岡田前幹事長の「2015年、日本復活ビジョン」を学習しよう | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

岡田前幹事長の「2015年、日本復活ビジョン」を学習しよう

秘書です。

岡田前幹事長が過去、どのような政策提言をしていたのかを見てみましょう。



2004年8月25日
2015年、日本復活ビジョン
岡田 克也
http://www.eda-jp.com/dpj/2004/040825-okada.html

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3.持続可能な社会保障制度を確立する
 
 少子高齢社会と人口減少時代という今までにない大きな変化が現実のものとなっているにもかかわらず、その影響を最も受ける社会保障制度、とりわけ医療制度と年金制度の本格的な改革は先送りされ続けています。今世紀末の人口が現在の半分程度になることは、ほぼ確実という厳しい現実を見据える必要があります。他方で不誠実な説明やでたらめな運営実態を知らされた国民の間には、社会保障制度や、それを運営する政府に対する信頼が失われています。国民の老後の生活に対する不安感は日々高まり、他方で若者の感じる不公平感は政治不信につながっています。

 2015年における年金制度は、安定した持続可能なものになっています。まず高所得者を除く高齢者すべてが、現在の国民年金レベルの支給を受けることができる最低保障年金が導入されました。財源は消費税に必要な改革を行った年金目的消費税によってまかなわれます。消費税率は当初3%でスタートしましたが、最低保障年金の水準や、高所得者の範囲をどう設定するのかなどによって、必要な税額、即ち消費税率が決まります。年金目的消費税が他の目的に使われることはありませんので、国民から見て分かりやすく、納得のいく制度になっています。最低保障年金に加えて、所得比例年金制度が導入されています現役時代に所得水準に応じて、支払った保険料の総額に応じて支給される年金の水準が決まります。会社員、公務員、自営業者、パートなど多様な職業や働き方がありますが、この制度はすべての人が加入し、所得が同じなら同じ保険料を支払い、同じ保険料負担なら同じ年金給付がなされます。保険料率は所得の一定割合に固定され、年金計算上の見通しが変われば年金額で調整します。保険料の徴収は納税者番号制により正確な所得を把握した上で、国税と一体的に徴収しますので、未納・未加入の問題はありません

 これらの新しい年金制度に完全に切り替わるまでの間は、今までの年金制度との並存期間があります。したがって、いままで真面目に保険料を支払った人に対しては旧制度に基づく年金支給は引き続き行われます。

 医療制度の問題の一つは、制度の分かりにくさとそれに伴って責任の所在が明確でないことです。2015年においては、現役世代については、会社と本人負担の保険料収入と患者の自己負担によって制度運営がなされる自立的な制度が確立しています。制度の運営主体は一定規模以上の健保組合、共済組合と都道府県単位の国保組合などとし、年齢構成と所得分布の違いを透明な仕組みによる財政調整を行います。その上で、効率的な運営を行ったところは、保険料を自由に引き下げることができるなど、自己責任原則に基づく運営がなされています。患者の自己負担は高額療養費に対する軽減措置を前提としつつ3割を原則とします。 

 高齢者医療についてはすべての人に最低保障年金が支給されることを前提に高齢者から所得に応じた保険料を徴収するとともに、高額療養費に対する軽減・免除措置を前提に、所得に応じて1~2割程度の自己負担を求めます。しかし、必要な財源の大半は税金でまかなわなければ制度は成り立ちません。社会的入院や必要以上の薬の投与など、いろいろな無駄が指摘をされ、また巨額支出が必要となる高齢者医療制度について、議会や国民のチェックが行いやすいという視点から財源は目的消費税ではなく一般財源となっています。制度運営は都道府県単位に儲けられた運営主体が行いますが、各運営主体が効率的な運用を行っているか否かが比較できるよう、基礎的数値の情報公開を行っています。

 保険者機能の強化、医療情報の電子化、カルテの開示、医療費明細書の発行義務化、中医協抜本改革、診療報酬制度改訂への国会関与など国民の立場に立った改革がなされ、効率的で質の高い医療が実現しています。

 少子化は政治が取り組むべき最大の課題です。少子高齢社会のリスクを回避するためにも、子供を生み、育てやすい環境が必要です。2015年の日本では、18歳までの子供の扶養者に対し、現在価格で平均月額4万円の子育て費用の全額がまかなえる程度の思い切った金額の子供手当てが支給されます。中央省庁の縦割りを反映した保育所と幼稚園の区別はなくなり、小学校入学前の子供に対し、地方自治体の責任と権限で認可した多様な施設に、待つことなく入所できます。学童保育についても同様です。育児休暇制度は小学校入学までの間、取得できることになり、母親だけでなく父親の育児参加と育児休暇の取得が当然と受け止められるようになっています。正社員とパート社員の合理的理由のない待遇差別は禁止され、育児期間中パート社員として働き、その後正社員に戻るなどの選択や多様な働き方が可能になり、育児と仕事の両立が実現しやすい社会になっています。以上の政策が実現された結果、出生率は人口維持水準である2.1にはまだ遠く及ばないものの、既に上昇に転じ、22世紀には人口減少が止まるのではとの期待が持てる状況になっています。

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5.日本経済の活力を最大化する

 今までの日本は官による様々な市場介入が民間の自由な競争を妨げてきました。規制の強い業界ほど高コスト構造が温存され、かつ世界的な競争力を持つ企業は育ちませんでした。しかし、経済のグローバル化の影響は国内市場にも及んでおり、生産性の低い国内需要向け産業と国際競争力ある産業の二重構造は、いま急激に変わりつつあります。

