日銀総裁のロンドン講演を学習しよう | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

日銀総裁のロンドン講演を学習しよう

秘書です。
日銀総裁が何を考えているのか、学習しましょう。


デレバレッジと経済成長――先進国は日本が過去に歩んだ「長く曲がりくねった道」を辿っていくのか?――
日本銀行総裁 白川 方明
London School of Economics and Political Scienceにおける講演
(アジアリサーチセンター・STICERD共催)
http://www.boj.or.jp/announcements/press/koen_2012/data/ko120111a.pdf

過去数年間の米国、ユーロ圏、英国で起きてきたことを1990 年代以降の日本
のバブル崩壊後の姿と比較すると、相違点よりも、類似点の方が圧倒的に多
いというのが私の印象である。日本で過去起きたことは、日本特有の現象で
はなかった。

→ほんとですか?日本以外に2年以上物価下落が続くデフレ現象の国はどこにありますか?日本で90年代後半から起きていることは「日本特有の現象」でしょう?

第1の類似点は、経済のパフォーマンスである

→類似してます?

米国の2010年の実質成長率は3.0%、消費者物価上昇率は1.6%
英国の2010年の実質成長率は1.4%、消費者物価上昇率は3.3%
スウェーデンの2010年の実質成長率は5.7%、消費者物価上昇率は1.9%

→米国も足元では実質5%成長へ。リーマンショック以後に実質成長率は急回復しているし、デフレにもなっていません。今の欧米と失われた20年の日本が同じというのはミスリーディングでしょう?


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第2の類似点は、政策当局者やエコノミストの当初の反応である

→中央銀行の行きすぎた引き締めと、遅すぎて小さすぎる緩和、早すぎる緩和解除というのは日本固有の現象でしょう。

→欧米の場合、日本のようになるな、と日本を反面教師にできた点はラッキーでした。反面教師にされていることを未だに気づかないふりをするというのは・・・


第3の類似点は、中央銀行の採用する政策の類似性である

その多くは、日本銀行が採用した政策と本質的に類似している。この事実は、
同じような状況に直面すると、中央銀行は同じように行動するという、ある
意味では当然のことを物語っている。

何がしか違いがあるとすれば、日本銀行は手探りで非伝統的政策を決定しな
ければならなかったという意味で、いささか孤独であったということかもし
れない。

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→どうみても、中央銀行の採用する政策は違ってますね。非伝統的政策を効果がない程度に遅すぎて小さすぎる程度にしかやらないということで、日本は自ら孤立しているのでしょう。なぜ、同じだといいたがるのでしょうか?日本は欧米と違うと言い切ればいいではないですか?

第4の類似点は、デレバレッジの過程にある経済、すなわち、バランスシ
ート問題を抱えた経済では、金融政策の有効性が低下するという事実である。

→リーマンショック以後、デフレを回避したという点で欧米の金融政策は有効でしたね。

日本経済の低成長に関する事実

第2は、中期的な成長動向である。高度成長は1970 年代には終わったが、
それでも他の先進国と比較すると、成長率はかなり高かった。しかし、1990
年代以降は相対的にみても、日本は高成長の国ではなくなった。現在に至る
約20 年間の日本の実質成長率は平均成長率で1.0%、名目成長率は0.4%と非
常に低い。正に、「日本の失われた20 年」と言われる所以である。

中期的な低成長の原因

1990 年代の低成長の主因は、未曾有のバブル崩壊に伴うデレバレッ
ジであった。これに対し、2000 年代以降の低成長の主因は世界の経済史に例
を見ないような急速な高齢化や人口減少である。

→つまり、「失われた20年」のうち、2000年代の原因は、高齢化と人口減少だという。経済政策のミスではありませんと。ということは、誰が何をしてもダメだということですね。そういって日銀を免責しているわけです。

→しかし、おかしいですね。それではなぜ小泉政権の時代に2%成長を続けられたのでしょう。しかも、2%成長でもデフレから脱却できなかったということは日本は相当の潜在成長力をもっているということなのでは?この疑問に対して、講演のあとのほうで総裁はこういっています。


