円高対策にpolicy to solve(解決策)なくpolicy to help(弥縫策)のみ | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

円高対策にpolicy to solve(解決策)なくpolicy to help(弥縫策)のみ

秘書です。

野田政権の円高対策に、policy to solve(解決策)なく、policy to help(弥縫策)のみ。

それでは円高は止められません。



皮肉にも円高を呼ぶ「円高総合対策」ーー自国民には窮乏化を強いるのに、なぜ韓国には気前よく金融緩和に協力するのか
2011年10月24日(月) 現代ビジネス 高橋 洋一
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/23958

政府・日銀が円高に手をこまねいているうち、日本経済は大きな打撃を受け、空洞化が進展している。ところが、10月21日閣議決定した円高総合対策はこれまでにもまして酷かった。それをそのままやると、当初の意図とは逆に円高を呼び込む円高総合対策になってしまう。

東京の高円寺には高円寺というお寺があるが、兵庫県の尼崎市には圓安寺というお寺がある。おかしな経済対策をするくらいなら、圓安寺にお参りにいったほうがましだろう。

解決策はなく、弥縫策ばかりの円高対策 

21日の円高対策は、雇用対策や中小企業支援など円高による痛みの緩和に1.1兆円、立地補助金、節電エコ補助金や住宅エコポイントなどリスクに負けない対策に0.9兆円となっている。ポイントは金融政策が抜け落ちて、財政支出するということだ。

経済政策は、policy to solve(解決策)とpolicy to help(弥縫策)があるが、今回の円高対策は、policy to solve がまったくなく、policy to help ばかりだ。

しかも、単にpolicy to help でなく、円高を呼び込む政策になっている。その理由は、本コラムの読者であれば、3月28日付け「財務省主導の「復旧」ではダメ!「復興」は新設する「東北州」に任せ、福島に国会と霞ヶ関を移転せよ 円高に苦しんだ阪神大震災の過ちを繰り返すな」でご存知だろう、「マンデル=フレミング効果」だ。十分な金融緩和なしに経済対策を打つと、円高になるというもので、阪神淡路大地震後の円高の原因だ。

しかも、今は、海外が金融緩和しているにも関わらず、日本だけがやっていないので、相対的に希少性が高まっている円は円高になる素地が十分だ。これも、8月22日付け「史上最高値を突破した円高につける薬はある 為替を読む『高橋法則』と民主党代表選の見方」に書いてあるように、為替はだいたい日米のマネタリーベースの比になるように動く。アバウトにいえば、円は130兆円、ドルは2兆ドルなので、今のペースでいくと、1ドル=65円になっても不思議でない。1ドル=100円くらいにしようとすれば、円を70兆円くらい刷るような金融緩和をすればいいことがわかる。

こういうことをいうと、よく責任だと言われるが、筆者が小泉政権の中にいたときには実際にやっていたことばかりだ。


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筆者の持論であるが、高度成長期の産業政策はほとんど愚策で、効果がなかった。官僚が成長産業を選べるというのは虚構に過ぎない。

もし高度成長期で意味があった政策といえば、円安である。為替レートは85年のプラザ合意以前は、大幅な円安時代だ。それが産業政策のミスを補って余りあるほどの国際競争力をもたらし、その結果、日本の高度成長の基盤になった。

今の民主党政権では、誰もマクロ経済のことを理解せずに、経済運営が行われている。これまでの円高対策では、1年前にも新成長戦略実現に向けた3段構えの経済対策~円高、デフレへの緊急対応(2010年9月10日)と円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策~新成長戦略実現に向けたステップ2(2010年10月8日)がある。

これらも、金融政策を事実上抜き、いつもの「日銀に期待している」という文言がおきまりに添えられているだけだ。そして、官僚の「予算ぶんどり」となる諸施策が政策の柱になっている。policy to solve がまったくなく、policy to help ばかりというのもそっくりだ。

今回の対策について、効果が全くないのは明らかなのに、マスコミは1年前の政策の検証もせずに相変わらず役所からの情報を垂れ流している。中には、海外が自国通貨安政策をしているので、日本では円高をどうすることもできないという、子どもでも書かないような非論理的な文章を書いている社もある。海外が金融緩和で自国通貨安にしているなら、日本でも金融緩和でできないはずない。むしろ、日本はデフレなので、海外よりも金融緩和ののりしろは大きく、自国通貨安には負けない。

