東アジア情勢:現状維持勢力VS現状打破勢力、その中の菅民主党政権の認識と能力は? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

東アジア情勢:現状維持勢力VS現状打破勢力、その中の菅民主党政権の認識と能力は?

→秘書です。
菅民主党政権は日中関係を語るとき、2010年6月に戻った、といいますが、あまり意味はないでしょう。菅民主党政権が「なぜ世界第2位じゃだめなんですか」と言っているうちに、日本は本当に世界経済のナンバー2の地位を降りてしまいました。世界は、ナンバー1国家の米国と、ナンバー2国家の中国との関係で思考されることになってきました。
現状維持(ステータスクオ)勢力の米国、これに追伸する中国です。中国が国力にふさわしい地位を求めて、現状打破をねらっているかもしれない。尖閣諸島はその最前線です。

現状維持勢力VS現状打破勢力

そうした視点から朝鮮半島情勢をみるとどうなるか?北朝鮮の行動はどうみえてくるか?中国が北朝鮮を非難しないことはどうみえてくるか?そして尖閣問題は?


浮かび上がってくることは、東アジアのステータスクオが崩れるかもしれない中で、菅民主党政権は状況対応に対する認識と能力において極めて不適切であるということ。

■【人界観望楼】外交評論家・岡本行夫 政府はまず「危機」の認識を
2010.12.1 02:46 産経新聞
 日本のまわりが騒然とし、これまで続いてきた状態(ステータスクオ)が崩れ始めた。

 尖閣問題。中国は日本との対話姿勢などいっさい見せない。海上保安官が流出させたビデオによって、われわれは初めて事件の真相を知った。中国漁船は、巡視船が大破してもおかしくない粗暴なぶつけ方をしてきた。ほかの国の巡視船ならば漁船を銃撃していたところだ。政府はあのビデオを直ちに北京に送り中国指導部に見せて、こう言うべきだった。「この問題を封じ込めよう。船長を送還するから、公海上での暴力行為を中国側で処罰せよ。しないのならビデオを公表し、日本で起訴・処罰する」 

 中国政府は自らの不利を悟って日本の申し入れに応じたやもしれぬ。少なくとも国民をあおり立てたり、「謝罪せよ、賠償せよ」というあぜんとする日本非難などやらなかったはずだ。それが外交というものだ。ビデオ全編は今も公開されず、日本の情報管理体制の弱点を中国に印象づけるだけの結果となっている中国にとって、ここまでくみしやすい政府はない。事件以降、漁業監視船を尖閣領海の接続海域に頻繁に派遣しはじめた。中国が南シナ海の諸島群を占拠していったやり方と同じだ

 ロシアのメドベージェフ大統領が国後島を訪問した。彼が北方領土訪問を言明したのは9月。それ以降、日本政府はロシア側に対して「大統領が北方領土を訪問するなら、横浜APECでの日露首脳会談など行える雰囲気はなくなる」と強い不快感を表明して全力で訪問阻止に動いたか。そう信じたい。駐ロシア・日本大使は「大統領が国内向けに指導力を誇示する狙い」と菅直人首相に説明したと報道されている。「だから、日本は騒ぐ必要はない」と聞こえる。ロシア側が喜ぶだけだ

 今度は北朝鮮の延坪(ヨンピョン)島砲撃。異常な国のやることだから真意はわからない。たしかにアメリカを2国間交渉の場に引き出す戦術でもあっただろう。しかし、それ以上に、金正恩氏の“王位継承”プロセスの一環だったのではないか。並みいる将軍たちの前で、金正日総書記が息子に肝試しをやらせたのである。金総書記自身、権力を掌握するまで、1983年のラングーン事件、87年の大韓航空機爆破といった強硬姿勢を軍部に見せて軍の忠誠を取りつけてきた。延坪島砲撃は、金総書記が息子に重要な役割を与え、軍から及第点を取り付けようとしたのではなかろうか。北朝鮮がラングーン事件を起こしたとき、金総書記は42歳。しかし金正恩氏はまだ27歳。これほど若い時から暴力的政策によって軍の忠誠を取り付ける手法を身につける若殿様がロクな主君に育つはずがない。北朝鮮はさらに危険な国になる。

