「レッドバック」(赤いドル)のカーテンの中で生きる覚悟をもっている人はそれほど多くないはずですが | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

「レッドバック」(赤いドル)のカーテンの中で生きる覚悟をもっている人はそれほど多くないはずですが

秘書です。

先日のあるシンポジウムで、農協系のある方が、個人の意見としてTPPには反対だが日中韓FTAには賛成とおっしゃっていました。全てのTPP反対の人がこう考えているわけではないのでしょうが、とても重要な指摘だと思います。国際社会の現実では、TPPに反対することの現実的な選択はそれしかない可能性があるからです。

いま、TPPの潮流の他に、中国ーASEAN自由貿易協定をさらに拡大していくという潮流があるんですね。どうもこの潮流がTPPの潮流と激突している。日本がその2大潮流の衝突地点になりつつある?

日本が政権交代で内向きになっている間に、アジアでは2つの潮流の主導権争いのゲームが始まっていたようです。今から日本主導で自由貿易協定について何かの第3の提案を提唱する余力も構想力もないなかで、このゲームにどう対処するのか?


中国の思惑 日米“再接近”を警戒 「孤立戦略」に反発
2011.11.9 21:38 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/world/news/111109/chn11110921400005-n1.htm
 【上海=河崎真澄】TPP交渉への参加を打診されていない中国は、「アジア太平洋地域の主導権をがっちりと米国が握り、日米が再接近する契機になるのではないか」(中国外交筋)と警戒を強めている。

 中国は、ASEANと日中韓を加えたASEANプラス3の自由貿易協定(FTA)を主導したい考えで、米中が「日本」の参加をめぐって綱引きをする構図も見え隠れする

 同筋は「野田政権には沖縄の米軍基地問題で軋轢(あつれき)を生んだ対米関係をTPPで修復する狙いがある」とみて、日米の安全保障の観点からもTPPに注目していることを明らかにした。国内企業の保護や環境問題にも踏み込むTPPは参加のハードルが高く、「中国を孤立させる戦略だ」(同)との反発もある。

 一方、中国商務省は7日の会見で、「すべての交渉参加国が問題をクリアできるか注視している」とし、中国の将来的な参加の可能性に含みを残した。例外品目の扱いなどをめぐり、交渉が停滞することで、中国の参加余地も出てくるとの判断だ。TPPで日本経済が浮上すれば、相対的に経済力や対米関係が弱まるとの懸念も中国にはある

→中国とASEANとの自由貿易協定は、人民元の地域通貨化が課題として浮上するまでになっています。課題山積ということは、方向性については検討されているということで。この人民元を地域通貨としていく方向性の中に、日本も入っていく?

【中証視点】中国人民元のアセアン地域通貨化は課題山積
2011/10/24(月) サーチナ
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2011&d=1024&f=business_1024_069.shtml

→ベクトルとしては、ASEANは中華経済圏化しているということ?
こうした中、今回、東アジア首脳会議に欠席するロシアからみると、このゲームはどう見えるのか?


TPP交渉参加反対の声が高まる日本
2011年11月8日 ロシアの声 ナタリア カショ
http://japanese.ruvr.ru/2011/11/08/60040209.html
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への交渉参加問題が、今、日本を揺るがしている。
 野田首相はハワイでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)サミットで、日本がTPPのメンバー国になるかどうか、米国と討議する意向だ。 TPP参加については、米国政府への完全な接近に反対する人々や農業生産者そして野党ばかりでなく、与党民主党内でも反対の声が上がっている。 農業関係者は、もし参加すれば、現在存在する優遇措置や保護措置が無くなるのではないかと心配している。 日本の農家が生産する農産物、とりわけ米は、国により守られているため、TPP参加となれば、輸入物に比べ価格が高くなり市場での競争力を失ってしまう。

 環太平洋地域に自由貿易ゾーンを作る協定に加わるかどうかについて、日本国内では様々に意見が分かれており、野田内閣の支持率にも影響を与え、9月の発足当時に比べ7.5%も下がってしまった。

 環太平洋地域においてまず自由貿易ゾーンを創設したのは、シンガポール、ブルネイ、ニュージーランド、チリの4カ国で2006年の事だった。 その後、そうしたゾーンに関する交渉にマレーシア、オーストラリア、ペルー、ベトナムが参加した。しかし、プロジェクトは米国の傘の下に置かれ、すぐに、反中国的な意味合いを帯びるようになった

