「友好的雰囲気」ではなく「実務的雰囲気」?-信頼のためには国内政治リスクおって懸案にチャレンジを | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

「友好的雰囲気」ではなく「実務的雰囲気」?-信頼のためには国内政治リスクおって懸案にチャレンジを

秘書です。

首脳外交で、信頼関係構築のためには長期政権を、というのは、国内政治向けの間違えた考え方だと思います。信頼関係のためには、最初の首脳会談で決断力をみせることでしょう。

中曽根政権は長期政権化しました。 


しかし、長期政権化したから中曽根首相とレーガン大統領との信頼関係ができたのではありません!
いいえ、違いますね。政権発足直後の1983年1月訪米のときに信頼関係ができたのです。
そのとき、中曽根首相は、日米運命共同体、不沈空母発言など、日米基軸路線を明確に打ち出した。米ソ冷戦のときに、立場をはっきりさせて、野党社会党(現在の民主党の前身の一部)の猛烈な反対にもかかわらず、微動だにせず、前政権でこじれた日米関係を修復した。

小泉政権は長期化しました。 


しかし、長期政権化したから小泉首相とW・ブッシュ大統領との信頼関係ができたのではありません!

2001年9月11日の米同時テロに対して、9月25日の日米首脳会談で小泉首相が「自分は大統領とともにいる(I stand by you)。テロとの戦いで大統領を助ける」と言い切り、野党民主党がどんなに対米協力の各論において法案成立に反対しても、微動だにせず、断固として日米同盟関係を堅持したからではないですか。

日本の民主党政権は、2008年のオバマブームにあやかって2009年に政権交代を実現した。本当は同志的友情愛にみちた関係でもよかったはず。ところが、国内の政権維持本位のためにI stand by youが出てこない。米大統領は裏切られ続けてきた。

そして、今朝の読売新聞によれば、昨日の日米首脳会談は、


「両首脳が冒頭、笑顔で握手し、友好ムードいっぱいだった会談は、記者団が姿を消した途端、実務的な雰囲気に一変した。」

「大統領は2国間の難題を次から次へと取り上げ、首相に具体的な成果を求めた。」

「約35分の短い会談だったが、「大統領からジョーク一つ出なかった」(首相同行筋)という。日米両首脳の初顔合わせとしては異例の展開となった。」


つまり、これをかつて社会主義国の政府メディアが社会主義国同士の会談を論評するときに使い分けてきた表現を用いると、「友好的な雰囲気」ではなく「実務的な雰囲気」だったということではないですか?

「実務的雰囲気」というのは同盟国首脳の演出としては実に困ったことです。手堅い官僚のペーパーを読む野田首相の実務的対応に対して、米国側も実務的に対応したということが読みとれますが、どうでしょうか?

このように、信頼関係をつくるには長期政権化を、まずは手堅く外交デビュー、顔見世興行、というのは日本国内でしか通用しない論理ですし、日本国内政治リスク最優先、外交懸案課題にチャレンジしたくない人の逃げ口上です。

首脳同士の信頼関係は、国内政治リスクをとって懸案課題にチャレンジして、約束を守ることです。チャレンジもせず、約束も守らない政権はどんなに長期化しても信頼されません。

中曽根政権、小泉政権は課題にチャレンジした結果、日米同盟を強化し、長期政権化したのです。

課題を先送りして長期政権化した結果、信頼関係ができたのではありあせん。