鳩山政権91円、菅政権83円、野田政権77円と、円を刷らない政権はどんどん円高に(高橋洋一氏)
秘書です。
今ちょうど、1ドル=78円。
さて、為替介入効果は?そして、為替介入の失敗による財政悪化の効果は?
10兆円借金して必敗の介入するぐらいなら、10兆円を日銀に国債引き受けさせて東北を復興させたほうが、どう考えてもよかったように思いますが。
為替介入効果が長続きしない理由
日米マネー量の相対比が円ドルレートを左右する
俗論を撃つ 高橋洋一氏
http://diamond.jp/articles/-/14717
10月31日に安住淳財務相は円高阻止のための為替介入を実施した。新聞では10兆円とも報じられている。しかし、その効果はいつまで持つだろうか。日本企業にとって一息付けるところまでいかないと思う。
金融政策をうまく使えば
為替をうまく動かせる
為替介入は、財務省が外債を購入することだが、その資金調達のために政府短期証券が発行される。もし10兆円の介入なら、その分国の借金が増えたわけだ。そこで、円高に戻ると為替介入でつぎ込んだお金には為替差損がでて、国民負担になる。さらに、為替介入では国の借金が増えるということで、長く続けられないという問題が出てくる。
また、変動相場制を採用している国は、建前として為替介入ができない。
それでは、変動相場制の先進国では為替は自由にしているかというと、建前はそうであるが、国内の金融政策を使って、事実上コントロールしているのだ。
それは、「国際金融のトリレンマ」からも説明できる。「国際金融のトリレンマ」とは、固定為替相場、金融政策の自由度、自由な資本移動の全部を同時に達成することはできないということだ。一般的に、今の国際経済では自由な資本移動が欠かせないので、固定為替相場、金融政策の自由度は二者択一ということになる。固定相場制を維持するために介入すると、自由な金融政策がとれないというわけだ。
例えば、不況で金利を下げたいのに、自国通貨安の圧力が働いていると金利を下げることができない。資金が海外に出て行って通貨安を加速するからだ。ただし、それは、逆に言えば、為替の動きと金融政策が一体になっているということを意味する。そうであるなら、金融政策をうまく使えば、為替をうまく動かせるのだ。
例えば、円高とデフレは表裏一体の減少である。円の量とドルの量を相対的に比較して、円高というのは、円の量が相対的に少なくなって希少価値が上がっている状態だ。
円の量とモノの量を比べると、円の量が相対的に少ないとモノの量は相対的に多くなり、モノの希少価値はなくなり、その結果、モノの値段は安くなるのがデフレである。
円とドルのマネーの量が
為替レートを決めている
為替の関係では、こうした話は国際金融のマネタリーアプローチとして知られている。これは、8月11日の本コラム「米債務問題が解決してもなぜ円は強いのか 円高・株安の責任は政府・日銀の怠慢にあり」を参照してもらいたい。
マネタリーアプローチは、国際金融の中で信頼性が高く、ジョージ・ソロスらの投資家も使っているものだ。なお、若き日の白川方明日銀総裁もこの理論を日本に紹介した一人だが、最近は「歌を忘れたカナリア」(浜田宏一エール教授)になっている。
今回は、1970年から40年間以上の歴史をみよう(グラフ参照)。最高値を付けたあとは少しリバウンドすることもありえるが、少し長いスパンで為替を考えるのにも歴史は役にたつ。
グラフで分かるように一部の期間を除いて、円ドルレートは、だいたい日本の円の総額と米国のドルの総額の比率(円ドル比率)になっている。円ドルレートは、日米の通貨の交換比率であるが、それぞれの総量の比になっているとは、何と単純・明快か。
ちなみに、円ドルレートと円ドル比率の相関係数は、1990年以降、2000年以降、2005年以降、2007年以降、それぞれ0.67、0.77、0.84、0.91とかなり高い。
やや外れている一部の期間とは、(1)プラザ合意(1985.9)の前、(2)日本の量的緩和(2001年3月~2006年3月)、(3)米国の量的緩和(2008.3~)である。
(2)と(3)は、ちょっと円ドルレートが円ドル比率から乖離している。しかし、量的緩和して急に円ドル比率を変えても、すぐには円ドルレートが修正されない。時間をかけて、円ドル比率に収斂していくのだ。
日本は2006年3月に量的緩和をやめてしまったので、収斂しきれずに、その後の日本の引き締めになって、円高に向かっている。また、現下の米国の量的緩和がこのまま続くと、相当な円高圧力が継続する。
