増税一直線!でもその前に・・・ | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

増税一直線!でもその前に・・・

秘書です。

増税の道に命をかけた総理の意地が火と燃える~♪
でもその前に!


増税一直線の野田政権に告ぐ
増税に代わる財源を示そう


第21回 2011年9月8日 高橋洋一 [嘉悦大学教授]
http://diamond.jp/articles/-/13925?page=5

 野田佳彦首相は、高校時代に柔道部だったというが、「柔道一直線」ならぬ、財務省の戦略通りに「増税一直線」だ。新内閣発足直後に実施された世論調査では、いずれも内閣支持率は60%前後と高い。また、東日本大震災の復興増税に関しても、賛成派はほぼ半数に上った。

 ご祝儀もあるだろう。また、復興増税では新聞各紙が気持ち悪いくらいに賛成している。そうした新聞を読む人を対象にすれば、増税賛成が多いのも頷ける。また、新聞では増税以外の財源を示さずに調査しているのも、賛成を大きくする要因だろう。

野田政権が進める増税3段跳び

 野田政権の進める増税は、復興増税、社会保障、財政再建の「3段跳び」の早いペースで進むだろう。まず「ホップ」は10月にもまとまる3次補正予算での復興債償還のために復興増税だ。基幹税ということだが、所得税増税が中心だろう。

「ステップ」は今年の12月中旬頃。来年度の税制を決める『税制大綱』で社会保障費の財源を確保するため、消費税増税が議論され、年明けの通常国会に提出されるだろう。年内で一気に増税路線となる。

 最後の「ジャンプ」は、「ホップ」「ステップ」では復興予算と社会保障の財源措置だけなので、まだ財政再建とはいかない。そのため本格的な財政再建のために増税、これもおそらく消費税の税率アップが狙われるだろう。

 第1に、「ホップ」の復興増税はどうなるか。今のところ3次補正予算規模は13兆円、その財源は税外収入が3兆円、復興債が10兆円。安住淳財務相は税外収入を3兆円から4兆円にして、復興債を9兆円としようとしている。ここで復興債はつなぎ国債なので、その発行額が増税になる。

 当初は5年間くらいの増税期間であったが、最近ではさすがに増税の影響が大きいということで、20年という案もでている。財務省もいろいろな財源を探られるのはイヤなので、期間の話へと誘導しているようだ。これだと、確かに1年間の影響は少なくなるが、税が恒久化するおそれも出てくる。増税しないで済むなら、そのほうがいい

増税しなくてもこれだけある財源

 増税ではない最も簡単な方法は、今年度予算の日銀引受枠30兆円のうち未使用の18兆円の活用だ。これなら法律改正なしで、しかも今の予算の枠内でできる。4月21日付けの本コラムで紹介しているので、ご存じだろう。最近、先の民主党代表戦に出馬した馬淵澄夫氏も主張している。

 具体的にいえば、3次補正予算13兆円で、財源は税外収入4兆円、復興債9兆円だが、復興債償還のための増税措置は不要だ。その代わりに、国債発行計画を書き直す。

 まず今年度国債発行計画についてみると、新規財源債44.3兆円、借換債111.3兆円、財投債14兆円の計169.6兆円が発行されるが、借換債111.3兆円のうち11.8兆円を日銀が引受、そのほかの借換債99.5兆円、新規財源債44.3兆円、財投債14兆円の計157.8兆円は市中消化される。

 これに対して、復興債を9兆円発行するが、まず、市中消化とする。ただし、市中消化分の借換債99.5兆円のうち9兆円を日銀引受に回す。すると、市中消化分は、復興債9兆円、新規財源債44.3兆円、借換債90.5兆円、財投債14兆円の計157.8兆円と今年度発行計画と同額になる。このため、市中金利の上昇はない。と同時に、借換債の日銀引受は20.8兆円となって、現行の特会予算総則の範囲内になる(グラフ参照)。

$中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

今の予算枠を使っているので複雑なようにみえるが、復興債9兆円を日銀引受したのと同じ経済効果だ。

 日銀引受は禁じ手であるという話がある。安住財務相も就任後の記者会見で、そう語っている。この程度は日銀のマネタリーベースを増加させずインフレのおそれがないとして、毎年行われているし、すでに今年度予算でも認められていることだ。安住財務相は、こうした事実さえも知らされずに、日銀引受は禁じ手といわされている

