失敗による面目失墜を恐れるあまり、自国経済のためになることすらやらない存在・・・(クルーグマン) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

失敗による面目失墜を恐れるあまり、自国経済のためになることすらやらない存在・・・(クルーグマン)

秘書です。

31年ぶりの貿易赤字なのに円高進行なんでだろう?

1ドル=76.67円

①日本が信頼されているからだと思う人?
②政府が増税して日銀がデフレを続けるからだと思う人?
③FRBがインフレターゲットを採用したからだと思う人?

②と③が合体して円高なんじゃないでしょうか。そうだとすると、為替相場を決めるのは金融政策だということですね。

金融政策により日米の相対的なおカネの量が変わる(あるいは変わると予想)。その結果、為替相場が変わるということですね。

2010年にクルーグマンさんはいっています。

「この独立した中央銀行が、失敗による面目失墜を恐れるあまり、自国経済のためになることすら、やらない存在となっていることが不況の大きな原因なのです」

「それは日銀だけではなく、FRBも同様です。国を問わず、根本的には組織に問題がある。自分の仕事、その本分を果たすのではなく、自分の組織上の地位や組織そのものを守ろうとしている」


その通り!

「緩やかなインフレと、ジンバブエのハイパーインフレでは、まったく違うはずです。しかし、多くの人々はその区別がつかない」

その通り!

「中央銀行の独立性への介入に関しては、もはやあれこれ躊躇すべきではありません。日本のGDPデフレーター(名目GDPを実質GDPで割った値。経済全体の物価動向を示す)は、ここ13年間、下がりっ放しです。それなのに今、日銀が重い腰をあげないというなら、(その責任者たる総裁は)銃殺に処すべきです

銃殺はかわいそうですので、日銀法を改正し、緩やかなインフレとジンバブエのハイパーインフレの区別がつかない人から中央銀行を解放しよう!

「緩やかなインフレを拒否し、銀行のバランスシート保護を優先しようとする日銀の考え方は、まったく正気とは思えません」

「したがって、日本が破産するとしたら、実はその唯一の方法は、日本銀行が「インフレなどとんでもないことだ」と言い続けて、このまま何もしないことを選んだ時です」


ノーベル経済学者からみて正気とは思えない日銀総裁を任命した責任、日銀法体系を放置した責任が立法府にあります。

日銀擁護派は、クルーグマンは「私達は日本に謝らなければいけない」と日銀批判を反省しているという人がいるかもしれません。しかし、それは2009年4月13日のこと。下記の記事の前のことです。つまり、反省したのではなく、FRBを揶揄するための自嘲的ジョークです。

クルーグマンの自嘲的ジョークを正気に受け止めてしまった日銀総裁・・・

「かつては米国の有力な経済学者の中にも、「日本の低成長やデフレの問題は大幅な金融緩和で簡単に解消できるはずだ」という主張がみられました。しかし、そう主張していた学者も、リーマン・ショック後における米国経済立て直しの難しさを経験してからは、かつての日本への批判を撤回して謝罪を口にするなど、認識が随分変わってきています。」
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2011/data/ko111222a1.pdf


独占インタビュー ノーベル賞経済学者 P・クルーグマン 「間違いだらけの日本経済 考え方がダメ」
2010年8月20日 週刊現代
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/994?page=4

・・・

クルーグマン ええ、いま、現金を溜め込んでいる人は、インフレがどんどん進んでいく前に、何かモノを買えばいい。そこがインフレ・ターゲット政策の狙いです。

―しかし、その政策については、「ハイパーインフレを生むのではないか」との懸念もあります。日銀も、インフレ・ターゲットの導入には消極的です。イギリスやカナダなどでは採用されているのに、なぜ日本ではインフレ・ターゲット政策への反対が強いと思いますか。

クルーグマン そこには二つの理由があります。まず価格の安定とハイパーインフレとの二者択一しか頭にない人が多いことです。私が仮に中央銀行に対して、アメリカの場合はFRB(米連邦準備制度理事会)ですが、「目標として掲げたインフレ・ターゲットに達していない」と文句を言ったとしましょう。すると人々は「アメリカをハイパーインフレに陥ったアフリカのジンバブエのようにしたいのか」と反論します

