欧州中央銀行(ECB)が「ユーロの増刷」に乗り出す可能性があるかどうか | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

欧州中央銀行(ECB)が「ユーロの増刷」に乗り出す可能性があるかどうか

秘書です。

ECBが「ユーロの増刷」に乗り出す可能性があるかどうか?


債務危機深刻化でささやかれ始めたECBの量的緩和
2011年 09月 30日 14:41 JST
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPJAPAN-23432120110930?sp=true

[ロンドン 29日 ロイター] 欧州債務危機の出口が見えない中、一部の市場参加者の間では、欧州中央銀行(ECB)が決して口にしてこなかった措置に関する議論が活発化している。それは、ECBが「ユーロの増刷」に乗り出す可能性があるかどうかということだ
 英国のイングランド銀行(BOE)や米連邦準備理事会(FRB)と異なり、ECBはインフレ抑制という最大の使命を守る姿勢を頑なに示しており、資産買い入れを通じて大量のマネーを市場に供給した歴史はない。そういった措置を取る可能性についてほのめかすことも避けてきた。

 2008年に金融危機が最高潮に達した場面でも、ECBはカバードボンドの買い入れという「曖昧な量的緩和策」を取っただけで、他の流動性供給策はインフレを防ぐためすべて不胎化してきた。

 だが、今回は債務危機が「臨界点」に近づいており、妥当であるかどうかは別にして、「考えられない措置」が市場で話題になり始めている。

 ルール上でも、ECBは各国政府から直接国債を買い入れることを除き、すべての資産を購入できることになっている。

 ロイヤル・ロンドン・アセットマネジメントの最高投資責任者、ロバート・タルバット氏は「(量的緩和は)避けられないだろう。ECBが何らかの過激な措置を講じなければ、欧州はリセッション(景気後退)に陥る可能性がある」と指摘。銀行の資本再編とギリシャ国債の元本削減に加えて量的緩和を行えば、危機の収束につながる可能性が高まるとの見方を示している。

 アナリストの間では、欧州の政治家は市場に先んじて迅速に行動することができない上、スペインやイタリアに対する市場の圧力がかなり強いため、現在の政策では問題を解決できないとみられている。

 ユーロ圏共通債の導入など取り沙汰されている対策も、法的な壁に直面する可能性が高く、政治的に実現は困難だとの見方が強い。

 ロイズ銀行の市場ストラテジー責任者、チャールズ・ディーベル氏は「政治家は迅速な行動ができないため、現時点ではECBが唯一の頼みの綱だ」と語っている。
 <アンチテーゼ>

 ECBは債務危機について、解決には責任ある財政政策が不可欠だとして各国政府に対応を求めており、量的緩和に踏み切る兆しは全く示していないばかりか、その姿勢を変える様子も見せていない。

 トリシェ総裁は、危機対応に関するECBの役割は市場を潤滑に機能させ、インフレを抑制することだとの考えを繰り返している。

 インフレ率がECBの目標である2%を大幅に上回っている現状で多額の資金を市場に供給することは、インフレ抑制に細心の気を配ってきたECBにとって、本来の意図に反する行為となる。

 ECBは2009年6月から1年間に渡り、モーゲージ関連のカバードボンドを600億ユーロ買い入れた。最近になって、ECBがその措置を再開する可能性があると一部メディアで伝えられているが、ECBが大量の資金を市場に供給するためには、それよりも流動性の高い資産の買い入れを検討する必要がある。

 ECBが社債や株式を買い入れれば市場のセンチメントを著しく変化させ、成長を促する可能性があるが、ユーロ圏の一部政府が資金調達に苦しんでいるという本質的な問題の解決にはならない。

 ECBは現在、市場を通じてイタリアやスペインの国債を買い入れ、利回りの上昇を食い止めることで間接的に両国を支援している。それ以前にも、昨年5月からギリシャを手始めにアイルランドとポルトガルの債券を買い入れており、これまで1565億ユーロを債券購入に投じてきた。

 一方、ECBはそれと同額の資金を市場から吸収する「不胎化」を行ってきたが、「不胎化」をやめれば、実質的に量的緩和を実施したことになる。
 スタンダード・ライフの為替およびマネーマーケット投資ディレクター、ケン・ディックソン氏は「危機がエスカレートすれば、ECBは対策を強化せざるを得なくなるだろう。現状は、ECBが債券買い入れプログラムを一段と拡大し、実質的に欧州型の量的緩和の実施が求められる局面だ」との認識を示した。

 <量的緩和は行き過ぎか>

 だが、投資家の間では、ECBがいずれ量的緩和に踏み切ると見込んでドイツ連邦債よりもイタリアやスペインの債券を選好する動きは、今のところ見られない。

 ECB内部では現在行っている債券買い入れに対しても反対論が根強く、シュタルク専務理事らドイツ出身の幹部が辞任している。

 インベステック・アセットマネジメントのグローバル金利部門ヘッド、ラッセル・シルバーストン氏は「債券買い入れプログラムは市場にある程度の安定をもたらした」としなながらも、「ECBは紙幣を増刷して『最後の買い手』となるのだろうか。それは彼らがこれまでやってきたこととは程度が違いすぎる。それはやり過ぎだ」と述べ、否定的な見方を示している。

 モルガン・スタンレーの経済部門グローバルヘッド、ヨアヒム・フェルス氏は「量的緩和に関する議論は危機に関するファンダメンタルな緊張を反映したものであり、ECBの使命を変えることになりかねない」と指摘している。

(Marius Zaharia記者;翻訳 長谷部正敬;編集 田中志保)