小泉政権の頃のリスクシナリオがいまや慎重シナリオといわれて増税試算の前提で | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

小泉政権の頃のリスクシナリオがいまや慎重シナリオといわれて増税試算の前提で

秘書です。
小泉政権時代にリスクシナリオ、安倍政権時代に成長制約シナリオと、改革失敗シナリオにされていたものが、民主党政権では「慎重なシナリオ」と名前を変えて、これが政策の基本になっちゃったみたいですね。
改革が失敗すればするほど、増税額が積み増しされていく・・・・


UPDATE1: 2015年度の基礎的財政収支改善目標達成、あらゆる政策努力行うことが必要=古川経済財政相
2012年 01月 24日 11:00 JST
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPTK071221220120124

 [東京 24日 ロイター] 古川元久経済財政担当相は24日、閣議後の会見で、2015年度の基礎的財政収支改善目標の達成に向け、あらゆる政策努力を行うことが必要だと述べた。

 内閣府がまとめた「経済財政の中長期試算」では、経済に関する慎重シナリオ(慎重な前提の下での試算)でみた2015年度の基礎的財政収支赤字の対GDP比は、国・地方で3.2%程度の目標に対し、試算上は3.3%と目標を達成できない姿となっている。2015年度の消費税引き上げ分を仮に平年度化すれば財政構造としては基礎的財政収支赤字の半減目標は達成されるが、古川経済財政相は「2015年度の目標達成に成長力強化などあらゆる政策努力を行うことが必要だ。担当大臣として全力で取り組みたい」と語った。

 また、古川経済財政相は、東京電力(9501.T: 株価, ニュース, レポート)の電気料金引き上げの動きについて、産業空洞化の懸念のなかで電力料金を引き上げるということだとの認識を示した上で、「東電がどこまで切り詰めてやっているのかということを検証する必要があると思う。東電は今様々な形で国が支援するかたちになっている。自分たちの都合だけで値上げしていいのか」と懸念を示した。

 *この記事の詳細はこの後送信します。新しい記事は見出しに「UPDATE」と表示します。

→改革努力しないリスクシナリオがいつのまにか慎重シナリオに名前を変えて、改革なしを前提に増税を考えるようになりました。日本人は「慎重」とか「堅めの数字」というのが好きですから、政策失敗が基本シナリオになってしまいました。だから、増税はしかたないと思うが増税に反対、ということになるのでしょう。

構造改革と経済財政の中期展望-2005年度改定 参考試算
平成18年1月18日経済財政諮問会議提出
内閣府
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/syakaihosyou/dai16/16siryou5_1.pdf

(1)「基本ケース」
(黒字化を達成した場合)

「改革と展望」に沿った政策努力を前提に、標準的に考えられるケース
・構造改革の効果が進展し、全要素生産性(TFP)上昇率が高まる。世界経済も順調に拡大。
・高齢者の労働参加率が高まる。

 【マクロ経済の姿】 (% 程度)、兆円程度
2 005年度 2 0 0 6年度 2 0 0 7年度 2 0 08年度 2 0 09年度 2 010年度 2 011年度

実質成長率( 2 .7 ) ( 1 .9 ) ( 1 .8 ) ( 1 .8 ) ( 1 .7 ) ( 1 .7 ) ( 1 .7 )
名目成長率( 1 .6 ) ( 2 .0 ) ( 2 .5 ) ( 2 .9 ) ( 3 .1 ) ( 3 .1 ) ( 3 .2 )
名目G D P 5 0 3 .9  5 1 3 .9  5 2 6 .8  5 4 1 .9  5 5 8 .5  5 7 6 .1  5 9 4 .5
国民所得3 6 7 .7  3 7 5 .6  3 8 3 .8  3 9 5 .0  4 0 7 .2  4 1 9 .7  4 3 2 .6
物価上昇率
(消費者物価) ( 0 .1 ) ( 0 .5 ) ( 1 .1 ) ( 1 .6 ) ( 1 .9 ) ( 2 .1 ) ( 2 .2 )
(国内企業物価) ( 1 .7 ) ( 0 .9 ) ( 1 .2 ) ( 1 .3 ) ( 1 .5 ) ( 1 .6 ) ( 1 .8 )
(G D P デフレーター) * (▲ 1 .1 ) ( 0 .1 ) ( 0 .7 ) ( 1 .1 ) ( 1 .3 ) ( 1 .4 ) ( 1 .5 )
完全失業率( 4 .3 ) ( 4 .1 ) ( 4 .0 ) ( 3 .9 ) ( 3 .8 ) ( 3 .8 ) ( 3 .7 )

(2)「リスクケース」
(追加的改善努力がない場合)

政策努力を前提とするが、種々の下方リスクが顕在化するケース
・構造改革の成果が民間部門の効率化や技術進歩に十分に結びつかず、全要素生産性(TFP)
上昇率が低迷。世界経済も低迷。
・高齢者の労働参加率が現状水準に留まる。

