第二回国家戦略会議の提出資料を読む | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

第二回国家戦略会議の提出資料を読む

秘書です。
注目の国家戦略会議の第二回目会合の資料が公表されています。


第2回 国家戦略会議
平成23年11月21日(月)17:00~17:50 総理大臣官邸4階大会議室
秘書です。

「政府・日銀一体となって円高対応・デフレ脱却に取り組む」?

円高対応というのは円高に順応すること?円安に戻す気があるんでしょうか?どうも円高「対応」という表現があやしいですね。

そしてデフレ脱却。いつまでにします?そして、日銀の役割は?



政府・日銀一体となって円高対応・デフレ脱却に取り組む=日本再生戦略・論点整理
2011年 11月 21日 18:48 JST
http://jp.reuters.com/article/marketsNews/idJPnT9E7LR04K20111121
 [東京 21日 ロイター] 政府は21日の国家戦略会議で、年内をめどに策定する予定の「日本再生の基本戦略」の論点整理をまとめた。復興需要が見込める今後2年間を「大きなチャンス」と位置付け、政府・日銀が一体となって円高対応やデフレ脱却に取り組む一方、欧州の財政危機で財政の持続性への関心が高まっているとして、日本再生を実現するには財政健全化への取り組みや自由貿易の推進が重要だとした。

 *この記事の詳細は後ほど送信します。新しい見出しに「UPDATE」と表示します。

→では、原文にあたってみましょう。

日本再生の基本戦略の基本的な考え方(論点整理)のイメージ
http://www.npu.go.jp/policy/policy04/pdf/20111121/siryo1.pdf

我が国は、世界的に大きな構造転換が進む中、成熟社会の新しい時代に応じ
た産業構造への転換が遅れ、20 年の長期にわたる停滞のもと、東日本大震災か
らの復興、原発事故と電力制約への対応、経済再生、財政健全化、そして円高
や空洞化をはじめ変化する国際環境への対応など、大きな課題に直面。
このような多くの課題に対し、政策の優先順位をしっかりつけて重点的な取
組を実施することが必要。まず、震災・原発事故からの復活を果たすとともに、
経済成長と財政健全化を両立する経済運営を実現し、経済の土台を立て直す。
その上で、成長戦略を実現するとともに、分厚い中間層を復活させ、経済社会
の持続可能性を確保。
また、現下の欧州財政危機により、各国財政の持続性への関心が高まってお
り、財政危機の伝播を予防しつつ日本再生を実現するためには、財政健全化へ
の取組みが一層重要。同時に、国際的な金融面での危機の広がりが貿易の収縮
や内向き志向につながらないよう、自由貿易の推進が極めて重要。
真に日本を再生することとは、日本人が「この国に生まれてよかった」と思
える「希望と誇りある日本」を取り戻すこと。多岐にわたる分野で、我が国が
切り拓いていくべき「新たなフロンティア(新たな可能性)」を提示するとと
もに中長期的に目指すべき方向性を示し、その開拓に向けた挑戦が活力ある
「希望と誇りある日本」を築き上げていくことが重要。

1.震災・原発事故からの復活

(1)東日本大震災からの復興
・ 被災地の発展が持続的なものになるとともに、被災地の復興が日本再生
の先駆例となるよう、新成長戦略を先取りして実施。

(2)エネルギー・環境政策
・ 福島原発事故に伴い、来夏までにエネルギー・環境政策の抜本的な見直
しを行う。

2.経済成長と財政健全化の両立

(1) 円高・デフレに対応したマクロ経済運営
・ 新成長戦略は、マクロ経済運営における最大の課題をデフレ克服と位置
づけ、名目成長率3%、実質成長率2%と、名目成長率をも目標とした唯
一の成長戦略。
・ 復興特需の増加が見込める今後2年間を大きなチャンスと位置づけ、政
府・日銀一体となって円高への対応・デフレ脱却に取り組み、復興特需か
ら民需へのバトンタッチを実現。
 


(2)社会保障・税一体改革の着実な実現
・ 社会保障制度が少子高齢化に十分対応せず、負担の伸びが給付の増大に
追いついていないことが、財政収支悪化の要因の一つ。番号制度を用いた
新しい社会保障システムの導入により、真に助けが要る人々に対して必要
な社会保障給付を重点化するとともに、世代間格差を是正するなど、社会
保障制度の質の向上、効率性の強化をはかる必要。
・ 欧州債務危機により、各国財政の信認への関心が高まっている。社会保
障費の安定的財源を確保し、制度への安心感・信頼感を高めるために、
社会保障・税一体改革に着実に取り組む。

3.確かな成長の実現(経済のフロンティアの開拓)

(1)新成長戦略の実行加速
・ 持続的な経済成長を達成するための方策は、すでに新成長戦略において
示されている。工程表に沿って施策を着実に推進するとともに、できる限
り実行を加速化し、実現を前倒ししていくことが重要。

(2)更なる成長力強化
・ 新成長戦略の実行加速に加え、東日本大震災からの復興、円高の進行で
より一層リスクが高まった経済の空洞化防止や欧州債務危機の影響への
備えなど、我が国の成長力を更に強化する必要。
・ 貿易立国として世界の成長力を取り込み、起業家精神(アントレプレナ
ーシップ)を喚起し、新産業を創出する等により、民間の活力の活性化を
通じた成長(ダイナミックな成長)を目指す。

4.分厚い中間層の復活(社会のフロンティアの開拓)

