2012年2月14日の日銀総裁会見を精読しましょう | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

2012年2月14日の日銀総裁会見を精読しましょう

秘書です。

昨日の日銀総裁会見を精読しましょう。日銀総裁はいいました。

「「目途」と「理解」という、その言葉の違いだけで、私ども自身の政策が変わるということではありません。」

「日本の経済を考えてみた場合に、急速な高齢化、あるいは少子化、そのもとで労働人口が減少していく、このことが様々な形で日本経済に問題を投げかけています。これは、日本銀行から論文も出ていますが、日本の場合、潜在的な成長率と長期的な予想インフレ率との間に非常に高い相関関係があります。今、なかなかデフレが克服されていかないのは、潜在成長率が低下していることも原因の1つであるわけです」


つまり、「実質的なインフレ目標」とかなんとかいっても、何も変わらないということ?


2012年2月15日
日本銀行
総 裁 記 者 会 見 要 旨
―― 2012年2月14日(火)
午後3時半から約1時間
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2012/kk1202b.pdf

(問) 達成の時期、あるいは達成できない場合の手段、あるいは説明責任について、今回の会合で議論はあったのでしょうか。

(答) 達成の時期ですが、今回の発表文の最後に書いてある通り、デフレから脱却し、物価安定のもとでの持続的成長を実現するには、成長力の強化と金融面からの支援、この両方が不可欠です。従って、企業、金融機関、政府、日本銀行それぞれが、その役割に応じて最大限の努力をしていく必要があり、デフレからの脱却は、そうした努力の結果として実現するものだと思っています。
この間、日本銀行は日本銀行の役割をしっかり果たしていくということです。「中長期的な物価安定の目途」を示し、目指すべき物価安定の数値を明確に示すとともに、当面、1%の物価上昇率が見通せるようになるまで、強力な金融緩和を推進していきます。その上で、先行きの物価上昇率がどのようになっていくかについて、半期に1回の展望レポートやその中間評価を通じて、見通しの数字を示していきます。先月行った中間評価に即して言うと、2012年度は+0.1%、2013年度は+0.5%です。こうした物価の見通し、どういう考え方で政策運営を行っていくかについて、透明性の高い形で――これまでもそうですが――、これからもしっかりと説明していきたいと思っています。

→達成の時期には言及せず。2013年度ですら+0.5%ですから来年までは物価上昇率1%は実現できないということですね!しかも2013年度物価上昇率0.5%というのは政府の「経済財政の中長期試算」(2012年1月24日閣議決定、http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h24chuuchouki.pdf)の成長戦略シナリオの数値(2013年度=1.1%)ではなく、慎重シナリオの数値(2013年度=0.5%)だ。

(問) 今のご発言に関連して2点お聞きします。1点目は、先般のFRBの発表では、「物価上昇率は、長期的には主に金融政策によって決定される」という声明が出されていますが、この点について、日銀ないし白川総裁はどのように考えているかお教え下さい。
もう1点は、今回、1%が見通せるようになるまで、実質ゼロ金利政策を続けるというお立場をさらに明確化された一方で、先般発表された物価見通しで、2013年度に至っても消費者物価上昇率は0.5%であり、要するに1%に満たないわけです。この両者を組み合わせて、市場の一部に「これは、2013年度まで、日銀は実質ゼロ金利政策を続けるという意味である」という解釈が存在するのです。しかし、例えば、日銀が1%の物価上昇率を「達成できるまで」ゼロ金利政策を続けると言っているのであれば、物価見通しが1%に満たない2013年度までゼロ金利政策を続けるという解釈に違和感がないのですが、1%を「展望できるまで」、あるいは「見通せるまで」と言っている以上、2013年度時点で、1%が展望できている可能性は排除していないわけです。そうすると、2013年度までゼロ金利を解除しないと約束しているとの解釈には、違和感があります。そういった市場の解釈について、日銀ないし白川総裁はどう考えているのかお教え下さい。