 東アジア地域のステータスクオを変えようとする中国が北朝鮮の後ろ盾となるものだから、北朝鮮の行動には歯止めがかからない。日米韓の強力なチームづくりが急務なのに、いちばん肝心の日米関係がきしんだままだ。仲井真弘多(なかいま・ひろかず)知事の再選で普天間問題の展望が開けるわけではない。政府はまず、「危機」という認識を持て。その上での外交戦略の組み直しだ。それなくば、2010年代に、日本はただの島国になってしまう。(おかもと ゆきお)

→上記のような激変がおきている中、東アジア地域のステータスクオを変えようとする中国のトップに対して目を見て挨拶もできず、両国関係は6月の関係に戻った、中国も戦略的互恵関係といってくれている、としかいえない菅民主党政権は、存在そのものが東アジアの不安定要因というべきでしょう。

■北朝鮮砲撃:今後の朝鮮半島情勢は 米「CSIS」ラルフ・カッサ所長に聞く
毎日新聞 2010年12月1日 東京朝刊
 ◇「米韓の独自行動容認」「北朝鮮への働きかけ」 中国の対応がカギ--米シンクタンク「CSIS」ラルフ・カッサ所長
 今後の朝鮮半島情勢について、アジア太平洋の軍事・安全保障問題の専門家である米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)パシフィック・フォーラムのラルフ・カッサ所長に聞いた。

 3月に起きた韓国哨戒艦沈没事件への対応などで中国は北朝鮮を擁護した。中国の姿勢は「米韓を挑発しても大丈夫だ」というメッセージとして北朝鮮に伝わり、同時に中国自身が日米韓の信用を失う結果を生んだ。中国が「公正な仲介者」と見なされない現状では、6カ国協議は機能せず、日米韓が中国の6カ国協議首席代表者協議の呼びかけを拒否したことは驚くに当たらない。

 ただし、当面は軍事対決ではなく、外交による問題解決の局面に入る。中国に北朝鮮への働きかけを求める国際社会の圧力は一層強まり、日米韓は、中国が北朝鮮をより公然と非難するよう求めていくだろう

 さらに米韓は中国政府に対し、国連安保理常任理事国として北朝鮮問題で「責任ある行動」を取るか、それができないならば米韓の「独自の対応」を容認するよう迫るものとみられる。

 今後の事態の展開は、米韓の要求に対する中国側の対応にかかっている。


→では、中国は北朝鮮を非難するのか?

→今朝の日経新聞社説は「中国は砲撃に対し、北朝鮮と韓国の双方に自制を呼びかけた。しかし、肝心の北朝鮮への明確な非難は控えている。韓国の陸上を砲撃し、民間人の命まで奪った蛮行を、どうして放置したままなのか。まず北朝鮮をはっきり非難するのが筋だ。」としていますが、下記の記事によれば、実は、中国国内の世論調査で、危機を招いたのはどの国かとの質問に対し「米国」との回答が55・6%で最も多かったという雰囲気の中、北朝鮮非難はできないでしょう。


■「空母建造、正式表明せよ」中国紙に有識者寄稿 米韓演習受け
2010.11.30 14:43 産経新聞

 【上海=河崎真澄】中国共産党の機関紙、人民日報傘下の環球時報は29日までに、「空母建造を正式に表明せよ」と主張する国内有識者の寄稿文を掲載した。米国防省は今年8月に公表した報告書で中国が空母開発を進めており、年内に自前の空母建造に着手する可能性があると指摘しているが、中国はこれまで公式見解を明らかにしていない。

