原発再稼働問題の普天間化―選挙に有利か不利かで決断して解決不能にして複合危機を増幅 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

原発再稼働問題の普天間化―選挙に有利か不利かで決断して解決不能にして複合危機を増幅

秘書です。

東北と関東だけだったはずのこの夏の電力不足の懸念は、原発再稼働ができないために全国へ。

原発を再稼働させなくても、そこに燃料棒はある。使用済み核燃料もある(浜岡でさえ!)。そこに地震と津波が来たら、稼働させても稼働させなくても同じなのではないか?

もしも、真剣に「脱原発」というなら、安全確保をいうなら、燃料棒などをそこから抜き取って、どこかへ移動させるべきでしょう。しかし、それはやらない。(移動先の合意形成ができないからでしょう?)

そして、この夏の電力危機は全国的になる。全国的な電力の融通もできない。

これだけやれば電力は確保できます、電力会社の供給余力はまだありました、という目途はついているのか?


原発再稼働、耐性検査前提で電力危機深刻化
読売新聞 7月8日(金)1時48分配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110708-00000065-yom-pol
 菅首相の唐突な指示で全国の原子力発電所を対象に実施することになったストレステスト(耐性検査)を巡り、政府内の混乱がさらに深まっている。

 原発再稼働の前提と位置づける首相と、一部の原発はテストを経ずに再稼働させたい海江田経済産業相らとの意見が対立し、政府の統一見解が打ち出せない「閣内不一致」の状況だ。原発を抱える自治体は再稼働に消極的となっており、夏の電力不足が深刻化するのは避けられそうもない。

 首相は7日の参院予算委員会で、原発の再稼働に関し、「IAEA(国際原子力機関)もストレステストを提起し、(欧州で)実施している。国民的に納得され得る基準、体制で物事を判断しなければならない」と述べ、テスト実施が前提になるとする考えを示した。


→なぜ、佐賀県知事が上京する直前になってそのことをいうのか。夏の電力不足については震災直後から担当大臣まで決めて検討していたはず。なぜ、3月から手をうたなかったのか。そして、なぜ、夏の電力危機を乗り越えてからやらないのか。

→ストレステストを終えても、自治体は再開に同意しないかもしれません。それは、普天間問題と同じです。地元が受け入れになんとか合意形成をしようとしていたとき、政府が受け入れないでいいですよ、といい、後にやっぱり受け入れてください、といえば、もう合意形成はできなくなります。

→普天間問題でも「最低でも県外」といって後に撤回。そして、お願いする名護市には入らない、上空からしかみれない、県知事にしか会わない菅総理。もしも、菅総理の在任中にストレステストを終えて、玄海原発の安全が確認されたら、総理自身が地元入りして説得する覚悟はあるのか?また、上空から見るだけか?

→それとも、来年のいまごろ、原発稼働ゼロの脱原発国家をめざすのか?それならそれで、日本経済と国民生活と電力料金はどうなるかのビジョンを。自然再生エネルギー依存を進めようとしている割には、電力自由化、電力改革には消極的で現状維持路線。エスタブリッシュメントと本気で戦う決心は感じられませんが。権力維持のためにエスタブリッシュメントとは戦わない、無党派支持のために脱原発というちぐはぐな対応が危機を深めているようにみえますが。

→菅総理は、一つの決断が経済社会に複合連鎖して色々な結果を招くという複雑系の発想が苦手のようですね。すべては権力の延命と次期選挙に有利か不利かだけの単純な発想で決断し、複合危機をますます増幅しているようにみえます。同じく権力の延命と次期選挙に有利か不利かで考える民主党はこの複合危機の増幅を止められない。これは、権力の長期化が自明であった自民党長期政権の全盛期には、顕著にはみられなかった新たな危機ですね。(もっとも、当時は別の問題があったわけですが、今の危機とは別種のように思います)