IMFが求めているのは中期的財政再建 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

IMFが求めているのは中期的財政再建

秘書です。

IMFがいっているのは、

各国は短期的調整のスピードに注意すべきだが、中期的財政再建は依然として急務

ということ。だから、

短期的に米国が過剰に財政を引き締めることが、より差し迫ったリスクとして挙げられる

といっています。そして、


措置としては、医療制度と年金支出の伸びの抑制に向けた改革や、裁量的歳出の上限の設定、および財政収入を押し上げる税制改革などが考えられよう。また、現実的な中期的計画を実施することで、バランスシートの修復、成長、および雇用創出を支える政策余地が生じると期待される。

といっています。



IMF局長、消費税率15%に 日本に要求
2012/01/25 05:05 共同通信
http://www.47news.jp/CN/201201/CN2012012501000878.html

【ワシントン共同】国際通貨基金(IMF)は24日公表した報告書で、日本が2015年までに消費税率を10%に引き上げる方針を決めたことについて「公的債務比率を縮小させるには不十分だ」と批判。IMFのコッタレリ財政局長は記者会見で消費税率を15%まで引き上げるべきだと指摘した。

 同局長は「日本は一段と野心的な取り組みが必要だ」と強調。短期的には日本国債の金利上昇懸念はないが、「永続すると考えるべきではない」と警告した。

 報告書も、日本に対し一段の財政再建策を要請、明確な財政戦略の欠如は市場の混乱を招きかねないとした。


→さて、IMFの報告書をみてみましょう。

世界経済見通し 改定見通し
2012年1月24日午前10時
http://www.imf.org/external/japanese/pubs/ft/weo/2012/update/01/pdf/0112j.pdf


また、米国および日本の中期的財政健全化計画の策定の進捗が不十分であり、これも下振れリスクの要因である。ユーロ圏の混乱により、これらの国々の公的債務が投資家により魅力的となり、同リスクは短期的には軽減するかもしれない。しかし、公的債務の水準が中期的に上昇すると予測され、十分明確かつ現実的な財政健全化戦略が打ち立てられない限り、世界の債券市場と為替市場 に混乱が生じる可能性がある。また、予想外の事象が起こる傾向にある政治経済情勢により、短期的に米国が過剰に財政を引き締めることが、より差し迫ったリスクとして挙げられる

中期的には、米国と日本は、セーフ・ヘイブンとしての立場を当然と捉えることはできない。このことから、両国は、現実的な中期的財政健全化政策の策定・実施を推し進めなければならない。措置としては、医療制度と年金支出の伸びの抑制に向けた改革や、裁量的歳出の上限の設定、および財政収入を押し上げる税制改革などが考えられよう。
また、現実的な中期的計画を実施することで、バランスシートの修復、成長、および雇用創出を支える政策余地が生じると期待される
。財政政策については、2012 年財政モニターアップデートで詳細に検証している。


財政モニターアップデート
2012年1月24日午前10時
http://www.imf.org/external/japanese/pubs/ft/fm/2012/update/01/0112j.pdf

景気循環要因調整後の赤字は、英国、米国でも大幅に縮小したが、日本では、自然災害に関連した復興コストにより、わずかに増大した。

日本は、自然災害関連の復興コストを一部反映し、2012 年に財政拡大を行う唯一の大型先進国と
なる見通しである。現在、2011~13 年にかけGDP 比約4%の予算が総復興費として組まれており、
その資金は当面、国債売却で調達する。これらの国債は、政府保有の株式の売却や、法人税率(3
年間)と個人所得税率の暫定的引き上げにより、影響を最小限に抑えるため25 年にわたって随時
償還される計画となっている。政府は、中期的な財政戦略の一環として、2015 年を目処とした消
費税率の10%への倍増案を含めた税制改革法案を提出する予定だが、それだけでは債務比率を減
少方向に転ずるには不十分といえる。


2012 年の財政再建の余りに急激な推進は下振れリスクを悪化させる可能性が


多くの先進国の財政赤字と公的債務は高水準にあるが、現下の脆弱な経済環境を踏まえる
と、2012 年に予定された財政再建のペースは大きな重要性をもつ(2012 年1 月の「世界経
済見通しアップデート」参照)。その上、多数の国ではすでに、2011 年9 月の「財政モニ
ター」(図3 参照)の予想に比べ、景気循環の視点に立つと、一段と緊縮型の財政政策を
とっている。これは一部に、ユーロ圏のいくつかの国では、適度な金利で追加資金の調達
を行えないため、現行のヘッドライン赤字目標を達成する際に、自動安定化機能を作動す
るのではなく、新規施策の導入を余儀なくされているためといえる。

景気循環要因調整後の財政赤字のさらなる削減は成長の観点からも、また恐らく市場の観
点からも望ましくない可能性がある。赤字と債務比率の削減は借入コストの低下につなが
るが、他の要因を一定とすると、産出量の伸びの早い先進国では現在、低スプレッドの恩
恵も享受している(図4 参照)。これは、財政再建策の実行可能性と極度に脆弱な成長環
境での支払い能力に対する懸念を一部反映したものとみられる2 。そのため、景気後退下でのいっそう
の引締めは、成長にマイナスの影響を及ぼし、市場の緊張感を緩和するどころか悪化させる可能性が
ある。

各国は短期的調整のスピードに注意すべきだが、中期的財政再建は依然として急務

直近では、大半の先進国において十分な財政調整策が計画されており、これらの国は、支払い能力に
対する懸念が配慮され、赤字増大に際しても資金調達が可能である限り、自動安定化機能を自在に発
揮させるべきである。また、ユーロ圏の一部諸国を含め、比較的強固な財政および対外ポジションを
有し、しかも超低金利を享受している国では、直近の財政再建作業のペースを再考慮すべきである。
しかし、多額の債務を抱えたこれらの国では、金利の上昇に対する脆弱性が高まるため、信頼のおけ
る中期的債務削減計画の実施はなおも優先課題といえる。米国においては、こうした計画には、社会
保障支出の抑制と歳入増大につながる施策が含まれるべきである。日本に対しては、2010 年代の半ば
までに債務比率の引き下げを開始できるような調整の道を画策するよう求められる。