 同紙に寄稿したのはシンクタンク、江蘇連雲港発展研究院の孫培松院長。米原子力空母「ジョージ・ワシントン」が派遣されている黄海での米韓合同軍事演習に危機感を示し、「もし中国海軍がキューバとメキシコ湾で軍事演習を行ったら、米国はどう思うか」などと挑発。空母開発を水面下で進めている中国として、黄海への米空母派遣を「建造の正当化」の理由に挙げるべきだ、と同紙を通じて内外に示した格好だ。

 同紙は一方、今回の朝鮮半島危機に関する最新の世論調査結果を公表した。危機を招いたのはどの国かとの質問に対し、「米国」との回答が55・6%で最も多かった。2位は「韓国」の10・3%で、「北朝鮮」は9・0%にとどまった

→北朝鮮を非難しない中国を韓国はどうみているか。

■「6カ国協議とは…あきれる…」 反中民心が爆発
11月30日中央日報(韓国)
中国が6カ国協議を提案したというニュースが伝えられた翌日の29日、主要報道機関のサイトやポータルサイト、ツイッターなどには、中国に対する失望と怒りを表すコメントが次々と載せられた。

相当数のネットユーザーは「延坪島(ヨンピョンド)・天安(チョンアン)艦事件に対する北朝鮮の謝罪がなければ絶対にありえない」とし、6カ国協議を提案した中国を批判した

この過程でやや激しい表現も登場し、‘反中’感情の兆しも出てきている。ネットユーザーのイ・ヨンスクさんは「重大な発表をするというから北朝鮮を公式に非難するものと思っていたが、たかが6カ国協議の提案とは…」とし「金正日(キム・ジョンイル)を連れてきて頭を下げさせない以上、絶対に(6カ国協議を)受け入れてはいけない」と主張した。

「6カ国協議自体が中国と北朝鮮のウィンウィン(win-win)戦略を土台にした策略だ。中国は北朝鮮を制裁するという実利的な名分と同時に、北東アジアの実情に対する影響力を見せられる。また北朝鮮は6カ国協議を通して支援を引き出し、韓米日ロを完全にもてあそぼうとする思惑だ」。中国の提案を鋭く分析して批判したイム・ヒョンウさんのコメントはポータルサイト「NATE」に書き込まれた。このコメントは約700人から「推薦」を受けた。

このほか「これは提案ではなく愚弄」「中国は北朝鮮の今回の(延坪島)攻撃もあらかじめ知っていたはず。憎たらしく陰湿で凶悪な中国の姿だ」「中国は北朝鮮をかばう殻の役割をやめろ」などの非難が相次いだ。「金正日一家より中国XXがもっと憎たらしく思うことがある」という露骨なコメントもある。

韓国自由総連盟会員の約1000人はこの日午後3時、ソウル鍾路区孝子洞(チョンノグ・ヒョジャドン)の駐韓中国大使館前で糾弾大会を開き、「中国が延坪島を砲撃した北朝鮮の後見の役割をしている」と主張しながら、中国政府に北朝鮮びいきをやめるよう求めた。

自由総連盟は声明を出し、「中国は北東アジアの平和と安定のために国際協調に努力し、北朝鮮の蛮行を強力に懲らしめるのに加わるべきだ。中国が北朝鮮の蛮行を傍観し続ければ、国際社会での孤立が避けられない」と明らかにした。

◇「6カ国協議は始めるべき」賛成世論も=しかし一方では、「冷静に考えて、今は6カ国協議を始めるのがよい」という意見も出てきた。「初期対応が終わった今からは持続的な対話をしなければならない。中国をできるだけ利用し、北朝鮮が再び挑発できないようにすべき」ということだ。

民主労働党の李正姫(イ・ジョンヒ)代表は自分のツイッター(@heenews)に「戦争か、平和か。いま私たちは岐路にいる。平和へ行く道は対話しかない。南北、朝米対話と6カ国協議を再開し、平和協定を作るべき」と主張した。

→物事の是非を定め、非のあるほうのトラブルメーカーを徹底的に断罪するという発想法という、中国にみられる思考法からみて、北朝鮮を非難しないということは注視しておく必要があります。

