日銀の誤った政策を修正させることは財政再建の前提条件である。(中川秀直) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

日銀の誤った政策を修正させることは財政再建の前提条件である。(中川秀直)


6月20日の日経新聞の経済教室に、R・クーパー・ハーバード大学教授、浜田宏一・エール大学教授の「復興時のマクロ経済政策」「金融緩和、世界経済に有益」との論文が掲載された。

「大震災の前から日本経済は15年越しのデフレと円高に直面してきた」「総需要不足のところに、激しい供給ショックが襲ってきた。ダブルパンチを受けている日本経済を復興するには、経済メカニズムの理にのっとった正しい回復策が必要である、世界に通用する経済学によれば、今、日本で一番必要なのは金融緩和である。日銀による国債の買い上げや引き受けを通じて実施すればよく、円安を導く政策でもある」

「一方、大規模な災害の復興財源をどう賄えばよいのだろうが。筆者は、消費税などの増税で賄うとすれば、日本経済に一層の不況圧力を押しつけることになると考える」

「現在の財政危機を解消するには、まず直ぐにできる金融緩和により歳入を増やし、手間がかかり効率上の損失を伴う増税に頼るのをなるべく少なくするのが、経済学の定石である。

「復興構想会議などは、実施時期を限った消費税増税を提案しているが、まるで災害という傷を負った子供に重荷を持たせ、将来治ったら軽くすると言っているに等しい。」

浜田教授は、デフレ下の3・11後の増税は、経済学の定石に反するとし、世界に通用する経済学によれば、増税ではなく金融緩和であり、具体的には、日銀による国債の買い上げや、引き受けの実施であり、円安を導く政策でもあると結論づけている。

ところが、産経新聞の「日曜経済講座」に田村秀男・編集委員が指摘しているように、菅直人首相とその周辺はまるでパブロフの犬のようだ。『財源』と問えば、ただちに『増税で』と反応する。

日本の名目GDPは、阪神淡路大震災発生時は489兆円(94年度)と東日本大震災発生時は479兆円(2010年度見通し)である。デフレこそが日本の閉塞の原因であり、税収減の原因である。財政当局のみなさんは気づいているはずだ。なぜ沈黙を保つのか。

財政当局のみなさんは、日銀のデフレーターゲット政策のもとでは税率引き上げをしても税収増にはつながらないことを理解しているはずだ。日銀の誤った政策を修正させることは財政再建の前提条件である。

デフレ下の増税が国民生活に与える打撃は誰が責任をとるのか。
(7月3日記)中川秀直