 ロシア科学アカデミー東洋学研究所日本調査センターのヴィクトル・パヴリャテンコ研究員も、そう指摘している―

 環太平洋地帯には、新たなものは既存勢力すべてにとっての挑戦者と見えるような経済上貿易上の組織がすでにある。米国にとってTPPは、崩れかけたバランスを取り戻し、この地域に対し増大しつつある中国の影響力と自分達の立場を釣り合わせるために必要なものだ。 中国もTPP加盟交渉に入ることも可能だが、それをしていない。」

  外面的には中国は、TPPに関心さえ示していないように見えるが、実際は違う。米国とTPPに参加する可能性のある国々の利益を衝突させようと試みている 中国商務省ノユイ・チャンフア補佐官は7日、TPPプロジェクトに対する米国の支援条件は「あまりに野心的過ぎる。成長中の市場を持つ新興国の利益を考慮していない」とコメントした。

 つまりTPPは、米国のルールに従ってこの地域で貿易を行うようにするという事なのではないか、というのが反対派・懐疑派の見方だ。つまり、米国に存在する輸出税や関税に自動的に移行するという事だ。米国では自国の農民やその他の生産者が手厚く守られており、それをベースに関税などが決められている事を考えれば、TPPは事実上、保護貿易を植えつける新しい形となる可能性がある。

 現在、環太平洋地帯における統合センターの役割を求めているのは、何と言ってもアセアンだ。パートナー諸国とのアセアンの特権的協議メカニズムが強化されつつある。中国、日本、韓国、インド、オーストリア、米国を含め、各国は、環太平洋地域の新しい自由貿易システムは、自分達の参加なしに作られつつあると見ている。 そうした事から、アセアンの影響力に代わるあるものを創り出すというシナリオもあり得る

→このようなゲームの中で、TPPに参加せよという主張。

水説:ベトナムに続け!=潮田道夫
 <sui-setsu>
11月2日 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/opinion/ushioda/news/20111102ddm003070070000c.html
 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に中国は参加していないが、中国こそがTPPの「隠れた主役」である。なぜなら、米国がTPPをいじりはじめた理由は、将来、これに中国を取り込むためであるからだ

 米国は「米国抜き」の経済圏がアジアで形成されるのを何としても阻む必要がある。経済上の利益だけでなく、安全保障上の利益も損ないかねないと考えている。

 TPPという高度に開放的で透明な自由貿易圏をつくり発展させる。そこに入らないと中国の利益を損ないかねないまでに拡大し、中国に自ら参加するよう促す。それがベストシナリオである

 中国もそれは承知だ。自分に都合のいい自由貿易圏づくりを急ぐ。東南アジア諸国連合(ASEAN)との自由貿易協定(ACFTA)が典型。昨年、本格始動した。結果は中国のひとり勝ち。ASEANは中華経済圏化している

 人民元での貿易決済が進み人民日報は「アジアでは日本円でなく人民元が第2のドルになった」と書いた。英エコノミスト紙は人民元を「レッドバック」(赤いドル)と評した。ドル紙幣は緑色だからグリーンバックと呼ばれることを踏まえてのことだ

 TPPは「米国の陰謀」などという人がいるが、あのしたたかなベトナムやマレーシアが陰謀にひっかかるか?

 ベトナムがTPP参加を決めたのは、TPPの圧力を利用して国内改革を進めようという思惑だろう。いまのままでは、中国の経済衛星国になりかねない。なぜなら中国の方が経済的魅力において勝っており、世界はベトナムより中国への投資を選ぶからだ

 ベトナムは官僚腐敗の一掃が急務だ。米国はベトナムに「国営企業の規律強化」を要求している。ベトナムにきつい要求に見えるがベトナム自身が欲していることだ。

 この要求は将来の中国参加をにらんだものと言われる。国家資金を背景にわがもの顔の中国国営企業。その勝手ができないようなTPPにしておこうというわけだ。中国が主役であるひとつの証拠。

