消費増税停止の「検討規定」で消費増税が停止されるのはどのような状態か | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

消費増税停止の「検討規定」で消費増税が停止されるのはどのような状態か


秘書です。

政府・民主党内に、

「最低限でもGDPデフレーターでみて1%程度の適度で安定的な(物価)上昇の実現を素案にしっかり明示的に示すべきではないか」

という正論をとなえる議員がいることは心強いことです。

ところで、景気認識について、同じ日発表なのに、なんで政府と日銀で違うのでしょう。
政府は、増税を推進していく上で、踊り場にあることを認められないからでしょう。
政府は、来年は復興需要がある、再来年も民需主導の成長ができるという。
一方、日銀は景気の下振れリスクを懸念している。
この差は、政府が増税優先政治をしているからですね。
こうした中、制具税調論点整理の「検討規定」とは何か?


消費増税停止の「検討規定」検討へ=政府税調論点整理
2011年 12月 21日 23:25 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE7BK00F20111221

[東京 21日 ロイター] 政府税制調査会作業チームは21日の全体会合に、消費税引き上げに伴う課題の方向性を示した論点整理メモを提出した。経済が急速に変動した場合に柔軟に対応できるよう「検討規定」を設ける必要性を提案。予期しない景気変動に対して、税率引き上げを一時停止する条項を関連法案に盛り込む方向で検討する。

逆進性対策では食料品などの税率を低くする軽減税率を見送り、「制度の簡素化や効率性の観点から、単一税率を維持」する方向性を示す一方、所得税の最高税率を現行の40%から45%に引き上げる方針を明記し、高所得者の課税強化の方向性を打ち出した。

焦点の消費税引き上げの時期や幅については、民主党との調整が控えていることから空白としたが、社会保障・税一体改革の素案には引き上げ時期・税率を具体的に示す方向性を書き込んだ。

一方、消費税引き上げ時の「景気条項」については、「2012年度には、復興需要の増加が着実な成長を支えると見込まれ、2013年度以降においては、復興需要が一段落するものの、民需主導の経済成長への移行によって経済が堅調に推移すると考えられる。海外経済動向などから、景気下振れリスクが存在することは十分注意する必要がある」との景気認識を示した後、法案提出時には「経済状況は好転していくとの見通しが立てられる」と指摘。「実施前に、『経済状況の好転』について、名目・実質成長率など種々の経済指標の数値の改善状況を確認しつつ、東日本大震災の影響等からの景気回復過程の状況、国際経済の動向などを見極め、総合的に判断する」とし、数値目標の導入を見送る考えも示した。

6月の一体改革成案に盛り込まれた「経済状況を好転させることを条件として、消費税を含む税制抜本改革を実施する必要がある」をめぐっては、政府・民主党内で具体的な経済指標を目標として記すべきだとの意見が浮上していた。しかし、作業チームは、消費税引き上げを凍結させかねない数値目標の導入には否定的で、論点整理で「総合判断」を貫いた。

ただ、きょうの政府税調でも、「最低限でもGDPデフレーターでみて1%程度の適度で安定的な(物価)上昇の実現を素案にしっかり明示的に示すべきではないか」(森ゆうこ文部科学副大臣)など異論はくすぶっており、最終決着には至っていない。

今後の対応については、五十嵐文彦財務副大臣は記者会見で「消費税率引き上げ時期・幅、段階論、逆進性対策、『景気好転の条件』の位置づけは、党の論議を待ち、さらには高度な政治判断になる」としており、最終決定は民主党内の議論を踏まえることになるとの認識を示した。

→平成23年度第28回税制調査会(12月21日)の論点整理資料をみてみましょう。

資 料〔論点整理(国税)〕
平成23年12月21日
社会保障・税一体改革作業チーム
http://www.cao.go.jp/zei-cho/gijiroku/zeicho/2011/__icsFiles/afieldfile/2011/12/21/23zen28kai3.pdf

改革の方向性(イメージ)(資料のpp.5-6.)

