リスクをとって前向きな経済政策対応をとることを期待したい(酒井吉廣さん) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

リスクをとって前向きな経済政策対応をとることを期待したい(酒井吉廣さん)

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金正日後の北朝鮮 経済立て直し、安定の早道
フジサンケイ ビジネスアイ 12月26日(月)8時15分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111225-00000004-fsi-bus_all

 金正日氏の逝去発表を受けて、先進諸国のメディアは一斉に朝鮮半島と東アジアの安全保障に注目した。北朝鮮はこれまで蛮行を繰り返しつつも、本格的な暴発には至らなかった。この微妙なバランスについて、軍および朝鮮労働党内の権力把握が不十分な後継の金正恩氏では戦争に至るかどうかを決める手綱さばきが不安だというのがメディアの一致する見方である。

 しかし、金正日後の北朝鮮を占う場合、金正恩氏が国内経済の立て直しをできるかどうかに着目する方が重要である。

 北朝鮮は今年、「経済発展のための10カ年戦略計画」を立てたほか、中国との共通経済地域を両国国境にある鴨緑江の2つの島に建設することも発表した。しかし具体的な計画に入る前に金正日氏が死去したため、この実現が遠のく可能性が高まっている。

 経済面で周辺国に追い付ける将来像が描けない限り、北朝鮮内外の目を惹く蛮行は続き、それが戦争に発展するリスクも高まる。したがって、金正恩氏が経済の立て直しを実現できるかどうかが今後を占う鍵となる。

 北朝鮮の1人当たりGDP(国内総生産)は1800ドルと韓国の6%強しかないほか、北限を接する中国の吉林省や遼寧省と比べてもかなり低い。金正日氏が金日成氏の後継者に決まった1974年ごろの南北朝鮮の1人当たり生産量が似たような水準にあったことを思えば、現在の大幅な格差は両国の経済政策の巧拙と考えるのが適当だろう。

 北朝鮮は、韓国との開城工業団地の設置や、対中輸出拡大(レアメタルや漢方薬)などを行ってきたが、明確な成果が出ていない。リーマン・ショック前には中東や米国の投資家が平壌などを訪問し、高層ビル建設や携帯電話ビジネスを模索したようだが、これも今は頓挫しているとのことである。

 しかし、北朝鮮経済を悪化させた要因は、(1)ソ連崩壊による経済支援の喪失(2)軍事優先政策の影響-の2つだ。

 (1)は他の共産主義国にも同様のダメージとなったが、例えばベトナムは資本主義国への接近などからその後の10年で輸出を7倍に増やし、現在の高成長への礎を築いた。他方、柔軟な外交をしなかった北朝鮮は同期間内に輸出を25%減らし、新たな経済支援を頼む国もないまま1990年代に大飢饉に突入した。

 (2)は自国の資本を軍事面に優先配分したことの影響だが、軍事優先政策は中東やアフリカ、南米の反米勢力へ武器等への輸出につながったほか、核兵器の開発には成功したものの、米国の対北敵対的政策を招いた。ソ連崩壊後の共産主義陣営が米国依存を始めたのに対して、北朝鮮は同政策の問題から立場が逆になったのである。また、拉致問題などもあって日本や韓国の経済制裁も受けた。

 「中東の春」により、北朝鮮を僚友とする国はさらに減少した。蛮行の繰り返しが今後も成功する保証はなく、大国を敵に回した戦争に勝利がないのも明らかである。したがって、同国が生き残るには真剣に経済復興に取り組むしか道がない。問題は、金正恩氏と彼を取り巻く側近がこれを理解して行動できるかだ。できなければメディアの危惧が実現してしまう。

 北朝鮮は、過去15年間に韓国から40億ドル、米国から10億ドルの支援を受けている。中国は総額90億ドルの資金を提供しているが、これは特に胡錦濤政権になって急増している。人道的支援もあるが、関係国は北朝鮮を経済安定に向かわせたいのだ。

 経済力の増強が自国の繁栄につながるのは金正日氏も当然理解していたはず。ただ、世界史は経済発展が国民を民主的な政権を求めるよう変化させることの繰り返しだったため、これができなかったという説もある。

 スイスで民主的教育を受けた金正恩氏には、朝鮮半島に動乱を再発させないためにも、できるだけ早くこのリスクをとって前向きな経済政策対応をとることを期待したい。

(清華大学高級研究員・酒井吉廣)