【資料】「貿易自由化と農林水産業振興の両立に関する研究会」中間報告 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

【資料】「貿易自由化と農林水産業振興の両立に関する研究会」中間報告

【お知らせ】本日、中川秀直は同志議員のみなさんとともに「貿易自由化と農林水産業振興の両立に関する研究会」中間報告の記者発表いたしました。


(参考1)「貿易自由化と農林水産業振興の両立に関する研究会」中間報告記者発表 (動画)
http://www.youtube.com/user/shuchoku?gl=JP&hl=ja

(参考2) 「貿易自由化と農林水産業振興の両立に関する研究会」中間報告

はじめに

・貿易自由化の論議は、従来から、二国間のEPAであれ、多国間のWTOであれ、いかに農業を守るかを焦点として行われてきた。その中で、関係者の努力により、少しずつ農業部門の貿易自由化が進み農業政策も変革されてきた。しかしながら、そのスピードは国際社会の変化の速さと比し、遅かった。
・また、自由化論議は「貿易自由化か農業保護か」という二者択一の形で展開されることが多かった。今回もTPP交渉参加をめぐって、同様な形で議論が行われている。しかし、農産物・食料消費を通じて農林水産業を支えているのは他産業で働いている人々であり、農林水産業と他産業は互いに知恵を出し合うことで共に成長し得ることも忘れてはならない。私たちは、農林水産業を振興し、同時に貿易自由化のメリットを享受する途があると考えている。これは、二者択一ではなく、ウィンウィンの関係にある。ウィンウィンの関係を作ることが、全体としての国民的利益である。その観点から、何をすべきかについて、研究会を立ち上げ勉強をした。足りない点が多々あると考える。有識者のご指導をいただければ幸いである。
・おりしも、我が国は大震災に見舞われ、東北地方の農林水産業は壊滅的な被害をこうむった。日本の総力を挙げて、復旧復興を図らなければならない。今回の震災は同時に、長年我が国が改革することができていなかった、国土や経済の脆弱性を明らかにした。65年前の敗戦を契機に我が国が甦ったごとく、我々は、今回の災害を機会ととらえ、努力を重ね、今までタブーとされてきた多くのことを改革し、「強靭な日本」を構築しなければならない。我が国の強みを生かし、弱みを克服する政策に集中すべきである。貿易自由化と農林水産業の振興はその一環でもある。

1.農林水産業の果たす役割 安全・安心な食料の自給(食糧安保)

・我が国の農林水産業は、国民の安全・安心な食料の自給を担うとともに、我が国の多様で特色のある地域の発展に貢献してきた。また、中山間地をはじめとする農山村は、保水機能、生物多様性保全、景観など、多面的機能を果たしており、人々に生きがいも与えている。さらに世界的にみると、我が国は高水準の技術開発力や経営技術を有しており、その技術力と安全で高品質な農産物の輸出を通じて、世界の食糧問題解決へも貢献し得る。

2.我が国農業の問題点と可能性

・我が国は農業生産額で、1960年以降、世界3~5位、2009年は世界4位の位置にあり、先進国では米国に次いで2位、EUの農業大国フランスの1.5倍、豪州の3倍以上の規模である。
・農産物の世界貿易は、1960年7兆円から2007年120兆円へ世界経済の成長とともに急拡大し、我が国はすでに世界4位の農産物輸入国(1位米国、2位仏、3位英国)である。我が国は、すでに低関税品目の農産物が多いものの、国家貿易(コメ、小麦、脱脂粉乳)や例外品目が多すぎるため、国際交渉で不利になっている。
・稲作農業ではコメ農家の7割(102万戸)が1ha未満で、コメづくりは64千円(農家当たり)の赤字である(表1)。農家当たりの生産性が低く、高齢化(平均年齢67.6歳)も進み、国際競争力が十分にない。そのうえ、小規模農家のこれからの農業生産の存続が危ぶまれる。このまま推移すると、コメの供給力そのものに問題が生じかねないところにきている。
・10ha以上の大規模農家は7千戸しかなく、担い手が絶対的に不足している。
・減反政策のコスト(約5,000億円)は高く、休耕田を増やし農地の利用効率を下げるだけでなく、食の安全保障政策に逆行する。
・また、東日本大震災の結果、消失や冠水で農地が23,600ha使えなくなった。高齢の農業事業者の生活再建を優先としつつ、若手担い手の事業継続・拡充を重点的に支援する必要がある。
・一方、食文化に共通項が多いことから、日本の農林水産物の輸出先の7割はアジアとの意見もある。10年先、20年先を見通すと、アジアの国々では経済成長にともない、①食料・食品をめぐる購買力のアップと②農業の競争力の低下(=日本の競争力との接近)が起きる可能性が高い。日本の農業にとって大きなチャンスが広がっていることを見落としてはならない。

