高橋洋一さんの100年国債構想を学習しよう! | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

高橋洋一さんの100年国債構想を学習しよう!

秘書です。
増税論議が活発です。しかし、日本経済の現状で増税してどうなるのでしょう?
そこで、高橋洋一さんの月曜日の「メディアの深層」より。

「補正予算4兆円では一ケタ足りない。復興予算40兆円はこうすれば作れる「逐次投入」で失敗した阪神大震災の経験を生かせ」
2011年04月11日(月) 高橋 洋一 「メディアの深層」

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2423

東日本大震災の復旧・復興は、地元でプランニングしてもらうのがいい。国としてできることは財政面の支援である。

 ところが1次補正について野田佳彦財務相は「国債発行に頼らず『自賄い』で対応したい」として、予算規模は4兆円程度となった。1次補正の対象は、仮設住宅建設やがれきの撤去のほか、道路や港湾、下水道などのインフラに加え、学校や社会福祉施設など整備である。今回の1次補正の規模では、はっきりいってゼロが一つ足りない。

 1995年1月の阪神淡路大震災の時、補正予算は1995年2月、5月、10月に成立した。災害復旧・復興とともに、円高対策などでそれぞれの追加予算規模は、1兆円、2.8兆円、6兆円だった。

 政府は、それに比べれば今回は規模が大きくまともだと弁明するだろう。さらに、今後も、今国会中に2次補正、秋には3次補正も視野に入れていると。

 だが阪神淡路大震災の時は、「戦力の逐次投入」で、十分な復旧・復興ができなかった。その教訓を今回も生かしていない

中央官庁がやるべきは財源を用意すること

 私は当時の復旧・復興に携わった人から意見を聞いたことがある。短期間で計画を策定する中で、財源問題がいつもネックになったという話しが多かった。予算を小出しにするので、そのたびに財源問題が起こり、十分な街作りができなかったのだ。

 その教訓を踏まえれば、今回ははじめの補正予算は30兆円くらい積んで、余ったら後で減額修正するくらいでいい。

 災害復旧の予算実務は細かい書類上での予算査定というより、現場で判断するので地方財務局で行う。私の地方財務局での経験からいえば、災害復旧では中央官庁ベースでの予算査定などまったく不要でだ。現場でどんどん判断してやっていくのがいい。その際、財源問題がネックになると、現場での判断も鈍る。そこで、中央官庁でできることは、できるだけ財源を用意することだ。

 その点、野田財務相が国債発行しないといっている点で、もう財源制約をわざわざ課しており、もう失格だ。阪神淡路の時でも、歳出のほとんどは国債発行でまかなわれ、国債発行額は9.2兆円だった。


震災対応で国債を除くことは経済学の基本からもずれている。経済学で課税の平準化という話がある。別に小難しいことではなく、100年に一回のショックなら、100年間でその負担を平準化するほうがいいということだ

 国債はそのための手段だ。今回の大震災が100年に一回なら、100年国債を発行して、そのショックを100年間に分散するように、100年間に負担を分けて償還するのが筋だ

 しかも、公共投資の基本からも、細かい予算査定なしでインフラ整備することが正当化される。

 公共投資の基本論では、便益と費用を比較して、便益が費用より大きいなら公共投資は行うべきで、便益より費用が大きいなら公共投資をしてはいけない。

 ところが、震災でインフラが失われたので、これからの復旧・復興でのインフラはゼロからのスタートになる。これはインフラ整備による便益はものすごく大きいことになり、ほとんどの場合で費用を上回る。このため、復旧・復興段階でのインフラ整備はおおいに推奨できる。

 しばしば批判される公共投資は、既存のインフラがあるのに重複投資して便益が費用を下回る場合だが、震災の復旧・復興はそれにあたらない

どさくさまぐれに進む「増税大連立」

 それでも、増税を悲願とする財務省は菅政権に対し自民党との大連立をささやく。谷垣自民党が震災復旧・復興での大きな利権をエサにすれば釣れることを知っており、釣り上げてから増税で納めるのだ。

 今の菅政権やその後継は財務省の息のかかった増税論者揃いであるので、民主と自民が大連立すれば、増税路線は震災のどさくさで確固たるものになる。

 増税大連立は今のところ消えかかっているように見えるが、2次補正、3次補正となるにつれて、利権の密に誘われるように、再び浮上していくだろう。


そうした時の地ならしとして、震災では生産設備がやられるので、供給力が低下して、今あるGDPギャップ(供給力から総需要を引いたもの)が逆転して、需要超過になって、インフレになるという話も財務省あたりから密かにまかれている。

