日銀の「物価安定の理解」はインフレ目標と概念的に大きく異なるものである←以前の日銀総裁の見解 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

日銀の「物価安定の理解」はインフレ目標と概念的に大きく異なるものである←以前の日銀総裁の見解

秘書です。

かつて福井総裁はいいました。

インフレ目標と物価安定の理解は、「概念的に大きく異なるものである」!

日銀のみなさん、欧米が日銀に近づいてきたなんていわないで、わが道を突き進めばいいじゃないですか!


高橋洋一の民主党ウォッチ 
「落第生」日銀は言い訳やめよ 「インフレ目標」FRB見習うべきだ

2012/2/ 9 17:00
http://www.j-cast.com/s/2012/02/09121617.html?p=all

2012年1月25日、FRB(米連邦準備制度)が2%のインフレ目標を導入してから、日銀が騒がしくなっている。来週2月13日(月)、14日(火)に日銀は金融政策決定会合を開くが、そこで金融緩和措置がとられるかもしれないという噂が市場を駆け巡っている。

一般の人の中には、インフレ目標と聞くと、インフレなんて目標にするのはけしからんとかいう人もいる。年間で1ケタ程度のインフレ率なら、失業するわけでなく生活にたいした問題はないが、デフレでは失業率が高くなって新卒者や非正規雇用者は働けなくなる。

「FRBもやっていないから」と否定的だった

こうした経済の話と密接に関係しているが、ほとんどの国の中央銀行は物価の安定を主な仕事としている。物価の安定といっても、できるだけ数量的にわかりやすくすべきだ。目標を数字でわかりやすくすべきなのは、民間企業でも同じである。

世界の中央銀行は、インフレ率1~3%を目標にしているところが多い。そうした目標数字を出していなかった先進国は、日銀とFRBだけだった。FRBはちょっと事情があって、FRBは物価安定と雇用の最大化というふたつの責務(DUAL MANDATE)を持っていて、インフレ目標を出すと、雇用はどうなるのかと工夫が必要なのだ。

でも、今回、バーナンキ議長は、米国議会の根回しをうまくこなして、雇用も重視した上でやるということで、インフレ目標の導入にこぎ着けた。インフレ目標はバーナンキのライフワークともいうべきもので、彼は世界的権威でもある。

そこで困ったのが日銀だ。実は日銀はインフレ目標について否定的で、やってこなかったのは「FRBもやっていないから」と安直な理由で説明してきた。そうなると今回、FRBがやるなら、日銀もやれという話が当然出てくる。

マスコミが「騙された」、「理解」と「目標」の違い

国会で白川総裁は、実は日銀もFRBと同じようなことをやっていると言い訳している。日銀は、物価の安定を0~2%と「理解」しているという。マスコミはこれで騙(だま)されている。実は、「理解」と「目標」はまったく違う。

ちなみに2006年3月9日の福井俊彦総裁(当時)記者会見で、はっきり説明されている。記者の「各国で既に採用されているインフレーション・ターゲティング、インフレ参照値とは別か」という質問に対して、福井総裁は「概念的に大きく異なるものである」と明言している。

続けて「ターゲティングの場合はもちろんのこと、ECB(欧州中央銀行)のようなインフレの定義、あるいは望ましいインフレの定義のように、定義とか参照値とか言う場合には、政策委員会の意見、討議を経て1つの数字、ないしは1つの物価上昇率のレンジ、1つのことを決めるということであるが、そういったことはしていない」と答えている。

福井前総裁のほうが正しく、白川総裁は誤魔化している。目標というのは達成しないと不味い。しかし、「理解」なら達成しなくてもいい。ここに日銀がインフレ目標といえない理由がある。日銀は実績のない落第生なのだ

1998年の新日銀法施行以降、日本で前年同月比のインフレ率が0~2%に収まっていたのはわずか1割6分。一方、FRBが1~3%に収めたのは実に7割以上だ。100点満点で20点も取れない落第生は「目標」とは言えなくて、70点超の優等生は目標と言える。やはり落第生は優等生を見習うべきだ。


→福井総裁は何を言っていたのでしょう?