(答) まず、1問目の長期的には金融政策で決まってくるという命題についてどう考えるのかという問いですが、これは、色々な考え方がもちろんあり得ると思います。大学の講義ではありませんので、そういう話をするのもどうかなと思いますが、非常にインフレ率が高い時にインフレを抑制していくということ、これは、景気への影響等を無視すれば、強力に金融引締めをやればインフレ率が下がっていくということで、そういう意味では、究極的、最終的に、金融政策が物価を決定していく、それはその通りだと思います
また、米国の1930年代のように、中央銀行が最後の貸し手として積極的に行動しなかった結果、金融が大きく縮小する場合には、経済活動を大きく縮小させ、その結果、当時のアメリカは、物価が確か3割ぐらい下落しました。そういう意味で、金融政策、あるいは中央銀行の行動が、物価の長期的な経路を決めていく上で非常に重要であることは、私はそうだと思っています。しかし、現在問われている問題は、今の日本経済、物価の上昇率が概ねゼロ近傍という世界で、中央銀行がお金の量を供給することだけで直ちに物価上昇率がゼロから1%、1%から2%へ上がっていくかという問いであるとすれば、それは必ずしもそうではないと思います。先程申し上げた、日本経済が直面している様々な構造的な問題、これらへの取組みが必要であると思います。これは決して中央銀行の役割が小さいということではなく、むしろ、中央銀行の役割はしっかりあると思っていますが、成長力を引き上げていく努力と、それを支える金融面の支援、その両方が相俟って、デフレからの脱却は実現していくものだと考えています。
2問目については、私がご質問の意味を正確に理解しているわけではありませんので、的確な答えかどうかは分かりませんが、はっきりしていることは、金融政策には効果波及のタイムラグがあり、従って、かなり長い先の経済・物価の見通しを持った上で、現在の金融政策を運営していくということです。現在行っている実質的なゼロ金利政策をいつまで続けるのか、少なくともいつまでは解除しないのかについては、展望レポートで示している私どもの先々の見通しが、今回の「中長期的な物価安定の目途」である1%が見通せる状態になるまでは解除しない、ということを言っているわけです。その後、どのような政策運営を行っていくのか、これはもちろん、その時の政策委員会で決定するわけですが、いずれにせよ、物価安定を通じて、国民経済の健全な発展に資することが日本銀行法に定められた使命ですから、その使命に即して点検作業を行っていくことになります。

→インフレ率が高いときは中央銀行の金融政策が物価を決定するが、物価上昇率がゼロから1、2%へと上げていくときは違うと?米国やスウェーデンの中央銀行はリーマンショック後に物価上昇率がマイナスになることを防止して、2%に引き上げていますが・・・?

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→やればできる政策をやらない。理由はハイパーインフレが怖いから?なぜ日本だけがデフレでなければハイパーインフレになってマイルドなインフレが実現できないのか。この新手の日本特殊論が長期デフレの元凶。ハイパーインフレよりもデフレがましという人々が日銀を擁護しているわけですね。では、米国やスウェーデン等と日本の中央銀行の対応はどう違ったのか。

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→2%の物価上昇率を悪魔の手法といい続け、それはハイパーインフレになるといってきたみなさん!長期デフレ下の日本と、米・英・スウェーデンとどちらが悪魔的状況でしょうか?みなさんには庶民の悲鳴が届きませんか?

(問) 先程からご説明頂き、「中長期的な物価安定の理解」と「目途」のそれぞれの考え方、数字の置き方は理解できたのですが、では、「目途」としたことで、今後の金融政策の進め方が、今までの「理解」に基づく運営とどのように変わってくるのか、それをイメージできるようにご説明下さい。

(答) まず、「目途」と「理解」という、その言葉の違いだけで、私ども自身の政策が変わるということではありません この部分については、日本銀行のデフレ脱却に向けた姿勢を明確に伝えるため、日本銀行の意思、判断を明確に示す言葉は「理解」より「目途」であるという意味で使いました。
それから、今のご質問の点については、「目途」か「理解」か、ということよりも、実質的なゼロ金利政策を続けていく時に、消費者物価上昇率1%が見通せるようになるまでということをはっきり書いています。従来は、「中長期的な物価安定の理解」に即した表現をしており、日本銀行の「理解」それ自体に意思が感じられないという批判がありました。今回、その言葉を変え、具体的な数字を示し、その数字は日本銀行の意思、判断を反映した数字になっています。従って、そうした私どもの意図が市場に伝われば、その分、金融緩和政策の効果も高まると判断しています。

→総裁ははっきりと、「「目途」と「理解」という、その言葉の違いだけで、私ども自身の政策が変わるということではありません」と言っています。何か変わったかのようにいうのは、失礼な話ですね!

