろ、おカネを有効に使うビジネスチャンスや成長機会が乏しくなっているということにあるのではないでしょうか。」

→日銀短観に出てきている中小企業の資金繰りの現状の声は総裁に届いていないのでしょうか。大企業経営者の皆さんのことしか責任は及んでいないのでしょうか?

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「デフレとは一般物価水準の下落ですので、その背後にあるマクロ経済全体としての需給バランスが崩れていること、つまり供給に対して需要が不足していることが原因となっているはずです。実際、需給バランスの指標として、一定の前提を置いて需給ギャップを計算すると、2000 年以降ごく一時的な期間を除き、恒常的に需要不足の状態が続いています。」

→ごく一時的な時期を除き?そこに日本の活路があるのに、簡単に除く、なんてしてはいけないでしょう!

GDPギャップは、安倍政権発足時の2006年10-12月期には対GDP比で+0.7%になりました。これは10年ぶりのプラスです。なぜ、このままプラスが継続できなかったのか?

私達は、2006年、2007年のフォワードルッキングな日銀の政策転換が原因だと考えています。日銀の政策ミスでリーマンショック以前に日本は景気後退期に向かったのではないでしょうか。

 
「2000 年代入り後は、世界に例をみない急激な高齢化の影響が一段と顕著になってきました。先ほど述べた需給ギャップの拡大は確かに供給能力に対する需要の不足を意味するものですが、その場合の供給能力は既存の財やサービスにかかる供給能力を指しています。しかし、新しい環境のもとでの新しいニーズ、例えば高齢者の需要に十分応えていないという意味では、需給ギャップというよりは、需給のミスマッチ拡大の表れと解釈すべきかもしれません。」

→なぜ、2006年に需給ギャップが改善したのでしょうか?

「いずれにせよ、このように趨勢的に成長率が低下してくると、家計部門では将来の所得に対する不安が強まり、個人消費が伸びない原因となりますし、企業部門では将来のための投資活動を抑制することになります。そうなると、企業や家計の支出活動の委縮がさらに現実の成長率を引き下げ、それが成長期待の低下をもたらすという悪循環につながってしまいます。」

→これもおかしい。2003年から2006年までは実質成長率は2%を超えていた。この成長が2008年2月に景気の山を超えたのはなぜか。2000年代の景気拡大の事実を無視して、高齢化で低成長と片付けるのはおかしい。名目成長率が低かったことについて、そして、2006年、2007年の日銀政策の失敗について語られるべきでしょう

2000-2010年度の実質・名目成長率(単位:%)

年度 (実質)(名目)
2000( 2.6)( 0.9)
2001(-0.8)(-2.1)
2002( 1.1)( -0.8)
2003( 2.1)(  0.8)
2004( 2.0)( 1.0)
2005( 2.3)( 0.9)
2006( 2.3)( 1.5)
2007( 1.8)( 1.0)
2008(-4.1)( -4.6)
2009(-2.4)( -3.7)
2010( 2.3)( 0.4)

「春先以降は、新興国・資源国に牽引されるかたちで海外経済の成長率が再び高まるとみられることや、震災復興関連の需要が徐々に強まっていくことなどから、緩やかな回復経路に復していくとみています。消費者物価の前年比は、当面はゼロ%近傍で推移しますが、先行き2年程度の期間でみればゼロ%台半ばまで高まっていくとみています。ちなみに、日本銀行が先月公表した2013 年度までの経済・物価見通しを申し上げますと、実質GDP成長率は、2011 年度は-0.4%とマイナス成長を予想していますが、2012 年度は+2.0%、2013 年度は+1.6%という見通しになっています。また、消費者物価の前年比は、2011 年度が-0.1%、2012 年度は+0.1%、2013 年度は+0.5%と徐々に上昇率が高まる見通しです。」

→2013年度の物価上昇率+0.5%とは、政府の成長戦略シナリオはできませんという前提ですね。成長戦略シナリオは+1.1%です。では、いつ物価上昇率1%になるのでしょう。当面という時間軸は?