(1)については、プラザ合意で1ドル240円くらいから1ドル130円への調整が2年間くらいで行われているが、その前はいわゆるダーティフロートという管理された「変動相場制」の時代だった。見方を変えると、円ドル比率から計算される「理論値」である1ドル130~150円と比較して、1ドル200~250円くらいに円安誘導していたわけだ。
ニクソンショック(1971年8月)以前は1ドル360円だから、かなり円安に設定されていた。そうした円安が輸出競争力を高め、日本の高度成長の原動力になっていたと私は思っている。
こうした見方は、日本の技術力や官僚主導の産業政策が高度成長の要因という常識とは異なる。しかし、海外競争においては価格が重要な要素であるのは否定できず、さらに、技術が90年代以降、急速に劣化したというのも、のなかなか考えにくい。自国通貨安誘導で経済成長というのは、しばしば他国でも見られる形態であり、日本の高度経済成長とその後の経済停滞をよく説明しているのではないか。
そもそも、「官僚たちの夏」が美化しているような官僚主導の産業政策は、最近の研究では間違いばかりであることが明らかになってきており、あれだけ足を引っ張られても、よく日本経済が成長したモノだと思う。その原因は、官僚たちの失敗を補って余りある円安だった。
今の民主党に欠けているのは
正しい政策の理解と日銀との意思疎通
こうした理論や実績から導かれる正しい円高対策は、円を刷って増やすことだ。
ちなみに、小泉政権では、(2)の量的緩和して、円を増やしたので、その結果、平均円ドルレートは116円だった。
具体的には、2004年に行われた「溝口・テーラー介入」といわれるものだ。ここで、一般的に「介入」と名付けされているところに、財務省のメンツがある。実は、国債(為券)を発行して外貨債を購入する介入では効果がなかった。当時、量的緩和が行われていたので、財務省が30兆円以上も国債(為券)を発行すると金利が上昇するので、日銀が国債(為券)の半分以上を買い取り、その結果マネタリーベースが増えて、円安になっただけだ。
その後、安倍政権119円。その後円高になって、福田政権108円、麻生政権97円、鳩山政権91円、菅政権83円、野田政権77円と、円を刷らない政権はどんどん円高になっていった。
今でも、円を増やすことはできる。もちろん円を増やすのは(政府紙幣を除くと)日銀の仕事だ。小泉政権のときには、経済財政諮問会議が毎月2~3回あったので、総理と日銀総裁が話し合う機会は多かった。竹中平蔵経済財政担当相もしばしば福井敏彦日銀総裁とよく意見交換をしていた。今の民主党に欠けているのは、正しい政策の理解と日銀との意思疎通だ。
一番簡単な方法は、日銀が国債を引き受ける「日銀引受」。これを民主党政権は禁じ手というが、4月21日の本コラムで指摘したように毎年やっていることだ。小泉政権のとき23兆円の日銀引受をやって、円高ストップに貢献した。今年度予算では、日銀引受枠がまだ18兆円余っているので、それを使えば、増税なしで復興対策にもなり、円高・デフレも止められる一石三鳥の策だ。もし、そうすれば、4~10円程度の円安効果があるだろう。
このまま円高が進むと何が起こるのか。輸出企業は採算がとれなくなり、海外進出できるところは生産拠点を海外に移していくだろう。それは国内の雇用機会が奪われるだけでなく、技術が海外に逃げていく。ある一流電機メーカーの人から聞いた話だが、技術者が海外メーカーに根こそぎ持って行かれると嘆いていた。国内メーカーの技術者も現地生産で技術指導しているうちに、海外メーカーから高額給与で誘われたら、なびいてもやむを得まい。
海外拠点を持てない中小企業や大手メーカーの下請けはどうなるかといえば、コストカットで給与の減少になる。そのうち企業閉鎖となって、国内雇用も失われる。日本の富は一部の国際競争力のある企業によって多くもたらされているので、そうしたエクセレントカンパニーが日本から脱出すると痛い。そのうちに、国内消費が落ち込み、長期経済停滞になるだろう。経済がダメになるわけだから、当然経済の一部である財政は苦しくなる。
野田政権(財務省)がここまで円高を進行させたのは、円高にして意味のない為替介入をして、国の借金を増やし、増税を言いたいのか、と穿った見方をしてしまいそうだ。
今ちょうど、1ドル=78円。
さて、為替介入効果は?そして、為替介入の失敗による財政悪化の効果は?
