原発事故の究明機関をどうつくれば、政府のお手盛りといわれず、信頼されるものとなるか? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

原発事故の究明機関をどうつくれば、政府のお手盛りといわれず、信頼されるものとなるか?

秘書です。
今朝の読売新聞9面に、ジョン・ハムレ米戦略国際問題研究所(CSIS)所長が「原発事故 究明は独立機関で」と題する論文を寄稿しています。

ハムレ所長は「日本は今、将来を左右するような長期的で重大な決断をする局面にあるのに、政治が分断され、感情的になりすぎている」と分析し、以下のような提案をしています。


①福島の事故を検証するために、真に誠実で独立した専門家委員会を設立する

②委員長には、優れた大学の学長か学者を選ぶ。

③委員会には、原子炉の設計、発電所の運転、賠償方法、危機管理などに精通した専門家など、関連の重要分野の専門家を参画させる。

④委員会は、政府から完全に独立した第3者機関とし、独立した運営予算と職員をしっかり確保する。


→ところが、ここで学者の独立性の問題が浮かび上がってきます。

現職経産官僚が緊急提言
古賀茂明「東電破綻処理と日本の電力産業の再生のシナリオ」

2011年05月11日(水)現代ビジネス 経済の死角 古賀茂明
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/4128?page=9

学者も電力会社からの研究資金や情報提供などを含めた様々な便宜供与を受けること等により影響下にあると言われている。原子力安全委員会メンバーの多くが御用学者と言われているし、経産省の各種審議会・研究会などでも電力自由化や原発の安全基準などの議論をしていると、当初改革派が優勢でも、途中から殆どの学者が寝返って、最後は多くの場合、一人か二人になって改革派が孤立するというのが常であった。

その裏には、東電をはじめとしたすさまじい根回しがあったと言われている(「東大の学者は電力会社に買収されている」というノーベル賞学者の発言もあるほど)。

→復興構想会議の議長選びも、紆余曲折。

東大総長経験者の起用希望=復興会議議長、東電との関係で断念-菅首相
(2011/04/15-22:54)時事通信
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201104/2011041500944
東日本大震災の復興計画を立案する復興構想会議の議長人事で、菅直人首相が当初、元東大総長の佐々木毅学習院大教授の起用で調整していたことが15日、分かった。しかし、佐々木氏が東京電力福島第1原発のプラント建設にかかわった東芝の社外取締役であることがネックとなり、起用を見送ったという。政府関係者が明らかにした。
 同会議メンバーの人選は、首相が枝野幸男官房長官、仙谷由人官房副長官や一部の民主党幹部と相談しながら進めた。首相は、佐々木氏を議長に据えたい意向だったが、東芝取締役であることが判明。震災復興のイメージを損ないかねないとの懸念が出され、断念した。
 次いで白羽の矢を立てたのが、首相とも親交がある前東大総長の小宮山宏氏。だが、小宮山氏は東電の監査役で、放射能漏れ事故を引き起こした企業の役員は議長にふさわしくないと判断。最終的に「第3の候補」だった五百旗頭真防衛大学校長に落ち着いた。

→独立した運営予算と職員も、日本では確保できるのでしょうか。独立委員会の庶務権を握る事務局は一体誰が実権を握るのか?

→そんな中、国際的な事故調査委員会をつくるべし、海外の目を入れるべし、というのは現状の問題に対してブレイクスルーできる注目される提案ですね。


IAEA参加の事故調査委を=東京財団・渡部恒雄上席研究員-論客に聞く
(2011/05/14-10:05)時事通信
http://www.jiji.com/jc/c?g=pol
 東京財団上席研究員の渡部恒雄氏は時事通信のインタビューに応じ、福島第1原発事故を検証する第三者機関「原子力事故調査委員会」について、日本人だけでなく外国人専門家や国際原子力機関(IAEA)のメンバーを参加させるべきだと強調した。
 -第三者機関はどうあるべきか。
 第三者機関は本来、政府ではなく、国会の下に置くべきだ。政府の原発事故対応を政府が評価しても、お手盛りになる。国会に権限を持たせ、与野党合意で指名した専門家が検証する形にすべきだ。米同時テロの米政府の対応を検証した独立調査委員会は、議会が権限を持ち、共和党系、民主党系の共同議長が就任した。
 ただ、日本で国会に超党派の調査委員会を設置するためには、与野党合意までに相当の時間がかかる。原発の事故調査委は早々に立ち上げるべきだから、そういう意味では今回、政府による調査委設置も致し方ないと思う。
 -検証委のメンバーは。
 調査報告が海外に与える影響は大きい。原発事故対応の初動では、日本政府が本当に情報を出しているのか疑われたこともあったので、メンバーは日本人だけにしない方がいい。少なくともIAEAの専門家を入れるべきだ。米国の原子力規制委員会、IAEAと日本の情報共有の仕組みは既にできている。調査報告が、政府のお手盛りではないことを明確にするためには、海外の目が入った方がいい
 IAEAが調査委に入ることにより、調査報告は客観性や信頼性を得られる。検証結果が国際的に認知されなければ、不幸な結果を招く。もし事故を繰り返せば、国や政府の信用は落ち、金利や投資などに影響する。国際社会からの参加が重要だ。
 渡部 恒雄氏(わたなべ・つねお)東北大歯卒。米戦略国際問題研究所(CSIS)上級研究員、三井物産戦略研究所主任研究員を経て、2009年4月から東京財団上席研究員。47歳。