野田首相の朝霞公務員住宅の決断→①国有資産を売却し復興財源化?②再凍結して埋蔵金として塩漬け? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

野田首相の朝霞公務員住宅の決断→①国有資産を売却し復興財源化?②再凍結して埋蔵金として塩漬け?

秘書です。
朝霞公務宿舎ですが、その結論が、建設「再凍結」という名の霞が関埋蔵金の塩漬けか、売却という復興予算への貢献か、注目しましょう。


首相の現地視察はパフォーマンス」ではごまかせないーー「朝霞住宅」に固執した財務省の「国有地利権」
2011年10月03日(月) 高橋 洋一 ニュースの深層
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/21550

事業仕分けで見直しとされた朝霞公務員宿舎が着工されたことが国会で論議となった。安住淳財務相は9月26日の衆議院予算院会で「全国の宿舎の廃止・集約で15%削減する。朝霞宿舎の着工だけを見て、公務員はぜいたくをしてけしからんという見方にはくみしない」と建設の正当性を主張。財務相時代に着工を指示した野田首相は、公務員宿舎の売却益を復興財源に充てるとして、着工計画を「特段変更するつもりはない」とした。

 また、財務省は埼玉県内の公務員宿舎1000戸分を廃止・売却して120~130億円の売却益になるので、朝霞宿舎に集約することで朝霞建設の費用が110億円としても10~20億円の利益が出て復興財源に回せると反論する。

 さらに、2009年11月の事業仕分けでは、「検討を踏まえ実施する」が、「それまでの間、凍結」されていたので、外部の有識者を入れて財務省内の「検討」によって2010年12月に「凍結」が「解除」され、2011年9月1日に着工したのだという。

 国会論戦で、被災者より公務員宿舎という議論が出てきて、民主党内からも反発が出てきた。野田佳彦総理は、30日の記者会見で「現場に行き考えをまとめ最終的な判断をしたい」と述べ建設計画を見直す考えを示した。

 財務省のいいなりとされた野田総理のいい意味でのサプライズだ。ただし、建設の再凍結や被災避難者の受け入れ程度でお茶を濁す問題ではない

国有財産を手放す気がない財務省

 朝霞は便利なところだ。公務員宿舎は駅から10分くらいにある。近隣でも民間の高層マンションが建っている。東武東上線だけでなく、地下鉄有楽町線や副都心線も乗り入れており、霞ヶ関の桜田門駅や渋谷駅に40分程度で行ける。

 実は朝霞宿舎の建設予定地は筆者の自宅からも近いので、久しぶりにいってみた。

 驚いたのは、公務員宿舎建設で多くの木が切られ、緑が少なくなったということだ。以前は金網で中が見えたが、今は高い塀で中が見えない。工事車両が出入りするが、素早くゲートの開閉をしていた。普通の工事現場では、中が見えるようにところどころに透明板があるが、朝霞公務員宿舎の場合、中を見ることができるのは工事車両のゲートが一瞬開くときだけだ(透明板は一カ所あるが、ついたてがあって中が見えないようになっていた)。

 建設の再凍結や被災避難者の受け入れは、それ自体は望ましい。しかし、「凍結解除」となった昨年の財務省内の「検討」にはなんら影響を与えるわけではない。建設の方向は正しく、実はタイミングが悪かっただけになる。しかし、国有財産政策に焦点をあてると、結論から言えば「検討」の結果が怪しいのである。こうした根っこの政策がおかしいと、間違いが何度も繰り返される。

野田首相の豹変を引き出した29日の参院予算委員会で小野次郎議員(みんなの党)の「国家公務員宿舎の建設を進めるのなら、原発事故による福島県からの避難者を先に入居させてはどうか」との提案をさらに発展させればよい。

つまり、避難者だけでなく、通常の民間人も適正な家賃を払えば入居さればいいのだ。さらに、いっそのこと宿舎を民間に売却して、必要な数だけ公務員宿舎として借り上げてもいいだろう

 財務省は、「検討」の結果として、2010年12月8日付け「国有財産行政におけるPRE戦略について」を公表している。PRE戦略とは、公的不動産について、民間の手法を活用して、適切で効率的な管理、運用しようとする考え方だ。この表題をみてもわかるが、財務省は国有財産を手放さずに、その活用を考えている。