(1)消費税の税率引上げの「時期、幅」

・ 平成○年○月○日 ○%(地方消費税と合せて●%)
・ 平成□年□月□日 □%(地方消費税と合せて10%)

(2)「経済状況の好転」の判断について  

・ 経済状況を好転させることを条件として遅滞なく消費税を含む税制抜本改革を実施する必要。
・ 累次の補正予算、震災復旧・復興、デフレ脱却と経済活性化に向けた所要の取組み等により、
足下の景気は緩やかに持ち直しており、先行きについても、各種の政策効果などを背景に、
景気の持ち直しの傾向が続くことが期待される。
・ 平成24 年度には、復興需要の増加が着実な成長を支えると見込まれ、平成25 年度以降にお
いては、復興需要が一段落するものの、民需主導の経済成長への移行によって経済が堅調に
推移すると考えられる。ただし、海外経済の動向などから景気が下振れするリスクが存在す
ることには、十分注意する必要がある。
・ 以上を踏まえれば、法案提出時点における総合的な判断として、経済状況は好転していくと
の見通しが立てられるのではないか。
・ 実施前に「経済状況の好転」について、名目・実質成長率など種々の経済指標の数値の改善
状況を確認しつつ、東日本大震災の影響等からの景気回復過程の状況、国際経済の動向等を
見極め、総合的に判断

(3)予期せざる経済変動に柔軟に対応できる仕組み 

・ 予期せざる経済変動にも柔軟に対応できるように、検討規定を設ける必要があるのではないか。


→「経済状況の好転」の判断は、あくまで「総合的に判断」なんですね。そして、「経済状況の好転」の定義とは全く切り離して、「予期せざる経済変動」への柔軟対応を検討する規定を入れると。つまり、ここでは、「経済状況の好転の話」と「検討規定」を切り離している。なぜか?「好転」を検討規定の条件とせずに「予期せざる経済変動」を検討規定の条件にすることで、予期できる景気後退、なだらかなデフレ状況でも増税はできる余地を残すということなのでしょう。


→12月11日に民主党の藤井税調会長が「消費税率の引き上げは、あまりに経済がマイナス成長のときは、考え直さなければならない。成長率がマイナス5%になった時にやるのかというと、それはできない」といった通りですね。しかし、リーマンショック後ですら日本経済は-5%成長になっていない。つまり、この検討規定はほぼ検討しない規定だということになりそうです。

“税率引き上げ 経済情勢配慮も”
12月11日 5時48分 NHK

民主党の藤井税制調査会長は、NHKのインタビューに応じ、年内をめどに取りまとめるとしている社会保障と税の一体改革の素案について、経済情勢によっては、消費税率の引き上げを一時見合わせることを盛り込む考えを示しました。

この中で藤井税制調査会長は、素案に盛り込む消費税率の引き上げ時期について、「何年何月ということを書くと、素案ではなく法律になる。もう少しぼかすというのは1つの選択肢だ」と述べ、素案では、引き上げの時期に幅を持たせる考えを示しました。また藤井氏は、「消費税率の引き上げは、あまりに経済がマイナス成長のときは、考え直さなければならない。成長率がマイナス5%になった時にやるのかというと、それはできない」と述べ、経済情勢によっては、税率の引き上げを一時見合わせることを盛り込む考えを示しました。また、藤井氏は、低所得者への対策について、「食費など基礎的な消費がいくらかというのは統計的に出るので、そのぐらいの額をお返しすることを考える」と述べ、所得が低い人に現金を払い戻す「給付付き税額控除」の導入を検討する考えを示しました。民主党内では、消費税率の引き上げに反対する意見が根強く、素案の取りまとめは難航することが予想されることから、藤井氏としては、税率の引き上げを一時見合わせることなどを素案に盛り込むことで、党内の理解を得るねらいもあるものとみられます。

→マイナス5%成長というのを増税の条件とすると、リーマンショックのあった2008年ですら増税は可能です。この条件なら、過去いつだって増税可能だったということになりますね。

なお、1997年4月増税直前の96年度の成長率は、名目2.3%、実質2.9%。それでも増税に失敗した(経済悪化により1997年度を上回る税収はを得たことがない)。


1996年度=名目2.3%・実質2.9%
1997年度=名目0.9%・実質0%
1998年度=名目-2%・実質-1.5%
1999年度=名目-0.8%・実質0.7%
2000年度=名目0.9%・実質2.6%
2001年度=名目-2.1%・実質-0.8%
2002年度=名目-0.8%・実質1.1%
2003年度=名目0.8%・実質2.1%
2004年度=名目1%・実質2%
2005年度=名目0.9%・実質2.3%
2006年度=名目1.5%・実質2.3%
2007年度=名目1%・実質1.8%
2008年度=名目-4.6%・実質-4.1%
2009年度=名目-3.7%・実質-2.4%
2010年度=名目0.4% ・実質2.4%


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