秋の3次補正:大増税派vs増税なき復興派→この夏、日銀史観が巷に蔓延し増税地ならしか? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

秋の3次補正:大増税派vs増税なき復興派→この夏、日銀史観が巷に蔓延し増税地ならしか?

秘書です。

秋の三次補正では、増税が争点になるでしょう。

民主党代表選があれば、そこでも増税が争点になるでしょう。



小沢鋭氏が代表選公約 「デフレ脱却」前面に
2011.7.23 01:10 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/110723/stt11072301100001-n1.htm

 次期民主党代表選出馬を目指す小沢鋭仁元環境相は22日までに政権公約をまとめた。デフレ脱却に向けた成長戦略を柱とし、原子力発電の段階的撤退、関西・中部の副首都的機能整備などを打ち出す。ほかの「ポスト菅」候補に先駆け、27日に発表し、代表選出馬の条件となる国会議員20人の推薦人を確保する構え。

 政権公約では、東日本大震災の復興財源を確保するために増税すれば逆に景気悪化を招くとして批判。金融政策による景気回復を目指し、政府・日銀による上昇率0~2%の物価安定目標の設定を明記した

 被災地復興策としては、地震や津波に強い高層ビル群を建設し、高層階を渡り廊下で結ぶ「空中回廊都市」構想を提案。「環境先進都市」作りを掲げ、首都が被災した際に首都機能を代替するため関西・中部の既存施設を活用する副首都的機能整備も盛り込んだ。

 原発については、当面の新増設を否定し、長期的視点での段階的撤退を提唱する。撤退を見据えた再生可能エネルギーや省エネを「次世代型公共事業」と位置付け、開発、普及、発展を目指して資金や人材を集中投資する「傾斜生産方式」の導入を打ち出した。

 政治主導の強化策として、大臣ではないが閣僚に近い役割を特定分野で担う「閣外相」を設けるほか、民間人を含む10人程度の大臣補佐官室新設を提起。ねじれ国会による混乱を回避するため、参院が予算関連法案に反対することを抑制できるような与野党の枠組み作りを提唱した。

 また、憲法改正にも触れ、発議要件の緩和を提案した。

 社会保障については「高福祉中負担社会」の実現を掲げた。年金や医療、介護などの社会サービスへのセーフティーネットを強化する一方、ボランティアなどの活用で高負担の回避を目指すとしている。


→こうした「増税なき復興」派に対して、この夏、先の大戦に関する歴史認識についての、日銀固有の歴史観をもとにした、日銀国債引き受け反対の大キャンペーンがはじまりそうです。


例えば、下記の番組では、日銀史観がどのように扱われるのか、または扱われないのか、注目です。

NHKスペシャル 圓の戦争
8月14日(日)[総合]後9:00~10:00
http://cgi2.nhk.or.jp/navi/detail/index.cgi?id=920110814

→日銀史観の原典はこのようなものです。この日銀史観が1ドル=77円という行きすぎた円高を放置し、東北復興は大増税しなければ無理との誤った財政観の根幹です。歴史認識は現在に対する政治闘争です。

「昭和7年秋に本行が国債の本行引き受け方式の実施に同意したことは、やがて本行からセントラル・バンキングの機能を奪い去るプロセスぼ第一歩となったという意味において、まことに遺憾なことであった。これは本行百年の歴史における最大の失敗であり、後年のわれわれが学ぶべき深刻な教訓を残したものといえよう。」

「日本銀行百年史」
http://www.boj.or.jp/about/outline/history/hyakunen/
後編管理通貨制度時代
第1章 管理通貨制度への移行(昭和7年~11年)
― 満州事変期のリフレーション政策 ―
1.金融財政政策の転換 
(5)いわゆる高橋財政期における財政政策と金融政策

http://www.boj.or.jp/about/outline/history/hyakunen/data/hyaku4_1_1_2.pdfのpp.55-56.

→日銀プロパーはこの日銀史観にそわなければ立身出世ができないのでしょう。2008年のねじれ国会の日銀同意人事で日銀プロパーにこだわった民主党の責任大です。

→日銀200年史には、日銀百年史に記述された歴史観に呪縛され、95年以後の行きすぎた円高と長期デフレを放置し、終身雇用制を崩壊させ、日本人の勤勉意識を転換し、産業の国外流出を招いたことを「本行二百年の歴史における最大の失敗であり、後年のわれわれが学ぶべき深刻な教訓を残したものといえよう」と記述することになるでしょう。しかし、その間に生きた人々、いまの私たちの人生に対して、どのような責任をとるのでしょうか?