韓国相手には気前よく

 今回の政府の自称「円高対策」について、市場は予想通りに反応した。21日のニューヨーク外国為替市場で、円相場が一時、1ドル=75円78銭まで上昇し、8月19日のニューヨーク市場でつけた戦後最高値(75円95銭)を約2カ月ぶりに更新した。しかし、これはたんなる挨拶代わりだ。いったん円高がとまったと見せかけて、さらに史上最高値を狙ってくるだろう。円の希少価値がなくならない以上、いつでも円高アタックはありえる。誰でも、どちらに振れるかわかっているなら、そのほうに仕掛けるに決まっている。


こうした状況での円高対策は、これも本コラムで指摘した日銀引き受けだ。本年度予算ではまた未消化枠が18兆円あるので、それをまず行うことだ。そうすれば、財源問題も一気にかたづけられる。

しかし、政府はその気が全くなく、復興増税を補正予算に織り込んでいる。まったく、それでは円高をますます呼び込むだけだ。今の野田政権は、財務省のいいなりで、国内に増税(電気料金の値上げも含む)、円高を強いて、自国窮乏化政策を国民に押しつける政権だ。

政府・日銀は毎年行われているにもかかわらず日銀引受でのマネー増発は禁じ手とまだいっている。被災者向けの震災復興の第三次補正でも拒否したくらいだ。しかし、韓国相手では気前がいい。

政府・日銀は19日、通貨スワップ協定の枠を従来の5倍に拡大し700億ドル(5兆3000億円)とすることで合意した。通貨スワップ協定は2国間や多国間で、自国通貨と外貨を交換する契約。韓国はウォンを日本に渡し米ドルと日本円を受け取れる。

韓国に金融緩和には手をかす日本政府

日銀は円を刷って通貨スワップをするわけで、震災復興債の日銀引受をして円を刷るのを頑なに否定するのに対して、相手が韓国の場合には円を刷ることを簡単に了解するのは、違和感がある。

狙いは為替市場の安定だ。日韓為替は、2000年以降、1円=10ウォンという安定的な関係だったが、リーマンショック以降、1円=14ウォンあたりを上下している。円高・ウォン安については、日本の電機や自動車メーカーにとって競争力の低下につながっている。

リーマンショック以降、韓国銀行はかなり金融緩和して、ウォン安を維持し、韓国のインフレ率も高くなっている。韓国銀行は3%上下1%内のインフレ目標を採用しているが、今年1月から目標上限4%を超えている。ところが、韓国銀行の基準金利は3.25%のままで、金融引き締めになっていない。その背景には、李明博政権の輸出大企業優先政策があり、ウォン安を維持したいのだ。

 また、韓国国内には家計負債問題がある。韓国では不動産購入などのために家計が銀行から借り入れたローンが大きい。韓国の家計負債に対する家計資産の比率は2倍程度であり、日本のそれが5倍程度であるのに対して、韓国のほうが相対的に家計の負債が大きい。このため、金利が上がると、個人の破産という社会問題が起きかねない。

こうした理由から、韓国は金融引き締めを行えない。そこに政府・日銀が気前よく手を貸したわけだ。それ自体は、円高・ウォン安の是正の方向だが、どうせやるなら韓国ウォンだけでなく、すべての通貨に対して円高防止になる日銀引受で、復興対策の財源とするほうがいい。


【以下はオタク向けの議論なので、それ以外は読む必要ありません】

筆者が、日銀引受で復興予算財源が作れると主張しているのに対して、政府・日銀筋のほうから、日銀引受は財源にならないとの反論があるようだ。

その反論は、日銀引受で日銀がカネ刷って(マネタリーベースを増やす)、はじめは予算財源になるが、その後でインフレになると日銀はおカネを回収する(マネタリーベースを減らす)ので、結局通してみると財源にならないというロジックらしい。

筆者の答えは簡単。はじめに予算財源になればいい。政府・日銀筋はどうしても増税に持ってきたいので、増税は財源というだろうが、増税して景気が悪くなれば、増税さえも後からみて財源とはいえなくなる。1997年に消費税増税しても、デフレになってそれ以降のすべての税収はその当時を越えていない。

重要なのはデフレ脱却・円高阻止というマクロ経済だ。もし将来のことを考えても、カネを刷ってデフレ脱却して円安・インフレになれば、それだけで自然増収がある。カネは回収されても、自然増収があればそれを財源とみればいいというわけだ。しかもデフレ脱却・円安なのだからいいに決まっている。増税ありきの奇妙なロジックに騙されないようにしよう。