首相周辺の危機対応能力(中川秀直) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

首相周辺の危機対応能力(中川秀直)

官邸の危機対応能力はどうなっているのか。

19日の午前10時、北朝鮮国営メディアは「正午に特別放送」との予告を行なった。共産圏の国がこの種の告知をする場合には指導者の死去など重大な事態が発生する可能性が高いことは周知のことである。

報道によれば、内閣調査室は「正午からの特別放送」の内容について、94年の金日成主席死去以来であることを明示した資料を10時39分に官邸の首相秘書官室に送付している。この資料について、首相周辺の誰がどのような判断をして、12時に野田首相の新橋街頭演説出発につながったのか。新橋への出発を数分待つことを首相に進言する外交・安保スタッフや政務担当のスタッフは首相周辺にいないのか。それとも首相はそうした進言を振り切って新橋の増税演説に向かったのか。

北朝鮮における緊急事態発生という国家国民のリスクよりも、民主党国民運動委員会遊説局街頭演説会にける増税演説を優先する価値判断を誰かが行っているはずである。それは首相自身なのか。それとも首相周辺の誰かなのか。

12時の北朝鮮国営メディアの「特別放送」の内容を確認してから、新橋に向かうことができたはずである。首相はなぜ数分間、出発を遅らせて「特別放送」の内容を確認しなかったのか。

さらに、首相の移動中も、車内備え付けのテレビや秘書官の携帯電話等でNHKのニュースの内容を確認ができたはずである。車内ではどのような態勢だったのか。新橋での増税の演説草稿の最終確認をしていたのか。

首相の責務の第1は、国民の生命と財産を守ることである。官邸もそのような人的スタッフの体制になっているはずである。官邸が増税優先政治一色になっているのではないか。

今回の野田首相の初動ミスは、首相としての責務の第1である外交・安保を放棄し、消費増税に前のめりになっているのではないかという問題を露呈させた。

当然、国会で事実関係の究明を行なう必要がある。

(12月21日記)