毅然と反応 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

毅然と反応

【佐藤優の眼光紙背】東日本大震災とロシア
2011年03月22日07時30分


 国家は本質において利己的な存在だ。東日本大震災で世界各国が日本を支援している。しかし、それと同時に被災者救済と福島第一原発の危機が同時進行している状況で、日本の統治能力が弱体化しているか否かを各国は探ろうとしている。特に露骨な動きを示しているのがロシアだ。3月21日付読売新聞電子版はこう報じた。

露戦闘機、日本領空接近…空自機スクランブル

 防衛省は21日、日本海を飛行していたロシアの戦闘機スホイ27など2機が、日本領空に侵入する可能性があったとして、航空自衛隊の戦闘機を緊急発進(スクランブル)させたと発表した。

 スホイ27は一時、領空の約60キロ手前まで接近したが、その後、両機とも北方に飛び去った。同省によると、ロシアの戦闘機に対するスクランブルは極めて異例。同省でロシア軍の目的などについて分析している。


 震災復興のため自衛隊の10万人動員が行われている状況で、日本の防空体制についてロシアがチェックしたのである。友好国ならば決して行わないことである。本件について日本政府は、「あなたの国は隣国が災害で危機に瀕しているときにこういうことを行うのか。こういう行為が日本の感情に与える影響を計算しているのか」と不快感を表明すべきだ。それとともにマスメディアも「いったいロシアは何を考えているのだ」と本件をとりあげ、ロシアに対して厳しい論調を展開して欲しい。

 東日本大震災後、ロシアでは対日政策を巡って融和派と強硬派の対立が生じている。融和派は、チェルノブイリ原発事故で被災したロシアがもつノウハウを積極的に日本に提供すべきと考える。それとともに日本とのエネルギー協力を進めるべきと考える。これに対して強硬派は、極東において日本に対するロシアの外交的、軍事的、経済的優位性を確保しようとしている。ロシア世論は東日本大震災後、日本に対する同情が増している。日本外務省、特に在ロシア日本大使館は、ロシア内部の事情をよく調べた上で、対日強硬論を封じ込め、対日融和論者の力が強くなる方向でロビー活動を展開しなくてはならない。

 日本海におけるロシア空軍の挑発に対しては防衛省だけでなく外務省も毅然と反応しなくてはならない。(2010年3月22日脱稿)


大震災支援してくれたから抗議しない? 松本外相、露戦闘機の領空接近「支援の気持ち信じたい」
2011.3.22 19:32 産経新聞

松本剛明外相
 松本剛明外相は22日の記者会見で、ロシア空軍の戦闘機と電子戦機が21日に日本領空に接近したことに対して、ロシア側に抗議しない考えを示した。

 領空侵犯の恐れがあったため、航空自衛隊の戦闘機が緊急発進(スクランブル)で対処した。しかし、松本氏はロシアが東日本大震災を受け、日本に救援チームの派遣や物資の提供を行っていることを念頭に「各国からお見舞いの言葉や支援の申し出をいただいているという気持ちを信じて、お付き合いしていくのが今の私どもの立場だ」と述べた。

 ロシアによる支援への見解を尋ねた同国のメディアに対しては「手厚い支援の申し出に感謝しているとぜひ伝えてください」と語った。

 17日にもロシア空軍の情報収集機が日本海で日本領空に接近した。いずれも領空侵犯はしなかったが、被災者支援に加え福島第1原発事故が重なっているなかで、日本側の対処能力が低下しているか試すねらいがあったとみられる。

 日本海では米軍が強襲揚陸艦「エセックス」などで支援活動を展開しており、防衛省筋は「日米共同対応を偵察する目的もあったはずだ」と指摘した。


→例えば・・・

他国の悲劇につけいる行為は、今日の国際社会の中で恥ずべき行為であり、全人類共通の利益と価値に対する挑戦的行為であり、隣国の友人として深い悲しみを覚える。

柔道などで世界共通のフェアプレーの精神を学んだリーダーであれば、このような指導はしないであろう。このようなごく一部の冒険主義者の行為は、日露関係全般を傷つけるだけでなく、ロシア国民が今回に悲劇によせていただいた善意、ロシア国際援助隊の活躍、ロシアの国際社会における名誉と信義を傷つけるものである。二度とこのような行為が行われないように善処されたい。

なお、日本では現在、自衛隊も災害復旧にあたっているが、日本の国益に対する侵害は断固排撃する準備を常に備えている。在日米軍も同様である。



露大統領「十字軍発言は容認できぬ」、プーチン首相を暗に批判
2011年3月22日 朝日新聞



 [ゴルキ(ロシア) 21日 ロイター] ロシアのメドベージェフ大統領は21日、米英仏軍などによるリビア攻撃を中世の十字軍に例えたプーチン首相の発言を、名指しは避けながらも批判した。