 次には償還財源にならないという反論があるだろう。しかし、日銀引受ではシニョレッジ(通貨発行益)増となって、日銀納付金という形で将来の税外収入になる。会計上の技術上の問題により一気に全額納付金とならないが、もし日銀引受の代わりにそれと経済的には同等な政府貨幣を発行した場合を考えてみればいい。ちなみに、記念通貨貨幣発行なら毎年行われて、それに伴うシニョレッジは税外収入として予算計上されている。

 この18兆円の日銀引受枠の活用は、今の予算のままで、新たな法律措置も不必要で政府の判断だけでできる。しかも、財源問題、円高問題、さらにデフレ脱却の一石三鳥になる

 18兆円の日銀引受枠の活用だけで、3次補正の財源として十分であるが、他にもまだまだ財源はある。国債整理基金特別会計の10兆円だ。実は、それを取り崩さなくても、定率繰入を停止して今年度予算の中の償還費10兆円を3次補正予算の財源にすればいい。具体的には、3次補正予算13兆円、税外収入4兆円、償還費9兆円減額となる

 この方法は過去に11回もやっている。そのたびに国債償還には問題ないと国会で政府は答弁しており、実際にも問題になったことはない。

 日銀引受枠18兆円と国債整理基金10兆円の他にも、労働保険特会5兆円、日本郵政株5~10兆円や日本たばこ産業株2兆円の売却など、手を付けるべきところはまだまだ残されている

厚生年金、健康保険の保険料未徴収は巨額

 第2に、「ステップ」の社会保障についても、その財源を消費税に求めることは理論的におかしいことを、1月27日付けの本コラムで書いた。

 こうした理論上の話以外にも、増税の前にやるべきことがある。浅尾慶一郎衆院議員(みんなの党)が2月28日衆議院予算委員会で指摘した、法人の情報把握不備による社会保険料の未徴収、いわば「消えた保険料」が12兆円もあることだ

 社会保険の徴収がかなり杜撰であるのは、“消えた年金”で既にわかっている。国税庁資料では全国に税務申告すべき法人が260万あるが、厚労省では170万余の事業所しか把握していない。民間給与支払者数と厚生年金保険料支払者数の差から単純に試算すると、厚生年金保険料、健康保険料がそれぞれ6兆円合計で12兆円も未徴収ということになる。

 この消えた保険料がどの程度なのかは実はよくわからないが、国税庁と年金機構(旧社保庁)の徴収部門の合体、いわゆる歳入庁を実現すればかなりわかる。ところが、民主党は政権交代前は歳入庁に熱心であったが、政権交代後は、財務省と厚労省の意向を汲み、まったく及び腰になっている。

 世界のほとんど国で、社会保険料は税金と同じ扱いで、social security taxと呼ばれる。もちろん社会保険料の徴収と税の徴収は同じ機関だ。1998年に同じ機関になった英国の場合、二つの機関の統合で人員の整理合理化になるとともに、社会保険番号を国民納税番号として利用できるのも大きなメリットになっている。

 なお、歳入庁により国民納税番号も導入できると、税務調査の効率がよくなり、結果として税収が数兆円以上増加するだろう。

消えた保険料とともに、この税収増を含めれば、15兆円程度になる。「ホップ」での国債整理基金などは恒久的な財源ではないが、この15兆円は徴収漏れなので、きちんと徴収できれば恒久的な財源になる。

 第3に、「ジャンプ」の財政再建についても、前回のコラムのように、必ずしも増税ではなくデフレ脱却による名目GDP成長率アップによる増収で対応できる。

 増税は、例えば歳入庁に反対する財務省と厚労省という強い既得権者を打ち崩せないので、弱い国民にしわ寄せするものだ。官僚に迎合して、その結果、増税となれば、国民からそっぽを向かれるだろう。

「ポップ」「ステップ」「ジャンプ」のいずれの増税に対しても、他の財源措置はある。そうした他の方法をまともに議論せずに、増税一直線となると、今の高い支持率も急落するだろう。