総裁記者会見 ( 3月 9日) 要旨
2006年 3月10日 日本銀行
http://www.boj.or.jp/announcements/press/kaiken_2006/kk0603a.htm/

【答】

まず、物価の安定についての明確化は、日本銀行としての物価の安定についての基本的な考え方を、この際改めて整理するとともに、金融政策運営にあたり、現時点において政策委員が中長期的にみて物価が安定していると理解する物価上昇率、すなわち「中長期的な物価安定の理解」を示すこととした。わが国の場合、もともと海外主要国に比べ、過去数十年の平均的な物価上昇率が低いということのほか、90年代以降、長期間にわたって低い物価上昇率を経験してきたことから、物価が安定していると企業や家計が考える物価上昇率は低くなっている可能性がある。金融政策運営にあたっては、そうした点にも留意する必要があると考えている。このため、「中長期的な物価安定の理解」も、現時点では海外主要国よりも低めになるという筋合いにあるなお、これに関する背景説明を加えた資料を明日お示ししたいと考えている。今日は公表文というかたちで比較的短いものをお渡ししたが、物価安定についての考え方、その背景説明というものを、明日お示ししたいと考えている。

次に、金融政策運営方針の決定に際し、2つの「柱」に基づく経済・物価情勢の点検を行っていくこととした。そうした点検を踏まえた上で、当面の金融政策運営の考え方を整理し、定期的に公表していくことを決定した。

「中長期的な物価安定の理解」を示し、それを念頭に置いてこれから金融政策を行っていくが、いわゆるインフレーション・ターゲティングというものと違って、ルール・ベースの金融政策の運営をするわけではない。物価についての理解を念頭に置いて金融政策を行っていくが、金融政策運営そのものはフォワード・ルッキングであり、総合判断でやっていく。その場合に経済・物価情勢をどのような「柱」で判断しながらやっていくかについて、2つの「柱」でまとめている。

具体的に、第1の柱では、先行き1年から2年の経済・物価情勢について、最も蓋然性が高いと判断される見通しが、物価安定のもとでの持続的な成長の経路を辿っているかどうか、といった観点からきちんと点検する。第2の柱では、より長期的な視点を踏まえつつ、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現するとの観点から、金融政策運営に当たって重視すべき様々なリスクを点検する。リスクを点検しながら、十分保険をかけた金融政策をやっていく、そのように言ってもいいかと思う。


【問】

先程、ターゲティングと違ってルール・ベースの運営をするのではないとおっしゃっていたが、そうすると例えば、物価安定の理解と現実が食い違った場合、中長期的なものとのズレが生じている場合において、日本銀行として何らかの達成責任みたいものを負うものと理解できるのかどうか。また、細かいことであるが、消費者物価指数というのは、いわゆる生鮮食品を除いたものではなく総合指数でいいのか伺いたい。

【答】
それから先程、皆様のご理解を頂くためにわざわざ、ルール・ベースの政策運営をするわけではない、フォワード・ルッキングで総合判断でやっていくとわかりやすく申し上げた。各国の中央銀行の政策運営のやり方をみても、ルール・ベースに近い運営とか裁量による運営など、概念的な整理を試みることはある程度可能である。しかし実際には、例えば、インフレーション・ターゲティングを採用している国の中央銀行でも、文字通り、機械的なルール・ベースの政策運営をしている中央銀行は殆ど存在しないと認識している。具体的な金融政策の運営方法は、それぞれの中央銀行が置かれた経済環境や制度的枠組みの違い等を反映して相当異なっている。インフレーション・ターゲティングを採用している中央銀行の中でさえ、実際の運営はかなり違っているという状況である。日本の場合、かねてより何回もお伝えしてきたが、量的緩和政策の枠組みから脱却した後の金融政策については、透明性の確保と機動的な運営──金融政策運営の柔軟性──が両立するような枠組みを考えるとお約束してきた。そこで、その道筋を政策委員会のメンバーが知恵を絞って懸命に考えたのが、今日の結論である。従って、何らかのルールで強く縛りを受けるという点を排除した新しい枠組みを作った、という意味のことを申し上げたわけである。


【問】

今の点をもう少し詳しくお聞かせ願いたい。ルール・ベースではないということであるが、今回、市場への政策の透明性という観点から作られた面があると思うが、そうすると市場からみた場合、0~2%ないし1%前後に概ね寄っているという数字だが、政策運営との連関性でこの数字をどのように見たらいいのか、わかりやすい説明を伺いたい。また、総裁は各国で既に採用されているインフレーション・ターゲティング、インフレ参照値などという言葉とは別のものだとおっしゃっていたが、これはECBなどが採用しているインフレ参照値と概念的に大きく異なるものなのかどうか伺いたい。