(問) 2点あります。・・・。2つ目は、なぜ1%なのかという根拠について改めてお伺いしたいのと、1%の物価上昇は、デフレ脱却の認定との関係ではどのように位置付けられるのかをお伺いします


(答)
・・・
次に、1%の根拠は何かということです。細かい技術的な説明は、スタッフに聞いて頂きたいと思いますが、消費者物価指数の計測誤差、のりしろ、それから物価観の3点を踏まえて決定しました。このうち、物価観について申し上げると、わが国の消費者物価上昇率は、現在のデフレに陥る前――つまり1990年代後半以前から――、海外の主要国に比べて、ほぼ一貫して低い状態が続いています。例えば、バブルのピークの時期、バブル景気過熱期に相当する1980年代後半の消費者物価の上昇率を見ると、わが国は、あの時期ですら、実は年平均で1.4%、時期によってはゼロ%台でした。同じ時期の米国の上昇率は4.0%、ドイツは1.4%、G7の平均が3.4%でした。それがバブルの時の経験でした。そうした状況がずっと続いている中で、今、海外が2%だから日本も2%だと出した場合、それは現実の日本経済の特徴あるいはそのもとで形成された家計や企業の意識から離れていくことになります。国民の物価観から離れ、一気にこれまでに経験したことのない数字を出した場合、家計や企業が却って大きな不確実性に直面する可能性があるほか、長期金利の上昇を招く惧れがあります。仮に2%という数字を文字通り、国民が信用した場合には、長期金利が上がってしまうことにもなります

→古川経済財政政策担当大臣は2月10日の衆議院予算委員会において西村康稔議員の質問に対して「2%程度の緩やかなインフレの達成に向けて全力を向けてやっていきたい」と述べたことを重視したいと言いました。ここは国会論戦でのポイントですね。日銀は、政府の成長戦略シナリオを否定しているのか?

(問) 2点お伺いします。1点目は、今回の「中長期的な物価安定の目途」についてです。これまで総裁が国会等で行った説明を何度か聞きましたが、日米で表現は違うが目的は一緒、ヨーロッパもイギリスも言い方は違うが思うところは同じ、ということを説明されていたと思います。お話を伺う限り、日銀はFRBがやっていることを既にやっているということだと思いますが、そこを敢えて今回、かなり急に表現を見直したことについて、総裁はいつ頃からこれを変えなければいけないと思われていたのか、どういう経路でこうした思いが強まっていったのか。FRBの決定があったからなのか、予算委員会等で色々な指摘があったからなのか、どのような形で変更の機運が高まっていったのかについて、もう少し丁寧にご説明下さい
2点目は、これは色々な報道がありますが、物価目標を定め、それに従って日銀が金融政策を行うことで景気が良くなるかのように言われている向きもありますが、はたしてそうなのか、そうでないのか、総裁はどのように考えていらっしゃるのでしょうか。目標の意味付けにより国民生活が一体どのように変わるのか、その辺の説明をお願いします