・ 日本再生には、経済成長とともに、社会が安定し、国民が成長を実感し、
将来に対する希望を持てる環境をつくることが重要で、成功へのインセン
ティブと失敗へのセーフティーネットが必要。
・ 社会の幅広い人々が成長の果実を享受できるような成長(インクルー
シブな成長)を通じて分厚い中間層の復活を目指す。
・ 全員参加型社会の実現を図るとともに、我が国経済を支える人材の育
成に努力。

5.新たなフロンティアと世界への成長・国際貢献モデルの提示

・ 日本再生を進めるためには、経済、社会のフロンティアを一層開拓す
るとともに、科学技術、教育(人材育成)、国際関係、政治や行政など多
岐にわたる分野にわたる「フロンティア(新たな可能性の開拓)」を切り
拓き、これを活用していくことが重要。
・ 医療、治水、防災等、我が国の優れたシステム・技術を海外に積極的
に提供することにより、世界における「人間の安全保障」の実現に貢献。
・ グローバル時代の歴史的転換期にあって、世界経済の構造転換や少子
高齢化社会への対応、地球温暖化に対応したエネルギー政策など、日本
の課題は世界が直面していく課題であり、我が国は新たな成長・国際貢
献のモデルを世界に提示していく。



→名目3%成長、実質%成長というのは増税派が大好きな上限成長率です。4%になると自然増収増で財政再建ができるので、増税論議が消えてしまう。だから増税派が許容できるマックスが名目3%成長なんですね。昔は「堅めの数字」といわれる控えめな数字だった3%成長が、いつのまにか、夢の数字になっちゃいました。それにしても物価上昇率が1%ということは、実は欧米の2%程度を物価の安定と考える「世界の常識」から考えると、まだ、デフレ脱却宣言ができるような状況ではありませんね。なんで、物価上昇率2%にしないのか?物価上昇率2%で実質成長率2%が続くと財政再建ができてしまうからですね。しかし、名目成長率4%成長は「悪魔の手法」といわれ、「インフレ依存はいけない」とわけのわからないレッテルがはられ、反成長ムードの中で、本当のゼロ成長経済になってしまった。ゼロ成長経済こそ、真の「弱肉強食社会」だということを理解しはじめたところです。成長でパイが増えなければ奪い合うしかないではないですか?

→1995年の阪神淡路大震災以後の行きすぎた円高と長期デフレのもとでの9兆円増税に対する反省なしに下記のことは実現できないでしょう。なぜ、あのときに特需から民需にいたらなかったのか?


「復興特需の増加が見込める今後2年間を大きなチャンスと位置づけ、政
府・日銀一体となって円高への対応・デフレ脱却に取り組み、復興特需か
ら民需へのバトンタッチを実現」

→本気でそう思っているなら、円高・デフレの中の増税なんて考えもつかないことでしょう。

→注目すべきは下記の枝野大臣提出資料です。枝野さんといえば、利上げ指向、そして成長諦め派と思っておりました。

報道によれば、枝野さんは、「『人口が減少する日本は、大きな経済成長はしない』というのが私の持論だが、それでよろしいか」と就任に条件を付けて、野田首相が「それで結構だ」と応じたそうです。

しかし、本日の大臣提出資料は、いつの間にか、成長指向に転向していたことがうかがえます。転向ではなく、成長指向の事務方がつくったものを官僚主導でそのまま提出しただけなのか?



資料2 枝野経済産業大臣提出資料

日本再生に向けた検討課題について
平成23年11月21日
経済産業大臣 枝野 幸男
http://www.npu.go.jp/policy/policy04/pdf/20111121/siryo2.pdf


現状:「やせ我慢」の経済(縮小均衡・じり貧シナリオの進行)


日本経済は、①円高による空洞化、②経常収支の赤字化等によるマクロ経済の行き詰まり、の2つのリスクに直面

○現状の円高水準が継続すると、素材型製造業も含め、サプライチェーン全体が急激に海外に移転するおそれ(「根こそぎ空洞化」)。
→将来円安になっても容易に国内に戻ってこない構造へ

○海外生産シフトのスピードが一気に加速すると、国内で新たな事業や産業が育つスピードが追いつかなくなる可能性(国内の自動車産業が空洞化した場合、サービス業による雇用吸収が追いつかず、60万人程度の雇用減少のおそれ)。

○空洞化が続けば2010年代半ばに貿易赤字構造に転落のおそれ。さらに、原発が当面再稼働できない場合、火力発電用の燃料輸入の増加で、来年にも貿易赤字になるおそれ。


「守り」の空洞化対策・適切なマクロ経済運営(円安局面転換までのしのぎ

当面は、円安局面転換までの間をしのぐため、「守り」の空洞化対策と、適切なマクロ経済運営が必要

「攻め」の空洞化対策~新産業分野の創出~

○「生産性に応じた賃金の実現 + 女性・高齢者の労働市場参入」 →ダブルインカムによる世帯全体の収入増、総報酬額の増大 →厚みのある「中間層世帯」の回復


(実行の方向性)

・年功賃金・雇用形態の柔軟化          → 雇用のミスマッチの解消
                         空洞化の防止

・制度改革による、介護・保育などへの民間参入 → 女性雇用など雇用の拡大
・ヘルスケアなどでの新サービスの提供       賃金水準の向上

→このような認識のもとで、なお、日銀の金融政策を容認して円高・デフレを放置し、増税を推進するのでしょうか?

円安局面までのしのぎということは円安局面を是としているとしか思えないのですが、大臣は本当にそう思っているのでしょうか?