ニュースクリップ | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

ニュースクリップ

東日本大震災:福島第1原発事故 東電、全面退去打診 水素爆発2日後、首相が拒否

毎日新聞 2011年3月18日 

 東京電力福島第1原発事故で、東電側が12日の1号機の水素爆発から2日後の14日夜、同原発の職員全員を退去させる方針を政府に打診していたことが分かった。現地での作業継続は困難と判断したとみられ、自衛隊と米軍に対応を委ねる構えだったという。菅直人首相は打診を拒否したが、東電は高濃度の放射線被ばくが避けられない原子力災害に発展する可能性を認識していたことになる。

 複数の政府関係者によると、東電側が14日夜、「全員退去したい」との意向を枝野幸男官房長官と海江田万里経済産業相に電話で申し入れた。両氏は認めず、首相に報告。首相は15日午前4時過ぎ、清水正孝・東電社長を官邸に呼び、「撤退はあり得ない。合同で対策本部をつくる」と通告。その後、東京・内幸町の東電本店を訪れ、「東電がつぶれるということではなく、日本がどうなるかという問題だ」と迫ったという。政府当局者は14日夜の東電側の打診について「全員を撤退させたいということだった」と明言した。

 一方、東電側も首相への不満がくすぶる。東電によると、同原発では協力会社と合わせ計4000~5000人が働いているが、現在、現地に残っているのは約300人。発電所の制御や復旧などの作業にあたっている。

 東電関係者は「『撤退は許さない』というのは『被ばくして死ぬまでやれ』と言っているようなもの」と漏らした。【三沢耕平、小山由宇】



福島原発:被ばく量の限界で作業員交代-東電は人員増強を急ぐ
3月18日(ブルームバーグ):東日本大震災で被災した福島第一原子力発電所で危機的状況が続く中、東京電力は核燃料が溶け出す事態を回避するため前線に送る作業員を増やしている。ただ、当初派遣された作業員は、放射線被ばく量の限界から交代を余儀なくされている。

  東電は核燃料が融解したり放射性物質が漏れ出したりしないよう、露出した核燃料棒に向けて放水作業を進める中、福島第一原発での作業員数を16日の180人から17日には322人に増員した。元米原子力規制委員会(NRC)の安全性指導員で米科学者団体「憂慮する科学者同盟」の物理学者、デービッド・ロックボーム氏によれば、露出した燃料棒のそばでは放射線量が16秒で致死量に達するという。

  11日の巨大地震発生以降、同原発施設の放射線量は上昇しているが、作業員が施設内にとどまれる時間を延ばすため、許容される累積放射線被ばく量は2日前に2倍強に引き上げられた。英ナショナル・ニュークリア・コープの元安全政策職員で現在はメルボルンを拠点にする産業事故関連コンサルタントのジョン・プライス氏は、一部の場所では1時間の被ばく量が年間上限の半分に相当すると指摘。同氏は電話インタビューで「この状態では、作業員を急速に使い果たすことになるだろう」と述べた。

  東電の広報担当者は、放射線量が最大許容量に達する前に作業員には施設からの退避を命じていると説明している。世界原子力協会によると、年間被ばく総量が100ミリシーベルト以上となれば、がんの増加が明らかだという。日本の衛生当局は15日、原子力作業員の累積被ばく量上限を100ミリシーベルトから250ミリシーベルトに引き上げた。日本の原子力安全・保安院は17日にウェブサイトで、作業員1人が106.3ミリシーベルトの放射線に被ばくしたことを明らかにした。


放水効果まだ不明、電源回復でも機器使えるか
(2011年3月18日08時46分 読売新聞)
 東日本巨大地震で被災した東京電力福島第一原子力発電所で17日、自衛隊の大型ヘリコプターと消防車両による、空陸からの初の放水作戦が実施された。

 使用済み核燃料の過熱が進み、残された時間はあとわずかとされる中でのぎりぎりの試み。どんな効果があったのか。

 今回の放水には、3号機建屋の一時貯蔵プールの使用済み核燃料を冷却し、失われた冷却水を少しでも補おうという目的がある。17日午前には、ヘリ2機がぶらさげた容器(容量7・5トン)に入れた海水を4回投下、同日夜には消防車が順番に放水し、空陸で約30トンずつの水が投入された。

 17日夜から行われた地上からの放水には、自衛隊の消防車両5台と警視庁の高圧放水車1台が投入された。警視庁の放水車は午後7時過ぎから10分間、自衛隊車両は順番に午後7時半から約30分にわたって放水。警視庁の放水は建屋に届かず、自衛隊車両の放水は建屋に届いたが、プールに到達したかは確認できなかった。

 3号機の建屋上部は爆発で損壊し、すぐに水位や水温は確認できない状態になっている。敷地の西門付近で測定した放射線量は、17日午後3時に、毎時309・7マイクロ・シーベルト、同11時に289・0マイクロ・シーベルトとわずかに減った。

