危機管理と国家戦略会議 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

危機管理と国家戦略会議

秘書です。
なぜ3.11の危機管理上の教訓が生かされないのか?
それは、3.11の危機管理の失敗を認めないからです。
何かを変えるということは、何か失敗があったことを認めるということ。しかし、失敗を認めたくない人がいる。しかも、政権中枢にも当時の責任ある人々がいる。これでは何かを変えることができない。
だから、こういうときには責任ある地位にあった人たちは野に下り歴史の法廷の裁きをじっと待つべきなのです。


東日本大震災あす7カ月 民主政権、情報上がらず指示下りず
産経新聞 10月10日(月)7時55分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111010-00000064-san-pol

 ■危機管理「頭脳と体」分断

 東日本大震災発生から11日で7カ月。死者・行方不明者は1万9748人(7日現在)に達した。政府は大震災と東京電力福島第1原発事故対応の教訓を踏まえ、首相官邸の危機管理センターに「高度情報集約システム」を導入する方針を固め、復興対策を柱とする平成23年度第3次補正予算案に必要経費を計上する。同センターへの情報集約と初動対応の迅速化を目指すが、真の危機管理体制の確立にはほど遠い。(半沢尚久、千葉倫之)

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 ◆集約システム導入へ

 政府はこれまで、災害や重大事故が発生した際、各省庁から電話やファクスで集めた被害状況などを、危機管理センターの職員が一括入力していた。この方式だと時々刻々と変化する被害状況との時差が生まれる。新システムではオンライン上で複数の職員が同時並行で入力したり、省庁の担当者に直接入力させたりすることを想定している。

 ただ、震災と原発事故対応で浮かび上がったのは、システムの問題だけではない。官僚を使いこなせない民主党政権の体質そのものだった。

 「本部の設置が1日遅かった」。内閣府幹部がこう悔やむのは、9月上旬に西日本から北日本にかけた広範囲で記録的な大雨となった台風12号への野田佳彦政権の対応の遅れだ。

 台風12号は9月3日、高知県に上陸後、四国を北上し瀬戸内海を抜け、岡山県に再上陸した。この日すでに死者・不明者は16人、避難指示・勧告は48万人にも及んでいた。だが、政府が災害対策基本法に基づく「非常災害対策本部」を設置したのは、翌4日午後9時半までずれ込んだ。

 「『天災は、忘れたころにやってくる』。忘れないうちに組織を見直しておくことが大切だが…。何もしていない」

 政府高官は、物理学者で随筆家の寺田寅彦のものとされる言葉をひき、野田氏の首相就任から1カ月が過ぎても官邸の危機管理のあり方が検証されず、深刻な問題点が放置されていると批判する。

 問題点とは何か。官邸危機管理センターの担当者は「頭と体がつながっていなかった」と、菅直人前首相時代を振り返る。「頭」は首相で、「体」は危機管理センター。両者をつなぐ「骨格」と「血管」は途切れ、情報は上がらず指示も下りてこない。

 第1原発周辺での避難指示や計画的避難区域指定などは、国民の生命・財産を守る重大な「意思決定」だが、センターには事後報告ばかりが繰り返された。ある高官は「前首相が何をしようとしているのか分からなかった」と唇をかむ。

 それを象徴するエピソードがある。

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 ■生きぬ失政の教訓 伝わらなかった汚染水放出

 4月4日午後7時すぎ、首相官邸の地下1階にある危機管理センターは混乱を極めていた。

 「東京電力福島第1原発で低濃度汚染水の海への放出が始まった」-。しかしセンターにいた職員は、この事実を誰も把握していなかった。

 すぐさま汚染水放出の事前通報がなかったと韓国やロシアで反発が広がり、漁業者の不安に追い打ちもかけた。センターには統括する伊藤哲朗内閣危機管理監以下、外務省や国土交通省の局長もいたが、蚊帳の外だった。「意思決定に関与していれば、外国政府への事前通報や船舶に対する注意喚起など事前に必要な措置を講じられた」。ある省の局長は悔やむ。

 平成7年の阪神・淡路大震災でも、官邸の情報集約機能の欠如と省庁縦割りの弊害で対応が遅れた。その反省から翌8年に新設されたのがセンターで、トップを務める危機管理監ポストも10年に設けた。

 危機管理局面で、情報集約→各省庁の総合調整→複数の対応策提示→首相の意思決定-。これらをその場で行うのがセンターの本来あるべき姿だが、民主党政権は対策本部を乱立させ、情報集約と総合調整を妨げた。これでは合理的な指示など出せるはずもない。

 内閣府幹部は「クラッチが壊れた車と同じで、首相がいくらハンドルを動かしても車は1センチたりとも動かない」と指摘する。小手先のシステム改善ではなく官僚との断絶を省みない限り、組織は機能しない。

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 ■危機管理なき国家戦略会議

 東日本大震災では、政治主導を演出しようとするあまり、「対策本部」や「プロジェクトチーム」などを乱立させた民主党政権の無意味な「組織いじり」の弊害が指摘された。

 首相官邸が主導して迅速な意思決定を実現する-。この「組織いじり」の反省に立って、組織を一本化させようというコンセプトで検討されているのが野田佳彦首相をトップとする「国家戦略会議」(仮称)だ。

 「新たな会議体は国家として重要な政策を統括する司令塔の機能を担う」

 首相は9月15日の参院本会議の答弁で、戦略会議をこう位置付けた。

 一時は危機管理を含む「安全保障」も戦略会議の検討課題に加える構想もあったが、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加問題などの成長戦略など経済財政運営に限る見通し。これでは「国家戦略」とは名ばかりだ。

 民主党は平成21年衆院選マニフェスト(政権公約)で「危機管理庁」の設置による危機管理体制の強化をうたっている。野党時代には数千人規模のスタッフを擁する米連邦緊急事態管理庁(FEMA)にならった組織の設置を主張してきたが、もはや口にする議員はいなくなった。

 「首都直下型地震で政府の中枢機能がダウンした時に動けるのは、内閣府防災担当の組織にいる約60人だけ。このままでは絶対に対応できない」

 政府高官の一人は警鐘をこう鳴らす。

 大震災と原発事故では菅直人前首相の誤った政治主導が被害の拡大につながった。野田政権はその教訓のもとにスタートしたはずだが、新たな危機への備えに関してはまだまだ手探り状態だ。(加納宏幸、斉藤太郎)


→何か会議をつくればいいという発想の誤りがようやく認識されました。最後に残ったのが国家戦略会議ですね。

→たぶん、国家戦略会議では、実質的には分科会が権力をもち、分科会の事務局に権力が発生することでしょう。その事務局とは政策を担当する省庁のことで、なんのことはなく、省庁縦割りのまま、ということになるのではないでしょうか。

→危機管理の情報と接点のない国家戦略会議というのは、つまり、危機対応と国家戦略は切り離されているということですね。

→法的根拠のない国家戦略会議が国家の司令塔になれるのでしょうか?縦割りを超えられますか?日銀と対話ができますか?