「日銀引受するとハイパーインフレになる」とみんな信じ込まされていますが | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

「日銀引受するとハイパーインフレになる」とみんな信じ込まされていますが




日銀が墓穴掘る不都合な事実 国債引受でも高インフレ回避 是清の妙手今こそ実行の時だ
2011.06.20
連載:2011「日本」の解き方
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20110620/plt1106201434002-n1.htm

週刊ダイヤモンド6月18日号で「“高橋財政”時の日銀引き受け 国債の9割はすぐに市中で売却」という記事があった。記事の趣旨は、復興国債の日銀引受を提唱する動きに対して、昭和初期に高橋是清蔵相が日銀引受で世界恐慌から脱却した事例を都合良く利用している、と批判したものだ。

 奇妙なことに、この記事は、日銀引受の話が出始めた時に日銀が行っていた反論と同じだ。ところが日銀は最近、この話は避けて、「日銀引受はやはりハイパーインフレになる」という反論に代えている。

 というのも、「国債の9割を市中売却した」ことと、「ハイパーインフレになること」は矛盾するのだ。実際、高橋財政の時にはインフレ率は一桁で、もちろんハイパーインフレにもなっていない。2・26事件で是清が暗殺された後も酷いインフレではなかった

 このように、高橋財政の日銀引受には問題はなく、当時の日銀総裁であった深井英五氏も「一石三鳥の妙手」といっている。酷いインフレは戦後の話で、戦前の高橋財政とは無関係だ。

 こうした史実については、東日本大震災以前からマクロ経済政策として日銀引受を主張してきた私ももちろん知っている。高橋財政の日銀引受ではハイパーインフレにならなかった上、高橋財政下における日本の経済成長率は7%に達し、経済史上稀に見る成功例だから、日銀引受を推奨したのだ。

 例えば、国債発行額の全額を日銀引受して、それをまったく売却しなかったら、かなりのインフレになっていただろう。しかし、9割を市中売却する、これを今に即していえば、発行額の1割程度の日銀引受ならまったく問題にならないのだ。

 日銀の国債引受に対する反論がダメなのは、具体的な数字を挙げずに、「日銀引受するとハイパーインフレになる」と言うことだ。本当に心配なら、日銀にインフレ目標を設定して、○○兆円以上引き受けるとインフレ目標に反するからできない、と言えばいい。

 ところが、世界標準のインフレ目標政策について、日銀は自分への縛りと考え拒否するので、いきおい1円でも日銀引き受けするとハイパーインフレになると極論せざるを得なくなって、墓穴を掘る

 冒頭の記事も、ある程度の日銀引受ではインフレにならないということなので、実は日銀にとって不都合な事実となる。だから、日銀もその反論を今では行っていないのだ。

 特に、私が提唱している18兆円の日銀引受は、日銀が保有する国債の償還額の範囲内なので日銀のバランスシートは拡大せずベースマネーは増えないので、ハイパーどころかインフレにもならない程度だ。しかも今年度発行する170兆円のほとんどは市中消化なので、この点からもインフレにならない。皮肉にも冒頭記事のデータはそれを補強してくれている。

(元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)


→「日銀の国債引受に対する反論がダメなのは、具体的な数字を挙げずに、「日銀引受するとハイパーインフレになる」と言うことだ」と高橋洋一さんはいっています。

→実際、国会でも、日本でハイパーインフレが起こる可能性を問われ、中央銀行の総裁という立場でハイパーインフレが起きる、起きないということ自体に言及することが不適切ということでかわしてしまいました。これじゃあ、おれがそういっているんだから、そう信じろ、といわれているようにも思えるのですが。



中銀総裁がハイパーインフレの可能性に言及は不適切=日銀総裁
2011年4月12日15時15分
http://www.asahi.com/business/news/reuters/RTR201104120080.html
 [東京 12日 ロイター] 日銀の白川方明総裁は午後の参院財政金融委員会で、日本でハイパーインフレが起こる可能性を問われ、中央銀行の総裁という立場でハイパーインフレが起きる、起きないということ自体に言及することが不適切との考えを示した。

 金子洋一委員(民主)の質問に答えた。

東日本大震災の復興財源確保を確保するため、与野党の一部で日銀による国債の直接引き受け論が浮上しているが、日銀では、中央銀行による国債を引き受けは、激しいインフレと通貨安を招き、国民生活や経済に悪影響を与えるとして否定的だ。

 白川総裁は答弁で「通貨の信認が崩れることがあってはならない」と強調し、戦後の先進国で激しいインフレが減少している要因として「通貨の信認を守るという重要な仕組みが尊重されているためだ」と述べた。

 (ロイターニュース 伊藤純夫;編集 田中志保)