 日本原子力研究開発機構敦賀本部で放射線を計測している鳥居建男・安全品質推進部長は「効果があった可能性はある」と語る。一方、宮健三東大名誉教授(原子力工学)は「顕著な効果があったとはいえない」と指摘、専門家の間でも評価が定まらない。

 東京電力は、ヘリの放水後、3号機から水蒸気が上がっているのが見えたことから、「一定の冷却効果があった」とみる。水は蒸発して気化熱を奪うので、かかった水の量が少なくても、見た目以上の冷却効果があったとみている。

 林勉・元日立製作所原子力事業部長は「ヘリからの投下も地上からの放水も、強い放射線のため十分に近づけず、プールを満たすほどの水量にはほど遠いはずだ。しかし、それでも水をかけることで、かなりの冷却効果が見込めたと思う」。

 同じ30トンでも上空からの放水はほとんど霧状になってしまい、目標にはほとんど到達しなかったようだ。

 北沢防衛相は、ヘリ投下直後の記者会見で「(水は)間違いなくかかっている」としたが、宮本信一・元東芝原子力技術研究所長は「30トンのうち1トンもかかっていないのでは。ほとんど効果はないが、ほかに手がなく、繰り返すしかないだろう」と話す。

 放水は、冷やすことで核燃料の反応を抑えて線量を下げ、作業員が敷地内で作業できるようにする応急処置に過ぎない。線量が下がっている間に、安定して核燃料を冷却する機能を回復する措置が必要だ。時間の猶予はあまりない。

 地震で壊れた電源供給機能を補うため、外部から電源を供給する送電線の作業も17日夕にケーブル点検が終了した。今後、各原子炉建屋への給水に必要な専用分電盤やリレー回線を接続する。ただし、ケーブルを接続する同原発の受電設備付近は放射線量が高く、東電は作業方法を検討している。電源が戻れば、各号機の緊急炉心冷却装置(ECCS)などが使えるようになるはずだが、地震による損傷も予想され、東電は今後詳しく調べる。

 東京工業大の二ノ方壽(にのかたひさし)教授(原子炉工学)は「電源が供給されたら、たとえ一部でも回復に向け大きな期待がかかる。ただ、津波で塩水をかぶり、機器の中には動かないものもあるはず。それらが動くかどうかチェックも必要で、人間が直接行って確認する必要がある。機器はかなり放射線量が高い場所にあるものもあり、それを覚悟しても行うか、判断をしていく必要がある」と語る。



危機管理 首相は司令塔 現場は官邸だ
2011年03月18日(金)愛媛新聞社説
 救助が、安否確認が、進まない。被災地支援の機運が高まっているのに、物資や人材が届かない。東日本大震災は発生から1週間。とにかく今、この時が歯がゆい。
 死者、行方不明者は1万5千人を超え、避難者は数十万人に上る。だが、誰ひとりとして全容を把握しきれているとは思えない。かつてない複合災害は未踏の領域だ。
 福島第1原発で起きた国内初の原発震災。被災自治体の機能まひ。東北の生産、輸出拠点の壊滅。先進国とは思えない電力不足。計画停電による首都圏の混乱。負の連鎖は止まらず、日本の先行きを悲観視する向きが株式市場や為替相場で広まっている。
 非常時に、政府は何をやっても批判の的だ。危機管理の初動は円滑だった。その後の対応が後手だという非難は酷かもしれない。菅直人首相の被災地訪問に批判も出たが、事と次第では逆に現場に行かないことが糾弾されうる。
 それでも、あえて苦言を呈したい。菅首相は平常心を取り戻し、司令塔の任をまっとうするべきだ。現場主義へのこだわりは分かるが、首相の現場は官邸なのである。
 というのも、首相は再び福島原発を訪れようとした。日本で今、最も危険と思われる場所に赴くなど、最高指導者の立場の放棄に等しい。さらには東電本社で3時間も費やし、幹部に厳しい言葉を浴びせた。住民の怒りの代弁のつもりだろうが、八つ当たりしても何の効果もない。
 公権力を預かる者は常に最悪の事態を想定し、重大危機を回避すべく、大所高所の決断を下さねばならない。そして覚悟を示すことだ。
 事故を拡大しないため、早い段階で原発の廃炉もやむなしと決めていれば、小出しの対策に終始することだけは避けられたかもしれない。その判断は営利企業の電力会社には無理な話で、国にしかできない。首相に求められたのは政治的な「指示」と「保証」ではなかったか。
 原発震災は国家的危機である。が、官邸は原発だけにとらわれてはならないはずだ。避難所で多くの犠牲を生んだ阪神大震災の苦い経験を忘れてはならない。災害弱者である高齢者や持病のある人たちに目が届いていなかった。
 惨状は都市型の阪神大震災とは違う。津波被害をかんがみ、広域の救援態勢をいかに早く築くかが問われていた。今になって物資不足の改善にあたる被災者生活支援対策本部をつくったのでは遅い。
 政治主導とは何もかもを政治家が抱え込むことでない。危機管理の要は情報管理にあるが、官邸を経由しないと新情報が出ない状況を生んでは現場が一層混乱する。官邸は危機即応型から調整型に体制を切り替えてゆくときだ。