(答) 1点目については、これまでの答えと相当重複してしまいますが、物価安定の状況を数字でどのように表現するかということは、日本銀行に限らずどの中央銀行にとっても非常に重い課題です。FRBが今回の「長期的な目標(longer-run goal)」に至る過程を振り返ってみても、ここに至るまでに10年、20年の長い経緯があります。毎回少しずつ改善を図りながら、新たに生じた問題の改善を図っていくという絶えざる進化の過程だったと思います。日本銀行も2000年10月に「『物価の安定』についての考え方」というペーパーを公表し、その後、何回かそのような文書を出して少しずつ改善を図ってきました。2006年3月の「中長期的な物価安定の理解」を示した時は、私自身、理事として関与しましたが、あの段階で初めて数字を出すということを行いました。しかし望ましい物価上昇率が幾らであるかということは、海外でもそうですが、今でもエコノミストの間で色々な議論があります。そうした中で、日本銀行として、できるだけ透明性の高い形で、目指すべき状態を数字で表した方が良いということで、政策委員会のメンバーの見解を集合的に集めるという方式を採りました。これは一歩前進だったと思います。しかも、そのもとで行ってきた日本銀行の金融政策運営は、各国の中央銀行で非常に似通っているという感じもありますが、一方で分かりにくいという批判があったのも事実です。私どもは決してドグマティックに考えているわけではありませんので、私どもの意図が正確に伝わる方法を常に模索しています
2点目ですが、デフレ脱却、物価安定のもとでの持続的な成長ということについて、金融政策だけで実現できるとは考えていません。しかし、金融政策も大きな役割の1つだと思っています。従って、日本銀行はその役割をしっかり果たしていくということです。その際、物価の上昇率についてどのような目途を持っているのかを示すことは、企業にしても家計にしても、投資や支出の決定を行う時に有益な情報になると思います。

→私どもの意図が正確に伝わる方法を常に模索している、金融政策だけでは実現できない。

(問) 先程、なぜ1%かというところで、日本は歴史的にインフレ率が低いからと、その通りだとは思うのですが、ただその一方で、政府は緩やかに2%程度を目指すとしています。今後、政府と連携しながらデフレ脱却を目指す上で、目標というか、目途となる数字をすり合わせていく必要があるのかないのか、総裁のお考えをお願いします。

(答) 政府との間で、物価安定の数値について認識の差があるとは、全く思っていません。政府と同じ認識に立っていると思っています。政府は、今年1月に公表した「経済財政の中長期試算」の中で、消費者物価上昇率の試算結果について2つ出しています。1つは、現在の経済・物価情勢を前提とすると「1%近傍、平均では1.1%」、それから、「日本再生の基本戦略」において示された成長戦略等が着実に実施され、2020年度までの平均的な成長率が2%まで引き上げられることを前提とすると「2%近傍、平均では1.7%」という認識を示しています。つまり、2020年度までの平均的な物価上昇率について、政府のいわゆる慎重シナリオ――政府は今これをメインにしていると思いますが――は1.1%。それから、色々な構造改革が進んだ場合、これについて1.7%という認識をしています。いずれにせよ、後者のケースである「2%近傍」という数字は、現在の経済構造を前提にしたものではなく、「日本再生の基本戦略」における成長戦略等の着実な実施により、「我が国の構造転換を進め、日本再生をさらに力強く進めていく」ことを織り込んだものと認識しています。このように考えた場合に、日本銀行が今回発表した、消費者物価の前年比上昇率で2%以下のプラス、当面は1%、という内容と整合的だと思っています

→ここは国会ではっきりさせましょう。

(問) 政府側から日銀に対して、様々な強いメッセージが打ち出されてきましたが、そういった経過を踏まえると、今回のステートメントの6(最後の段落)に、「民間企業、金融機関、そして政府、日本銀行がそれぞれの役割」と強調されており、私どもからするとこのメッセージが、「日銀としては、必要な対策を行った」、「次は、政府の番だ」と聞こえなくもないのですが、その辺の思いをあらためて教えて下さい。

(答) 記者の方が、「今度は、政府の番だ」とおっしゃいましたが、私どもは経済・金融政策について、ゲームと言いますか、こちらがやったから今度はそっちだという意識には立っていません。日本銀行としては、どういう状況であれ、中央銀行として行うべきことはしっかりやるし、中央銀行として行うべきでないことはやらないということ、この原理原則をしっかり持っており、そこは一切変わっていません。その上で、日本の経済を考えてみた場合に、急速な高齢化、あるいは少子化、そのもとで労働人口が減少していく、このことが様々な形で日本経済に問題を投げかけています。これは、日本銀行から論文も出ていますが、日本の場合、潜在的な成長率と長期的な予想インフレ率との間に非常に高い相関関係があります。今、なかなかデフレが克服されていかないのは、潜在成長率が低下していることも原因の1つであるわけです。物価をどう高めていくかという時に、繰り返しになりますが、潜在成長率を高めていく取組みが必要です。これは、誰か一人の努力でできることではなく、そういう問題意識を共有した上で、民間企業、金融機関、政府、日本銀行が、それぞれの役割に即して行動していくことが重要です。こちらがやったから今度はそっちだというような思考様式には立っていません。

