マークⅠ型原子炉(BWR、沸騰水型原子炉)について検索してみました | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

マークⅠ型原子炉(BWR、沸騰水型原子炉)について検索してみました

秘書です。
昨日ある会合で、福島原発の原子炉についての議論を聞きました。そこでちょっと検索してみました。


大前研一氏が日立を辞めた理由に東電からの原発開発門前払い
2011.04.24 07:00 newsポストセブン(※SAPIO2011年5月4・11日号)
http://www.news-postseven.com/archives/20110424_18282.html
かつて日立製作所で原子力発電の設計をしていた大前研一氏が、日本の原発設計の盲点を指摘する。
 * * *
 福島第一原子力発電所の事故で東京電力の対応が後手後手に回った原因の1つは、同原発の原子炉を設計したのが日本企業ではなく、アメリカのGE(ゼネラル・エレクトリック)だったことである。

 1号機と2号機はGEが設計・製造から据え付け・組み立て・試運転指導・保証責任まですべてを請け負い、キーを回しさえすれば設備が稼働する状態で引き渡した「フルターンキー」、3号機と4号機は東芝と日立製作所がそれぞれGEの設計に基づいて“国産化”した(GEからライセンス供与を受け、若干の修正を加えて製造した)、いずれも「マークⅠ」と呼ばれるBWR(沸騰水型原子炉)だ。
 
 福島第一原発に限らず、当初の日本の原子炉は、フランスやイギリス、カナダ、ロシアのように独自の炉を開発するのではなく、アメリカのGEとWH(ウエスチングハウス)が開発した原子炉をそっくりそのまま導入するか、設計図をもらって見よう見まねで造ったものなのである。

 とくに東電は、GEを崇め奉っていた。私が日立製作所の原子炉エンジニアだった当時、新しい分野だった高速増殖炉で独自に考えた設計図を持っていくと、それには見向きもせずに、GEのお墨がない原子炉など要らない、と門前払いを食らった。
 
 日立が技術提携しているGEの設計のままでなければ、東電は一顧だにしなかったのだ。私がわずか2年で日立を辞めた理由の1つがそこにある。せっかく日本独自の原子炉を造るために必死で勉強したのに、結局、GEの技術指導を強いられたのでは、原子炉を設計している意味がないからだ。
 
 要するに東電(そして当時の動力炉・核燃料開発事業団)は、自分たちで創意工夫する原子炉の建設を放棄していたのである。

 東電のオペレーターは、ひたすらGEのマニュアルを勉強して覚えるだけ。自分の頭で考えることがない。だが、アメリカと日本は事情が違う。日本ではGEの設計者が経験したことのない大地震、想定していない大津波が起きる。ここに「フルターンキー」と「名ばかり国産化」の大きな盲点があった。


米GE製の福島原発原子炉、安全上の問題を35年前に指摘
2011年 03月 16日 15:01 JST
http://jp.reuters.com/article/jp_quake/idJPJAPAN-20065820110316
[ニューヨーク 15日 ロイター] 米ゼネラル・エレクトリック(GE)(GE.N: 株価, 企業情報, レポート)の元社員が35年前、今回事故があった福島第1原発の「マークI型」原子炉の安全性に対する懸念が理由で、同社を退社していたことが明らかになった。
 GEの元社員デール・ブライデンボー氏はインタビューに応じ、同社製「マークI型」原子炉について、大規模事故による負担に耐えうるよう設計されていなかった、と指摘。「当時、公共事業各社がこの事実を十分深刻に受け止めていたとは思わない。分析が終了するまで一部の原子力発電所は閉鎖されるべきだと思っていたが、GEや公共事業各社はそれに応じるつもりはなかった。そのため私はGEを退職した」と語った。
 さらに、同氏が指摘した設計上の問題は確かに第1発電所に知らされおり、かなりのコストを要することも明らかになっていた、と述べた。
 これより先に同氏は、ABCニュース番組のインタビューに応じていた。
 一方GEは声明を発表し、沸騰水型原子炉マークIの技術において、過去40年間安全に稼働してきたという事実があると主張。「1980年に(米原子力規制委員会は)マークI原子炉の格納容器に関する包括的な業界向け指示を出したが、GEはそれに従い、全ての顧客にそれを通達した」としている。
 ブライデンボー氏は「この事態の対応に追われている人々を気の毒に思う」と述べ、「一方で、福島原発の事故はマークIの格納容器から生じた直接的な結果ではない。地震や津波、マークI型格納容器が他の原子炉ほど負担に耐えられないという事実から生じた直接的な結果だといえる」と述べた。