第3の要因は、海外経済の成長率である。日本は2000 年初頭以降、バブル
崩壊後のデレバレッジの影響から徐々に脱していったが、これには海外経済
が過去数十年間に例を見なかったような高成長を遂げたことの恩恵という面
も大きかった(図表17、18)。しかし、振り返ってみると、当時は、世界的
な信用バブルの発生・拡大過程であり、また新興国の力強い成長に牽引され
ていた時期であった。現在、先進国はバブル崩壊後のデレバレッジの影響か
ら総じて低成長を余儀なくされていることを考えると、新興国がインフレや
バブルを回避しつつ成長を遂げることが出来るかどうかは非常に重要である。

→つまり、あれは海外がバブルだったから景気がよかっただけですと。先の名古屋講演では、あの時代は円安にふれたから、みたいなこともおっしゃっていましたね。つまり、例外の時期と。

先進国は日本と同様の事態を経験するか?

第2の要因は、潜在成長率の水準である。債務の規模が過剰か否かは、最
終的に経済の規模に対する比率で判断できる。同じ額の債務を抱えていても、
潜在成長率の高い経済の方が過剰債務の解消はその分早くなる。ただし、潜
在成長率の大きさは固定的なものではなく、バブル崩壊後の政策や社会の反
応によっても変わってくる。その意味で、バブル崩壊による二次被害
(collateral damage)を回避することが非常に重要となってくる。
二次被害はさまざまな形で顕在化する可能性がある。たとえば、デレバレ
ッジ進行下の低成長経済では、社会の不満は高まり、しばしば保護主義や過
度に干渉主義的な政策がとられやすい。政治的・社会的理由から存続可能性
の低い企業への貸出が続く場合は、生産性が徐々に低下し、潜在成長率が低
下する。
さらに、金融政策も捻じれたインセンティブを与える惧れがある。低金利
政策や潤沢な流動性供給は必要な措置であるが、他方で、これが長期化する
と、非効率な企業を温存することを通じて生産性を引き下げる要因ともなり
得る。低金利が政府の財政バランス健全化に向けた動きを遅らせる場合も、
経済全体としての調整は遅れることになる。

人口減少も潜在成長率を引き下げることを通じて過剰債務の調整を長引か
せる。人口増加率の低下や高齢化は先進国に共通の問題であるが、この点、
日本はより深刻である。日本の人口増加率は米国、ユーロ圏、英国と比較す
ると、最も低いが、それ以上に、人口増加率低下の速度が速いことが経済や
社会に様々な負荷をかけている。他方、欧米諸国は日本と比較すると、人口
増加率は高いが、移民による人口増加の寄与度が大きい。しかし、この要因
による人口増加は経済の低迷が続けば、減少することも予想される(図表15、
16)。

→人口減少しているから仕方ないということですね。本当は、人口減少を上回る生産性向上(教育水準向上)があれば成長はできます。高度成長期は人口要因を上回る成長をしていませんでしたか?

中央銀行の役割

中央銀行が物価と金融システムの安定という重要な役割を担っ
ていることは言うまでもないが、中央銀行はすべての問題を解決できる組織
ではない。特に、ゼロ金利とデレバレッジングで特色付けられる経済におい
ては、そうである。実際、主要国の中央銀行総裁は私自身も含め、最近、そ
うした趣旨の発言を行っている7。尊敬するイングランド銀行のキング総裁の
言葉を借りると、「金融政策に達成を期待できることには限界がある(There’s
a limit to what monetary policy can hope to achieve.)」である

→日銀総裁がイングランド銀行総裁を尊敬しているなら、イングランド銀行がどこまでを限界として何をしているのか、学習しましょう。日本はまで限界までやりきっていなのでは?