3.政策の方向

・生産額でみると、1位は酪農畜産(2.4兆円)、2位は野菜(2.1兆円)で、コメ(1.9兆円)は3位である。しかし、コメづくりは“農業の華”とみなされ、コメを軸に農業政策が考えられてきた。これからは実態を踏まえ、畜産や野菜の政策上の位置付けを上げることが重要である。

主な競争力強化策の方向は以下のとおり。

① 強い農業事業者のサポート

〔農家当たりの経営規模の拡大〕
・10ha~20ha規模の農業経営が標準的なものになるよう方向づける。
・10ha以上の大規模農家の経営は、「大規模水田複合経営」(注)を目指すべきである。
(注)野菜栽培等と稲作を一体経営すること。 静岡県森町には30ha~40ha規模、 売上規模約1億円の農家が多数あり、事例研究に値する。
・東日本大震災の被災地においては、今後の農業政策のモデルケースをつくるとの観点から、新たな食料供給基地建設を目指し、小規模農家を対象とする国家農地買上げスキームにより農地の集約を図り、冠水した土壌の入替・改良の後、大規模経営を志向する農家に対して、農地の長期貸付契約や売却を行うとともに、総合的な経営支援を、国・地域一体となって、集中的に実施すべきである。

〔戸別所得補償制度の見直し〕

・戸別所得補償制度を規模拡大への誘導手段とすることが必要である。日本で農業機械が最も効率よく使える面積は15haといわれることから、例えば、まず、小規模農家の規模拡大目標を5haとして、「生産規模支払」として10aあたり2万円の補助金(現行は15,000円)を出す。5年後に目標を10haに引き上げ、さらにその5年後には、目標を15haに引き上げる、というやり方が考えられる。
・一方、規模拡大を志向しない小規模農家のために、例えば、「面積基本支払」(10aあたり1万円)や「環境保全支払」(10aあたり5,000円)という選択肢もつくり、選択できるようにすることも検討に値する。

〔コメの減反政策廃止〕

・コメの減反政策は、生産の割当方式であり、コメづくりに最も適した農地でコメを生産する方式ではなく、生産者の意欲を著しく阻害し、食料安全保障とも相反するものであることから、段階的に縮小・廃止する。
・減反政策の廃止後、減反田は、大豆栽培とともに、エサ米(特定栽培米)を目標収量1トン(注)として生産することも検討すべきである。
(注)コメの増収可能性について、「米作日本一」表彰事業(昭和24年から43年)20 カ年の平均収量は908.3kg、なかには1トンという農家もあったといわれる(「米作日 本一の稲作技術」『日本の農業77・78』農政調査委員会 昭和46年11月)。増収に関 する研究に重点を移せば、収量1トンの達成は不可能ではないとの意見もある。
・大豆やエサ米の生産補助金(注)は、食の安全保障コストとして甘受すべきであるが、コメの減反廃止に伴う財政負担減から財源を捻出できることにも留意すべきである。
(注)エサ米は10a当たり8万円の補助金があり、これで収支トントンといわれる。し かし、東京農大の実証実験によると10aあたり1トンつくることができれば、1万円強の補助金でよいとの意見もある。
・食の安全保障の観点から、遊休農地は有効活用される必要がある(注)。
(注)津波により流失や冠水等の被害を受けた農地の推定面積(青森、岩手、宮城、福 島、茨城、千葉の6県合計;3月29日農林水産省発表)のうち、宮城県15,002haと福島県5,923haの二県で約9割を占める。
コメの平成23年生産目標は795万トン(作付面積換算150万ha)であるが、宮城県
で10,600トン (県内目標367,950トン)、福島県で 35,000トン (県内目標363,680ト
ン)の合計45,600トン が県内生産不足となる。農林水産省の県間調整でも追いつかず、
約15,600トン分が生産目標未達となることが確実となった。
(ほか4県は県内で生産目標の割り振り調整が完了し、生産不足は見込まれない)。
なお、平成22年の生産目標は作付面積換算で153万8,000ha(813万トン)だったが、
実際の作付面積は158万haと4万2,000haの過剰作付であった。

