さすがの原研第一世代も、大量の汚染水を循環させて安定冷却に導くことに二の足を踏む(石川迪夫さん) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

さすがの原研第一世代も、大量の汚染水を循環させて安定冷却に導くことに二の足を踏む(石川迪夫さん)

秘書です。

循環冷却方式は、燃料と等量の塩が炉心に混在してお汁粉状のドロドロのものが流れて失敗するリスクが高いことは、以前から専門家は指摘していました。

菅総理は、もしも、循環冷却方式が失敗して、汚染水が海に流れ出て、再び「海洋を汚す罪」をするようなことがあれば、即時退陣すべきではないでしょうか?

中川秀直は、5月31日の予算委員会集中審議で、菅総理に循環冷却方式を見直すように提案しています。だから、万一のときには、「想定外」と逃げることはできません。

5月31日の指摘を再現しますと、

原発の工程表は、最初は東電任せでだんだん国が関与してくるようになってきた。国の判断が誤ると、国民負担に直結する。総理、現在の工程表の「循環水冷方式」で大丈夫ですか。メルトダウンしていたら、どんどん水が漏れる。汚染水が出続けるんじゃないですか。

水冷式の工程表を見直す必要があるのではないですか。総理、今やるべきことは、原発と海との間の地下に巨大な「カーテンウォール」をつくるべきという専門家がいますが検討しましたか。

政府の計画である「循環水冷方式」以外に、検討すべき選択肢としては、「空冷石棺方式」、「即石棺方式」などがある。

ある専門家の試算によれば、各方式の最も顕著な国民負担の差は、汚染水の清浄にかかる予算の見積もりの変動から出てくる。汚染水が異常に増える場合には今の案では、一兆から二〇兆円のコストが必要になるという指摘もある。

実際には細かな前提条件で左右され、そもそもの技術的成立性の問題もあるだろうが、大雑把な検討では、「循環水冷方式」のコストが100とすれば、「空冷石棺方式」は20以下、「即石棺方式」も15以下というコストで対応できるという。


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※循環水冷方式=残留熱が一定レベルに低下するまでの間水で冷やし続け、その 後、緑地化に向けて建屋の解体、放射性廃棄物の処分を含む廃炉を行う案
空冷石棺方式=今の水冷を早い時期に空冷方式に切替え、建屋を骨組みとして利用して乾式の放射性廃棄物貯蔵庫に改造していく案
即石棺方式 =予め放射性ガスの処理設備を作った上で強制冷却を放棄し、残留熱によるメルトダウンを積極的に起こらせてそれに対処する案


下の図は即石棺方式のイメージ図です(東工大・丸山茂徳教授)
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2011-06-08 15:31:00
原発対策国民会議の第3回勉強会で東工大の丸山茂徳先生の話を聴きました。
http://ameblo.jp/nakagawahidenao/entry-10917013837.html

→ということで、下記の記事をお読みください。


福島第1、浄化装置トラブル続出 汚染水処理、崖っぷち
2011.6.22 06:46 産経新聞
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/110622/dst11062206500006-n1.htm

 冷却のための注水が続く福島第1原発で、高濃度の放射性物質を含んだ汚染水の移送先が満杯に近づいている。あふれないよう汚染水を浄化し循環させる仕組みは、中核の浄化システムでトラブルが続き、見通しが立たない。東京電力は注水を抑えるが、温度が上がるため限界がある。気象庁は21日、東北の梅雨入りを発表。降雨で汚染水の急増も予想され、「汚染水処理は崖っぷち」(専門家)の状態だ。(原子力取材班)

                   ◇


移送先が満水寸前


 原発敷地内にたまる汚染水は約11万トン。1~3号機の原子炉には注水が続けられており、損傷した炉心からは、そのほとんどが漏れ出している。

 「注水すればするほど汚染水は増える」(東電)状態で、漏れ出た水は、原子炉建屋や隣接するタービン建屋、それにつながる作業用トンネル(トレンチ)にたまっている。高い放射線量の汚染水は復旧の妨げになっており、「汚染水処理は事故収束の生命線」(同)と位置づけられてきた。

 東電はこれまで、汚染水を「プロセス主建屋」など5カ所に移送し、増加に対応してきたが、すでに3カ所が満杯。予備の移送先として検討している2カ所の施設は、安全性の確認が済んでいないため現状では使うことができず、残された容量は、わずか1500トン分しかない。

 汚染水の増加を抑えるため、東電は原子炉への注水量を絞っているものの、原子炉の熱を取り除くだけの「余裕を持った量」(東電)は維持しなければならず、注水を減らすにも限界がある。

汚染水の放射性物質などを除去して原子炉冷却に再利用する「循環注水冷却」は、こうしたジレンマを解消する切り札のはずだった。しかし、中核施設である浄化システムはトラブルが続き、原子炉への循環注水のメドは立たない。