 2015年の日本は本格的な人口減少時代に入りました。生産性を高めない限り経済はマイナス成長となり、縮小均衡型の活力の失われた魅力のない日本になってしまいます。右肩上がりの経済の時代は明らかに終わりましたが、新陳代謝を活発に行う流動性のある経済の維持は重要です。自由な市場における競争こそが生産性を高めることができます。2015年の日本では経済の分野では市場原理がより貫徹され、政府は独禁法の強化や経済的規制の撤廃、官製談合の徹底排除など競争促進政策に専念しています。資金のない若者に対する起業の支援、外国資本の誘置なども活発となり、日本経済は活力を取り戻しました。高齢化や子育て支援、環境などの新たな分野での新規企業が次々と誕生しています。地方においても特色のある中小企業・地場産業が成長しています。30代、40代の若い経営者や女性経営者の活躍が目立つようになりました。アセアン、中国などには日本企業と競合する企業も増えましたが、基本的には相互補完関係が成立し、自由貿易協定(FTA) 締結も進み、成長するアジアマーケットの中で、日本経済も大きなプラスを得ています。

 持続可能な経済を実現するために環境・エネルギー問題への取り組みが必要です。市場メカニズムを生かしてこれらの問題に有効に対応する手段として、環境税(炭素税) が創設されています。税収の一部は風力・太陽光などの再生可能エネルギーの普及促進やエネルギー技術開発に投入されます。またこれらの問題への対応は日本だけでは意味がありません。成長するアジア経済全体の取り組みが必要です。日本・中国・韓国・アセアンなどが歩調を合わせた環境・省エネルギー対策、そして石油危機時におけるアジア版緊急石油融通システムなどの枠組み作りが実現しています。

 森林の水害防止対策や地球温暖化防止対策などに着目した緑のダム事業が本格化し、10万人を超える雇用を生むとともに、植林から自然林への回帰など、森林再生により美しい国土を取り戻しつつあります。

 農業活性化も大きな課題です。補助金と価格支持政策をやめ、米・麦・大豆などの基幹的作物への直接支払い制度が定着し、意欲ある担い手が自信を持って農業に取り組んでいます。従来の農業従事者に加えて農業をやりたい若者や定年退職者、株主会社やNPOなど多様な担い手が日本農業を支えています。農業従事者間に消費者を意識した競争がはじまり、食の安全という消費者ニーズに応えた農産物の生産が効率的になされています。農産物のブランド化が進み、一部は海外においても人気を得ています。これらの結果、食料自給率は50%へと向上しています。


6.財政の建て直しに道筋をつける

 2004年の日本の長期債務残高は720兆円に達し、対GDP比144%という水準は世界の中で突出して高い水準にあります。経済の低迷による税収減に加えて、歳出の重点化・効率化は極めて中途半端に終わり、そこに政治のリーダーシップは見られません。無責任な負担の先送りは若者の夢を奪い、加えて、増え続ける公債の発行は金利上昇をもたらし、日本経済の大きな制約となることが懸念されています。

 2015年、プライマリーバランス(基礎的財政収支)の黒字化が定着し、ようやく財政再建の足がかりを得ることができました。2004年に約19兆円あったプライマリー赤字が黒字化するためには、国民の理解と政治の強いリーダーシップが必要でした。

 財政建て直しの中心となったのは、歳出の徹底した見直しです。まず公共事業予算が他の先進国並みの水準にまで、即ち現在の対GDP比5%から2%台まで削減されました。道路や新幹線などの地方の根強い要望に対し、次世代への責任と日本経済の持続可能性を前面に揚げて、政治家が説得したことが実を結びました。人件費の削減も困難を乗り越えて達成されました。独立行政法人化された職員の給与はそれぞれ独立採算によって支出されることになりました。公務員にはILO勧告に沿った労働基本権が付与されることが実現しましたが、これに伴い人事院勧告の硬直性が緩和され、より民間の実態に沿った給与水準となりました。仕事の効率化やアウトソーシングもなされ、定員削減も大幅にすすんでいます。国や地方政府がなすべきことが厳しく限定され、いままで官が行ってきた事業の廃止や民間への移管が大胆になされました

 2015年の一般歳出の中で、いまや7割以上を占めるのが社会保障関係費です。少子高齢化に伴い毎年増加するのは避けられません。制度改革によって年金は保険料と年金目的税によって、また現役世代の医療も保険料によって賄うことになりました。これらはいわば独立採算です。従って支出増の中心は高齢者医療と介護です。いずれも運営の主体は地方であり、負担の一部が住民税など地方税で賄われることで、住民注視の中で無駄のない効率的な運営が実現しています。保障の対象となるべきサービスの重点化なども行われました。他方で元気で可能な限り働いたり社会参加する高齢者を応援するための政策や、少子化対策が将来の歳出減、歳入増につながる点にも注目され、思い切った予算投入がなされています。

 以上の歳出削減を前提に、増税も避けられません。所得に対する課税は景気回復による収入増、累進税率の変更や住民税の地方判断による増税はあっても税収増には限界があります。法人税はグローバルな競争の中で世界の法人税率を無視した税率引き上げは民間の活力を削ぐことになります。増税の中心は間接税(消費税) にならざるを得ません。消費税増税は困難な政治課題ですが、政治のリーダーシップにより、思い切った歳出の効率化・重点化がなされたあとだけに、国民の間に、誰もが迎える高齢期のコストでやむを得ないとの認識が共有されています。医療・介護などの制度が簡素化され負担と給付の関係がわかりやすくなったこと、消費税の改革がなされ、生活に最低限必要な経費には実質的に消費税が課税されなくなったことも、消費税アレルギーを少なくする結果となりました

 しかし、次のステップである公債発行ゼロ予算、そして公債発行残高の着実な減少を、少子高齢化と人口減少が続く中で確実に実現しなければなりません。世代間責任を果すために、更なる政治のリーダーシップと国民の理解が必要です。