すべて民間に売却し、必要なら借りたほうがコストが安い

 この点は重要だ。

 私は小泉政権の時に、経済財政諮問会議で国有財産の売却を担当し、中川秀直自民党政調会長(当時)らと国有財産売却のプランを作っていた。その時の基本思想は、国有財産はできる限り売却し、政府が必要であれば、それを借り上げるであった。不動産所有を民間のほうにしたほうが、その最大限の利用を考えるので、法人税収まで考えると、国が所有するよりも国全体のためになる。特に、その考え方は、庁舎や公務員宿舎に適応できる。

英国に行くと、中央省庁でも間借りしているところばかりだ。また、公務員宿舎は先進国ではまずない。その意味で、小泉政権の時の国有財産売却プランは先進国では当たり前の話だった。

これに対し、当時の財務省はいろいろな実例で反論してきたが、どれも一部のコストを考慮しなかったので、庁舎や公務員宿舎の所有も「民でできることは民で」という大原則を破れなかった。

その結果、2005年11月29日「政府資産・債務改革の基本的な方針」として、

政府の資産・債務規模の縮減について
(1) 政府資産については、真に必要な部分のみを厳選して保有する。
(2) 政府の資産規模の対名目GDP比を、今後10 年間で概ね半減させるといったような長期的な目安を念頭におきながら資産のスリム化を進める。
注) 一定の政策目的のために保有している外為資金・年金寄託金等及び売却困難な道路・河川等の公共用財産はスリム化の対象としないが、それぞれの政策目的に照らして、資産を合理的に管理する必要がある。
(3) 売却可能な国有財産について一層の売却促進に努める。
(4) 明確な必要性がない剰余金・積立金については、国債残高の抑制等を図り国民負担の軽減につなげるために活用する。


と経済財政諮問会議で決まった。その際、まず「 時価に基づく売却収入、ならびに機会費用を考慮し、国有財産の売却可能性を検討する」とされた

2006年7月7日に閣議決定された「基本方針2006」では、2015年度末に国の資産規模対GDP比の半減を目指し、国の資産を140兆円規模で圧縮することとし、国有財産については、10年間の売却収入の目安として12兆円を見込んでいた

 現政権と小泉政権との発想の違いは大きい。現政権では、国が不動産をもつことが原則になっているが、小泉政権では民間が不動産を持つのが原則で、国が公共目的でやむを得ない場合には国が所有する。

 公務員宿舎を例にすると、国がわざわざ所有する必要はない。宿舎が必要なら民間から借りればいい。そうすると、公務員宿舎の空き部屋が多いかは気にする必要ない。また民間が宿舎を管理するので快適だ。さらに、公務員宿舎の家賃が格安、駐車場料金も格安という問題も解決される。民間並の家賃では公務員が大変というなら、家賃補助もしたらいい。それをしても不動産売却すれば、おつりが来る

民主党議員の中には、公務員宿舎に家賃補助すれば財政が大変になるという人もいるが、財務省のいいなりそのままだ。売却収入や法人税収アップと比較すればすぐわかることだ。

 もし国有のままのほうが国全体としていいなら、どうして資本主義では不動産の私有財産制になっているのだろうか。財務省の公務員宿舎は国有のままがいいというロジックは、資本主義の私有財産制を否定にもつながるものだ。

 朝霞宿舎も、わざわざ朝霞の森を切り倒して建設するのではなく、埼玉県の別の公務員宿舎を民間に売却したうえで民間建設の建物で公務員宿舎を借り上げればいい。そのほうがコストパフォーマンスはいいだろう。

ここまで、財務省が国有財産を所有したがるのは、実は財務省の組織維持のためだ。

下の写真は、朝霞公務員宿舎のとなりの公園の看板であるが、財務省の地方組織である財務局(財務事務所)は国有財産を管理する仕事をしている(大蔵省と書いているのはご愛敬!)。

(写真略)

 財務局は5000名弱の職員がいるが、その半数くらいは国有財産の管理に従事している。管理というが、単純化すれば、不動産業のようなものだ。物納といって現金でなく不動産での税金納付もある。それを競売して現金化する仕事もしている。こうした部門は、国有財産を売却すれば不要になるし、少なくとも財産とともに地方に移管すべきだ。そうすれば、国の大きなスリム化になるし、地方分権の流れからもいい

 この観点から見れば、朝霞は公務員住宅を建設するのではなく、財務局の管財部門とともに国有財産を地方に譲渡し、地方に管理をまかせるのがいい。

 増税前にやるべきことをやらないで、野田総理の視察、凍結などでお茶を濁してはいけない。