→日銀史観は、大戦への道のりにおける高橋財政の責任を過大評価することによって、2,26事件の影響を矮小化し、2.26事件以後の馬場財政の責任を免責することにつながりかねないのではないでしょうか。秋の増税決戦に向けて、この夏、日銀史観が巷にあふれるか、注目しましょう。

→下記のような、当時の論調もふまえ、全ての責任を高橋是清におしつけ、高橋是清が不況を脱出に成功した史実を封印し、暗殺後の財政政策の転換も暗殺された高橋是清の責任とし、日銀の国債引き受けが戦争拡大の原因であったかのごとき矮小化した議論により、今日のデフレと長期デフレを肯定する議論が蔓延するか、注視しましょう。本ブログは、浜口内閣における世界恐慌下の金解禁による不況の深刻化が戦争への道の起点ではないのかとの歴史観で、日銀史観勢力に対抗していきたいと考えております。


結城財政の動向 馬場財政修正の財界の意向実現
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/das/ContentViewServlet?METAID=10043683&TYPE=HTML_FILE&POS=1&LANG=null
大阪朝日新聞 1937.2.8(昭和12)

革新勢力との調和に暗影 財政不安なお解けず
林内閣がその顔触れの貧弱さのために成立早々から弱体内閣の名前を冠せられている中にあって、財界から殆ど無条件的といってもよいほどの好感をもって迎えられているのは結城氏の蔵相就任である。それは新蔵相の手によって馬場前蔵相の財政経済政策に修正が加えられるだろうと期待されるからであるが、馬場財政から結城財政へ、この転換が何故かくも歓迎されるのか、この問に答えるためには一応馬場財政の辿って来たコースを振り返って見る必要があろう。

 二・二六事件によって一段と表面化された非常時局の中に花々しい一役を買って登場した馬場蔵相は、時局に対する氏独自の認識に本づいて次のような財政方針を発表した。

一、現在の情勢においては歳出の減少を予想することは不可能であるのみならず、将来新たなる増加をも覚悟せねばならぬ。
一、この国費の増加に対しては将来の歳出の見通しをつけ、増税によって普通歳入の増加を計る
一、そのために中央、地方を通ずる税制の根本的改革を行い、負担の均衡を租税収入の増加を期する。
一、同時に赤字公債の発行も不可避と見、その漸減方針を固執しない。
一、そのためには積極的な低金利政策を行い、産業の発展と公債の消化とを助長させる。

 かかる根本原則の上に立てられた馬場財政は先ず昨年四月における低金利政策の強行に始まり、税制改革案の発表、十二年度予算の編成をもって一応国民の前に全貌を現わした。それは変革を好まない財界に幾度か衝撃を与え、或は「卵を獲ろうとして鶏を殺すもの」との非難を招き、或いは「無軌道財政」の酷評を浴びせられたものではあったが馬場蔵相自身の非常時認識に従えば、時局を収拾し得る最小限度の改革であり、□□が幾度か声明したごとく、財界に急激なる打撃を与えることのないように漸進的な方法によって実現されたものなのであった。
それは蔵相が就任後間もなく開いた財界首脳者との懇談会で述べたように、「もっと悪い事態に進んだかも知れないものを、この程度に食い止めた」ものであり、国民が蔵相自身と同じ程度の時局認識に達すれば最小限の改革として甘受すべく、またわが国の経済界はそれに耐えるだけの実力を持っているべきはずのものだったのである。


