「sympathy」と「stationary state」(今朝の読売新聞9面より) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

「sympathy」と「stationary state」(今朝の読売新聞9面より)

秘書です。
今朝の読売新聞9面の論点スペシャルに「経済成長を考え直す」


堂目卓生先生は、アダム・スミスの「共感」に注目。

→アダム・スミスの『道徳感情論』ですね。堂目先生の中公新書『アダム・スミス』を是非。


広井良典先生は、成熟社会を「定常型社会」と。

→J・S・ミルの「SATATIONARY STATE」からのインスピレーションでしょうか。STSATIONARYは、停止とも定常とも静止とも訳されています※)


→物質的なもの以外(=人間同士の関係)が豊かになることで、結果的に経済が成長している、という状態をいかにつくるか?ですね。保守こそが「共感」と「定常型社会」を基盤にすべきとき。



※J・S・ミルは、『経済学原理』において「経済学者たちが進歩状態と名づけているところのものの終点」に存在するとした stationary state(停止状態)においては、「あらゆる種類の精神的文化や道徳的社会的進歩のための余地があるということは従来と変わることがなく、また『人間的技術』を改善する余地も従来と変わることがないであろう。そして技術が改善される可能性は、人間の心が立身栄達の術のために奪われることをやめるために、はるかに大きくなるであろう」としています(Mill. J. S.(1848),Principle of political economy, (訳:末永茂喜、1965)『経済学原理(四)』岩波書店、p.101. 及びp.109.)。また、『自由論』においては「各人の個性の成長するに比例して、彼は彼自身にとって一層価値のあるものとなり、したがってまた他人にとっても一層価値あるものとなるのである。そこに彼自身の生存に一層大きな生命の充実が存在する」、「利己的な要素に抑圧を加えられれば、それによって天性の社会的な要素がよりよき成長をとげることも可能となる」のであり、「他人のために厳格な正義の規則を遵守させられることは、他人の幸福を自己の目的としようとする感情と能力とを成長させる」という。(Mill ,J.S.(1859),On Liberty(訳:塩尻公明・木村健康、2009)『自由論』岩波書店、邦訳pp.127-128.)

シュムペーターも‘stationary state’という言葉を使っています。
J・シュムペーター(1950)(訳:中山伊知郎・東畑精一、2009年、原書初版1942年)『新装版 資本主義・社会主義・民主主義』東洋経済新報社(Schumpeter, Joseph A. Capitalism, Socialism and Democracy. New York: Harper & Row, 1942, ; Third edition, 1950)では、「静止的状態」と訳されています。
J・シュムペーターは「生産方法がこれ以上の改善はありえないような完備状態に到達したと仮定」した場合にstationary Stateが生じ、「本質的に発展的な過程たる資本主義はそれがために委縮してしまう」 と予測しました。(同書、p. 205.)
stationary Stateでは「企業家のなすべき仕事はなにも残されていない」が、「人間の精力は実業から顔をそむけるようにな」り、「経済的な仕事以外のものが人間の頭脳を引きつけ、これに冒険(の機会)をあてがうように」なると予測しています。(同書、pp.205-206.)
シュムペーターが企業者の精神として重視していたのは「冒険のロマンス」・「英雄主義」であるが、「資本主義過程は人間の行為と考え方を合理化し」、「あらゆる種類の神秘的・ロマン的観念を追放する。」 という。「合理化され専門化された事務所の仕事がついには個性を抹殺し、結果の計算可能性がついには「夢」(ヴィジョン)を抹殺し去る とシュムペーターは予測しています。