→話はとびますが、この関連で、尖閣沖漁船衝突事件でも、菅民主党政権は事件の是非の主張はおさめて「双方の努力」をいい、中国側の日本への「謝罪と賠償」の取り消しもさせていない。これは将来、日本が漁船船長を釈放し(さらには司法の対応もないとすればなお)中国側の是非論の主張を日本側が認めた歴史とみなされるかもしれない。民主党の漁船船長解放と日中双方の努力論は、次世代に大きな重しとなる危険性があります。(中国は、フジタ社員についての是非論は明確にした上で釈放していますね)一刻も早く政権交代をして、この誤った歴史の積み重ねを修正しなければなりません。

→さて、米韓軍事演習は、中国の目線からみるとどうなるのか?


■北朝鮮砲撃:1週間 米韓演習に熱、実戦モードで圧力 迎撃、制圧、捜索も
毎日新聞 2010年12月1日 
 【ソウル大澤文護、西脇真一、仁川(韓国北西部)松井豊】燃料のにおいが漂う巨大甲板。F18戦闘機の「キーン」という金属音が「ゴー」という爆音に変わった。すさまじいごう音がびりびりと体全体に響いてくる。約5秒後、戦闘機は白煙を残してあっという間に甲板を離れ、霧の中に吸い込まれていった。

 北朝鮮による韓国・延坪島(ヨンピョンド)砲撃事件から30日で1週間。北朝鮮への事実上の対抗策として実施されている米韓合同軍事演習は3日目に入った。米原子力空母ジョージ・ワシントン(GW、約9万7000トン)では、戦闘機が約2分間隔で緊急発進を繰り返し、実戦さながらの訓練が行われていた。「出撃すれば、平壌まで10分もかからず、北朝鮮に大きな圧力になる。ただの訓練ではないんだ」。共同通信によると、米軍関係者はそう語った。

 合同演習に参加している艦艇や戦闘機など全体を指揮する「戦闘指揮所」。薄暗い室内では縦約2メートル、横約5メートルの巨大画面が青白く光る。現在位置を尋ねると広報担当者は「教えられない」と毅然(きぜん)とした表情で答えた。だが映し出されたレーダーの中心点は、空母が朝鮮半島の南西沖を航行していることを示していた。画面には朝鮮半島だけでなく、GWの黄海入りに強く反発した中国の山東半島や中国南部も鮮明に映っている。担当者は「北朝鮮の船が北方限界線(NLL)を越えてきても、すぐに探知できる」と胸を張った

 合同演習は1日で4日間の日程を終える。演習には米軍からGWのほか巡洋艦カウペンスやイージス駆逐艦ステザムなどが参加。韓国軍からも初のイージス艦「世宗大王」などが加わり、艦載機による迎撃訓練などのほか、大量破壊兵器を積んだ北朝鮮船の侵入を想定した制圧、捜索訓練なども行われた。

 「応分の対価を払わせる」と北朝鮮への対決姿勢を明確にした李明博(イミョンバク)政権は、米韓連合軍などの軍事的圧力を背景に北朝鮮の封じ込めを図る方針だ。演習の参加艦隊を指揮するダン・クロイド准将は「訓練は米韓の同盟強化のための訓練だ。李大統領は(29日の)談話で『北朝鮮の挑発には断固たる対応を取る』と話した。米軍はその韓国をサポートする」と語った。

■半島有事なら中国軍出兵を=緩衝地帯設置が必要-専門家
(2010/11/30-17:48)時事通信
 【香港時事】30日付の中国系香港各紙によると、上海東アジア研究所地域安全保障研究室の張祖謙主任は朝鮮半島の軍事的緊張が高まっていることに関連して、南北朝鮮間で戦争が起きた場合に中国軍は中朝国境を越え、北朝鮮領内に幅20~30キロの緩衝地帯を設けるべきだとの考えを示した。
 張主任は、南北間の武力衝突が拡大すれば、北朝鮮から大量の難民が中国領内に逃げ込む可能性があると指摘。緩衝地帯を設置して難民を収容し、情勢が安定してから撤兵すればよいと述べた。