【答】

概念的に大きく異なるものである。ターゲティングの場合はもちろんのこと、ECBのようなインフレの定義、あるいは望ましいインフレの定義のように、定義とか参照値とか言う場合には、政策委員会の意見、討議を経て1つの数字、ないしは1つの物価上昇率のレンジ、1つのことを決めるということであるが、そういったことはしていない。物価安定について、一人一人の政策委員がどのように認識し、それを仮に数字で表せばこういうものであるということを、みんなで表明し無理に集約はしていない。無理に集約はしないで自然に表明した数値を客観的に眺めると、ある範囲内のところにまとまりがあって、そこから大きく離れていないレンジがこういったものであるということを映し出している。従って、今後、日本銀行の金融政策の運営は、常に金融政策決定会合の議論を経て物事が決まってくるが、その物事を決める会議に参画する政策委員一人一人がそういう認識で物事を決めていくのだということが、市場が金融政策を読み取る時のひとつの大きな前提として材料になると考えている。

【問】

「中長期的な物価安定の理解」の部分のECBとの関連について、私の理解したところでは、ECBは政策委員の間で望ましい物価上昇率を決めて評価している。一方で、日本銀行の今回の「中長期的な物価安定の理解」は、あくまで各政策委員の方々が、個別に出されたものを集約している。そこには評価的な要素を窺われていないので、政策の機動性は担保されると理解して良いか。

【答】

そういう意味では、他律的・自律的な縛りのルールとして入れたわけではない。日本銀行は物価安定を軸に金融政策を行う。物価安定とは、人々が物価の上下を心配することなく、経済活動に勤しめる状況をいう。それに尽きているわけだが、現実には、将来、例えば経済・物価情勢に見合った金利水準に向けて調整するとも言っており、その時に、物価安定について数字的に政策委員がどのような考えを持っているのかということは、あるいは有用な材料になるかもしれないという意味で敢えてお示しした。おそらく経済構造の変化等で、将来政策委員が頭の中に抱かれる物価安定のイメージは、いくらかは変わり得ると思う。従って、年に1回点検しようということになっているが、「中長期的な物価安定の理解」だから、おそらくそれほど変わるものではないだろうと思う。しかし、経済構造の先行きはまだ読めないので、いくらか変わり得る余地はあると思っている。

【問】

「新たな金融政策運営の枠組みの導入について」の第1の柱の部分で、「先行き1年から2年の経済・物価情勢ついて、最も蓋然性が高いと判断される見通し」とあるが、これは具体的な数値で公表されるのか。また、何らかの数値を公表しない場合、あるいはする場合でも、政策委員の間で意見を集約して取りまとめることになるのかどうか。さらに、展望レポートで消費者物価指数の見通しを出しているが、その位置付けとの関係はどうなのか伺いたい。
また、ディレクティブに関して反対票が1票出ているが、反対理由はどのようなものなのか教えて頂きたい。

【答】

繰り返しになるが、経済・物価情勢を点検していく場合の2つの柱のうち、第1の柱については、経済・物価情勢について、先行き1年から2年というレンジで私どもとして最も蓋然性が高いと判断される見通しを出していくが、その見通しが物価安定のもとでの持続的な成長の径路を辿っているかどうか、価値判断、評価を加えた点検をしっかり行いたい。

第2の柱については、物価安定のもとでの持続的な経済成長を実現するという観点から、金融政策運営にあたって重視すべき様々なリスクは何かということも点検したい。これはその時にならないと具体的にわからないが、例えば発生の確率が必ずしも大きくなくても、バブルやデフレ・スパイラルなど、もし発生した場合には、経済・物価に大きな影響を与える可能性があるリスク要因、発生確率が低くてももし起こればコストが高い要因や、それとはまた別に金融環境、資産価格、インフレ期待といったような、中長期的な経済・物価情勢に影響を与える要因などをそれぞれ点検していく。いわば保険をかけた、つまり、起こる確率は低くてもダメージが大きい部分については、きちんと保険をかけた金融政策をしなければならない、このような点検をしたいということである。

これらを従来やっていなかったのかというと、それはそうでもない。従来から、金融政策運営にあたっては経済・物価情勢を点検する際にある程度意識していた。それを今回明確にしたと理解して頂きたいと思う。展望レポートでは、これまでも先行き1年から2年の経済情勢の見通しを出してきており、それに対して上振れ、下振れ要因ということも申し上げてきた。今申し上げたこうした2つの柱による点検の内容と、それらを踏まえた金融政策運営の考え方を整理して、今までのやり方に上乗せして公表していく方針である。

