地方首長等の国の公職兼務について(ドイツとフランスの事例) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

地方首長等の国の公職兼務について(ドイツとフランスの事例)

秘書です。

今、テレビで、国会議員と地方首長の兼務は、国の身分を地方が持つことは地方分権に反するというコメントが出ていましたが、そうでしょうか?

地方の権利を守るために国をチェックするために常駐する人になる可能性もあるのでは?

ドイツとフランスの公職兼務はどのようなものでしょうか?


ドイツ・スペイン・英国における憲法事情に関する実情調査 概要
平成13年11月
http://www.sangiin.go.jp/japanese/kenpou/gse/gse_chosa06.htm

はしがき

 本資料は、平成13年度参議院海外派遣特定事項調査第一班が平成13年9月5日から13日まで、ドイツ連邦共和国、スペイン及び英国の3か国を訪問し、それぞれの国の憲法事情について調査を行ったので、憲法調査会の調査に資するため、その概要をまとめたものである。

平成13年11月
参議院憲法調査会事務局


(4)連邦参議院法務委員会
9月7日(金)9:40~10:50

(訪問先出席者)
ヨーゼフ ホフマン連邦参議院法務委員会担当課長

[質疑応答]

(ホフマン課長)
 法務委員長は、ハンブルク市長でもあるため、その公務のためハンブルクにいてお会いできないことをおわびする。連邦参議院及び法務委員会の概況は、私から説明したい。

・・・
 連邦参議院の特徴は、州の代表で構成されていることである。二院制を導入している国でも、一つの院が各州政府の首相と閣僚から構成されるのは珍しい

・・・

(松村議員)
 連邦参議院議員となる州の代表はどのように選ばれるのか。

(ホフマン課長)
 各州の代表者数は、それぞれの州の人口に基づいて配分される。連邦参議院では、その州の代表者の一人が、その州を代表して(州の持分の票を)投票する。州は何人の代表者を出せるかであるが、州政府の代表者は、理論的には、すべて連邦参議院議員となることができる。

(高野議員)
 州の代表者とは具体的にだれを指すのか。

(ホフマン課長)
 州政府の閣僚である。ある州の(持分票)割当数が6票なら、代表の一人がこの6票すべてを行使することができる。なお、連邦参議院には、議員だけの専任者はいない

・・・
(ホフマン課長)
 州政府の首相及び閣僚は、自動的に連邦参議院議員になる。したがって、これらの人ならだれでも連邦参議院の審議に参加できる。しかし通常は、例えば、財政関係の法案審議であれば州政府の財務相が、環境問題であれば環境相が出席する。ただし、前にも言ったように、票決数は州の(持分票)割当数による

(松岡議員)
 連邦参議院の審議に当たって、州議会の同意や報告は必要か。

(ホフマン課長)
 必要ない。

(松岡議員)
 連邦参議院議員の報酬はどのようになっているのか。

(ホフマン課長)
 議員としての報酬はない。州閣僚の報酬のみである。(連邦参議院の審議に)だれを派遣するかは州政府が決めるが、その旅費は支給される。

(松村議員)
 仮に各州10人の閣僚がいるとすると、16州あるから160人の連邦参議院議員がいるということなのか。

(ホフマン課長)
 そうであるが、議員数とその州の持分票は一致しない。ちなみに本会議場は各州ごとに席は6ずつしかない。

(松村議員)
 議員の資格を有することになる州閣僚は、ドイツ全体で何人くらいいるのか。

(ホフマン課長)
 それぞれの州政府の構成による。一つの州で大体10人程度、全体では約160人程度か。

(野沢団長)
 各州の持分票を見ると、一番人口の多いノルトライン=ヴェストファーレン州は1,800万人で6票、ブレーメンは68万人で3票となっている。1票当たりの人口を見ると、前者は300万人で1票、後者は23万人で1票だ。約13倍の格差がある。これが法の下の平等に反しないかという意見はないのか。

(ホフマン課長)
 アメリカの場合、上院は人口にかかわらず各州2名である。

 ドイツでもいろいろな妥協をしながらこのような数字になっている。

 (連邦制に基づく)上院の場合、解決方法はいろいろある。一つはアメリカ方式であり、また一つは人口比例方式だ。ドイツはこの中間と言え、これまでの妥協を経て現在のような形になっている。考えるに当たって重要なのは、一つか二つの州がその人口の多さだけで3分の2以上の多数を得ないようにすることである。