■米韓演習後、北の再挑発も=「十分に可能性」-韓国国防相
(2010/11/30-18:02)時事通信
 【ソウル時事】韓国の金泰栄国防相は30日、国会の国防委員会の質疑で、米韓合同軍事演習が終わった後に北朝鮮が再び挑発行為を行う可能性について問われ「十分に可能性がある。武力挑発があれば徹底的に制圧するよう準備する」との見解を示した。
 これに関連し、合同参謀本部は同日、追加挑発に備え緊急会議を開いた。
 また、金国防相は、28日に李明博大統領と会談した中国の戴秉国国務委員が「(延坪島砲撃への韓国の反撃で)北朝鮮側にも相当の被害があった」と述べたことを明らかにした。

→米中関係は朝鮮半島情勢をめぐり、こんな感じです。さて、日米中正三角形論の民主党はどうします。6月に戻った日中関係とは?もう東アジア情勢は別のところにいってるのではないですか?菅総理はまだ2010年6月にいるのか?

■北朝鮮軍が砲撃に踏み切った真の理由は石油の払底
米韓軍は北朝鮮軍の崩壊を狙う
日経ビジネスオンライン
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20101129/217325/?P=1
 北朝鮮は11月23日、北朝鮮からわずか12キロメートルしか離れていない、韓国領の延坪島を砲撃した。この砲撃で、韓国海兵隊の兵士2人と民間人2人が死亡し、南北関係と米朝関係の緊張が高まった。なぜ、北朝鮮は民間人の居る島を突然砲撃したのか。この背景には、石油が底を尽き崩壊に直面する北朝鮮軍の危機と、強硬派軍人の台頭、軍内部の主導権争いがある。また、中国による6カ国協議主席代表の緊急会合の提案は、国連安保理での問題処理を回避するための作戦であった。

米韓軍の常識:北朝鮮軍が使える石油はわずか30万トン
 北朝鮮軍には、もう石油が無い。これが、今回の事件の軍事的背景である。北朝鮮の軍は、年間どのくらいの量の石油を使用できるのか? 想像できないほど少ないのだ。日本ではこの事実を、専門家はもちろん政治家、外交官もまったく知らない。これを知らずに砲撃事件を考えると、判断を誤る。

 いっぽう、韓国軍と在韓米軍の幹部の間では、これは常識である。韓国軍と在韓米軍の司令部はこれを正確に把握しているから、今年の7月以来、軍事演習を断続的に継続してきた。これは、北朝鮮軍に石油を消費させ、干上がらせて軍事力を低下させる作戦であった。この作戦が、成果を上げたことになる

 北朝鮮の軍は、年間わずか30万トンの石油しか使用できない。これがいかに少ない数量かは、石油を扱ったことのない人には実感できないかもしれない。例えば、成田空港で1年間に使用するジェット燃料の量は、380万トンである。日本の自衛隊が、1年間に使用する石油は150万トンである。また、日本の都道府県で石油消費量の最も少ない自治体でも200万トン弱である。北朝鮮の石油確保量は、最大で年間80万トン程度だ。

 こうして見ると、北朝鮮軍が保有する石油が、いかに少ないかを理解できるだろう。これは、ウソではなく本当なのだ。どうして分かるのか? 北朝鮮が中国から輸入する年間の原油量は、約50万トンである。これは、事実上中国の援助である。本当は代金を払う約束だが、払えないので支払いが遅れている。中国は、北朝鮮が市場価格で代金を支払わないと、これ以上の量は供給しない

 中国の大慶油田で採れた50万トンの原油から、軍事用の石油はどのくらい生産できるのか? わずか30%である。つまり、ガソリンや軽油、ジェット燃料など、軍用に使える石油製品は15万トンしか生産できないのだ。この他に、ロシアから20万トン前後の石油を輸入している。外貨が無いから、これ以上は買えない。つまり、北朝鮮軍が使える石油は年間30万トン程度にすぎないのだ。備蓄もあるが、100万トン程度と言われる。備蓄施設は、小規模だ。