 マレーシアのTPP参加もベトナムと同断だ。魅力を高めないと中国にのみ込まれるマレー人優遇政策はもう役割を終えた。ただ政治的に廃止は難しい。TPPを利用して前進するハラだろう。

 日本もまた、TPPを自己改造の契機、触媒ととらえるのがよい。強化すべきは農業だけではない。オリンパスのごたごた、大王製紙の不祥事に見るごとく、日本企業は相当「ヘン」になっている。

 ベトナム、マレーシアに続こう。(専門編集委員)

→中国の衛星国になりかねない、「レッドバック」(赤いドル)のカーテンの中で生きていくのはいやだ、という危機感。いまの日本にはまだ現実のものではない。

China’s currency
Redback and forth
The yuan is flowing beyond China’s borders—and back again

Aug 20th 2011 | HONG KONG | from the print edition
http://www.economist.com/node/21526380

→日常生活でいえば、人民元(赤いドル)が町中に流通するような感じは、かつて明銭が日本国内で、アジア各国で流通していたわけですから、アジアの歴史伝統になじまないわけではない。

→TPP反対という人も、「レッドバック」(赤いドル)のカーテンの中で生きていく覚悟のある人はそれほど多くはないと思いますが、ゲームの展開次第ではそうなるかもしれません。TPPでも中国主導のアジア経済圏でもない第3の道とは何でしょう?誰が賛成するのでしょう?


加速する域内経済連携 12日からAPEC首脳会議 日本、出遅れ感否めず TPP参加表明 米大統領選に配慮も
2011年11月7日 西日本新聞

http://www.nishinippon.co.jp/wordbox/word/3409/8541

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)の首脳会議が12、13の両日、米ハワイ・ホノルルで開かれる。昨年の「横浜APEC」では、域内21カ国・地域のうち米国など9カ国が交渉を進める環太平洋連携協定(TPP)などの地域的取り組みを「さらに発展させる」ことで合意。米国は1年間の交渉を経て首脳間での「TPP大枠合意」を目指す。日本は野田佳彦首相の出発前にTPP交渉参加問題を決着させる方針だが、陣取りゲームの様相の地域経済連携での出遅れ感は否めず、会議での存在感発揮も見通せない。
 
 「緩やかな政府間の地域協力」が原則のAPECが、より具体的な地域経済連携へと踏み出したのは、2006年に米国が「アジア太平洋自由貿易圏」(FTAAP)構想を打ち出してからだ。
 
 米国は成長著しいアジアの発展を国内経済に取り込むため、10年からシンガポールなど4カ国の経済連携協定を基にTPP交渉を開始。交渉の主導権を握り、横浜APECで、TPPはFTAAPへの道筋の一つと位置付けることに成功した。
 
 存在感を増す中国も、TPP進展を指をくわえて見ているわけではない。横浜APECでは、中国が提唱する「ASEANプラス3」の枠組みもFTAAPへの道筋に盛り込まれた。アジア太平洋地域の米中の覇権争いは、APECを舞台に激しさを増している。 
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 こうした中で日本がホノルルAPECでのTPP交渉参加表明を目指すのは、来年に大統領選を控えるオバマ米大統領への配慮が大きい。鳩山由紀夫首相時代に米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題などで米国とぎくしゃくした民主党政権には「日本が入らないと、(米国との関係で)いろんな議論が起こり得る」(岡田克也元外相)との危機感がある。
 
 自由貿易協定(FTA)締結競争で韓国に水をあけられている事情もある。韓国政府は、締結相手国の国内総生産(GDP)の合計が全世界に占める割合を「経済領土」と称し、米韓FTA発効で60・9%に拡大すると算定する。これに対し日本は17・1%。「日本は孤立する」との産業界の訴えに、TPPで劣勢を盛り返したいとの日本政府の思惑ものぞく。
 
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 日本ではTPPに関心が向きがちだが、ホノルルAPEC本体の議題は別だ。議長国の米国は「地域経済統合の強化と貿易の拡大」「グリーン成長の促進」などを優先課題に提起。具体的には特許保護の原則づくりや、太陽光発電など環境関連物品の貿易障壁除去などでの前進を目指す。
 
 議題によっては中国をはじめ新興国や途上国の抵抗が予想され、世界の二大国が権益拡大でしのぎを削る常夏の島でのAPEC首脳会議。4年連続で新顔の出席となる日本の野田首相に大きな役割は期待されず「顔見世興行」に終わる可能性もある。
 