危機続く福島第一原発 「GEスリー」元設計者が米メディアで告白 「原子炉構造に欠陥あり」
(週刊朝日 2011年04月01日号配信掲載) 2011年3月29日(火)配信
http://news.nifty.com/cs/magazine/detail/asahi-20110329-02/1.htm

→GE側は以下のようにHP上で見解を述べています。

2011年3月20日 マークⅠ型原子炉格納容器の仕組み
http://www.ge.com/jp/news/reports/gereport_march20_11.html
(英文)
http://www.gereports.com/how-it-works-white-paper-on-mark-i-containment/

米原子力エネルギー協会(NEI)より、福島第一原子力発電所で使用されているマークⅠ型原子炉格納容器の設計に関する新しい報告書が発表されましたので、その内容の一部をご紹介いたします。この報告書は、マークⅠ型原子炉格納容器の安全性を保つために過去数十年間に渡り米国と規制機関が実施してきた取り組みを紹介し、「マークⅠ型の原子炉格納容器は安全性が実証された技術を採用している。経年とともに、安全性確認のための様々な試験、知識の蓄積、先端的な分析が重ねられ、安全性はさらに強化された」と述べています。

報告書は、沸騰水型原子炉(BWR)設計についての解説に加えて、福島第一原子力発電所の原子炉格納容器の現状に関する所見を掲載しています。その一部は以下の通りです。

• 「発電所内および外で電力が同時に長期間失われるといった事態は、運転中のどの原子炉格納容器においても設計基準の対象外である」

• 「福島第一原子力発電所のマークⅠ型格原子炉格納容器は設計圧力よりかなり大きな圧力に耐えたとみられる」

• 「福島第一原子力発電所の原子炉圧力容器と原子炉の非常時応答は、1980年代と1990年代初期の重大事故に関する研究結果と概ね一致した反応を示している」

報告書はこの他に、「原冷却材喪失事故時における格納容器のオペレーション」、「原子炉格納容器設計の発展」、「所内電源喪失時における原子炉格納容器のオペレーション」について述べています。

所内電源喪失時のオペレーションについて、報告書は次のように述べています。「1980年代末から1990年代初めにかけて、BWRの発電所事業者は、発電所の電力と既存の非常用ディーゼル発電機の電力が失われた事態に備え、変更と改良を加えた。・・・ 2001年9月11日のテロ攻撃を受けて、米国の一部の発電所は、原子炉建屋に大きな被害が出た場合に備え、原子炉と燃料プールへの給水を行うための追加措置を取り入れ、追加機器を設置した。こうした変更点には、ディーゼル駆動のポンプ、別系統の配管、追加の非常時手順などの導入が含まれ、発電所の電力が失われても幾つかの水源から水の補給ができるようにした」

2011年3月18日 マークⅠ型原子炉格納容器の歴史的事実について
http://www.ge.com/jp/news/reports/gereport_march18_11.html
(英文)
http://www.gereports.com/setting-the-record-straight-on-mark-i-containment-history/

この数日、福島第一原発の原子炉に採用されているマークⅠ型原子炉格納容器の設計は、以前から問題を起こしてきたとする報道が見られます。そうした報道に含まれる憶測が更に他の報道機関や政治評論家が取り上げられているため、ここに事実関係をご説明いたします。福島第一原発の各原子炉で何が起きているのか、現在詳しく把握できる段階ではありませんが、私どもは事実の調査作業に全面的に協力することをお約束します。まずここで、この技術の40年間の歴史とこれまでの実績について述べさせていただきます。

コメント:マークⅠ型原子炉は競合する加圧水型原子炉(PWR)に比べて「物理的な堅牢性」が劣るのではないか。

事実:マークⅠ型はすべての安全基準を満たし、40年以上に渡って問題なく運用されてきました。他種の原子炉設計に使用されている原子炉格納容器との違いは、容器の大きさの違いも含め、主として、原子炉設計の運用特性の違いに由来します。例えば、GEの原子炉格納容器は圧力抑制技術を採用しており、事故時には貯蔵水が蒸気を液化し、格納容器にかかる圧力を減少させます。格納容器は事故ガイドラインに沿って設計されており、想定される最大の圧力に耐えるよう製造されています。