10兆円借金して必敗の介入するぐらいなら、10兆円を日銀に国債引き受けさせて東北を復興させたほうが、どう考えてもよかったように思いますが。
為替介入効果が長続きしない理由
日米マネー量の相対比が円ドルレートを左右する
俗論を撃つ 高橋洋一氏
http://diamond.jp/articles/-/14717
10月31日に安住淳財務相は円高阻止のための為替介入を実施した。新聞では10兆円とも報じられている。しかし、その効果はいつまで持つだろうか。日本企業にとって一息付けるところまでいかないと思う。
金融政策をうまく使えば
為替をうまく動かせる
為替介入は、財務省が外債を購入することだが、その資金調達のために政府短期証券が発行される。もし10兆円の介入なら、その分国の借金が増えたわけだ。そこで、円高に戻ると為替介入でつぎ込んだお金には為替差損がでて、国民負担になる。さらに、為替介入では国の借金が増えるということで、長く続けられないという問題が出てくる。
また、変動相場制を採用している国は、建前として為替介入ができない。
それでは、変動相場制の先進国では為替は自由にしているかというと、建前はそうであるが、国内の金融政策を使って、事実上コントロールしているのだ。
それは、「国際金融のトリレンマ」からも説明できる。「国際金融のトリレンマ」とは、固定為替相場、金融政策の自由度、自由な資本移動の全部を同時に達成することはできないということだ。一般的に、今の国際経済では自由な資本移動が欠かせないので、固定為替相場、金融政策の自由度は二者択一ということになる。固定相場制を維持するために介入すると、自由な金融政策がとれないというわけだ。
例えば、不況で金利を下げたいのに、自国通貨安の圧力が働いていると金利を下げることができない。資金が海外に出て行って通貨安を加速するからだ。ただし、それは、逆に言えば、為替の動きと金融政策が一体になっているということを意味する。そうであるなら、金融政策をうまく使えば、為替をうまく動かせるのだ。
例えば、円高とデフレは表裏一体の減少である。円の量とドルの量を相対的に比較して、円高というのは、円の量が相対的に少なくなって希少価値が上がっている状態だ。
円の量とモノの量を比べると、円の量が相対的に少ないとモノの量は相対的に多くなり、モノの希少価値はなくなり、その結果、モノの値段は安くなるのがデフレである。
円とドルのマネーの量が
為替レートを決めている
為替の関係では、こうした話は国際金融のマネタリーアプローチとして知られている。これは、8月11日の本コラム「米債務問題が解決してもなぜ円は強いのか 円高・株安の責任は政府・日銀の怠慢にあり」を参照してもらいたい。
マネタリーアプローチは、国際金融の中で信頼性が高く、ジョージ・ソロスらの投資家も使っているものだ。なお、若き日の白川方明日銀総裁もこの理論を日本に紹介した一人だが、最近は「歌を忘れたカナリア」(浜田宏一エール教授)になっている。
今回は、1970年から40年間以上の歴史をみよう(グラフ参照)。最高値を付けたあとは少しリバウンドすることもありえるが、少し長いスパンで為替を考えるのにも歴史は役にたつ。
グラフで分かるように一部の期間を除いて、円ドルレートは、だいたい日本の円の総額と米国のドルの総額の比率(円ドル比率)になっている。円ドルレートは、日米の通貨の交換比率であるが、それぞれの総量の比になっているとは、何と単純・明快か。
ちなみに、円ドルレートと円ドル比率の相関係数は、1990年以降、2000年以降、2005年以降、2007年以降、それぞれ0.67、0.77、0.84、0.91とかなり高い。
やや外れている一部の期間とは、(1)プラザ合意(1985.9)の前、(2)日本の量的緩和(2001年3月~2006年3月)、(3)米国の量的緩和(2008.3~)である。
(2)と(3)は、ちょっと円ドルレートが円ドル比率から乖離している。しかし、量的緩和して急に円ドル比率を変えても、すぐには円ドルレートが修正されない。時間をかけて、円ドル比率に収斂していくのだ。
日本は2006年3月に量的緩和をやめてしまったので、収斂しきれずに、その後の日本の引き締めになって、円高に向かっている。また、現下の米国の量的緩和がこのまま続くと、相当な円高圧力が継続する。