Quantitative Easing - How it Works
$中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba
http://www.bankofengland.co.uk/education/inflation/qe/video.htm

→「金融政策に達成を期待できることには限界がある(There’s a limit to what monetary policy can hope to achieve.)」というのは、やるだけのことをやった人のみが言える言葉です。

第2は、バブル崩壊後の金融政策についてである。金融緩和政策の効果の
源泉は、将来の需要を現在に手繰り寄せるか、海外の需要を自国に持ち込む
かのいずれかに求められる。しかし、前者のルートについて言うと、次第に
現在に持ち込むことができる需要が減ってくる。後者のルートについて言う
と、先進国全体が低成長の中では、ゼロサム・ゲームの色彩を帯びるように
なり、世界経済全体の持続的成長という観点からすると、望ましくない。し
かし、だからといって中央銀行が何もせずに責任を免れるわけではない。だ
からこそ、現在、主要国の短期金利がゼロ近くに低下している中で、日本銀
行を含め、主要国の中央銀行は様々な非伝統的政策を使って長期金利を引き
下げたり、信用スプレッドを引き下げることによって金融緩和効果を創出す
る努力をしている。しかし、それと同時に、中央銀行がこうした措置を講じ
て時間を買っている間に、必要な構造改革を進めることが不可欠であること
を感じる。

→デフレを放置すると本来ある需要をなくしているのでは?デフレしか経験したことのない青年の需要は変るでしょう?

第3は、金融政策における成功のパラドックスについてである。金融政策
の目的は物価安定の下での持続的成長を実現することである。この点は、イ
ンフレーション・ターゲティングの枠組みを採用するか否かにかかわらず、
日本や英国を含め、今や確立した考えである。しかし、こうした金融政策が
成功すればするほど、物価は安定し、経済や市況のボラティリティも低下す
る。安定的な環境が長期に亘って持続するという予想が拡がると、レバレッ
ジや金融機関の資産・負債の期間ミスマッチが拡大しやすくなる。ところが、
レバレッジやミスマッチは、何かのきっかけで大きく巻き戻される可能性を
内包していることから、その拡大は経済の脆弱性を高める。バブルの崩壊と
はその脆弱性が顕在化したものである。今回のグローバル金融危機以前は、
バブルへの対応戦略に関して、事前の予防か、事後の後始末戦略かの論争が
あったが、バブル崩壊のコストはあまりにも大きいことが、今回の危機を通
じて、誰の目にも明らかになった。過去のバブルはほとんどの場合、低イン
フレ下で生じた。経済を安定させようとして消費者物価指数の短期的な安定
に過度に焦点を当てると、不安定性の増大という反対の結果を招いてしまう。
バブルは低金利だけで発生する訳ではないが、低金利が長期間にわたって持
続するという予想が拡がると、レバレッジや金融機関の資産・負債の期間ミ
スマッチが拡大しやすい。その意味で、中央銀行は金融政策の運営に当たり、
金融的不均衡の発生にも注意しなければならないと思う。

→そもそも、物価上昇率0%以下は、国際標準でいうところの物価安定ではないでしょう。物価安定ができない日本の総裁が物価安定批判をすると、あたかも、バブルを起こさないために物価安定よりも低いデフレに抑えている、物価安定(=低インフレ)はバブルが発生しやすいので日本のデフレ長期化を選択しています、といわんばかりに聞えます。

人々は、「およそ悪しき時代」にいるように感じている。しかし、我々は「お
よそ善き時代」にいるとは言えないかもしれないが、望みを捨てるには、ま
だ早い。我々は、直面している困難を解決する資源―すなわち、お金だけで
なく、知性と組織的な能力―を有している。バブルが崩壊した後でも、経済
を新たな環境に適合させ、二次被害に至るような圧力に屈しなければ、我々
は新たな成長へと繋がる道を見つけることができる。必要なのは意志と決意
である。最終的に、そうした強い意志と決意を持てれば、「長く曲がりくねっ
た道」も短くすることができるのである。

→日銀法を改正してでも、デフレは金融政策によって克服できることを簡単に実証した欧米並みの金融政策をとり、円高とデフレ下の増税を阻止するという強い意志と決意を持てれば、「長く曲がりくねった道」を抜け出す脱出路がみえるかもしれませんね。