原子炉建屋を特殊シートで遮蔽する工事を行う方針、東電に可否検討指示(河北新報) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

原子炉建屋を特殊シートで遮蔽する工事を行う方針、東電に可否検討指示(河北新報)

福島第1 特殊シートで建屋遮蔽 政府、東電に検討指示

2011年04月04日 河北新報

 政府は東京電力福島第1原発事故で、原子炉建屋を特殊シートで遮蔽(しゃへい)する工事を行う方針を固め、東電に可否を検討するよう指示した。複数の政府関係者が3日、明らかにした。原子力専門家は「放射性物質の拡散を抑える効果は限定的で、リスクの方が大きい」と反対したが、政治判断で押し切った。措置の是非をめぐり議論を呼びそうだ。(3面に関連記事)
 関係者によると、特殊シートの使用は、細野豪志首相補佐官の下に設けられた原発対策チームのうち、馬淵澄夫首相補佐官らが率いるチームで議論。
 高さ約45メートルの建屋の周りに骨組みを建ててシートを張り巡らせ、内部に観測機器を設置する構想で、ゼネコンが提案したという。1~4号機すべてで実行した場合、1~2カ月の工期で費用は約800億円と見積もられている。
 原子炉や使用済み核燃料プールの温度が安定していない建屋を遮蔽すれば、新たな放射性物質の拡散を抑える効果が期待できる。ただ専門家によると、建屋内から出ている放射性物質の量は、爆発で飛散したがれきに比べて少なく、「遮蔽は急務でない」という。逆にシートで密閉すれば内部の放射線量が上昇して作業が困難になる上、内圧が上昇して再爆発を起こす危険性も指摘されている。
 専門家の間では否定的な見解が多かったが、政府側が東電への検討指示に踏み切ったという。政府関係者の一人は「原発の専門知識がないゼネコンの発案を、政治家と経営陣が採用した。無残な原発の姿を覆い隠して安心感を与えようという気休めだ」と批判している。

◎汚染水流出、穴上流に吸収材

 福島第1原発2号機の取水口近くにある作業用の穴(ピット)にたまった高濃度の汚染水が側面の亀裂から海に流出している問題で、東京電力は3日、ピットへの水の流入経路とみられる地下の横穴を詰まらせて流れを止めるため、水を吸収して膨張する材料などを投入した。だが、明らかな流出量の減少は見られなかったという。
 東電は引き続き、水を止める方策を検討。色の付いた水を流し汚染水の流れる経路や量を調べる作業も行うとしている。
 また1~3号機の原子炉に真水を注入する仮設ポンプの電源を、ディーゼル発電機から外部電源に切り替える作業が終了。本来の冷却機能復旧が遅れ、注水による冷却を続けざるを得ないとの観測が広がる中、燃料補充や保守管理といったディーゼル発電機使用に関する手間が省け、より安定的な注水が可能になると期待されている。
 汚染水を止めるために投入したのは、水を吸収して膨らむポリマー=?=という材料の粉約8キロ、おがくず約60キロと新聞紙。ピットに流れ込む水が通るとみられる地下の横穴に上から穴を開けて入れた。流出が確認された2日にはピットにコンクリートを流し込み、亀裂をふさいで流出を止めようとしたが失敗した。
 ピットの水からは、通常の原子炉内の水の1万倍を上回る濃度の放射性ヨウ素を検出。ピットとつながった作業用の立て坑やトンネルからも高濃度の汚染水が見つかっており、燃料が損傷した2号機の原子炉から出た汚染水が海に流れ込む経路の一つとみられる。
 2号機以外について、経済産業省原子力安全・保安院は「現段階では同様の漏れ出しは確認されていない」としている。
 1~3号機のタービン建屋地下にも汚染水がたまり、原子炉の冷却機能復旧を妨げているが、保安院はこの水を入れる場所の候補として、敷地内の汚水処理用建物を選定した。

[ポリマー] 同じ種類の分子が複数結合し鎖や網目のようにつながった化合物。アミノ酸がつながったタンパク質や、エチレンが結合したポリエチレンなどがある。構成する分子によってさまざまな性質になり、消臭機能がある繊維や、海水をろ過して真水にしたり塩分を取り出したりする高分子膜も研究、開発されている。吸水性のあるポリマーは、分子の網目が広がることで体積の千倍程度の水を吸収でき、紙おむつなどに使われている。