米韓軍が演習を行えば、北朝鮮軍は石油を使わざるを得ない
 だから、北朝鮮軍を疲弊させ、軍事力と士気を低下させるには、軍用石油を枯渇させればいいのだ。それを知っている韓国軍と米軍は、韓国海軍哨戒艦への爆撃の報復として、軍事演習を継続した。韓国と米軍が軍事演習をすると、北朝鮮はそれを「同国を攻撃する口実」だと考える。だから、北朝鮮も同じように軍事演習を行い「侵略」に対峙せざるを得なくなる。戦闘機を飛ばし、艦艇を走らせ、戦車を動かすと、たちまち石油は底をつく。

 韓国軍と米軍は、今年7月から年末までに10回の軍事演習を計画し、実施している。さらに来年も、多数の演習を計画している。これが続くと、北朝鮮軍は石油ばかりでなく軍用の食料、装備品も事欠くようになる。軍崩壊の危機に直面するのだ。

 この危機を避けるため、北朝鮮は韓国に軍事演習の中止を呼びかけた。しかし、韓国軍と在韓米軍は応じなかった。このため、10月には今回の延坪島より北にある白翎島の沖合に砲弾を落とすと「警告」した。しかし、韓国側は、これも受け入れなかった。

 北朝鮮軍がこの“石油危機”を回避するためには、米軍と韓国軍の演習を中止させるしかない。その最後の手段として、民間人が住む島の攻撃という手段に出たのだ。北朝鮮軍は、民間人に被害が出るのを恐れて米韓軍が演習を取りやめる、と読んだのだろう

 だから、北朝鮮軍の行動はしかたがない、と言っているのではない。事件の背景にある真実を、知ってもらいたいために、説明したのである。つまり、北朝鮮がどれほど深刻な危機に直面しているか、北朝鮮に対する制裁が効果を生んでいる事実を説明したのである。こうした現実を無視し、あるいは無知で勝手な分析や解説を行うのは危険である。国際問題の判断を誤るからだ。

専門家やメディアは、「後継者の成果づくり」や「瀬戸際外交」を背景として説明している。そうした背景も、ないわけではない。だが、直近の主要な原因ではないのである。誤った判断や分析、観測は外交や国家の運命を誤らせる。根拠の無い推測や、小説まがいの無責任な判断を示してはいけない。

キーパーソンは金英哲・軍偵察総局長
 今年になって、北朝鮮は韓国海軍哨戒艦撃破事件や、今回の砲撃事件のような危険な軍事攻撃を行っている。これを指揮しているのは、金英哲・軍偵察総局長であるといわれる。彼が、昨年秋に偵察総局長に就任して以来、北朝鮮の危険な行動が続いている。その背景には、軍の主導権を巡る、呉克烈・国防委副委員長との軋轢があると観測されている。北朝鮮を一枚岩の「理想国家」と見るのでなく、内部対立があったり計算間違いをする現実の国家として観察し、よりリアリティーある分析と解説をすることが重要である。

中国の6カ国協議会合提案は国連安保理潰し
 中国は、11月28日・日曜日の夕方に突然、「6カ国協議の首席代表による緊急会合」を提案した。これについて、多くのメディアは「北朝鮮の孤立回避」や「中国の外交攻勢」と報じた。確かに、中国の外交力が存在感を失っているのも事実である。だが、中国の目的はそれだけなのだろうか。

 中国は、国連安保理での北朝鮮問題処理を「妨害」する作戦に出たと考えるほうが真実に近い。中国は、28日の日曜日になぜこうした発表を行ったのか?