(野沢団長)
 連邦議会は人口比例なのか。

(ホフマン課長)
 そのとおりである。

(松村議員)
 日本の県では、知事は公選、それ以外の役人は知事の任命だが、ドイツでは、州政府の閣僚は州議会議員なのか。

(ホフマン課長)
 州議会議員は住民が選ぶ。そして州議会議員が(州議会で)州政府の首相を選ぶ。通常、州政府の首相がその閣僚を選ぶが、州議会議員でなくてもよい。

(松岡議員)
 (地方自治体の)市長についてはどうか。

(ホフマン課長)
 その市(地方自治体)の市議会議員が市長を選ぶ。

(松岡議員)
 市長が州議会議員を兼ねることはあるか。

(ホフマン課長)
 理論的には可能だが、激務となるので、通常はやっていない。

(小泉議員)
 ベルリン市長はベルリン州知事だが。

(ホフマン課長)
 ベルリンは特別である。ドイツでは、三つの市(特別市)が市であると同時に州でもある。ベルリンのほか、ハンブルクとブレーメンだ。

(高野議員)
 それらの市では、市長が州首相を兼ねているのか。

(ホフマン課長)
 そうである。市長であり、州首相であり、連邦参議院議員なのである

(野沢団長)
 連邦参議院では、審議は本会議中心で行われるのか、それとも委員会中心か。

(ホフマン課長)
 3週間に1度、本会議を開いているが、その準備のため、各専門委員会が設けられていてそこで事前の審議が行われる。

(野沢団長)
 州政府の仕事がかなり忙しいことを考えると、連邦参議院の審議に常時出席するのは大変ではなかろうか。

(ホフマン課長)
 事前の準備をそれなりに行っている。また、州政府の公務員を代理出席させることもできる

(松岡議員)
 州議会の開会と重なるときはどちらを優先させるのか。

(ホフマン課長)
 どちらを優先させるかは、その議員(州閣僚)が決める。

・・・

(小泉議員)
 連邦参議院の同意を要しない法案はどの程度の割合か。

(ホフマン課長)
 法案の約50%は、連邦参議院の同意を要しない法案である。

(小泉議員)
 NATO域外派兵の問題について、連邦憲法裁判所は、連邦議会の同意を要するとしたが、連邦参議院の同意は必要ないのか。

(ホフマン課長)
 NATO域外派兵を決めるのは連邦政府決定であるが、連邦憲法裁判所は、このような重要な政府決定は、連邦議会の同意を要するとしたものである。

 州は外交には直接かかわらないから、連邦参議院も外交問題に対しては控えめな態度をとっている。

(野沢団長)
 法案の提出は、政府提出、連邦議会の議員立法、連邦参議院の議員立法の三つの方法があると思うが、それぞれの割合、特徴などはあるか。

(ホフマン課長)
 連邦参議院の議員立法は、あったとしても連邦議会の議員立法と比べ特に特徴があるわけではない。政府提出法案は、全体の約80%以上を占める。

(野沢団長)
 議員立法で提出する場合、連邦議会と連邦参議院とで手続的な差はあるか。また、(提出が違っても)同一の条件で審議されるのか。

(ホフマン課長)
 違いはない。

・・・

(ホフマン課長)
 政府提出法案は、まずほとんど成立する。議員立法で野党提出のものはまず通らない。

(松岡議員)
 連邦参議院を改革しようという意見はここ2年ほどはないそうだが、連邦参議院議員は議員として個人的に特定されていないとすると、連邦議会議員と連邦参議院議員とに対等性は果たしてあるのか。

(ホフマン課長)
 審議はそれぞれ互いと関係なく独立して行われる。しかし、州の利害に関係する法案については、連邦参議院の審議が連邦議会に影響を与えることもある。非公式ルートで行われるのが一般的だが。

(松岡議員)
 連邦議会議員と連邦参議院議員は、議員として対等であると国民は見ているか。

(ホフマン課長)
 非常に難しい。連邦議会議員と連邦参議院議員が公式に一緒に審議することはないので難しい。

(高野議員)
 プロトコールとしてはどちらが上か。

(ホフマン課長)
 形式的には、連邦議会議員と連邦参議院議員は同等である。

(松岡議員)
 連邦議会議員は選挙で選ばれているのに対し、連邦参議院議員はそうではない。

(ホフマン課長)
 国民は対等と見ているし、議員もそのように考えている。

(松村議員)
 これは感想だが、日本では、衆議院も参議院も同じようになってきた。その点、ドイツでは、連邦参議院は地方に明確に基礎を置き、興味深い。日本でも、小泉首相が選ばれる際に地方の意見が強く反映された。また、マスコミも知事のコメントを求めることが多い。

(野沢団長)
 連邦参議院議員のベルリンでの事務所、秘書等については何らかの国からの手当はあるか。

(ホフマン課長)
 各州ともベルリンに代表部を有している。

(小泉議員)
 そこへの援助はあるのか。

(ホフマン課長)
 すべて州持ちである。




『公職兼職について(首長と国家議員の兼職等)~フランスの事例紹介を中心に~』【市長会議資料】
http://www.siteitosi.jp/conference/honbun/pdf/h23_11_04_01_siryo/siryo1_2_1.pdf


1.ヨーロッパにおける公職兼職の状況

公職の兼職(首長と国会議員の兼職だけでなく、地方議員と国会議員
の兼職なども含む)は、ヨーロッパ諸国の一部にみられるが、その中で
も、フランスが、規模・範囲において最も定着している国である。


◆◇ヨーロッパ諸国(フランス以外)で公職の兼職が行われている国◇◆
スペイン、ベルギーなど

◆◇フランスにおける公職の兼職の代表例◇◆
シラク前大統領は、1986年から1988年まで首相を務めたが、
同時にパリ市長(パリ市の市議会議員でもある)だった。


※フランスの地方選挙

地方議会議員が直接選挙で選ばれ、その議会の中から互選される議長が当該地方自治体の執行機関たる首長になる
第1党の名簿の第一順位に登載された候補者が、ほぼ自動的に議長(=市町村長)に選出されるため、議会選挙は事実上の市町村長選挙の意味合いを持つ。

◆◇ 国会議員の兼職の状況(2005年7月現在)◇◆

国民議会議員 定数577名割合(%)
州議会議員(うち議長) 71名(6名) 12.3%(1.0%)
県議会議員(うち議長) 139名(14名) 24.1%(2.4%)
市町村議会議員(うち市町村長) 379名(286名) 65 7%(49 6%)
兼職していない議員数90名15.6%

上院議員定数331名割合(%)
州議会議員(うち議長) 23名(2名) 6.9%(0.6%)
県議会議員(うち議長) 110名(33名) 33.2%(10.0%)
市町村議会議員(うち市町村長) 199名(127名) 60 1%(38 4%)
兼職していない議員数68名20.5%

出典:山﨑榮一『フランスの憲法改正と地方分権ジロンダンの復権』