復興支援を迅速に実行できなければ国家とはいえない!(山本幸三代議士の20兆円プラン) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

復興支援を迅速に実行できなければ国家とはいえない!(山本幸三代議士の20兆円プラン)

「二十兆円規模の救助・復興支援」を!(山本幸三◎元経済産業副大臣・衆議院議員)
2011年4月6日 リベラルタイム
東日本大震災によって日本人と日本経済は大打撃を受けた。
復興支援は規模も十分あり、有効なものでなければならない。
その支援策とは…
 三月十一日に発生した「東日本大震災」による被害は、地震だけでなく、津波そして原発事故による放射能拡散と、いよいよその深刻さを増している。その規模と広範さにおいては過去に例がない未曾有のもので、正に日本国家の存亡自体が問われる危機といえよう。しかもいまだに多くの方が行方不明であり、また飢えや寒さの中で救援を待つ避難民が多数テレビに映し出されており、心が痛む。こうした人達に直ちに救助の手を差し伸べ、そして悲劇を乗り越え再起を期せるように、復興支援を迅速に実行できなければ国家とはいえない。事態は緊急を要する。いまこそ、与野党の枠を超えて最善・最速の救助・復興支援策を講ずることが選良たる我々の責務であると考える。

最善・最速策は

 その策は迅速にでき、規模も十分に確保でき、経済状況から見ても最も有効なものでなければならない。私は、それは「二十兆円規模の日本銀行国債引き受けによる救助・復興支援」であると考える。以下は、その理由である。
(1)阪神淡路大震災の例から見ても、支援規模が二十兆円を超えるのは確実。いま、「子ども手当」や「高速道路無料化」を凍結したり、予備費等から捻出するという案が出ているが、これらを合わせても、せいぜい五兆円程度。しかも後述するが、財政だけでは円高を生み、経済に悪影響を及ぼす。また、現下の日本経済には二十兆円超のデフレギャップがあるとされており、こうしたことも勘案すると二十兆円規模の「日銀国債引き受け」が必要。
(2)与党マニフェストや税制の見直しは、簡単には合意を得られまい。そうした議論は、まず「日銀国債引き受け」で手を打った後、やればよい。
(3)「日銀国債引き受け」は国会の議決だけで、極めて迅速に実行できる。財政法は第五条で、日銀の国債直接引き受けを原則禁止している。しかし、ただし書きで、「特別の事由がある場合において、国会の議決を経た金額の範囲内では、この限りでない」としている。今回の大震災が「特別の事由」に当たることは、自明の理だろう。
(4)この「日銀国債引き受け」は、デフレで円高という現下の日本経済にとっても、最適な経済政策である。デフレや円高は、貨幣ストックが少ないために生じている。しかもいまだに二十兆円超のデフレギャップがあるとされている。こういう時に、政府が日銀の国債購入代金を援助・復興支援活動という形で使えば、確実に市中の貨幣ストックを増やし、デフレ・円高対策としても有効で一石二鳥である。
(5)(1)に関連するが、貨幣ストックが一定のところで財政政策だけを行っても、やがて金利が上がってしまう。これでは民間投資が減少する。またこれは、円高をもたらし輸出を減らすことになる。財政支出をするにしても、金利の上昇を抑えてデフレにならないように、貨幣ストックを増やすという金融政策が並行しなければ、効果が失われるのである。加えてデフレ下で増税するのは、可処分所得を減らし消費を減らすという経路を経てデフレを深刻化させるので、避けるべきである。


批判への反論

 以上から「日銀の国債引き受け」が最善・最速の政策であると考えるが、これに対して幾つかの懸念や批判が表明されることもあるので、これらに対し簡単に反論しておきたい。
(1)「日本国債の信認が失われ長期金利が上昇する」との批判に対しては、「国債金利が上昇するのは日本国債を買おうとする者がいなくなるからだが、日銀という買い手がいるのに上がる訳がない。当初は多少市場が混乱して国債を売る者が出てくるかもしれないが、その分も日銀が買ってやれば何の問題もない。要するに、日銀が貨幣ストックを増やしさえすれば金利は下がっていくものなのだ」と反論できる。
(2)「ハイパーインフレを起こす」との批判に対しては、現下の日本経済のようにデフレで、しかも二十兆円超のデフレギャップがある場合に「二十兆円規模の日銀国債引き受け」を行ったとしても、ハイパーインフレになる恐れ等、全くないといえる。むしろ、CPI(消費者物価指数)を二~三%の安定物価水準にもっていくにも足りないくらいだろう。しかし、確実に安心してもらうためには、日銀に「物価安定(インフレ)目標政策」を義務付ければよい。これは下限と上限があって、元々高過ぎるインフレ率を抑えるために、導入されたものだということを、正確に理解すべきである。実際の月々の引き受けに当たっては、普通国債と物価連動国債の利回り差(期待インフレ率の代理変数)を見ながら調整していけば、何らの問題も生じないはずである。そもそも「ハイパーインフレとは何か」をきちんと定義した人はいない。日銀が時々ハイパーインフレの懸念を表明するが、それをコントロールできない等という無能な日銀マンは、即刻辞めてもらった方がいい。FRB(米連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長等は、「自分達は、インフレ率をコントロールする能力を十分に有している。」と自信満々だ。


日銀政策の問題点

 ところで日銀は、三月十四日の金融政策決定会合において「リスク性資産を中心に資産買入等の基金を五兆円程度増額する」との追加金融緩和策を発表した。しかし私は、「日銀は、直接国債引き受けを恐れてアリバイづくりをしたに過ぎない」と見ている。
(1)まず第一の問題は、「日銀が、今回の大震災の後も、我国経済は緩やかな回復経路にあり、CPIも小幅のプラスに転じるとの判断を維持していること」である。そのためやるべきことは、「一時的な決済資金の注入であり、五兆円という微々たる追加緩和で十分」というのである。
(2)第二の問題は、追加緩和の中身が期間の短い国庫短期証券やCPI等で半分を占めていることである。ゼロ金利の時代では、短期の証券と現金との間に大きな違いはなく、これらを交換したところで、経済的な意味はほとんどない。長期国債はというと、たったの〇・五兆円に過ぎず、満期の短いものですませようとしている。
(3)第三かつ最大の問題は、物価安定目標がないために、日銀が何を目指しているのか、全くわからないことだ。特に今回のような大震災が起こると、「物価はどのようになるのか?」「株価や円相場はどうなるのか?」等と人々の予想が混乱し、経済に悪影響を及ぼす。この時、日銀が「物価はCPIで二~四%を達成するように金融政策を運営します」と宣言して全力を挙げれば、人々は、株価は上がってくるな等と予測が立つようになるのである。しかし日銀は、責任を取らされることを嫌い、目標をはっきり示そうとしない。大震災下では、こうした無責任な態度は大問題である。
 日銀は、自らは決して動かない。いま必要なことは、国家の危機を救う政治決断である。いかなる観点からしても、いまこそ「二十兆円規模の日銀国債引き受けで救助・復興支援に乗り出すべき」時である。与野党の垣根を越えて、選良としての責務を是非果たそうではないか。
リベラルタイム5月号 特集がんばろう! 日本 低成長時代を「豊かに生きる」!