② 担い手育成

・15ha以上の大規模農家をさらに3万戸育てる必要がある(注)。
(注)1ha未満の農家は102万戸あり、作付延べ面積は47.5万haある(参考の表1)。 地代を10a当たり14千円とすると、地代総額は665億円(14千円×10×47.5万)。
一方、地代を年120~240万円負担している農家が7千戸存在する(参考の表1)。
仮に地代として180万円(120~240万円の中間値)を払える大規模農家が小規模農家(1ha未満)の地代総額665億円を負担するとすれば、そのような大規模農家の必要戸数は3万7千戸(665億円÷180万円)となる。
大規模農家はすでに7千戸存在するので、さらに3万戸(3万7千-7千)必要となる。
・担い手の育成には、小規模な農家の子弟や非農家出身の若者を含めて、「明日の担い手」を幅広く受け入れるべきで、「明日の担い手政策」から一人前の農業者のための「担い手政策」が連続することが重要である。
・大規模経営を志す担い手は、事業ののれん分けの可能性や食品加工や販売機能の習得も考慮し、10人以上の法人経営のもとでなされることが大事である。
・大規模な複合経営には工程管理のセンスが必要で、そのようなセンスが不可欠な野菜栽培農家が稲作に参入してくることが予想されるが、その動きを阻害しないことが大事である(注)。
(注)現在、20歳代の若手農業事業者(稲作以外の野菜、酪農などを含む)が4万人いるといわれる。彼らに共通した特徴は、父親の代で農業法人の経営が一応確立していること(土地、機械、顧客基盤がすでにあり、地権関係も安定)で、この層が、5~10年のうちに飛躍的に規模と雇用を拡大すると期待される。
・大規模な複合経営に必要な工程管理の習得を促進するため、直感やセンスに依存していた生産管理を標準化し、形式知化することが有効である。具体的には、国際的に普及している農業生産工程管理(Good Agricultural Practice: GAP)を国内で普及すべきである。

③ マーケティング力の強化

・地産地消を促進する。地域ブランドを保護・育成するため、地理的表示制度の導入を検討する。
・おいしさや安全性からの食品評価基準を作成・普及する。

・ 産地から海外までをつなぐ農産物輸出インフラを整備し、意欲ある生産者が輸出できるよう煩雑な輸出業務を簡素化する。

④ 農林水産業 産業力評価指標の設定

・産業力指標として、生産量及び輸出高を評価指標とする。

⑤ 優れた農林水産業従事者のノウハウの蓄積と活用

・国はソフトとしての農業技術の価値を認識し、優れた農業技術やノウハウの蓄積と活用を重点的に整備する。

4.農協のあり方

・農協は肥料、飼料、農薬、農業資材等の安定供給や、収穫物の買い付け時のセーフティ・ネット機能、営農指導、共済・金融機能等を有し、小規模農家でも農業経営を可能とし、我が国の農業発展に多大な貢献をしてきた。
・しかし、個々の農協は優れた組合であっても、“地域独占”的なため、競争環境が整っていない。農協の新設は県の中央会へ協議しなければならず、事実上の参入障壁とみなされている。だれでも、自由に農協を設立できるようにし、農協間の競争を促進することが重要である。
・農協と農業経営体が対等に競争できるように競争環境の整備が必要である(注)。
(注)例えば、農地利用集積円滑化事業において、自治体・農協などの公的機関が農地を集積する場合のみ農地提供者に奨励金(10a当たり2万円)が支給され、農協に依存しない農業生産法人による土地購入が妨げられている。
・農協理事制度の改革(理事の経営資質の重視)、営農指導事業の強化、全農・全中グループとの取引透明化等、農業の競争力強化に資する方向での改革が必要である。

5.農地法の改正等

・農地の取引について、四つの制度(注)があり、制度自体が複雑である。法制度の一本化には時間がかかるため、むしろ、農業委員会が転用農地の意思決定や耕作放棄地の問題についてより実際的に機能するよう、第三者機関によるチェックを活用するなど、運用の改善・強化を図るほうが実践的である。
(注)四つの制度とは、農地法、農業経営基盤強化法、土地改良法のなかの交換分合、農地法のなかの中間保有法人のこと
・農地法で収用価格の上限を設定する。今では、高成長時代のように桁外れに高い価格で農地が購入されることはないが、それでも買手農家は無理した高値で買っているという現実がある。上限価格を設定すれば、そのような法外なことはなくなる。