 もしそれが正しいなら、総需要の抑制策が必要になり、増税が正当化できるからだ。

関東大震災でも阪神大震災でもインフレは起きなかった

 ところが、その需要超過論は、震災で需要もダメージを受けて減少することをわざと隠している。今の自粛ムードは、被災地以外の全国ベースで起こっているのに対して、震災による供給力ダウンは主に被災地の話である(波及的には東北地方の生産拠点が供給するものは世界ベースで広がっているが)。

 となると、GDPギャップはひょっとしたら拡大するかもしれない。

 ちなみに、過去の1923年9月の関東大震災や1995年1月の神戸淡路大震災後でも、個別商品価格の一時的な上昇はあったが、全体の物価で著しい上昇があったわけではない(下図参照)。なお、図の中の1997年の上昇は消費税のためだ。


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さて、国債発行が望ましいことがわかったと思うが、国債発行は市中消化と日銀引受があるが、これまでの本コラムでは、マクロ経済を考えると、日銀引受がいいことを書いてきた。前回書いた秘策はすこし省略しすぎたので、さらに詳しく書こう。

 その前に、未だに「日銀引受は禁じ手」という記事が多い。前回書いたことだが、日銀引受は毎年行われている(下図参照)。毎年行われていることが禁じ手のはずがない。

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日銀引受が禁じ手とか発言する人は、現実を知らない人なので、その発言は取るに足りない。4月1日付けであらたに日銀審議委員となった白井さゆり氏も日銀引受に反対であるが、毎年日銀引受が行われてきたことをご存じなのだろうか。

 ある経済学者はこっそり明かしてくれたが、ほとんどの人が日銀引受は行われたことがなく、特に理由もなく「禁じ手」であると信じ込んでいる。

日銀引受には余裕がある

 実は、今年度の予算書の一般総則で、「第5条 国債整理基金特別会計において、「財政法」第5 条ただし書の規定により政府が平成23 年度において発行する公債を日本銀行に引き受けさせることができる金額は、同行の保有する公債の借換えのために必要な金額とする。」と書かれている。

 ただ、数字が書かれていない。これを受けて、国債発行計画で12兆円の日銀引受額となっている。

 予算総則での「同行の保有する公債の借換えのために必要な金額」の上限は、日銀の保有国債のうち今年度に償還される額であるが、それは30兆円程度である。

 となると、日銀引受額はまだ余裕があり、今の予算の範囲ないでも、18兆円程度の上乗せが可能だ。繰り返すが、これは禁じ手もでもなんでもなく、今年度予算で認められた範囲内の話だ



そこで、震災のための復旧・復興国債を18兆円増発する。と同時に、財務省文書である国債発行計画で日銀引受額を30兆円と書き直す。すると、市中消化分が18兆円減額されるが、これは復旧・復興国債18兆円増額と相殺され、市中超過分はこれまでどおりの額になる。

 今年度の国債発行計画の数字でいえば、国債発行額は170兆円、その市中消化は158兆円、日銀引受が12兆円。これが、国債発行額が188兆円、市中消化は158兆円、日銀引受が30兆円になるのだ。

 これで18兆円の財源が確保できる。さらに、財務省の国債整理基金に過去に発行した国債によって12兆円のたまりがある。これで30兆円の財源がだれにも迷惑をかけずに捻出できる。

いまこそ本当の政治主導を

 自民党のいう4K(子ども手当、高速無料化、戸別補償、高校無償化)ももっと前であれば意味があったが、ここで無理にやると事務混乱の可能性もでてくる。(最近では、菅総理をくわえて5Kの排除というが)

 また政府・民主党は今回の補正で年金財源にも手をつけているが、これは年金を人質にした将来の増税の伏線であり、感心しない。

 本当に被災者のためであれば、30兆円の財源を用意して復旧・復興補正予算を組むべきだ。その上で、その財源の執行は、東北道州制を先取りした「復旧・復興の新組織」(東北復興院)の責任で行う。同時に、各省の権限を移譲し、各省庁の出先機関も各省から新組織に移管しておこなうべきだ。東北復興院長は、そのまま東北州の大統領になってもらえばいい。

 これを阻むのは中央官庁や日銀であるので、被災者をとるのか既成エスタブリッシュメント官僚組織をとるのか、政治主導を発揮してもらいたい。