 プーチン首相は同日、ミサイル製造工場を訪れた際、リビアへの軍事行動を認めた国連安全保障理事会の決議について、「中世の十字軍を思い起こさせる」と述べていた。

 同首相の発言を受け、メドベージェフ大統領は記者団に対し、「物事を評価する際には、十分な注意が必要だ。文明間の対立をもたらす十字軍などの表現を使うことは容認できない」と強調した。

 プーチン首相に対する痛烈批判と受け取られる大統領の公の発言は、2012年に迫った大統領選を前に、「双頭体制」を築く両氏の間の不和を示すものではないかとの声も上がっている。


東日本大震災:「日本に北方領土返すべきだ」 露の大衆紙コラム「同情の印として」
毎日新聞 2011年3月22日


 【モスクワ田中洋之】ロシアの大衆紙モスコフスキー・コムソモーレッツは、東日本大震災に見舞われた日本への同情の印として、ロシアは北方領土を日本に返還すべきだとする異例のコラムを掲載した。

 18日付で筆者は女性記者ユリヤ・カリニナさん。これまで領土返還に反対だったが、「地震と津波ですべてが変わった。日本に降りかかった不幸を和らげるため、クリル(北方領土)を今すぐ無条件で引き渡すべきだ」と主張。ロシアは広大な国土面積の0・035%にすぎない四島に固執する必要はないとの考えを示した。ロシアは最近、強硬な対日外交が目立っていたが、日本にロシアとして初の救助隊約150人を派遣。悪化していた対日世論にも改善の動きが出ている。


ロシア首相 対日ガス支援示す
3月20日 7時11分 NHK
東北関東大震災に関して、ロシアのプーチン首相は極東のサハリン州で開かれた会議で、日本に対して3か月余りの間に液化天然ガスおよそ400万トンを供給することが可能だという見通しを明らかにしました。

プーチン首相は、19日夜、サハリン州の中心都市ユジノサハリンスクに入り、極東地域における石油や液化天然ガスなどの供給計画について政府関係者や関連企業の役員らと協議しました。この中で、プーチン首相は、東北関東大震災によって電力が不足している日本に対して、ロシアがヨーロッパ向けの天然ガスを融通することによって、3か月余りの間におよそ400万トンの液化天然ガスを供給することが可能だという見通しを明らかにしました。また、プーチン首相は、福島第一原子力発電所の事故でロシア極東地域の住民の間で出ている不安の払拭(ふっしょく)に努める一方、引き続き、福島第一原発で行われている作業を注視し、日本から入ってくる物資などの放射線量を監視していく考えを示しました。


ロシア 対日関係融和も
2011年3月16日 東京新聞

 【モスクワ=酒井和人】北方領土問題で日本との対立が先鋭化していたロシアが東日本大震災をめぐり、エネルギー分野などで対日支援策を続々と打ち出している。

 対日強硬路線を一時中断し、国際社会に存在感をアピールする構えだ。

 ロシアのプーチン首相は十五日、日本の電力不足の長期化に備え、極東サハリンでの資源開発事業「サハリン3」の実現を急ぐよう指示した。災害救援部隊の派遣に加え、同日には毛布など物資の提供を開始。液化天然ガス計二十万トンの追加供給も表明している。

 北方領土問題をめぐり日本国旗を燃やす事件があった日本の在モスクワ大使館や在サンクトペテルブルク総領事館前では、大勢の人々が犠牲者を追悼。ラブロフ外相も十四日、同大使館前で献花し「日本の隣人たちと連帯したい」と語った。

 一方、ロシアの与党系若者組織は十五日に予定していた北方領土での示威行動を中止。ロ有力紙「コメルサント」は十四日「(大震災が)日ロ関係に新しい雰囲気をつくる」とのロ外務省筋の見方を伝えた。

 ロシアは昨年十一月のメドベージェフ大統領の北方領土訪問以来、対日けん制を強化。ロシア国内では経済近代化などで日本との関係改善を求める声も根強いが「来年の大統領選を控え、外交的に弱腰ととられる対日融和は不可能になっていた」(外交専門家)。

 ロシアは年内を目指す世界貿易機関(WTO)加盟など経済分野を中心に、国際協調を重視。このため大震災を、弱気批判を回避しつつ、柔軟な外交姿勢やエネルギー大国としての存在感を示す好機ととらえた可能性がある。