6.事業再生

・農業分野では、事業再生法のように債務カットによる事業再生のルール化がなされておらず、若い農業者が事業を買い取り、参入するような機会にもなっていない。農業生産法人の破たん処理法制の整備及びサービサー(債権回収会社)の設立が求められる。

7.貿易自由化との両立

・積極的にルールづくりに参加すれば、交渉を通じて自国の国益をルールに反映させることができ、新しい制度成立後、単に加盟する場合よりも得るべきものが大きいことにも留意すべきである。輸入国の農産物に対する関税を下げさせることにより、日本からの農産物の輸出促進が期待される。
・輸入国の非関税障壁等を、共通のルールのもとで、解消することにより、コメを含む農産物の輸出が本格化することが期待される。
・我が国経済をさらに活性化し、アジア太平洋の成長を取り込むためには、交渉が長く停滞しているWTOドーハ・ラウンドを先取りし、一層の貿易自由化を進める必要がある。環太平洋パートナーシップ(TPP)協定交渉への参加はその起爆剤となる。
・TPP協定は、二国間の自由化(FTA、EPA)よりもマルチの協定のほうが同じルールで律せる市場が広いこと、APEC首脳会議の成果であるアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)構想の実現につなげられる可能性があることから、交渉参加について真剣に検討すべきである。
・TPPの重要な意義の一つは、今後の東アジアを律するルールの問題(中国は既存の国際ルールを尊重せず、自分のルールに従わせる)にある。日本とアジア諸国は、米国とともにルールづくりをして、市場原理と法の支配によって、我が国の成長に不可欠な中国をエンゲージする必要がある。TPPはこの動きのひとつであり、決して日本にとって不利なものではないことを忘れてはならない。
・TPP交渉参加にあたり、時間軸を加えることで、農林水産業に対する影響を相対的に小さくできることに留意すべきである。コメの減反政策は2世代かけて定着したことを踏まえ、今から規制緩和(撤廃)等により競争力強化を図りつつ、同時並行的に、関税撤廃と補助金削減を10~20年かけて、漸進的に進めることが重要である。

8.配慮すべき問題点

・影響の試算が三つ(内閣府、農水省、経産省)もあっては、国民はむしろ不安になる。政府は客観的な立場から検討を行う第三者に委託するなどして、統一的な影響試算を出すべきである。
・現在進行中のTPP交渉について、我が国が参加するまでの間、引き続き情報収集に努力する必要がある。
・農業改革は、10~15年後に我が国の農業が目指すべき改革のビジョンを出したうえで、直ちに着手することとし、急激な構造変化が生じないように漸進的に進めるべきである。
・コメの減反やムギの輸入の動向は、農業にとどまらず、製粉などの食品産業や地域経済に大きな打撃を与えるおそれがあり、万全な配慮が必要である。
・国境措置を下げると、国際相場の変動がそのまま国内相場の変動に結びつき、小規模農家や中小企業者の経営を左右するおそれがある。段階的な引き下げによる激変緩和、直接支払いによる農業保護のあり方について検討するとともに、今後さらに、予防的な金融措置等も含めた緻密な調査・研究がなされるべきである。
・原発事故により毀損した日本ブランドの信認回復は避けて通れない課題である。これを機に、日本産農産物の安全・安心を確保する検査・証明体制の確立、在外公館などを活用した日本ブランドの価値を情報発信する体制の構築が必要である。

