明日のドラマ「総理の密使」:楠田實日記のこんな点はどんな雰囲気で描かれているのでしょう? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

明日のドラマ「総理の密使」:楠田實日記のこんな点はどんな雰囲気で描かれているのでしょう?

秘書です。

明日の「総理の密使」をみる上で、下記の本を参考にしましょう。


楠田實(2001)『楠田實日記―佐藤栄作総理首席秘書官の2000日』中央公論新社
若泉敬(1994)『他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス』文芸春秋.


(1)政務秘書官についての豆知識

政務秘書官の規定は、国家行政組織法第19条第3項に以下のように規定しています。

「秘書官は、それぞれ各省大臣の命を受け、機密に関する事務を掌り、又は臨時命を受け各部局の事務を助ける」

→機密と臨時命というところがポイントです。
→同条項に基づく秘書官は通常、政務秘書官と呼ばれます
→同条項に基づかない「大臣秘書官事務取扱」は通常、事務秘書官あるいは単に秘書官と呼ばれます

(2)楠田實日記の注目点

楠田さんは、産経新聞出身の政務秘書官です。

楠田さんを中心に演説原稿を書いたりする秘密チーム(Sオペレーションと呼ばれた)の作業場として、グランドホテルの413号室(グランドホテルは首相官邸下の交差点向かいにあった、その後、東急ホテル1002号室)を使っていました。若泉氏ともこの413号室や1002号室で会っています。秘密チームの作業には秘密のアジトが必要です。どのように描かれているでしょうか?

若泉さんもこのSオペの会合に参加し、佐藤首相の演説原稿作成作業に協力しています。

佐藤首相と若泉さんを会わせるときには公邸で会わせたことがあります。このシーンはでてくるでしょうか。

412号室では外務官僚とは一緒に作業していたようですが、他の役所は出入りできていなかったようですね。

1970年10月30日、官房長官に対し佐藤総理から「大津(正)を秘書官にし、福島(譲二)の後任は大蔵省からとらない」という話があったとのこと。

→これはすごい話ですね。既に政務秘書官楠田(新聞記者からの抜てき)がいるのに、議員事務所秘書の大津氏を大蔵省出身の秘書官の後任にしたい、と佐藤首相が言ったということです。大蔵官僚の指定席の首相秘書官の後任が2人目の政務秘書官ですからね!

→いま、こんなことを言ったら、政権はひっくりかえるでしょうね。

→さて、この話、その後どうなったのか?


11月2日 朝、楠田政務秘書官が官房長官の自宅へ行き、一件について話し合う。とにかく、福島君残留で、秘書官事務取り扱いを1名増員ということで一致。

11月6日 閣議後、大津氏の辞令交付。総理から呼ばれ、「俺もそろそろ身辺の整理をしなければならない。身の回りの世話をする者が欲しいので、大津を秘書官にすることにした。演説や何か、君の仕事は大変増えているようだが、従来通りよろしく頼む。秘書官は君と大津と小杉の3人にし、あとの2人は事務取り扱いということにしたい。お願いいたします」とのこと。
※総理秘書官の予算定員は3名で、定員外の増員は秘書官事務扱いの発令とされた。

→つまり、ここで、佐藤首相は、退陣準備のために大蔵官僚に変えて議員秘書を秘書官にしたんですね。そして、小杉秘書官は外務省出身。外務省出身の秘書官だけが3秘書官の中で官僚。大蔵官僚は事務取り扱いに。

→この人事は強烈ですね。この当時、政治といえば外交だったんですね。高度成長期、外交が政治そのものだったということでしょうか。

→永田町の住人にとって、政務秘書官楠田さんは政務の鏡!さて、明日のドラマではこのあたりのことはどのように描かれるのでしょうか。

→鉄道省の官僚だった佐藤栄策と外務官僚・大蔵官僚との関係、さらにはポスト佐藤を狙う三木が外相だったことの影響などがどう描かれているのかも、注目です。

→もちろん、ドラマのメインではないのですが。