国会に「事故調査・検証委員会」を設置するのが筋である。(中川秀直) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

国会に「事故調査・検証委員会」を設置するのが筋である。(中川秀直)

菅政権は本日午前の閣議で、福島第1原発事故の発生や拡大を防げなかった原因を検証する「事故調査・検証委員会」の設置を決定した。

政府内に「事故調査・検証委員会」をつくることで菅首相の責任を検証できるのだろうか。政府が事務局を構成する委員会では、委員がどれだけ頑張っても限界があるだろう。

万一、菅首相をはじめ官邸が総がかりで、政治的意図をもって、証拠の改竄、証拠の隠滅に狂奔していたとしたら、政府内の委員会はその真相に迫ることができるだろうか。それは不可能である。

例えば、23日の衆院復興特別委員会で、菅首相は谷垣総裁から海水注入中断の経緯を追及されると、海水注入の「報告はなかった。報告が上がっていないものを「止めろ」とかいう筈がない。私が止めたことは全くない」と全否定した。この問題を政府内の委員会で追及することができるだろうか。それは不可能だろう。

しかし、それでは5月2日の参院予算委員会の海江田経産相の答弁はどう解釈するのだろうか。(参考1)

政府の委員会でこの発言を追及したくても、既に、5月23日の枝野官房長官記者会見で、5月2日の海江田発言についての政府の公式見解は確定している。(参考2)

政府に設置する委員会では、5月23日の枝野官房長官の発言を追認する以上のことはできないはずである。

報道では、注入を知らなかった菅首相が激怒したことで東電が作業をストップさせたのではないかとの見方もある。このことを政府に設置される委員会で検証できるのか。

政府以外に失敗の原因があるときは政府に検証委員会をつくってもいい。しかし、政権中枢の責任を問う場合には、国政調査権を持つ国会に「事故調査・検証委員会」を設置するのが筋である。

(5月24日記 中川秀直)



(参考1)平成23年5月2日の参議院予算委員会における海江田経産相答弁

やはり、一番最初に一号機に注入をいたしましたけれども、これにつきましては、先ほどこれは社長からもお話がありましたけれども、十四時五十三分に、まずそれまで約八万リットルですけれども、消防車を用いて真水を注入をしていたわけでございますが、これが十四時五十三分の時点で停止になりました。

 そうしますと、この真水での注入が終わってまいりますとまさにもう水で冷却をする手法がなくなりますから、そこで一刻も早くこれは真水が駄目なら海水で注入をしなければいけないということを、まさにこの十四時五十三分が終わってからずっともう議論、そして度重なる指示をやっておりまして、そして最後に、先ほどお話をしたように十八時に、総理からの指示もあり、私が保安院に対して指示文書の準備をするよう指示をしたところであります。
 そうしましたところ、十九時〇四分に、これは私どもの資料でございますが、一旦東京電力が福島第一原子力発電所の一号機の海水注入試験です、試験の注入をこれを開始をして、そしてこれが十九時二十五分に停止をしました。ですから、二十分間ぐらい試験をやりましたけど、停止をしました。

 そして、時刻は刻一刻と過ぎていきますので、再度重ねて総理からの本格的な注水をやれということで、そこで私が、先ほど答弁をしましたように二十時〇五分、これで原子炉等規制法の第六十四条三項の規定に基づいて、福島第一原子力発電所の一号機の原子炉容器の健全性を確保することをこれは命令をしたと。そして、二十時二十分、福島第一原子力発電所一号機に対して、消火系ラインを使用して海水、そして同時に硼酸による、硼酸も混ぜました、これは、水素爆発の可能性がありますので。そして注入を開始をしたということでありまして、これが一号機についての説明でございますが。



(参考2)平成23年5月23日午後の枝野官房長官記者会見

海水注入に関する政府の認識について

 まず午前中、確認をするとお話をした、「海水注入について、政府がいつ認識をしたか」というご質問について、お答えをいたします。

 当日の3月12日に、もちろん官邸の我々は、試験的な注水があったことについて、認識をしておりません。一方で、いつ東京電力から保安院に連絡があったかということについては、現在、引き続き確認をしているところでございますが、5月2日に海江田大臣がこの試験注水について国会で答弁をされているということですので、少なくとも5月2日の時点では、政府内で試験的注水の認識があったというふうには考えられます。今、詳細の、いつ東電から保安院に試験的注水の連絡があったかについては、引き続き確認をさせていただいているところでございます。

 それから東京電力がこの試験的注水を官邸・政府に事前に連絡を取らずに実行したことについての、適切であったかどうかということのご質問もいただきましたが、原子炉等規制法上問題は無いという認識でございますし、斑目委員長も言われているように、原子力の専門家から言うと、一般的に海水を注水しても、再臨界があると考えにくいということでございますので、事業者である東京電力が試験的注水したことについても、問題は無いと考えております。