準戦時編成に民衆踊らず 馬場財政各方面に不評
 だが、一般の意識はまだ蔵相が「準戦時編成」と銘打って差し出した財政方針を無条件に受け容れるほどには昂揚されていなかった。全貌を現わした馬場財政には政党、財界、国民大衆のあらゆる方面から非難が注がれたが、最も不評を買ったのは次の諸点にあったと思われる。
一、漫然たる前途の見通しを基礎として、国内生産力を顧慮することなしに三十億四千万円という未曾有の膨大予算を承認したこと。十二年度予算案の成立に当って馬場蔵相は将来の財政の見通しとして(一)公債発行は今後五ヶ年間毎年十億円を限度とし、(二)増税は絶対に行わず、(三)昭和十六年以降は公債発行を漸減するなどの方針を発表した。しかしながら歳出増加の主要原因をなしている軍事費は国際間の相対関係で今後とも増加の可能性があること、しかもこれに対する財源は漠然たる歳入の自然増加をあてにしていることなどを考えると、この見通しには単純に国民を納得せしめ得ないものがあった。さらに問題となるのは歳出と国内生産力の関係であって、すでに十一年度の予算ですら現在の生産設備では費い切れない傾向にあったのに、三十億円を突破する新年度予算が認められて陸軍の六ヶ年計画、海軍の第三次補充計画などに着手することになれば、国内の生産力は国庫の支出に比してますます不足を告げ、物価騰貴と輸入の増大を来さざるを得ない。かかる国庫の需要増大に応ずるため急速に生産設備の拡大が行われるならば、それだけ国民貯蓄のうち公債の消化にあてられるべき部分に食い込むことになり、悪性インフレにますます拍車をかける結果になる。
一、右のような歳出の増大に応じて経常歳入の増加を計り、併せて国民負担の均衡を期するために、馬場蔵相は非常に広汎な税制改革を企図したが、財産税の創設、相続税の重課、所得税累進率の加重などは有産階級の非常な反感を買ったし、消費税、関税の引上げなどは国民生活を脅威するものとして殆んど全国民的な不満を煽った。そのほか取引税、外国貿易統計税、輸出統制税の創設、法人所得税の加重などは経済活動に打撃を与えるものとして、また第二種所得税の総合課税原則は赤字公債消化の財源たる銀行、信託預金などの増加を阻害するものとして財界に猛烈な反対運動を呼び起した。
一方、経済界における現実の推移も馬場財政の遂行に対して、政党や財界や国民大衆から注がれる反対のどれにもまして強力な否定を表示しつつあった。すなわち税制改革実施の気構えは前年下期以来漸次金融市場において預金増加の停頓と貸出激増の傾向を引き起し、赤字公債消化の前途に対する不安を濃化しつつあったが、さらに膨大な歳出予算の編成は年末に至って物価騰貴と輸入の激増を招来し、遂に輸入為替の管理という非常手段を余儀なくされるに至った。これら総ての現象はそれ自身馬場財政の遂行によって生み出されたものであるが、同時にまた悪性インフレーションへの脅威によってその続行を妨害するものでもあった。かくして馬場財政は政治的な事情によって中絶せられる以前においてすでに自ら生み出した矛盾の前に修正を余儀なくされるか、或いはこれを克服するために更に強力的な統制策に訴えるかの分岐点に立たされていたのであった。
 蔵相就任前の結城氏は興銀総裁として、東商、日商会頭として馬場財政の修正を要求する立場にあった。馬場蔵相に対する財界の不満についても知悉しているはずだし、氏自身の意見としてもまた馬場蔵相の財政経済政策に反対の意向をしばしば表明した。財界が結城蔵相の就任に期待する点も正しくこの点にある。新蔵相が馬場財政に対して具体的に如何なる修正を加えるかはまだ明らかにされていないが就任以来現在までに知られた範囲内では、その方針は

一、予算案については、軍事費には手をつけないが、その他の支出については再検討を加えなるべく削減、繰延べを行うこと
一、税制整理案については馬場案を一応放棄し、従って第二種所得税の第一種並びに第三種への総合課税は当分中止し、馬場案の新税中、取引税は廃止、財産税は全然廃止か、もしくは法人に対する課税のみを資本税のごとき形で存置することになるほか、地方税制の改正にも相当の修正を加えること

 大体において馬場財政に対して財界の抱いていた意向は殆んど全般的に実現されるものと見てもよいようである。


軍事費中心の尨大予算免れず 今後に残された難関
 かくして結城蔵相の就任以来、起債市場、証券市場のごときは早くも活況を胎んで動き始めておりそのほか財界一般に一脈の明朗さが萌しつつあるものの如く見受けられる。しかしながら財界は結城財政へのこの転換を契機としてわが国の財政政策が再び現状維持的な意味における平穏な軌道を進むことを期待してよいものだろうかどうか。この点結城財政の前途に二つの困難を予想しなければなるまい。
その一つは政治上の問題であって、広田内閣の総辞職から宇垣大将の大命拝辞に至るまでの切迫した情勢から当然予想されていたのとは、殆んど逆の傾向を持って生れ出た林内閣がいつまで存続を許されるかの問題である。具体的に財政経済政策についていえば、馬場蔵相の財政経済政策は少くとも主観的には革新的な意図を持っていたのに対して、結城蔵相の行こうとする途は、財界の現状維持的な意向を反映したより穏和な漸進主義である。広田内閣の庶政一新をすら手ぬるしとした革新的な勢力がどの程度までこの漸進主義を容認するであろうか。この点結城新蔵相の革新的動向に対する認識の深さと政治的手腕にまつべきものがあるとしても、前途にはなお相当な困難を予想させるであろう。
 第二に結城蔵相の政治的手腕がよく革新的要求と現状維持的要求との調和を計り得たとしても、なおわが国の財政が当面している経済的な困難は残される。結城財政は漸進、急進の程度においてこそ馬場財政と若干異るところがあるにせよ、原則として軍事費の増大を容認する点、赤字公債の発行を不可避と見る点においては、何ら異なるところがない。従って軍事費を中心とする予算の増大とこれを賄わんがための赤字公債の累積と、この二つの傾向によって財政の前途に覆い被さった不安は依然として残されるであろう。
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