 でも、私の主張する、緩やかなインフレと、ジンバブエのハイパーインフレでは、まったく違うはずです。しかし、多くの人々はその区別がつかない。実際に経験したわけでもないのに、ちょっとインフレになれば、彼らはもう滑りやすい坂道を転げ落ちて収拾がつかないことになると思ってしまうわけです。実際にはそうはならないのに、人々は極端に悪いイメージを飛躍的に抱く。

 インフレ・ターゲット政策が支持されない二つ目の理由は、制度上の問題です。私だって、もし自分が日銀やFRBの役人なら、100%成功するかどうか分からないことに責任は持ちたくない。日本やアメリカのように「流動性の罠」に陥った状況下でインフレ・ターゲットを機械的に実行しても、容易にうまく行くものではありません。

 たしかにこれから5年間、3%のインフレ目標を設定すると日銀が宣言したとして、5年後に何も変わらなかったら、それは日銀にとってずいぶん具合の悪いことになるでしょう。

 とはいえ、そんな日銀の困惑など、どん底の日本経済を救うことに比べれば瑣末なことです

―今回の参院選で躍進した「みんなの党」の渡辺喜美代表は、2%のインフレ・ターゲットを掲げるとともに、これを達成できない時は日銀総裁の解任を国会で検討してはどうかと言っていますが、どう思いますか。

クルーグマン 我々は中央銀行の独立性をずいぶん擁護してきました。しかし今や、この独立した中央銀行が、失敗による面目失墜を恐れるあまり、自国経済のためになることすら、やらない存在となっていることが不況の大きな原因なのです

 それは日銀だけではなく、FRBも同様です。国を問わず、根本的には組織に問題がある。自分の仕事、その本分を果たすのではなく、自分の組織上の地位や組織そのものを守ろうとしている
 中央銀行の独立性への介入に関しては、もはやあれこれ躊躇すべきではありません。日本のGDPデフレーター(名目GDPを実質GDPで割った値。経済全体の物価動向を示す)は、ここ13年間、下がりっ放しです。それなのに今、日銀が重い腰をあげないというなら、(その責任者たる総裁は)銃殺に処すべきです

日銀は正気とは思えない

―インフレが起こると、どういう人々が被害を受けますか。

クルーグマン 現預金などに依拠する人々には、被害が及ぶでしょう。資産の再分配効果が現れますから、年長者、たとえば私の両親にとってはいいことではありません。補償政策を考える必要があるかもしれない。しかし経済がうまくいかないことほど、すべての人にとって恐ろしいことはないのです。

 今の景気停滞は、特に若い人々をひどく傷つけている。日本だけでなく、アメリカでも大学を卒業した若者たちに仕事がない。実証的に言えることですが、これは彼らの一生をねじ曲げてしまいます。卒業後、長期間にわたって就職に失敗し続けたら、その後遺症からは一生回復できない。

 緩やかなインフレを拒否し、銀行のバランスシート保護を優先しようとする日銀の考え方は、まったく正気とは思えません。私はハイパーインフレを発生させろなどと主張してはいない。年に数%の緩やかなインフレを目標に据え、就職できない若者たちの人生を救えと言っているのです。

―日本のデフレは、日本の30倍のスケールを持つBRICs4ヵ国のせいだという意見があります。つまり、その労働力人口18億人が、日本の得意としてきた製造業部門に投入され競合した結果、日本人労働者の賃金が抑制され、個人消費の低迷につながったのではないかという考えです。

 加えて、OECD(経済協力開発機構)諸国中、日本だけが深刻なデフレに苦しんでいます。それは一体、なぜなのでしょうか。

クルーグマン 海外の競争相手が日本経済の不景気の原因となるとしたら、それは持続的な貿易赤字をもたらしているはずです。しかし、デフレが始まってからこれまでの全期間、日本の貿易収支は黒字です。