雨の流入 考慮せず


 一方、気象庁は、同原発周辺では23日から27日まで雨が降ると予想。大量の雨が損壊した建屋に流入して汚染水が急増することもあり得る。東電は、29日には外部へ流出する危険があるとみているが、雨の影響は考慮しておらず、想定が早まる可能性もある。

 日本原子力学会の沢田隆副会長(原子力安全工学)は「東電の見通しは甘く、汚染水問題は崖っぷち。外部へあふれれば、新たな対処に追われかねず、収束スケジュールに影響しかねない」と危惧している。


→原発専門家の石川迪夫さんも以下のように指摘していました。ほぼ石川さんの心配した通りではないですか。そして、政府・民主党は石川さんの警鐘を無視してきました。その結果が上記の記事です。


電気新聞「時評」福島第一原子力発電所~高濃度冷却水~ 平成23年5月18日
日本原子力技術協会最高顧問
石川 迪夫
http://www.gengikyo.jp/news/20110518.html


前報で炉心状況の推定と放射能の環境放出問題について述べたが、今回は頭の痛い高濃度汚染水の話だ。溶融炉心が吐き続けるガス(放射性物質)が冷やされて周辺の冷却水に混入し、今もその濃度を高め続けている。

その濃度だが、日本原子力の草分け、原研OBが集まっての(福島)原発対策検討グループの検討結果では、破損した3基の原子炉が持つ放射能の総量は、古い単位で恐縮だが、コバルト60に換算して約十数億キュリーと推定している。その僅か1%が混入したとして、冷却水が持つ放射能量は1千万キュリーにもなる。これはとんでもない恐ろしい量なのだ。

コバルト60は、照射線源として広く使われている。大体が1~5万キュリー程度の大きさだが、厚さ1.5メートルほどのコンクリート壁で囲まれた室内で取り扱われている。昔の放射線教育は、1キュリーのコバルト60が出す放射線の強さは、1メートル離れた距離で約1レントゲンと教えた。覚えやすく、放射能を感覚的に把握できる。

人は、短時間に700レム(700レントゲンの放射線量下で1時間)の放射線を浴びればほぼ確実に死ぬ。その約10分の1の50レムでは体調に変化を覚えるが、10レム以下では健康上の被害はないと教わった。荒っぽい話だが、その半分5レム程度を目安に、測定放射線量から作業時間を割り出して、昔は突撃した。

だが、1千万キュリーとなると、それはもう、感覚外だ。10円(10キュリー)を遣り繰りしている貧乏人に、1千万円を都合せよと言うに等しい。さすがの原研第一世代も、この大量の汚染水を循環させて安定冷却に導くことに二の足を踏む

炉心を冷却する設備が作れたとして、その遮蔽をどうするのか。余程しっかり作らないと被曝が問題となる。一度汚染水が通れば、配管の線量は高くなり、人が接近できないから失敗は許されない。

加えて困った問題が、腐食だ。これまで約2週間にわたって海水を注入した。その量は蒸発量から逆算して、1基当たり約3千~4千トン程にもなろう。それに含まれた塩類の総量は1基当たり約100トンにもなる。

これは燃料と等量の塩が炉心に混在していることを意味する。この大量の塩が炉心にどう作用し、どのような性状の物体を作っているのか、僕には見当がつかない

原研OBは、塩による配管や設備の腐食進行を心配する。原子力発電所で使われるステンレス鋼などの高級材料は塩素によって腐食し、応力腐食割れと呼ばれるひび割れを材料内部に作る。海水のにがりは、割れを更に加速するという。

冷却中の設備に割れが入れば何が起こるか、言を待たない。それだけではない。現存設備に腐食が生じれば、高汚染水が外部に漏れ出す恐れすらある

以上の指摘は正しいであろう。大いに参考とすべきだ。だが指摘に頭を抱えるだけでは、過日発表された工程表、溶融炉心を安定冷却に導く工作は実行不能となり、放射能の放出は止まらない。諦めてはいけない。指摘には、実態が分からないままの推測が混じるからだ。

目標に従って、炉心と汚染水の実態を先ず確かめよう。その把握のための作業場、橋頭堡を原子炉建屋に構築して、内外の知恵を集めよう。遅かりし恨みはあるが、この活動が現地でいま始まり出した。

実態さえ掴めれば、解決策は必ず立つ。それを国際協力の下に実施すれば、原子力災害への備えが世界的で進む。世界はそれを望んでいる。日本の出方を見ている。その期待に応えることが、福島を応援してくれる世界への使命であり、日本の原子力の将来に繋がると、僕は思う。


→この指摘を無視して、ここまで来てしまいました。

→不都合な真実を指摘する外部の声は遮断して、玉砕覚悟でつっこんでいく。「ここで軌道修正したら今までの犠牲は何だったのか」「犠牲者に申し訳がたたない」といって、さらに犠牲を拡大する。そんな悲劇が繰り返されないことを。