円安・デフレ脱却で名目成長率が5%くらいになると、税収が2割アップする(高橋洋一氏) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

円安・デフレ脱却で名目成長率が5%くらいになると、税収が2割アップする(高橋洋一氏)

秘書です。
月曜朝は高橋洋一さんの「ニュースの深層」を読みましょう!


史上最高値を突破した円高につける薬はある
為替を読む『高橋法則』と民主党代表選の見方

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/16755
2011年08月22日(月) 高橋 洋一「ニュースの深層」


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これまで何回も書いてきたが、円とドルでどちららが相対的に多いか少ないかがポイントで、多いほうの通貨は希少価値がなく安くなる。少ないほうの通貨は希少価値が出て高くなる。これは、理論ではマネタリーアプローチ、実務経験則ではソロスチャートと同じだ。

 8月1日付け本コラム(史上最高値をうかがう円高は「人災」)では、2007年以降、日米のマネタリーベースの比によって円ドルレートの9割方は説明できる、と書いた。

 それは関係者にとって不都合な事実のようだ。都合のいい期間だけをとっているという反論もある。もちろん、こうした数量的な分析をする以上もっと長い期間でも分析している。

 そこで、1970年から40年間以上の歴史をみてみると、もっと面白い事実がわかる(下図参照)。最高値を付けたあとは少しリバウンドすることもありえるが、少し長いスパンで為替を考えるのにも歴史は役にたつ。

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一部の期間を除いて、円ドルレートは、だいたい日本の円の総額と米国のドルの総額の比率(円ドル比
率)になることがわかるのだ。円ドルレートは、日米の通貨の交換比率であるが、それぞれの総量の比になっているとは、何と単純・明快な話ではないか。でも、ちょっと考えてみれば、交換比率を決めるのは、それぞれの量だから、当たり前だ。(なお、季節変動による一時的な上下(ギザギザ)は考えなくてもいい)

 ちなみに、円ドルレートと円ドル比率の相関係数は、1990年以降、2000年以降、2005年以降、2007年以降、それぞれ0.67、0.77、0.84、0.91とかなり高い。

 除かれる一部の期間とは、
(1)プラザ合意(1985.9)の前
(2)日本の量的緩和(2001.3~2006.3)
(3)米国の量的緩和(2008.3~)である。

(1)は最後に説明するとして、(1)と(2)は、ちょっと円ドルレートが円ドル比率から乖離している。しかし、量的緩和して急に円ドル比率を変えても、すぐには円ドルレートが修正されない。時間をかけて、円ドル比率に収斂していくのだ。

 日本の量的緩和は2006年3月にやめてしまったので、収斂しきれずに、その後の日本の引き締めになって、円高に向かっている。また、米国の量的緩和では、このまま行くと、相当な円高圧力が継続する。(テクニカルな話だが、そうした収斂がある場合、相関係数は高くなる)

(1)については、プラザ合意で1ドル240円くらいから1ドル130円への調整が2年間くらいで行われているが、その前はいわゆるダーティフロートという管理された「変動相場制」だ。見方を変えると、円ドル比率から計算される「理論値」である1ドル130~150円と比較して、1ドル200~250円くらいに円安誘導していたわけだ。

日本の経済成長と為替の関係

 ニクソンショック(1971.8)以前は1ドル360円だから、かなり円安に設定されていた。そうした円安が輸出競争力を高め、日本の高度成長の原動力になっていたかもしれない。

 こうした見方は、日本の技術力が高度成長の要因という常識とは異なる。しかし、海外競争においては価格が重要な要素であるのは否定できず、さらに、技術が90年代以降急速に劣化したというものなかなか考えにくい。円安誘導で経済成長というのは、しばしば見られる他国でも形態であり、日本の高度経済成長とその後の経済停滞をよく説明しているのではないか。

 特に2000年代後半以降の、日銀の金融引き締めとFRBの金融緩和で、強烈な円高になって、国力を著しく弱めているのは問題である。量的緩和をやめずにFRBと歩調をあわせて金融緩和していれば、円ドルレートは1ドル120~150円くらいに維持でき、日本経済も今ほど悲惨になっていなかっただろう

 こうした為替に対する理解は、今月中に行われる民主党代表選おける経済政策の争点を浮き彫りにする。


マスコミは為替を理解していないので、円高は、これまで欧州危機、米国債務上限、米国債格下げなどと説明され、それらでうまく説明できないとわかると、今度は米国景気回復の遅れ等の海外要因で円高が進むというのが定番解説だ。ニュースで「今、何故円高なのか?」って質問にまともに答えられないのが現状だ。

 ところが、円ドルレートは円ドル比率に収斂すると考えればすっきりする。今は、前掲の図からみると、1ドル50円になっても不思議でないほどの円高圧力がある。

民主党代表選挙で問われる「円高デフレ」

 このように理解すると、円高の原因は海外要因だけではなく国内の金融緩和不足であることもわかるので、円高対策は政策論争の争点になる

 円とドルの量で円高が説明できることがわかる人は、円とモノの量でデフレであることもわかる。モノに比べて、円が少ないとモノの価値が下がって、デフレなのだ。だから、金融緩和して円を増やすと、円高もデフレも一緒に解消できる。

 すると、民主党代表選で話題になると思われる増税とも、円高問題が密接に関わってくることがわかる。つまり、円高・デフレが解消できると、輸出企業や国内向け企業はともに企業収益が上がり、法人税収などが上昇する。

 過去15年間の税収弾性値を、税制改正の効果を考慮せずに、形式的に算出すると平均で4になる。これは、円安・デフレ脱却で名目成長率が5%くらいになると、税収が2割アップする。そうなると、自然増収で増税議論ができなくなる

 ここまでくるとわかるだろう。円高・デフレの改善策は、実は増税回避にもなるのだ。表向き争点になっている増税の是非は、円高・デフレに対して無策か正しい処方箋があるかどうかになる。

 こうした観点から今上がっている代表選候補者をみると、野田佳彦財務相らの現政権閣僚は、円高を放置してきたので無策といわざるを得ない。その無策のツケを増税で国民につけ回す。しかも、円高・デフレの根本対策がないので、為替介入で損を出すのと同じで、増税でも税収増にならない。経済政策としては落第点だ。

 一方、小沢鋭仁元環境相や馬淵澄夫元国交相の円高対策は金融緩和と正解である。しかも増税反対というので論理も一貫している。

 根本的な問題は、そうしたまともな候補が代表選出場のために20名集めで四苦八苦しているという民主党内の状況だ。

 日本の高度成長、これまで技術力だ、官僚の指導のためだという俗説がはびこっていた。ところが、実のところ、大きかった要因は円安だ。となると、円高対策が今後の日本経済の行く末への試金石になることもわかるだろう


→世界大恐慌の中での金解禁をやった浜口雄幸政権のようなことになりませんように・・・。でも、日本のエスタブリッシュメントの間では今でも浜口雄幸―井上準之助のデフレコンビが英雄視され、その誤りを正して日本経済を復活させた高橋是清があたかも戦争突入の原因をつくった戦犯のように扱われていますからね。特に最近、高橋是清に対する誹謗中傷はひどいものがありますね。某銀行を中心に。この誤った歴史観から民主党は脱却できますか?