「日本が医療分野で欧米の植民地となるのは時間の問題」(中村祐輔・元医療イノベーション推進室長) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

「日本が医療分野で欧米の植民地となるのは時間の問題」(中村祐輔・元医療イノベーション推進室長)

秘書です。

「結局は医療の現在・将来を憂う危機意識が共有できなかった」
「政権を担う民主党そのものも不統一で、話が通らなかった」
「このままでは、日本が医療分野で欧米の植民地となるのは時間の問題だ。ただ、日本は、基礎研究レベルは高い。基礎研究を医療へとつなぐ大局的な国家戦略を策定し、それを実行できる強い政治の確立を期待する」


政治はどう受け止めるか?



医療イノベーション推進室長から米大移籍へ 東大・中村教授に聞く
産経新聞 1月16日(月)7時55分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120116-00000065-san-pol

 ■「医療憂う意識 共有できず」

 日本の医療に世界的な競争力を付けることを目的に立ち上がった「医療イノベーション推進室」。室長だった中村祐輔・東京大学医科学研究所教授(59)は、なぜ、辞任したのか。中村教授に聞いた。(森本充)

 --辞任を決断させたのは、何だったか

 「東日本大震災後の対応だった。日本の未来を見据えた医療システムの構築を目指し、政府に政策を提案したが、耳を傾けてもらえなかった。結局は医療の現在・将来を憂う危機意識が共有できなかった

 --室長を引き受けられた背景は?

 「日本は医薬品や医療機器で約1兆7千億円の貿易赤字を抱え、分子標的抗がん剤は、日本製の“日の丸印”はゼロ。ペースメーカーもすべて他国製を使うなど、すさまじい遅れぶりだ。日本の経済を活性化し、医療の質を保つには、医学・医療改革が不可欠だと感じていた。こうした危機的状況を改善する絶好の機会だと思い、室長を引き受けた」

 --推進室の役割とは

 「日本発の医薬品などを生み出す司令塔の役割となる組織として期待された。産官学が一体となった『オールジャパン』体制で、研究開発の基礎から実用化まで切れ目のない研究開発費の投入や研究基盤の整備に取り組むとされた」

 --何か成果は出たのか

 「現実は何も変わらなかった。予算権限を有する各省庁が自らの方針を主張するのみで、今までの縦割り構造の流れは同じ。政権を担う民主党そのものも不統一で、話が通らなかった

 --今春、米シカゴ大に移籍されるが

 「一刻を争う新薬開発の世界では、今のままの日本の制度や状況だと、世界的な競争に勝てず、何も患者のために残せない。自分の年齢を考えると、医療開発に対して前向きな海外を選択するのが、ベストだと思った。苦渋の選択だった」

 --日本の医学研究の問題点とは

 「知的好奇心を駆り立てるものを重要視し、社会に還元する気持ちは俗っぽいと低く評価される。本来、医学研究は困っている患者さんを助けるためにあり、自己の名誉などは二の次のはず。根本的な意識改革も必要だ」

 --日本の医療分野の将来をどうみるか

 「このままでは、日本が医療分野で欧米の植民地となるのは時間の問題だ。ただ、日本は、基礎研究レベルは高い。基礎研究を医療へとつなぐ大局的な国家戦略を策定し、それを実行できる強い政治の確立を期待する

【用語解説】医療イノベーション推進室

 医薬品開発で欧米に後れを取りアジア諸国からも猛追される状況を打開するため、最先端の医療技術の実用化など医療分野での国際競争力を高めることを目的に、平成23年1月に内閣官房に創設された。スタッフは研究者のほか、医薬品などの産業界、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の関係省庁から横断的に集められた。有望な分野・技術に対し、集中的で切れ目のない支援を行い基礎研究を実用化につなげる狙いだった。再生医療など最先端の医療技術から、町工場のものづくりの力を生かした医療機器の開発まで多岐にわたるものを対象にする構想だった。