(1)については、プラザ合意で1ドル240円くらいから1ドル130円への調整が2年間くらいで行われているが、その前はいわゆるダーティフロートという管理された「変動相場制」の時代だった。見方を変えると、円ドル比率から計算される「理論値」である1ドル130~150円と比較して、1ドル200~250円くらいに円安誘導していたわけだ。
ニクソンショック(1971年8月)以前は1ドル360円だから、かなり円安に設定されていた。そうした円安が輸出競争力を高め、日本の高度成長の原動力になっていたと私は思っている。
こうした見方は、日本の技術力や官僚主導の産業政策が高度成長の要因という常識とは異なる。しかし、海外競争においては価格が重要な要素であるのは否定できず、さらに、技術が90年代以降、急速に劣化したというのも、のなかなか考えにくい。自国通貨安誘導で経済成長というのは、しばしば他国でも見られる形態であり、日本の高度経済成長とその後の経済停滞をよく説明しているのではないか。
そもそも、「官僚たちの夏」が美化しているような官僚主導の産業政策は、最近の研究では間違いばかりであることが明らかになってきており、あれだけ足を引っ張られても、よく日本経済が成長したモノだと思う。その原因は、官僚たちの失敗を補って余りある円安だった。
今の民主党に欠けているのは
正しい政策の理解と日銀との意思疎通
こうした理論や実績から導かれる正しい円高対策は、円を刷って増やすことだ。
ちなみに、小泉政権では、(2)の量的緩和して、円を増やしたので、その結果、平均円ドルレートは116円だった。
具体的には、2004年に行われた「溝口・テーラー介入」といわれるものだ。ここで、一般的に「介入」と名付けされているところに、財務省のメンツがある。実は、国債(為券)を発行して外貨債を購入する介入では効果がなかった。当時、量的緩和が行われていたので、財務省が30兆円以上も国債(為券)を発行すると金利が上昇するので、日銀が国債(為券)の半分以上を買い取り、その結果マネタリーベースが増えて、円安になっただけだ。
その後、安倍政権119円。その後円高になって、福田政権108円、麻生政権97円、鳩山政権91円、菅政権83円、野田政権77円と、円を刷らない政権はどんどん円高になっていった。
今でも、円を増やすことはできる。もちろん円を増やすのは(政府紙幣を除くと)日銀の仕事だ。小泉政権のときには、経済財政諮問会議が毎月2~3回あったので、総理と日銀総裁が話し合う機会は多かった。竹中平蔵経済財政担当相もしばしば福井敏彦日銀総裁とよく意見交換をしていた。今の民主党に欠けているのは、正しい政策の理解と日銀との意思疎通だ。
一番簡単な方法は、日銀が国債を引き受ける「日銀引受」。これを民主党政権は禁じ手というが、4月21日の本コラムで指摘したように毎年やっていることだ。小泉政権のとき23兆円の日銀引受をやって、円高ストップに貢献した。今年度予算では、日銀引受枠がまだ18兆円余っているので、それを使えば、増税なしで復興対策にもなり、円高・デフレも止められる一石三鳥の策だ。もし、そうすれば、4~10円程度の円安効果があるだろう。
このまま円高が進むと何が起こるのか。輸出企業は採算がとれなくなり、海外進出できるところは生産拠点を海外に移していくだろう。それは国内の雇用機会が奪われるだけでなく、技術が海外に逃げていく。ある一流電機メーカーの人から聞いた話だが、技術者が海外メーカーに根こそぎ持って行かれると嘆いていた。国内メーカーの技術者も現地生産で技術指導しているうちに、海外メーカーから高額給与で誘われたら、なびいてもやむを得まい。
海外拠点を持てない中小企業や大手メーカーの下請けはどうなるかといえば、コストカットで給与の減少になる。そのうち企業閉鎖となって、国内雇用も失われる。日本の富は一部の国際競争力のある企業によって多くもたらされているので、そうしたエクセレントカンパニーが日本から脱出すると痛い。そのうちに、国内消費が落ち込み、長期経済停滞になるだろう。経済がダメになるわけだから、当然経済の一部である財政は苦しくなる。
野田政権(財務省)がここまで円高を進行させたのは、円高にして意味のない為替介入をして、国の借金を増やし、増税を言いたいのか、と穿った見方をしてしまいそうだ。