→これは重要なポイントですね。「日本の経済を考えてみた場合に、急速な高齢化、あるいは少子化、そのもとで労働人口が減少していく、このことが様々な形で日本経済に問題を投げかけています。これは、日本銀行から論文も出ていますが、日本の場合、潜在的な成長率と長期的な予想インフレ率との間に非常に高い相関関係があります。今、なかなかデフレが克服されていかないのは、潜在成長率が低下していることも原因の1つであるわけです」ということは、米国、スウェーデン、英国の中央銀行のようなことが日本で出来ない理由を述べているわけですね。だったら、各国と同じなどといわないで、日本特殊論をとなえればいいのに!

(問) 先程、政策委員会としての意思を示すという話がありました。安住財務相も「事実上のインフレ目標」というように発言していますが、これが達成できなかった時、中央銀行の信認が低下したり、政府の関与が強まったりという副作用については、どのようにお考えでしょうか。

(答) インフレーション・ターゲティングを採用している各国の運営をみても随分変わってきています。例えば、ニュージーランドは、目標インフレ率が達成されなかった場合の規定が入っていますが、多くの国では、物価上昇率が目標等から乖離した場合に、なぜそれが乖離しているのかを、しっかり国民に対して説明していくとともに、政策の決定過程を明らかにしていくことを通じて、責任を果たしていくというのが今の主流になっています。日本銀行もそうした努力をこれからもしっかり続けていきたいと思っています。

→責任をとっていただかないと、何度も同じ過ちが繰り返されます。フォワードルッキングの失敗の責任は?国民は自己責任、結果責任があるけれど、日銀には説明責任??日銀法改正で日銀の責任を明確にしましょう。

(問) 英語の表記では、物価安定の目途は「goal」としていますが、先程、各国の表現を「definition」とか「goal」とか、それに日銀は「目途」とおっしゃっていました。英語では「goal」となると、FRBと同じになると思うのですが、この「goal」の方が「目途」よりも若干言い方が強いような気がするのですが、その辺りはどのような考えで「goal」になったのでしょうか。

(答) 各国の言葉に、完全に対応している言葉がないわけです。私どもからすると、一番、私どもの思いに近い言葉は「目途」です。「目途」に対応する英語、100%それに対応する英語がない以上、それに一番近い言葉は何だろうかと考えた場合に、「goal」という言葉が近いと判断しました。もっと良い言葉があれば、その言葉をもちろん採用します

→つまり、GOALとはニュアンスがちがうわけですね。

そのほかの注目発言は以下の通り。


それから、海外の主要国の中央銀行の政策運営のやり方をみていると、随分と日本銀行のゼロ金利以降の経験が活かされていると感じます。各国の金融政策の目的が同じである以上、お互いに切磋琢磨してやっていくことは自然です。

私どもとして、「中長期的な物価安定の理解」という言葉のもとで、十分、デフレ脱却に向けて強力な金融政策を行っているという自負はありました。しかし、そうした私どもの政策姿勢が、もし十分に伝わっていないのであれば、さらに表現の上でも色々な工夫があり得るし、それから、表現の工夫だけではなく、それを裏付ける政策措置を伴った方が、より効果的に伝わっていくと考えたわけです。

日本国内の新聞各紙の報道を見ても、随分、日本語の用語が異なっていたわけですが、バーナンキ議長は「longer-run goal」という言葉を使った上で、記者会見で「インフレーション・ターゲティングではない」と、はっきりとおっしゃっています。ただ、本人の否定にも拘わらず、仮に今回のFRBの金融政策運営の枠組みを「インフレーション・ターゲティング」と呼ぶのであれば、日本銀行の今回の金融政策運営の枠組みは、FRBの金融政策運営の枠組みに近いということは言えるように思います。


