「日米のマネタリーベースの比によって、円ドルレートの9割方は説明できる」(高橋洋一氏) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

「日米のマネタリーベースの比によって、円ドルレートの9割方は説明できる」(高橋洋一氏)

秘書です。

円高。当局は「注視」し続け、企業は「脱出」を考える。

脱出の前に、政策転換を考えましょう。



史上最高値をうかがう円高は「人災」。復興増税を狙う財務省と日銀の日本的官僚制度が犯人だ  欧州危機や米国債問題は本質ではない
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/14190


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変動相場制では為替相場に何の影響も与えられないかというと、それは違う。自由になった金融政策を使えばいい。原理は単純。円とドルでどちららが相対的に多いか少ないかだ。多いほうの通貨は希少価値がなく安く、少ない方の通貨は希少価値が出て高くなる。こうした考え方をマネタリー・アプローチといって、国際金融では常識になっている。

この単純な原理でその程度、為替を説明できるのだろうか。2007年以降、リーマンショックで米国はドルを増やしたが、日本はほとんど増やしていない。


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その結果、猛烈な円高になった。単純な回帰分析をすると、日米のマネタリーベースの比によって、円ドルレートの9割方は説明できる。

円/ドル=67.5+41.5*日米マネタリーベース(億円/百万ドル)の比率・・・(*)

複雑な動きをするとされる為替レートがこれほど単純に説明できるのはかなり衝撃的だ。


このように為替の決まり方を理解していると、財務省に為替権限あること自体がおかしいことがわかる。財務省が為替権限を手放さないのは、100兆円にものぼる外為資金運用にかかわる利権だからである。

外為資金は、為替の変動の乱高下を防止するとの目的で国債(為券)を発行して外貨債を購入するものだ。マネタリー・アプローチからほとんど意味はないことが分かるだろう。現に100兆円もあるのは、これまで巨額の介入をしてきたからであるが、円安にはならずに、円高で含み損が30兆円程度発生している模様だ。これはすべて国民負担なのである。

法律上の権限が財務省にあって絶対に手放さないことをいいことに、無為無策を通しているのが日銀だ。

本来であれば、財務省の外為介入を事業仕分けで廃止すべきであり、その事業を日銀に行わせるほうが、責任の所在も国民に明確になっていい。しかし、財務省に甘い民主党政権ではできないだろう。

 さらに、為替は二国間の通貨の交換比率である以上、マネタリー・アプローチのように、二国間の金融政策の差によって決まることを理解していると、しばしばある為替が国力で決まるという説明にはほとんど意味がないことがわかる。

 欧州危機になると円高、米国債務上限問題になると円高と、いつも海外にばかり説明要因を求める人もあてにならない。日々の為替の動きにそうした要因が含まれることもあるが、より長い目で見れば、あまり本質的でないこともわかるだろう。

為替の背後で、(*)のような関係があり、欧州危機や米国債務上限などの個別イベントが起こると、円高圧力が顕在化するのだ。となると、円高対策はすぐに分かるだろう。円を刷って、相対的にドルより増やせばいいのだ。


かつて、実際にこの方法をやったことがある。 私が小泉政権にいたとき、2004年に行われた「溝口・テーラー介入」といわれるものだ。

ここで、一般には「介入」と名付けられているのは、財務省のメンツがあるからだ。実は、国債(為券)を発行して外貨債を購入する介入では効果がなかった。当時、量的緩和が行われていたので、財務省が30兆円以上も国債(為券)を発行すると金利が上昇するので、日銀が国債(為券)の半分以上を買い取り、その結果マネタリーベースが増えて、円安になっただけだ。

現時点で、日銀がどのくらいマネタリーベースを増やせば円安になるのか。(*)式からいえるのは、30兆円程度増やすと5円程度円安になる。

今、民主党で復興増税が議論されている。復興予算規模としては20兆円程度である。このコラムで指摘してきた(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/6614 そこでは日銀のマネタリーベースが減少しているので、円高予想が書かれている)ように、今年度予算では、借換債の日銀引受枠がまだ18兆円余っている。それを使った上で復興債18兆円を市中消化すればいい。

これは、今年度予算ですでに国会議決した範囲内の話であるが、日銀引き受けが18兆円増えるので、復興財源問題は解決する(日銀引き受け分の国債の利払いは、日銀からの納付金でほぼ相殺されるから財政負担にならない!)。

この予算枠は使うことができるのみならず、政府が使わなければ政府の怠慢になる。まして、国会議決した予算なので、日銀総裁が反対できる話でもない。政府が決断すれば、円高も復興財源問題も一気に吹っ飛ぶのだから、やらない手はない。行わなければ、円高と復興増税の人災だと証明することになる。



日銀総裁は「歌を忘れたカナリア」!円高無策の重い責任
2011.08.01 ZAKZAK 高橋洋一氏
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110801/plt1108010905000-n1.htm

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日銀は典型的な官僚組織であり、自らの政策失敗を認めないので、原因を他者に転嫁する傾向がある。ちなみに、デフレも、モノと通貨量の相対関係においてモノが相対的に多く希少価値が少なくなって価値が下がる現象だ。通貨量の相対的な少なさが原因という意味で、円高と同じであるが、日銀は人口減少のためであると説明してきた。

 昨年10月14日の本コラムで人口増加率と物価上昇率には関係がないことを書いたが、22日に政府が公表された今年の経済財政白書でも同じことが指摘され、日銀の主張が間違っていたことが明らかになった。

 為替が二国の金融政策によって決まるというのは、若き日の白川方明日銀総裁が論じた話だ。それにも関わらず日銀は円高の悪影響を説きながら円高問題に対応しようとしない。だから、白川総裁は、「歌を忘れたカナリア」(浜田宏一エール大学教授)といわれるのだ。

(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)