補足説明:【日本コメの国際競争力】

日本コメの国際競争力をめぐっては、以下のとおり、多面的な観点から様々な意見があり、国内市場で日本コメが海外産米に取って代わられるとの主張については、一方的に決めつけず、冷静な議論が必要である。
〔コメの国際市場の特徴と中長期展望〕
・コメの国際市場は非常に薄い(取引量が尐ない)市場で、相場の変動は激しい。1994年に日本が250万トンのコメを輸入したとき、相場は2倍に跳ね上がったことがある。コメについて、日本は小国の仮定(=price taker)が成り立たないことに留意すべきである。
〔供給国の事情〕
・米国のコメ生産量は800万トン前後(日本850万トン)、うち7割が長粒種のインディカ米である。水供給が制約となって現在の生産水準が限界とみられており、輸出余力は限定的である。なお、米国はコメ輸出がコメの輸入より多いので純輸入国ではないが、アジア系人口の増加で、コメの輸入量は60~70万トン程度ある。
・また、アメリカのコメ生産者にとっては、日本の国産米価格が一俵(60kg)あたり1万円を切って、7,000~8,000円になると価格的に魅力がなくなる。彼らはこれまで短粒種を作ったことがないし、収量が長粒種より大幅に落ちるので、短粒種にシフトする誘因がない。米国政府の補助制度は収量ベースなので、生産者は収量が多い長粒種の生産にむかう。
・豪州のコメづくりは、水不足のため2006年以降、ピーク時の1割ほどに減ったが、直近では約5割まで回復する見込みである。
・タイなどのコメ生産国は長粒種が主である。
・不確定要素は中国、とくに東北地域のコメの供給力である。これが日本の外食産業むけ需要を満たす可能性はあるものの、中国国内のコメ需要が拡大しつづけているので、長期的にみても、輸出余力が生じるかどうか不明である。
〔日本国内の需要〕
・日本の主食コメの消費(年間、2008年産)は、一般消費者330万トン、外食・中食290万トンだが、この順序は10年以内に逆転すると予想され、外食むけに中小のコメ輸入業者がアメリカ産米を持ち込む可能性はある。日本人の嗜好が中長期的に変わることも考えられ、その結果、外食コメの2、3割(60~90万トン)が海外産米になってもおかしくない。(注)
(注)日本のミニマムアクセス米(MA米)の輸入枠は76万7,000トン(玄米換算)で、輸入先は、米国産が毎年約50%のシェアを保持し、タイ(約22%)、中国(約12%)、豪州(約12%)、ベトナム(約5%)が続く。MA米のうち、上質の主食用(SBS米という)約10万トンを除く、加工用(一般輸入米)は販売がはかばかしくなく、飼料用に赤字販売されたり、大量の国家在庫となっている。WTOドーハ・ラウンドが妥結すれば、最大で現行枠の1.5倍強の119万トンまで拡大する可能性がある。今後、コメ政策の転換に際しては、国境措置の段階的引き下げ、生産調整の段階的縮小とあわせ、食料安全保障にも反するMA米の返上を検討する必要がある。
〔日本コメの輸出可能性・課題〕
・長粒種・短粒種合わせて1億5,000万トン程度のコメを消費している中国人が日本から炊飯器まで買って帰ることから考えると、日本コメの輸出量は数百万トンにもなる可能性がある。そのためには、国際戦略を練って長期的に実行することが重要である。
・ブランド米ばかり輸出する必要はなく、中流のものでも100万トン規模で供給するほうが重要である。国際穀物市場で、コメほど価格差が大きなものはなく、多様な用途を開発する余地は大きい。
・中国の短粒種(黒龍江省米)や米国の中粒種(カリフォルニア米)は海外市場で一俵(60kg)あたり5,000円程度と安いが、ともに自国の需要増で価格上昇が予想される。一方、日本のコメは国内で12,000~15,000円。しかし、国際競争力がついてきており、競争力はさらに伸びる余地がある。

以 上

(資料3)参考図表
http://dex-s.sakura.ne.jp/n_contents/n_topics/wp-content/uploads/2011/10/sankou.pdf

(参考4)貿易自由化と農林水産業振興の両立に関する研究会趣意書

日本は、経済構造改革の遅れによって世界の潮流から取り残されている。国内市場の開放性を高め、日本をアジアや世界の人々や経済活動にとって魅力的な国にすることが日本の国家戦略であるべきことは言を俟たないが、その遂行は容易ではない。経済社会全体としてメリットのあることであっても、影響を受ける分野が課題を乗り越える道筋を示さないまま、前に進むことはできない。
さらに、高齢化の進行や耕作放棄地の増加で持続可能性が危ぶまれている農林水産業の再生は、貿易自由化にかかわらず喫緊の課題である。むしろ、貿易自由化を契機として、農林水産業の再生の道筋を示すことが求められている。
政府は、11月9日に「包括的経済連携に関する基本方針」を閣議決定した。同基本方針では、「世界の主要貿易国との間で、世界の潮流から見て遜(そん)色のない高いレベルの経済連携を進め」、そのために「必要となる競争力強化等の抜本的な国内改革を先行的に推進する」としているが、国内対策の内容は具体化されていない。
ここに、志を同じくする者が立ち上がり、強い農林水産業を育て、高いレベルの貿易自由化を進めるための具体的政策を打ち出して行かなくてはならない。ここに「貿易自由化と農林水産業振興の両立に関する研究会」を立ち上げ、あるべき政策の研究を進めることとした。