「日本の経常黒字を円高の理由としているが、これは20年以上前の議論だ」(ドクターK) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

「日本の経常黒字を円高の理由としているが、これは20年以上前の議論だ」(ドクターK)

秘書です。

社会人になったのが20年以上前で、その後は勉強しないで現場にどっぷりつかっているみなさん!(私もそうですが)

みなさんの円高の知識はこういうものですね?

「かつて大学の経済学では、為替レートは経常収支で決まり、黒字なら円高になると教えていた。収支が黒字の場合、輸出で稼いだドルを円に替える額のほうが、輸入代金支払いのために円をドルに替える量より多くなるので、円の需要が高まって円高になるという理屈だ。」

でも、これは時代遅れです。


「しかし今の時代、貿易の実需が為替に与える影響はほとんどなく、様々な思惑が渦巻く金融取引が影響の大部分を占める。従って、円ドルレートを決定づけているのは、円の総量とドルの総量の比率なのである。」

20年以上前に社会人になったみなさんは、そんなこといったって、日本のエリートはちゃんと考えているんだ、これまでもうまくいったんだからこれからもうまくいく、と思っているでしょう?だから20年も停滞が続いているのでは?

日本では、エリートほど実社会では根回しのほうの学習の時間を割いている(博士号の学位を持っている人が国際的にみても低い反知性主義)と思いますが、それでもコツコツ勉強していた人がいたとして、いまの政策はおかしいと気づいても、20年以上前から続く人事評価の暗黙の基準となっている政策についての思考法で考えなければ出世ができないとなれば、人事評価の暗黙の基準に従うのが人情というものでしょう?


正しいか正しくないかは、真か偽かではなく、身内共同体の多数説か少数説かで決まる。ある人は、それは法学士的発想という。この法学士的発想が政策コミュニティを支配するから、その政策の結果が惨憺たるものでも、それは外的要因であって政策の誤りではない。政策は多数説であれば必ず正しいのであって、結果が悪いのは偶然的要因にすぎない、となる。こうして、日露戦争の必勝法で最新鋭の米軍に立ち向かうことが繰り返される・・・

そんなこといったって、日本のエリートはちゃんと考えているんだ、これまでもうまくいったんだからこれからもうまくいく、という高度成長期にのみ適応可能だった発想が変らない限り、何度政権交代しても、日本は変らないでしょう。



円高容認論の根本的な間違い/ドクターZ
現代ビジネス 9月18日(日)7時5分配信
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110918-00000001-gendaibiz-pol

 歯止めのきかない円高に業を煮やしてか、円高容認論、円高メリット活用論が叫ばれている。だが、なぜ円高になるのかという根本部分が間違っているため、展開される論も必然的に頓珍漢にならざるを得ない。『週刊東洋経済』の記事「日本は円高受け入れへ政策の大転換をすべき」(8月13・20日号)はその典型だ。

 この記事は大まじめに欧米の財政危機を通貨安(=円高)と関連づけている。しかし、ギリシャなどが財政危機に直面しているのは事実としても、米国は違う。単に格付け会社が米国債を格下げしただけで、金利や国債の危険度を測るCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)レートに変化はなく、今でも世界一安全な債権だ。つまり、財政危機を円高要因とする分析に根拠はない。

 また、この記事では日本の経常黒字を円高の理由としているが、これは20年以上前の議論だ。かつて大学の経済学では、為替レートは経常収支で決まり、黒字なら円高になると教えていた収支が黒字の場合、輸出で稼いだドルを円に替える額のほうが、輸入代金支払いのために円をドルに替える量より多くなるので、円の需要が高まって円高になるという理屈だ。

 しかし今の時代、貿易の実需が為替に与える影響はほとんどなく、様々な思惑が渦巻く金融取引が影響の大部分を占める。従って、円ドルレートを決定づけているのは、円の総量とドルの総量の比率なのである

 実際、米国は現在、金融緩和でドルを刷り続けるが故にドルの価値が下がり、逆に緩和に慎重な円は相対的に希少価値が出て、円高になっているのだ。この原理は今や国際経済学のスタンダードで、特に最近5年ほどの円ドルレートの動きは、両通貨の総量比との関係で9割近く説明できる。円高を論じるのであれば、この理論をまずはベースにするべきだろう

 ところで、当然ながら円高にはメリットとデメリットがある。海外製品の購入や海外旅行が安くなるのがメリット。他方、輸出企業---日本が世界に誇るエクセレントカンパニー群---が打撃を受け、企業閉鎖や海外移転を余儀なくされるのがデメリットだ。その副作用として、雇用まで奪われるから、日本全体を考えれば、デメリットのほうが断然に大きい。

 また、日本の対外債務は円建てが多く、対外資産は外貨建て(ドル建て)が大部分を占める。従って、円高はトータルで見ると損となって対外純資産を減らしてしまう。その典型が政府の外国為替資金特別会計(外貨準備)だ。円高によってすでに30兆円程度の為替差損が出ており、過去に利息収入はあったものの、結果としては国民の資産を減らした計算になる。

 困ったことに、こうした理屈を理解していないのが、どじょう総理こと野田佳彦新首相だ。野田氏は代表選の最中、円高対策として外為特会の1000億ドルをJBIC(国際協力銀行)を使って外貨建て融資すると言っていた。これは円高メリット活用策のように見えるが、金融緩和をしないまま外貨建て融資を行えば、円高進行に伴ってさらなる為替差損が出る愚策だ。そもそも、円高対策にはまったくならない。

 この「対策もどき」は、天下り先であるJBICに金を回すために財務官僚がひねり出したものだ。その筋悪のプランに、野田氏はまんまと乗せられたのである。外為特会のカネを財務官僚の天下り先に流して損を出すくらいなら、被災者のために使うべきだろう