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 ●米国 中国 激しさ増す 陣取り合戦
 
 ▼対中包囲網 構築狙う
 
 米国にとって、環太平洋連携協定(TPP)は国内産業の発展だけでなく、アジア太平洋地域で台頭する中国をけん制するため、経済分野でも対中包囲網を築く安全保障的な意味も併せ持つ。
 
 オバマ大統領は就任以来、米国を「太平洋国家」と繰り返し強調し、軍事・経済両面でアジア太平洋地域への関与を強めている。経済成長が続くアジアで「米国抜き」のまま中国が主導権を握ることを強く警戒するからだ。同盟国で世界3位の経済大国である日本に、TPP参加を求めるのは当然といえる。
 
 国内的には、9%台の高い失業率が来年11月の大統領選での再選戦略に影を落としており、雇用創出は最優先課題。巨額の財政赤字を抱え財政出動が限られる中、通商政策しか有効な手がない事情もある。
 
 オバマ氏は昨年の一般教書演説で「今後5年間で輸出を倍増させ、200万人の雇用を創出する」と表明しており、大統領選前の来年夏までにTPP交渉で合意し、再選に向けた「得点」にしたい考えだ。
 
 ただ、TPPを担当するカーク通商代表は先月末、日本の参加について「参加判断を待つために現在の作業を遅らせることはできない」とけん制。米政府内には、日本の参加による協議の遅れを懸念する声も多い。
 
 米自動車業界団体が日本市場の閉鎖性を批判し、現在の9カ国が合意した内容に日本が従うよう求めるなど、各分野で「米国に有利なルール」を要求するのも確実だ。
 
 ▼アジア圏の結束訴え
 
 国内総生産(GDP)で世界第2の経済大国となった中国からは、今回も胡錦濤国家主席が出席の見通し。注目テーマの環太平洋連携協定(TPP)に対して中国は警戒感を強めており、TPPを主導する米国との駆け引きが予想される。
 
 アジア地域に対する米国の関与を嫌う中国は、一貫して東アジアの自由貿易圏構築を提唱。昨年1月に本格発効した東南アジア諸国連合(ASEAN)との自由貿易協定(FTA)に続き、今後の目標として日韓を加えた「ASEANプラス3」の自由貿易の枠組みを主張している
 
 アジアで主導権を発揮したい中国にとって「中国抜き」のTPPは看過できない問題このため、参加を検討中の日本にも「TPP参加のメリットはない」といった否定的メッセージを発信している。アジアの主要国に対して、中国がどのような働き掛けをするかも注目される

→野田首相がTPP参加表明なら、中国とどのようにつきあっていくのかをしっかりその戦略を表明してもらう必要がありますね。一方、そしてTPP反対派は「レッドバック」のカーテンの中で生きていくのか、TPPでも「レッドバック」でもない別の道があるのか、あるならその構想を表明するときでは?

→日本がまだ鳩山政権のころ、中国とASEANの自由貿易協定が始動し、いまや人民元の地域通貨化が議論されるところまできているわけです。

中国、ASEANのFTA発効 19億人の自由貿易圏始動
2010/01/01 09:11 共同通信
http://www.47news.jp/CN/201001/CN2010010101000070.html
【広州共同】中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)の自由貿易協定(FTA)が1日、本格的に発効した。両国・地域間で貿易される品目の大半について関税が撤廃され、人口規模で世界最大の約19億人の自由貿易圏が生まれた。

 中国は既にASEANとの間での人民元を使った貿易決済を試験的に解禁している。FTAにより両国・地域間での貿易・投資が活発化すれば、通貨の国際化を促すなど、中国の周辺諸国の経済への影響力がさらに拡大しそうだ。

 関税が撤廃されるのはタイ、インドネシアなどASEANに先に加盟した6カ国と中国の間で貿易される品目で、対象は全貿易品目の約9割。ベトナムなど後発加盟の4カ国は段階的に関税を下げ2015年にゼロ関税となる。

 中国―ASEAN間のFTA発効とともに、ASEAN先行加盟の6カ国間の関税も1日、ほぼすべての品目で撤廃された。