 【マクロ経済の姿】 (% 程度)、兆円程度
2 005年度 2 0 0 6年度 2 0 0 7年度 2 0 08年度 2 0 09年度 2 010年度 2 011年度
実質成長率( 2 .7 ) ( 1 .9 ) ( 2 .0 ) ( 1 .6 ) ( 1 .3 ) ( 1 .0 ) ( 1 .0 )
名目成長率( 1 .6 ) ( 2 .0 ) ( 2 .9 ) ( 3 .1 ) ( 3 .0 ) ( 2 .8 ) ( 3 .0 )
名目G D P 5 0 3 .9  5 1 3 .9  5 2 9 .0  5 4 5 .2  5 6 1 .7  5 7 7 .6  5 9 5 .0
国民所得3 6 7 .7  3 7 5 .6  3 8 5 .7  3 9 7 .4  4 0 8 .8  4 1 9 .2  4 3 0 .3
物価上昇率
  (消費者物価) ( 0 .1 ) ( 0 .5 ) ( 1 .3 ) ( 2 .0 ) ( 2 .4 ) ( 2 .6 ) ( 2 .6 )
  (国内企業物価) ( 1 .7 ) ( 0 .9 ) ( 1 .4 ) ( 1 .7 ) ( 2 .0 ) ( 2 .1 ) ( 2 .3 )
  ( G D P デフレーター) * (▲ 1 .1 ) ( 0 .1 ) ( 0 .9 ) ( 1 .4 ) ( 1 .7 ) ( 1 .9 ) ( 2 .0 )
完全失業率( 4 .3 ) ( 4 .1 ) ( 3 .9 ) ( 3 .7 ) ( 3 .5 ) ( 3 .4 ) ( 3 .3 )

→小泉政権時代は、リスクシナリオでも実質1%成長、名目3%でした。いまでいえば名目3%なんて悪魔の数字ですね。

→「骨太の方針2006」の基本方針のもと、2007年1月に安倍政権で閣議決定した「日本経済の進路と戦略」では、

http://www.mof.go.jp/about_mof/councils/fiscal_system_council/sub-of_fiscal_system/proceedings/material/zaiseia190208b/zaiseia190208_c.pdf

①新成長経済移行シナリオ(移行シナリオ):2011(平成23)年度の名目GDPは3.9%

「進路と戦略」に沿って我が国の潜在成長率を高めるための政策が実行される場合に、視野に入ることが期待される経済の姿。
・成長力強化策の効果から全要素生産性(TFP)上昇率、女性・高齢者等の労働参加率が高まる。世界経済も堅調に推移。

②成長制約シナリオ(制約シナリオ):2011(平成23)年度の名目GDPは2.0%

政策効果が十分に発揮されず、かつ世界経済の減速など外的な経済環境も厳しいものとなる場合の経済の姿。
・政策の効果が十分に発揮されず、全要素生産性上昇率や労働参加率が低迷。世界経済も低迷。


→民主党政権の新成長戦略は、「2012 年度以降、平均で名目3%程度、実質2%程度の成長の姿に近づいていく。」としています。
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2011/shinseicho2011.pdf

→そして、「経済財政の中長期試算」では成功シナリオが実質2%、慎重シナリオが実質1%成長になっているようですね。そして、慎重シナリオに基づいて増税必要額を試算していく。

→つまり、小泉・安倍政権時代でいえば改革が失敗したことを前提のシナリオで増税額をはじいているわけですね。慎重とか、手堅くといいながら、改革しなければ増税額がどんどん増えていくという構図にもちこんでいるわけですね。

→こんな視点をもって、今日の閣議に提出された経済財政の中長期試算をみてみましょう。


内閣府がまとめた「経済財政の中長期試算」によると、20年度までの平均成長率を名目で1%台半ば、実質1%強が「慎重シナリオ」!!小泉政権時代でいえば、リスクシナリオ以下ですね。政策の失敗シナリオ。

この数字が自己実現していく日本。それを閉塞状況というのでしょう。

誰かの利益は誰かの損になる恐ろしいゼロサム社会。人が人に対して狼となる社会。弱肉強食が嫌な人がなぜこんなシナリオを容認するのでしょうか?

→なお、安倍・福田政権期の2007年度の国・地方の基礎的財政収支は、実額▲6.4兆円、対GDP比1.2%まで改善していました。


(参考)国・地方の基礎的財政収支・財政収支の推移
http://www5.cao.go.jp/keizai3/econome/h22pbbggv.pdf
http://www.zaisei.mof.go.jp/pdf/7-2%E5%9B%BD%E3%83%BB%E5%9C%B0%E6%96%B9%E3%81%AE%E5%9F%BA%E7%A4%8E%E7%9A%84%E8%B2%A1%E6%94%BF%E5%8F%8E%E6%94%AF%E3%81%AE%E6%8E%A8%E7%A7%BB.pdf