「今の日本では一度レースを外れると復活できない。中高年だと落ちるところまで落ちてしまう」 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

「今の日本では一度レースを外れると復活できない。中高年だと落ちるところまで落ちてしまう」

秘書です。

今朝の読売新聞1面の企画記事「急増生活保護①」 受給200万人働き盛りも 自立に結び付かず

2009年から生活保護受給者になった56歳の人の言葉。

「今の日本では一度レースを外れると復活できない。中高年だと落ちるところまで落ちてしまう」

終身雇用制は、経済成長の人手不足時代にのみ機能する制度。存立基盤は成長経済なのに「成長はいやだというから存立基盤がもはやなく、自動車産業すら日本での操業が危ぶまれる実力不相応の円高で、最後の追い打ちをかけている。

95年阪神大震災以後の行きすぎた円高と長期デフレを放置する中での増税政策により、終身雇用制度の存続条件が脅かされたのですが、若者の非正規雇用化によりなんとか中高年男子の終身雇用を守ってきた。



非正規の職員・従業員の割合
(単位:%)

1995年 2月      20.9         
1996年 2月      21.5         
1997年 2月      23.2         
1998年 2月      23.6         
1999年 2月      24.9         
2000年 2月      26.0   
2001年 2月      27.2   
2002年1-3月平均 28.7
2003年1-3月平均  30.3
2004年1-3月平均   31.5
2005年1-3月平均   32.3
2006年1-3月平均   33.2
2007年1-3月平均   33.7
2008年1-3月平均  34.0
2009年1-3月平均  34.0
2010年1-3月平均 33.7

出典)総務省(2010)『労働力調査』


一度終身雇用から外れた中高年男子が戻ってこれないのは、色々な理由があるでしょうが、構造的には、終身雇用の中の中高年男子を守るため。だから怖くて外に出れない。中にいる人も、不安の中にいる。

小泉政権下の景気拡大により、2005年から2007年にかけて正規雇用者数が回復した。



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注)数値は各年の平均
出典)総務省『労働力調査』長期時系列データより筆者作成.

正規雇用を増やしたいなら経済を成長軌道にのせるしかないのが明らかだが、「小泉・竹中路線が雇用を崩壊させた」という事実に基づかない政治的プロパガンダのために、小泉政権末期に正規雇用は増えていたという事実は、小泉批判勢力からは「不都合な真実」として黙殺され、小泉・竹中路線の否定を唯一のアイデンティティとする民主党政権は正しい政策を選択できない。

民主党政権ができた背景にある「成長の恩恵がこない、だから成長はいらない」の大合唱の原因は、懐に反映する名目成長率が低かったからで、それは日銀のデフレ放置政策に大きな原因があり、日銀の2006年、2007年のフォワードルッキングな早すぎる量的緩和の中止により、実感できない景気拡大はとどめをさされ、2008年2月から景気はくだりざか。そこにリーマンショックが追い打ちをかける。

2009年から働きによる収入を原因とする生活保護開始は急増していました。


保護開始の主な理由別世帯数(各年9月) 
(単位:人)

年   総数(前年同月比)   傷病による   働きによる収入   貯金等の減少・喪失の減少・喪失       

1998  13,685( 2,380) 8,155 2,246 1,109
1999  14,957( 1,272)  8,042 2,671 1,215
2000  14,681(▲ 276)  6,347  2,878  1,500
2001  14,757(  76)  6,265  2,959  1,594
2002  16,894( 2,137)   6,905  3,747  2,065
2003  19,440( 2,546)  7,498  3,966  2,464
2004  17,050(▲2,390)  6,833  3,484  2,269  
2005  15,662(▲1,388)  6,704  3,052  2,323
2006  15,348(▲ 314)  6,595  2,808  2,526
2007  13,885(▲1,463)  5,981  2,534  2,275
2008  16,310( 2,425)  6,838  3,217  2,842
2009  25,227( 8,917)  7,617  7,970  5,070

出典)厚生労働省(2010)『平成21年度福祉行政報告例』、厚生労働省(2005)『平成16年度社会福祉行政業務報告(福祉行政報告例)』、厚生労働省(2002) 『平成13年度社会福祉行政業務報告』より筆者作成)

そして、2009年の反成長主義、円高主義の民主党が政権をとり、2011年東日本大震災後に再び行きすぎた円高と増税政策により、中高年男子の終身雇用も崩壊に向かおうとしている。

再び、今朝の読売新聞の企画記事「急増生活保護①」 受給200万人働き盛りも 自立に結び付かず
の続きの39面へ。


「政府主導の派遣村の存在は、生活保護の受給現場に大きな影響を与えた。都区部の生活保護担当者は「派遣村以降、申請者側の心理的なハードルが下がった」と言い、別の担当者も「あれから生活保護を巡る風景が変った。十分働けそうな人が申請に訪れても、断りにくくなった」と打ち明ける。」

「生活保護制度の詳しい鈴木亘・学習院大学教授(社会保障論)は「派遣村の時は、養ってくれる親族の有無などの調査が短期で済まされ、働く能力がある人も受給した。以降、これが各自治体で前例となり、申請増に歯止めがきかなくなったのではないいか」と指摘した。」

民主党政権は格差を是正するための政権だったはずだが、2010年10月の菅首相の所信表明演説以来、所信表明・施政方針演説から格差是正の言葉が消えていく。そのことを格差是正論者は声をあげて批判しないで沈黙を保つ。

さて、中間層を分厚くするといいながら、行きすぎた円高と長期デフレのもとの増税路線という95年阪神大震災以後、終身雇用制度崩壊の引き金を引いた路線を2011年東日本大震災以後繰り返すことで終身雇用制度に最後の一撃を加えようとしているようにしかみえない野田政権。

反成長・デフレ容認・増税路線の結果残るのは、増税をやったぜという霞が関・永田町・大手町のインナーサークルのそう快感と栄誉、公務員天国温存、生活保護急増、生活保護急増による地方財政の崩壊以外、何があるのか?

これが中間層の分厚社会なのか?