震災増税か?日銀の国債引き受けか?(高橋 洋一氏「ニュースの深層」より) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

震災増税か?日銀の国債引き受けか?(高橋 洋一氏「ニュースの深層」より)

秘書です。
高橋洋一さんの「あらためていう。「震災増税」で日本は二度死ぬ 本当の国民負担は増税ではない」(2011年04月18日(月) 高橋 洋一(ニュースの深層))より。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2463


とんでもない震災増税に政府はどんどんむかっている。

 政府の復興構想会議は、3月11日の東日本大震災から1ヶ月以上経過した4月14日にやっと第一回会合を開いた。1923年9月1日に起こった関東大震災では、帝都復興院はその翌日の2日より設立が検討され、9月27日にはすでに設置されていた。

 今回の復興構想会議のスピード感は1ヶ月以上遅れがある。しかし、「増税」だけは素早かった。

 今回の大震災直後から、菅政権の増税への執念はすさまじかった。まだ、復興より救助・救援が必要な大震災直後の3月13日には、菅総理と谷垣禎一自民党総裁は、震災増税で話し合っているのだ。なんという神経の持ち主だろう。

そもそも、大震災という100年以上に一回というショックに対しては、例えば100年国債を発行することによって対応してショックを時間的に平準化するという大原則を踏み外している。

実質的に会議を取り仕切る「庶務権」

 さらに、その国債は、円高防止のためのマクロ経済環境を考慮して、日銀引受がいいと、このコラムでいってきた( 「震災増税」ではなく、「寄付金税額控除」、「復興国債の日銀直接引受」で本当の被災地復興支援を)

 ところが、復興構想会議は、まだ議論も行われていないスタートから増税を打ち出した。14日の初回会合で、五百旗頭真(いおきべまこと)議長の挨拶で、増税が飛び出した。

 五百旗頭議長は、政治学者・歴史学者である。それがいきなり冒頭の挨拶で増税はないだろう。その裏には、会議を取り仕切る財務省がいる。

 政府のこの種の会議では誰が取り仕切るかが重要だ。私は、かねてからそれを「庶務権」と呼んできた。会議の庶務は誰それという規定が必ずあるからだ。一般の人は、それをみても、庶務なのだから、それほど大切とは思わない。しかし、庶務は、会議のスケジュール、会議の内容をいくらでも左右できる。

 復興構想会議運営要領7条で、「会議の庶務は、内閣官房において処理する」とかかれている。具体的には、佐々木内閣副長官補を室長とする被災地復興に関する法案等準備室である。

 佐々木内閣副長官補は財務省出身で、この内閣副長官補というポストは代々財務省からの指定席だ。

 財務省は、そのほかにも、総理秘書官や官房長官秘書官など官邸内の様々な重要ポストを握っており、官邸を自由にコントロールできる。

 14日の復興構想会議の様子の一部は官邸のインターネットテレビでも見ることができるが、それでも、説明者の背後に、何人もの財務省官僚がいることがわかる。

 会議の庶務をやっていると、会議のスケジュール調整や会議の説明ということで、委員に直接接触する機会が多い。その時に、「ご説明」を行い、経済にあまり詳しくない有識者は、財務省にころりとやられてしまうのだ。

復興構想会議は増税へのワンステップ

 復興構想会議の五百旗頭議長以外のメンバーもテレビ出演があるが、きまって復興増税をいっている。しかも、その理由はみんな国民全員で負担しようというものだ。

 本来は時間を超えて国民全体で負担するために国債で対応するのが正しい。ところが、増税が公平だとすり替わっている。

 最近は、とりあえず国債を発行して数年間で増税対応するという「つなぎ国債+増税」という具合に、微妙に変化しているが、この国債では時間分散は不十分で、増税とかわりない。

 財務省は、会議の裏で操作するばかりか、メンバーにも入っている。復興構想会議は、復興税を集中的に議論するために検討部会を作っているが、その中の大武健一郎氏(大塚ホールディングス株式会社代表取締役)は、税務畑の財務省OBだ。

 同部会は、財務省の「御用知識人」が多い。また税に関して専門家がいないので、大竹氏に対抗できる人物はいないので、同氏が中止になって議論されていくだろう。

 財務省としては、復興構想会議は、増税へのワン・ステップでしかない。菅政権の余命は少ないとみて、議論の末増税を打ち出すのでは遅すぎるから、冒頭から増税を仕掛けてきたのだろう。

菅政権がすぐ終わるとしても、その後継はやはり財務省の息がかかった野田佳彦財務相や、仙谷由人副長官かその影響力が強い人がなる可能性が高い。

 一方、大震災直後に、増税指向を見せてしまった谷垣自民党総裁がいる限りは、与野党両サイドでの増税路線は安泰なのだ。

 だから、何が何でも、復興構想会議で、増税をぶち上げておこうという展開になったのだ。そのためには、有効な対案である「復興国債の日銀引受」は徹底的につぶす必要があった。

 復興構想会議メンバーの洗脳だけでなく、マスコミへも「震災増税、日銀国債引受なし」という根回しがかなり行われたようだ。

ドイツは増税でどうなったのか

 このコラムの読者は、「日銀国債引受は禁じ手」とのマスコミ報道は、根拠のないレトリックであることをご承知だろう( 補正予算4兆円では一ケタ足りない。復興予算40兆円はこうすれば作れる )。日銀引受は実は毎年行われており、それで通貨の信認が失われたことはない。毎年行われていることが禁じ手のはずない。

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しかし、大手マスコミで、日銀国債引受が毎年行われていることはほとんど報じられていない。こうした「不都合な真実」は報じられないのが日本の実情だ。

 なお、断っておくが、増税と日銀国債引受で前者には負担があるが後者にはないという手品があるわけでない。前者の増税は税負担が震災直後にかかってくるのに対して、後者の日銀国債引受ではデフレからマイルドインフレにかわり名目所得が上がり税増収が高くなるというルートだ

 財務省の驚くべき用意周到さをみせよう。増税話は復興構想会議だけではない。最近、復興連帯税という話がでているだろう。民主党内の税制改正プロジェクトチーム(座長・小沢鋭仁前環境相)で検討されている。

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 もともとは、1990年にドイツで東西統合した時の連帯付加税の創設だ。財務省はお得意の海外の例を自在にもってくるので、門外漢はやられてしまう。統合に伴う恒久的な負担に対処するためで、今回のような1000年以上に一度への対処とは違う。

 ところで、増税をしたドイツがどうだったかというと、それまで好調だった経済成長がダウンしている。経済成長がダウンしても、増税がいいというところが、財政至上主義の財務省らしい。マスコミでも、ドイツの東西統合時の連帯税をいう人がいるが、経済成長より財政が大切という財務省のポチである可能性が高い。