高橋洋一さんの増税一直線擁護論への反論 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

高橋洋一さんの増税一直線擁護論への反論

秘書です。

浜口雄幸政権の道を進んでいるのか?

増税一直線に対する反論です。



復興増税では金解禁で恐慌に突入した浜口雄幸内閣の二の舞に。政府税制調査会に出された財務省の言い分をすべて論破する
2011年09月26日(月) 高橋 洋一 ニュースの深層
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/20747

野田総理の外遊の間に、増税一直線が進行中だ。民主党内での増税論議が加速している。26日の週には復興増税が決まる勢いだ。

 26日といえば、旧知の古賀茂明さんが退職する。私らが安倍政権時代からはじめた公務員制度改革の流れがついに途絶えてしまう。民主党がまともな公務員制度改革を行わずに、増税路線に舵を切ったことが、古賀さんの退職で明らかになった

なぜ古賀茂明さんを登用しないのか

 古賀さんの登用について、私は最後の最後まで民主党が豹変することを期待していた。私らが安倍政権の時に行った公務員制度改革第一弾では民主党はかなり賛同者が多かった。福田政権の時の公務員制度改革第二段では、ねじれ国会であるにも関わらず民主党が賛成して、法案成立にこぎ着けた。その当時の渡辺喜美公務員制度改革相は法案成立に涙を流したのを覚えているだろう。その公務員制度改革法に基づき改革推進本部ができて、その幹部に抜擢されたのが古賀さんだ。

 民主党ははじめは脱官僚といって政権交代をするなど、公務員制度改革には熱心だった。その心さえ忘れていなければ、古賀さんを再び抜擢するのではないかと思っていた。それに、今は復興増税の議論の最中だ。増税の前に、公務員制度改革をするといって、古賀さんを登用すれば、わかりやすいメッセージにもなるからだ。

 こんな簡単な、国民にわかりやすいことができない民主党は情けないし、失望した。

 公務員制度改革を主張する人と増税を否定する人はかなりダブっている。逆に、公務員制度改革をいわない人は増税を推進する人ともオーバーラップする。それは当然である。増税を否定するためには、他の税収確保をいわなければいけないが、そうすると財務省や日銀などの強力な官僚組織の既得権を奪わなければいけないからだ。

 埋蔵金がいい例だ。埋蔵金は官僚の天下り先などの米びつである。官僚共同体の老後の生命維持には欠かせないモノだ。それを引っぺがすそうとすると、官僚は必死に守ろうとする。だから、公務員制度改革は増税の前に避けて通れないはずだ。

 いずれにしても、本当に増税したいなら、せめて古賀さんを登用しておけば、私の筆も鈍るが、そうでないのだから、思い切り書かせてもらおう。


マスコミは主要各紙とも増税擁護だから裏では官僚とつながっているのかもしれない。しかも、誰もが増税論者のはずだと思い込むようにある。

 読売新聞は、「民主党の馬淵澄夫元国土交通相は24日、奈良市での会合で、東日本大震災の復興財源とする臨時増税について、「復興に増税は理にかなわないというのが私の考え方だ。ただし、民主党は(増税を主張した)野田代表(首相)を選んだ。与党議員として受け入れざるを得ない」と述べた」とし、「馬淵元国交相が持論撤回、復興増税を容認」と報じた。

 馬渕氏は、自分のブログでこれを完全に否定し、「持論は変わらず!」とした。与党議員として、もし増税法案になったら賛成するということも馬渕氏は明らかにしているが、それと持論撤回とは違うというのだ。

 私も増税には反対である。しかし、国会で法案が議決されれば、いくら反対といっても増税には従う。法治国会である以上当たり前だ。そのときは、バカな法律を作った国会議員を恨みながら、納税はきちんとする。

18兆円の余裕があるのに行使しないのは政府の怠慢

 ともあれ、26日から、忌々しい増税が決まっていくかと思うと腹立たし限りだが、民主党内にまだいる増税を否定する良識派に対するエールを込めて、各種財源提言について政府税制調査会に出された政府(財務省)の言い分に対し、再反論を書いておこう。

 こうした時に、財源の大きさと手続きの容易さによって、優先順位をつけたほうがいい。あまりちまちましたことに気をとられると時間のムダである。

 もっとも捻出可能で手続きも容易なのが、18兆円の日銀引受だ。民主党議員の中にも、日銀引受で財源を捻出すべきという意見が多い。

 それに対して、政府(財務省)の言い分は、

「戦前・戦中に多額の公債を日銀引受けにより発行した結果、急激なインフレを経験。その反省から、財政法において日銀引受けを禁止。他の先進主要国においても直接引受けは禁止。いずれにせよ、日銀が国債を保有しても、市中で保有されると同様、償還が必要な借金であることに変わりはなく、財源が捻出できるものではない。」という。

