増税と円高・デフレ容認は根が一つ(高橋洋一さん) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

増税と円高・デフレ容認は根が一つ(高橋洋一さん)

秘書です。

増税と円高・デフレ容認は根が一つ(高橋洋一さん)

増税派は円高・デフレ容認派であり、円高・デフレ容認派は増税派です。



超党派議員が開いたシンポジウムで
鳩山元総理がぶち上げた日銀法改正論
2011年12月1日 高橋洋一 [嘉悦大学教授] 俗論を撃つ
http://diamond.jp/articles/-/15116

消費税増税は年内の最大の話題だろう。年内に大綱をとりまとめるか、引き上げ時期・率は明記するかなどで民主党内、与野党間でも熱い議論がありそうだ。

 それに関係するのに、さっぱりマスコミに報道されない重要なこともある。

鳩山、安倍、渡辺が次々と日銀批判
 日銀法改正を目指す超党派議員らによるシンポジウムが24日午後、衆院第1 議員会館で開かれた。鳩山由紀夫元首相(民主党)、安倍晋三元首相(自民党)、渡辺喜美みんなの党代表という豪華メンバーがスピーチした。

 鳩山元首相は「欧州金融危機の余波が米国や中国、日本に及べば、さらなる円高・デフレが加速する可能性がある」とし、財務省は「デフレが続けば有利と思っている気配がある」と指摘し、増税路線を進める同省を批判した。

 また、面白かったのは首相時代のエピソードを披露したことだ。白川方明日銀総裁に対してデフレ脱却のためインフレ目標(ターゲット)導入を求めたが、「首を縦に振ってもらえなかった」と語った。その時、国家戦略大臣もいたことも明らかにし、「誰とかは言わないが」と、暗に菅直人元首相を批判しているようにもみえた。当時、鳩山氏に同調していたのは平野博文官房長官だったと言われる。今後のインフレ目標導入に期待し「日銀法改正もぜひ議論して欲しい」と強調した。

 鳩山氏がインフレ目標に関心があったとは意外だったようだ。この首相時代のエピソードは、民主党内でもはじめて聞いたという人が多かった。スピーチ後、鳩山元首相は会場にいた私を見つけると、声をかけてくれたのにはびっくりした。

 安倍元首相は「『物価の安定』にプラスして、日銀の使命に『雇用の最大化』を入れるべきだ」と主張した。さらに、首相時代に、為替を円安に持っていき、財政のプライマリーバランスの黒字化の一歩手前までいったと、今の野田政権のように円高を放置していることを批判した。

 渡辺代表は、国会の同意を得て、総裁ら日銀首脳を解任できる権限を内閣と財務相に与えるために、日銀法を改正するべきだとし、みんなの党はこれまで何度も日銀法改正案を出していると訴えた。

 中川秀直元自民党幹事長もシンポジウムに来て、日銀法改正の賛否で「議員仕分け」をするように、シンポ参加者に提唱していた。なぜ、このシンポジウムの話が重要かといえば、参加者は反増税派の核になるかもしれないのだ。これから年末にかけて消費税増税が大きな政治的論点になる。

増税と円高・デフレ容認は根が一つ

 もちろん増税の司令塔は財務省である。財務省は論理の整合性を重視する役所なので、増税を主張するために様々な観点を検討し、矛盾がないようにしている。このため、政治家が財務省の手のひらに乗ると人が変わったように、一見理路整然となる。ただ、あまりに整合性を求めるので、端から見れば奇妙なことが起こる。

 というわけで、増税派は円高・デフレ容認となる。増税、円高・デフレ容認は根が一つなのである。その理由は、例えば円安になると、名目GDPが上がり、税収が伸びる。それぞれ、為替と名目GDP、為替と税収との相関関係は7割程度もある(図1、図2)。私は関係を知っていたので、小泉・安倍政権時代で活用し、基本的には増税なしで済んだ。

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といっても、為替を何とかしたのは為替介入でなく、金融政策だ。円高は、円とドルの量を相対的にみて円が少なくドルが多くなり、少なくなった円の価値が高くなる現象だ。逆にいえば、円を刷れば簡単に円安になる。直接、日銀に指示する訳にいかないので、政権内での理解者である竹中平蔵経済財政担当相や中川秀直自民党幹事長らにお願いして、デフレ脱却という大義名分で日銀に何とか協力してもらうことにした。