 この十数年間で唯一、日本が伸長したのは'03年から'07年の間で、中国への輸出増が大きな要因だった。つまり、日本は新興市場からむしろ恩恵を得ているといったほうがよいのではないですか。

―ギリシャの財政危機をきっかけに、我が国では日本の財政破綻の可能性を指摘するエコノミストが増えています。いったい日本やアメリカのような大国が破産するというのは、どういう状況を指すのでしょうか。

クルーグマン 数日前、私はブログにも書いたのですが、日本やアメリカのように自国通貨を有する国は、債務を履行するために、最後は印刷機に頼ることができる。しかし、そこからどれぐらい引き出せるかには、限界がある。債務が膨大な額に上った際、紙幣の印刷に頼るということはハイパーインフレを呼び込むことを意味します。

 ハイパーインフレと債務の一部不履行の間のどちらかを選択しなければならない事態となれば、後者が選ばれることになるでしょう。

 以上はすべて極端な話です。日本の場合、もし本当にインフレが始まったら、債務の問題の大部分は解決します。たとえ緩やかなものでも本当にインフレになれば、借りた時よりもお金の価値が下がって返済の負担が減るため、債務問題の解消には劇的な効果を発揮するからです。



したがって、日本が破産するとしたら、実はその唯一の方法は、日本銀行が「インフレなどとんでもないことだ」と言い続けて、このまま何もしないことを選んだ時です

 ただし、日本の場合、この債務問題は、意外にも後には幸運視されるかもしれない。これは逆説的表現で、クレイジーと言われかねないかもしれませんが、もし、日本の債務がどんどん膨らんで国家予算の破綻が見えてきた時、日本人は本気になって考え始めることでしょう。

「日銀はいよいよインフレを起こして、債務を帳消しにするつもりなのかもしれない」と。その時こそ、インフレへの期待が高まり、この経済問題が解決に向かうのです。

 長期国債の持ち主は激しいショックに見舞われるでしょうが、マイナス面はそれだけではないでしょうか。

財政再建は急がなくていい

―日本の赤字国債の90%以上が国内で消化され、日本人の金融資産は14兆ドルを超えているので、日本はそれほど財政再建を急ぐ必要はないという考え方がありますが、この国は本当に大丈夫なのでしょうか。

クルーグマン 一般的に国債を持っているからと言って、投資家が愛国的だという証拠はない。国庫を信用すればとどまり、不信感が高じれば逃げる。まあ、他の人々が逃避しても日本人の多くは国債を持ち続けるかもしれませんが、いずれにせよ、その点を必要以上に重大に考えてはいません。

 私が言いたいのは、やはり日本はGDP比で197%の債務残高を抱えているとはいえ、財政再建を急ぐ必要はない、ということです。自国通貨を持つ先進国として、日本は安定した政治システムと、状況や環境の変化に対する高い適応力を有しています。

 ちなみに、イギリスの歴史を見ると、借金だらけの状態だった時期は少なくありません。債務残高がGDP比250%までいった時もありますが、何ら国内問題にはならなかった。イギリス人は母国が負債を支払う道をいずれ見出すだろうと信じていたからです。

 赤字や債務といった数字だけを見る限り、アメリカ、日本、イギリスの3ヵ国は、スペイン、ギリシャ、アイルランドと同類に見えます。

 しかし、自国通貨を有する先進国である以上、先の三国はきわめて低利の借款が可能です。財政再建を今の時期、まったく急ぐ必要はない。長期間にわたって巨大な債務を背負ってきた日本が、例えば'10年9月、突如、市場から猛反発を受けるとは考えられません。

 だからといって、日銀がデフレを放置することは許されない。

 中央銀行というのは、常に実効性のある金融政策の革新や実験に挑戦しなければいけない存在です。その方法が「中央銀行になじまないから」といって実施しないのは間違っている。私は、「インフレへの期待」という心理的側面こそが、景気回復へのレバレッジ(てこ)になると考えている。

 まずはインフレ・ターゲット政策を実行してデフレの流れを止め、景気を回復させる。その結果で議論の決着を付ければいいのです。