コメント:マークⅠ型の運用はやめるべきである。なぜなら米原子力委員会のスティーブン・ハナウアー氏が、1972年に、マークⅠ型は原子炉格納容器が小さく、水素が充満すると、爆発や破壊が起こりやすいと述べているからだ。

事実:原子力規制委員会(NRC)は1980年、ハナウアー氏のマークⅠ型に関するメモが喚起した懸念を慎重に審査し、「ハナウアー博士ご自身も含め、審査委員は、マークⅠ型原子炉格納容器の圧力抑制設計は安全であるとの結論に達した」と発表しています。

コメント:マークⅠ型は「彼ら(GE)が比較的小型で安価な原子炉格納容器構造を採用したことで、安くしかも簡単に製造できた」

事実:マークⅠ型に組み込まれた圧力抑制機能により、原子炉格納容器の設計を小型化することができました。この圧力抑制技術により、マークⅠ型は、圧力抑制プール内で蒸気を液化し、原子炉格納容器内の圧力を下げます。安全性は私たちの最優先事項であり、マークⅠ型の設計はNRCのすべての設計基準を満たしています。

コメント:電力会社からシステムに欠陥があるとして訴えられる恐れから、マークⅠ型には過去数十年間に何度も改良が加えられた。

事実:マークⅠ型の原子炉格納設計は、技術の進展と安全基準の変更に応じて、1980年代に改良されました。規制機関が求めた変更はすべて導入されています。こうした変更は運用経験と技術の発展にもとづくものであり、訴訟リスクへの対応ではありません。


2011年3月16日 沸騰水型原子炉(BWR)のマークⅠ型原子炉格納容器について
http://www.gereports.com/the-mark-i-containment-system-in-bwr-reactors/
(英文)
http://www.ge.com/jp/news/reports/BWR_march17_11.html

災害による被害を受けた福島第一原子力発電所では次々と新たな事態が展開しています。GEは、日本の合弁企業のパートナーである日立製作所株式会社(以下、日立)を通して、東京電力株式会社(以下、東京電力)および米原子力規制委員会(NRC)への技術支援を続けております。NRCは同じく、日本政府への技術支援を行っています。GE日立ニュークリア・エナジーは、福島第一原子力発電所の原子炉に使用されているマークⅠ型原子炉格納容器について、以下のとおりご説明いたします。

マークⅠ型原子炉格納容器は40年以上にわたる稼動により、安全性と信頼性が実証されています。マークⅠ型原子炉格納容器を備える沸騰水型原子炉(BWR)は、現在、世界で32基が設計通りに運用されています。

この技術は40年前に商用化されましたが、その後も継続的に改良され進化してきました。マークⅠ型原子炉格納容器は、過去40年間、技術の発展と規制変更に合わせ、改良されてきました。

すべての改良は、当局の規制に従って実施されました。例えば、米国では、NRCが1980年に、それまで業界が独自に改修していたマークⅠ型原子炉格納容器について総括的な基準を示しました。

福島第一原発のすべてのBWRマークⅠ型原子炉格納容器も同様に、日本の当局の基準に従って改良されたものと理解しております。

マークⅠ型原子炉格納容器に施された改良には次のことが含まれます。

●装置にかかる負荷を軽減するため、蒸気泡を圧縮し整流する「クエンチャー」を設置しました。原子炉内部からの排気蒸気の配管を圧力抑制室まで通しました。圧力抑制室はトーラスと呼ばれる大型の丸い管で、炉心のすぐ下にあり、原子炉から大量の蒸気が放出される際に熱を除去するために使われます。トーラス内では、蒸気の泡が水中を進みます。改修されたマークⅠ型では、水中にあるクエンチャーが、大きな蒸気の泡を細分化して小さな泡にします。そうすることで圧力を軽減します。

●またトーラス内に「デフレクター」を取り付ける改良も行われました。蒸気が水中を進むと、水位が上がります。取り付けられたデフレクターは生成された圧力波を細分化し、トーラスにかかる圧力を軽減します。

●さらに、トーラスが設置されている「サドル」にも改修が加えられました。サドルはトーラスを支える脚のような構造物です。この構造物および鉄鋼を強化し、荷重に対する対応力を強化しました。


→さらに、以下を参照。

核施設の非常事態-地震対策の検証を中心に-
日本物理學會誌 50(10),pp.818-821, 1995-10-05  高木仁三郎
http://ci.nii.ac.jp/els/110002066513.pdf?id=ART0002195281&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1304815769&cp=