 前段の反論は簡単だ。財政法では但し書きがあり日銀引受が認められている。本コラムで幾度も指摘したように、そのようなインフレの懸念のない範囲で、その但し書きに基づいて日銀引受は毎年行われている。ちなみに、すでに国会で決まった今年度予算では、特別会計予算総則第5条において、

「国債整理基金特別会計において、「財政法」第5条ただし書の規定により政府が平成23年度において発行する公債を日本銀行に引き受けさせることができる金額は、同行の保有する公債の借換えのために必要な金額とする。」

 とされている。ちなみに、今年度国債発行計画では日銀引受は12兆円とされ、今年度日銀保有国債の償還額は30兆円であるので、まだ18兆円の余裕枠がある。それを行使しないのは政府の怠慢だ


後段の言い分は正確でない。日銀引受けさせた国債については、利払いなどを政府から日銀に行うが、それはほとんど日銀から政府への納付金として帰ってくる。つまり、日銀引受の国債は事実上発行コストがかからない。これは、日銀引受した場合、日銀のバランスシートが膨らみ日銀券等が発行されることになるが、その場合の通貨発行益が発生し、それが財源になるからだ。

政府通貨の発行で考えてみる

 日銀の会計手続きが複雑なので、この通貨発行益が日銀納付金(税外収入)として財源になるのがわかりにくいが、通貨発行増という観点ではまったく同等である政府通貨の発行をイメージすればいい。

 政府通貨の発行では、発行通貨の製造費を除くと、通貨発行益として税外収入になる。政府通貨増では税外収入になるのに、日銀券増では税外収入にならないというのはおかしいだろう。日銀券増の場合には納付金が長期にわたって増加し、結局日銀券増分の税外収入になるのだ。

 この点から見ると、記念(祈念)貨幣を発行した利益を財源とすべきという意見に対し、政府の言い分が面白い。

 政府の言い分は、

「記念通貨は「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律」に基づき「国家的な記念事業として閣議の決定を経て発行」される。復興祈念貨幣の発行には、上記の閣議決定又は新たな法律の制定が必要と考えられるが、こうした場合、貨幣発行当局として適切に執行する所存」とし、続いて、

「ただし、以下の点について留意する必要。」として、発行コストの点と、

「また、貨幣が実際に使用され、政府に還流した場合には、収益は消えてしまい、コストのみがかかったこととなる」

 として、あくまで実際に流通する貨幣は発行できないといっている。

 前段では、復興祈念貨幣を発行して、幾ばくかの税外収入を目論んでいることがわかる。それなら、高額の政府通貨を発行したらどうかというと、政府に還流すると言うのが政府の言い分だ。

 しかし、このロジックには、今の経済では日銀券や政府貨幣の総量が決まっていて増えないという前提になっている。はたしてそうだろうか。

 実は、貨幣が増加すると、予想インフレ率が上昇して、実質金利が下がる。それが設備投資や消費アップを促し、経済全体で必要な日銀券や政府貨幣の総量は増える。


 しかも、実質金利の低下は、円安にも作用する。というのは、今は円とドルの相対的な量で円が少ないので、円の相対的な価値が高くなるのだが、これは円の実質金利が高くなって、円が好まれるという現象なのだ。

 円安になると、輸出産業関連で経済が活性化される。これも必要な日銀券や政府貨幣の総量を増やすように作用する

 もし、政府の言うように、日銀券や政府貨幣の総量が決まっていて増えないなら、いくらおカネを刷ってもまったく問題ないということになってしまい、決してインフレは来ないという不都合な話になってしまう。日銀引受でいっている戦中・戦後の話と矛盾する

なぜ今回にかぎり海外の制度について触れないのか

 また、財源捻出が容易なのは、10兆円の国債整理基金への定率繰入停だ。これに対し、政府の言い分は、

「国債整理基金は、一般会計からの定率繰入れ等の繰入れと償還との時期の一時的なズレから、制度的に積み立てられているものであり、将来の国債の償還財源である。したがって、これを取り崩すことは、①市場からの信任を損なうおそれがある、②取り崩した分だけ将来の国債償還資金に不足を来たし、いずれ一般会計からその分繰り入れる必要があり財源とはならない(隠れ借金)」とし、