 安倍総理からは株価を何とか上げられないかといわれた。これも為替を円安にすればいい(為替と名目GDPに高い相関がある以上、為替と株価にも相関がある)。各政権の平均為替レートを見ると、小泉116円、安倍119円、福田108円、ここまではなんとか合格だ。しかし、麻生97円、鳩山91円、菅83円、野田77円であり、これではベースになる経済がガタガタになり、経済運営失格である

 なお、デフレは、円とモノの量を相対的にみて円が少なくモノが多くなって、多くなったモノの価値が低下する現象だ。つまり、円が少ないことによって起こるので、デフレと円高はコインの裏表である。要するに、円安もデフレ脱却も、名目GDPが伸び、税収が増えるので、一般国民にとってはいいことだが、増税派にとっては都合が悪い

 これでわかるだろう。小泉・安倍政権のように政権内でマクロ経済に精通し、適切に日銀にプレッシャーをかけながら、経済運営できるような体制であれば、適度な円安になって税収も上がって増税という議論が出てこない。

 ところが、福田政権以降、特に民主党に政権交代してから、マクロ経済の司令塔不在で、どんどん円高になって日本経済はダメージを受け続けている。そうしたマクロ経済の素人内閣でも、日銀にしっかり目標を与えられる法体制であれば、こんな無様な円高にさらされることもない

 という訳で、日銀法改正は、日銀を適切にコントロールして、名目GDPを増加させるために有効な手段である。となると、税収も上がるので、増税派に対して強力な反論ができるのだ

増税よりも歳入庁の実現を

 今のマスコミは、現政権が増税指向になっているので、その提灯持ちで増税を支持しているところが多い。消費税増税であれば、新聞協会が軽減税率を要望しているように、新聞は軽減税率になる可能性は高く、それは業界にとってもプラスである。

 増税派は、円高・デフレ容認と同じといったが、実は、官僚擁護にも走りやすい。それは、政治家の発言からもわかる。

 安住財務相は25日の閣議後会見で、社会保障と税の一体改革に伴う消費税率引き上げに反対する議員に対して、「次の選挙がおっかないからなのか、それとも本当に別の理由なのか。それぞれの議員が問われることになる」と述べ、「純粋な政策論を語ってほしい」と反増税派を牽制した。

 純粋な政策論から言えば、税金では税率を上げる前に不公平の是正がセオリーだ。その観点からいえば、消費税増税に対抗する有力策は、国税庁と年金機構を合体させ歳入庁をつくるのがいい。国税庁で把握している法人数が年金機構で把握している法人数を80万件上回っていることから、社会保険料の徴収漏れが10兆円オーダーで予想されるので、歳入庁を創設すれば、この「消えた保険料」が徴収できる。

 さらに、国税庁にとっても年金機構の基礎年金番号を利用すると、数兆円オーダーの税徴収の向上があるだろう。これに消費税のインボイス方式を導入すれば、合計で20兆円近い増収が期待でき、消費税増税はいらない。歳入庁や消費税インボイスはいずれも世界では常識であり、先進国では日本だけが行っていない。

 しかし、歳入庁を実現しようとすると、財務省と厚労省から猛烈な反対を受ける。特に財務省は国税庁を死んでも手放さないはずだ。国税庁は形式的に別組織で、採用も財務省とは別途に独自を行っているが、幹部職員はほぼ財務省出身者が支配する財務省の完全な植民地だ。

 国税庁の持つ国家権力は財務省の最大の武器だ。これで誰でも黙らせることができる。歳入庁になると財務省の完全支配が崩れるおそれがあるから、財務省は手放さない。現に、民主党は政権交代前には歳入庁を主張していたが、財務省の反対にあって今やまったく音沙汰ない。

 こうした背景を知っていると、安住財務相は財務省のいいなりであることがよくわかる。財務省のイヤなことをせずに、国民に痛みをしわ寄せしているのだ。増税派には「官僚がおっかないのか?」と、問うてみたい。