→下記の記事をご参考に。

「物価上昇1%」は単なる「めど」 「腰が引けた政策」と日銀批判も出る
2012/2/15 18:59 J-CAST NEWS
http://www.j-cast.com/2012/02/15122312.html?p=all

日銀が「中長期的な物価安定のめど」を当面1%とすると発表した。これを受け、「事実上の『インフレ目標』を導入」(朝日新聞など)との報道も出る一方、「腰が引けた政策で、インフレ目標になっていない」と批判する識者もいる。

「『サプライズ』市場好感」。日銀発表の翌日である2012年2月15日付の読売新聞朝刊(経済面)の見出しだ。「1%めど」に加え、資産買い入れ基金の10兆円増額などの「脱デフレ」策発表を受け、円安・株高が進んだ状況を報じている。

白川総裁「日銀の枠組みはFRBに近い」

日銀が「1%めど」を打ち出した。

インフレ目標政策は、英国やカナダなど20か国以上が採用している。中央銀行が物価上昇率の目標を示し、目標より上がり過ぎたり下がり過ぎたりしないよう、金融政策的な努力をするというものだ。政策の透明性を確保する狙いもある。

先進国の中では日本と米国が例外的に採用していなかった。しかし、1月末にFRB(米連邦準備制度)が2%のインフレ目標を導入し、日本の国会で「米国のようにできないのか」と日銀への突き上げが始まっていた。

FRBが導入したインフレ目標は、達成できなかった場合の報告義務などはなく、「目標(ゴール)」と表現されている。一方、英国のイングランド銀行などでは、達成期間が示され、理由分析などの報告義務がある。「目標(ターゲット)」という言葉を使っている。

日銀の白川方明総裁は2月14日の会見で、「日銀の枠組みはFRBに近い」と説明した。

日銀は今回、物価上昇率について、従来使っていた「理解」という表現から「めど」へと、いわば「格上げ」した形で政策委員会としての判断を示した。「めど」が達成できなかった場合の報告義務はなく、達成時期も示していない。

あくまで「目標」との表現は避ける一方、「めど」を英語ではFRBと同じ「ゴール」と訳している。達成期間や報告義務がない点で、「(ターゲットではなく、ゴールとしている)FRBに近い」というわけだ。

日銀には「覚悟がない」

一方、高橋洋一・嘉悦大教授は、「FRBの政策はインフレ目標だが、日銀のはインフレ目標になっていない」と指摘する。元財務省官僚の高橋教授はかつて、現FRB議長のバーナンキ氏のインフレ目標論に関する本を、単独インタビューもつけていち早く日本に紹介している。

高橋教授によると、「インフレ目標」と呼べるかどうかの今回のポイントは、「報告義務の有無」ではなく、目標達成ができなかった場合に「責任を取るという覚悟を示しているかどうか」にあるという。

FRBの「ゴール(目標)」では、報告義務はないものの、「物価上昇率を金融政策でコントロールできる」としており、「目標達成に失敗すれば、議会などで説明するのは当たり前だという姿勢、覚悟を示している」というわけだ。

一方、日銀は「逃げをうっている」。日銀は、金融緩和だけで物価を上昇させることはできず、政府の成長戦略や企業努力も必要との考えを示しているからだ。

高橋教授は「日銀の腰が引けた覚悟のなさは、見透かされてしまう」として、「これでは、『事実上のインフレ目標』にもならない」と指摘した。もっとも、「何もしないよりは良いが…」とも話した。

2月15日付の全国紙朝刊各紙に載ったエコノミストらの見解の中にも「FRBは能動的、日銀は受動的」といった違いを指摘する声があった。

安住淳財務相は2月14日、「(日銀が)実質的にインフレターゲット(目標)を設定したと受け止めている」と歓迎したが、民主党内からは早くも「『めど』ではあいまいだ」などと不満の声が上がり始めている。