「定率繰入れについては、一般会計が発行した国債が借換えを行いながら60年で償還されるよう、国債残高の1.6%を一般会計から国債整理基金特会に繰り入れるものであり、特別会計に関する法律に規定されている。」と官僚らしく今の制度を説明し、

「過去に定率繰入を停止したときは、国債残高がまだ少なく大量の償還を迎えていなかった時期や、NTT株式の売却収入等の別途の財源を有していた時期であった。また、当時と比べ財政状況が著しく悪化し、財政規律に対する市場の意識も当時と大きく異なっており、同列に論じることは適当でない。」と事情を説明している。

 この説明では、なぜか海外の制度ではといっていないのがポイントだ。政府(財務省)の説明では海外ではこうなっているというのが定番だ。しかし、国債整理基金ではなぜか海外の言及はない。

 それは、海外では国債整理基金のような制度はないのだ借金している時に、将来の償還のためにさらに借金する者がどこにいるのか今年度予算では、国債発行額は44兆円だ。しかし、そのうち10兆円は定率繰入のために発行している。海外ではこんな間抜けな国債発行はしないで、10兆円を除いた最小限度の34兆円しか発行しない

 しかし、もう44兆円発行すると決めたのだから、10兆円分は復興にまわしましょうということだ。

 政府はいろいろと制度の説明をするが、もともとの国債整理基金が海外にはないので、そのための定率繰入10兆円は復興のためにまわせるということだ

海外にない制度だから、いくら国債整理基金があるといっても、国債の信任にはつながらない。むしろ景気がよく経済がしっかりしているほうが国債の信任は増す。

 最後の、いつもの「日本は財政危機」にはほとほとあきれ果ててしまう。国債の危険度を表すCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)をみても、日本1.4%と、米国0.6%、英国1%、ドイツ1.1%、フランス2%、イタリア5.1%と先進国の中でもそれほど悪いというわけでない。ちなみに、今話題のギリシャ58.5%、ポルトガル11.7%、スペイン4.1%である

 郵政株については、国民新党のおす法案が通れば売却できると政府はしている。しかし、売却凍結法を廃止するだけでもっと高く売れる。今の政府案では郵政民営化が不公正だと今後のTPP等の国際交渉でやり玉にあげられるだろう。それに比べて売却凍結法を廃止すれば国際的にもまったく問題のない民営化だ

テレビ朝日番組でデータをすり替えた財務副大臣

 そういえば、財務省のデータすり替えもある。五十嵐文彦財務副大臣は18日テレビ朝日に出演し、国・地方の借金総額が、国内の家計金融資産額を初めて上回る可能性があるとの見通しなので、増税が必要といっていた。しかし、これはデータすり替えだ。

 国・地方の借金総額は、国・地方の持っている金融資産を引かないグロスの数字だ。一方、国内の家計金融資産は、家計の金融資産から家計の住宅ローンなど金融負債を引いたネットの数字だ。こうした基準の違う数字を比較しても意味がない。

日銀が公表している資金循環勘定ストック編では、家計の金融資産負債差額とともに、国と地方などを合わせた一般政府の金融資産負債差額というネットの数字も掲載されている。

 五十嵐副大臣は、下図で一番上の実線とその下の点線で国・地方の借金が貯蓄で賄われないと危機感を表したが、その下の実線と比較すればまだまだ余裕がある。


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ちなみに、財務省は、パンフレット「日本の財政を考える 平成20年9月」では、「国と地方の借金(長期債務残高)は家計の金融資産の約半分」と両方ともグロスの数字で説明していた。しかし、それでは増税のために迫力がないので、その翌年から資料からその数字は落ちている

ここまでして、増税したいのかとあきれるが、実際に増税となれば、大震災ショックの上に、増税ショックがあり、それとともに円高になる。しかも、先週書いたように、ギリシャ問題から世界経済がリーマンショック級の経済危機に見舞われるときなので、日本経済は沈没するだろう。

 こうした歴史的な愚行は繰り返されるのか。野田政権は、浜口雄幸政権で緊縮財政を進め、そのあげく金解禁を行って日本経済をデフレに落とし込み、その上で世界恐慌に突入していった歴史的経済失政の再来になるだろう

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→浜口雄幸は正しく、浜口雄幸の過ちを修正した高橋是清が間違えているという、誤った歴史観が、増税一直線を加速することでしょう!