【問】

そうすると、展望レポートで示している中央値が最も蓋然性の高い見通しになるのか、それとも必ずしもそうとは言えないということなのか。

【答】

数値はあくまで個々の政策委員が持っている見通しの数値であり、私が申し上げた標準的な見通しは、経済のメカニズムとしてどのように動いていくかということをきちんと記述しているところである。展望レポートの私どもの経済・物価情勢の見通しのコアになっている部分は、どういうメカニズムで今後経済が動くか、物価がどのように動くか、ということを述べている部分である。

【問】

3点伺いたい。先程、政府との間に経済情勢についての認識の不一致はないという話があったが、量的緩和の解除について慎重論をおっしゃる政府・与党の幹部もおられて、政府側からの反対を押し切って行ったという印象を与えかねない面もあると思う。これについて政府と一体でやっていくという意味において何らかの懸念を持っていないか伺いたい。

2点目は、「委員の中心値が概ね1%の前後で分散」とあり、これは参照値ではないということだが、竹中大臣や中川政調会長は物価上昇率は2%くらいが望ましいとはっきりおっしゃっている。これについては差異がはっきりしたような面があるが、政府・与党との差について懸念や考えがないか伺いたい。

3点目は、議決権はないが政府から出席された方々の意見は、こうした点についてどうだったのか伺いたい。

【答】

反対を押し切ってやったという気持ちは全くない。かねがね申し上げている通り、基本的な情勢判断は一致している。先般の国会で私も答弁したが、小泉総理のご発言を伺って、見解の相違はないと思いながら聞いていた。日本銀行が無理をして決めたという印象は持っていない。情勢判断が一致している限り、そのようなことは起こり得ないと、かねてより思っていた通りに、今日は素直に決めさせて頂いた。

それから、物価を数値で表示するやり方等については、広く各方面の識者から私どもにとっても参考になるような考え方、意見をたくさん出して頂いている。これからも出し続けて頂けるだろうと思っているが、私どもは海外の例も参考にし、各界の識者の意見も十分参考にし、しかし日本銀行として責任を持った金融政策を行っていくために、日本の実情に合っていること、そして日本銀行の政策運営の透明性と機動性の両立が叶うというクライテリア(基準)で、きちんと私どもが進むべき道を選んだということである。そうした範囲内で参考にできる意見は、今後ともどんどん吸収していきたい。私どもは殻の中に閉じこもった立場にいないので、各方面から色々な意見が出ることに対して格別違和感はない。

それから、政府の意見はそれぞれ今日担当大臣が会見をされるようであり、食い違いがあるといけないのでそちらのほうに委ねたいと思う。

【問】

「『物価の安定』についての考え方」のところで、「『物価の安定』とは、概念的には、計測誤差(バイアス)のない物価指数でみて変化率がゼロ%の状態である」とあるが、このバイアスについてはわが国では大きくないとみられるという記述がある。米国の場合、私の理解ではFRBは、1%くらいのバイアスがあるので1%を下回らないように政策運営をしてきたと理解しているが、これはそれを意識しているのかどうか。委員の間でバイアスは1%よりもかなり小さいというコンセンサスがあるのか、もしくはどの程度のバイアスがコンセンサスとしてあるのか。あるいはこのバイアスについては、委員の間でもかなり認識の違いがあるのか伺いたい。

【答】

委員のコンセンサスはここに書いた通り、日本の消費者物価指数に関する限り、今はバイアスは大きくないという判断である。バイアスを正確に計測することはどこの国においてもなかなか困難であるが、日本においてはまず物価指数の作成プロセスそのものが、政府のご努力で非常に良くなっている。諸外国よりも優れた物価指数となっているので、上方バイアスが生ずる余地が物価指数作成過程において減ってきている。実際にバイアスの計測技術も私どもの金融研究所でも研究しているが、ある程度腕を磨いていることもあり、数年前に計測したバイアスよりも最近計測すると明らかにバイアスが下がっていることがある。従って、政策委員共通の認識として、わが国の消費者物価指数のバイアスはあまり大きくないとみている。
もう1つは、いわゆるのりしろという部分はいくらか意識しながら、今後とも物価安定の理解を頭に置いていくということである。