 実は、日本時間28日夜はニューヨーク時間で28日の朝である。28日までのおよそ5日間、米国は感謝祭の大型連休であった。連休明けの29日から、ニューヨークの国連安保理では、「北朝鮮の砲撃事件を安保理で扱うか」をめぐる安保理理事国の協議と根回しが始まる。この協議と安保理での問題討議を避けるために、中国は動いたのだった。

北朝鮮を叱れない中国:かつて鄧小平は厳しく臨んだ
 中国が提案した「6カ国協議緊急会合」に関係諸国が合意すれば、国連安保理での協議を先延ばしできる。「関係6カ国が話し合っているので、安保理の協議はしばらく延ばしてほしい」と主張しようとしたわけだ。

 国連安保理で問題が協議されれば、北朝鮮非難決議や新たな制裁が採択される可能性が決して小さくない。北朝鮮による砲撃は休戦協定違反であり、かつ、国連憲章にも違反するからだ。中国としては、こうした決議や制裁を阻止するのはなかなか難しい。無理押しすると、中国が国際社会で孤立しかねない。何よりも、中国は朝鮮問題における外交力と指導力を失いかねないのだ。

 国連安保理の常任理事国である中国は、決議に反対する「拒否権」を保持している。中国が拒否権を行使すれば、非難決議や制裁は採択されない。だが、中国はこれまで、朝鮮問題で拒否権を使用したことは無く、使用するつもりもない。そのいっぽうで、非難決議や制裁決議を採択させたくもない。中国外交は、難しい立場に立たされたのである。

 この困難な外交的立場が、中国に「6カ国協議緊急会合」を提案させたのだ。この事実は、中国の指導部の弱さを物語っている。本来なら、中国は北朝鮮の危険な行動に怒り、北朝鮮にはっきりと物を言うべきだ。国際法違反なのだから

 かつて鄧小平・国家主席は、韓国の全斗煥大統領を北朝鮮がビルマで暗殺しようとした際に、きわめて厳しい態度で臨んだ。ところが、今の中国指導部は北朝鮮を叱ることができない。指導力が無いのか。あるいは、北朝鮮を弁護する中国の軍部や強硬派に配慮しているのだろうか。中国指導部の力不足が、北朝鮮を甘やかしているのだ。

 日本政府や、民主党の政治家の中には「中国に頼む」「中国を動かす」と発言する人がいるが、余り頼りにならないというのが、中国の現実である

→石油枯渇懸念が軍部にどんな影響があるのか?日本はよく理解できる国ですね。

→しかし、中国は、国益の観点から、石油を無償で供給する可能性をウォッチする必要がありそうです。一部報道のよると、30日付中国紙・環球時報(電子版)は、「北朝鮮は中国にとり核心的な利益だ」とする論評を掲載したとのこと。これは中国が北朝鮮への石油輸出についてビジネスベースと異なる対応をする可能性を示唆しているかもしれません。

→逆にいえば、中国は石油を止めるかどうかを、北朝鮮軍部は無視できない。という意味で、本当は北朝鮮を動かす能力はあるはずなのですが。


→ところで、日本が「中国に頼む」「中国を動かす」?何をてこに?ノーベル平和賞出席の通告期限内に返事すらできなかった国が?

■ノルウェーとのFTA交渉を無期延期=平和賞決定への「報復」か-中国
(2010/12/01-01:50)時事通信
 【ロンドン時事】AFP通信は30日、ノルウェーと中国の自由貿易協定(FTA)締結交渉について、中国が事実上の無期延期を申し入れたと報じた。ノルウェーのノーベル賞委員会が、今年の平和賞を中国民主活動家、劉暁波氏に授与することへの「報復措置」とみられている。
 来年初頭にも次回会合が予定されていたが、ノルウェー貿易・産業省スポークスマンによれば、中国側は「期日設定前にさらなる内部調整が必要」と通告してきた。ノルウェーの中国専門家は「ノーベル賞委員会による決定が(今回の動きに)関係していることは間違いない」と指摘、最終的に交渉が決裂する可能性もあるとの見方を示した。

→民主党政権のみなさんには、下記の記事もよく勉強していただきたいものです。

■【正論】中国軍事専門家・平松茂雄 中国は優位に立つと嵩にかかる
2010.12.1 02:44産経新聞

 わが国の政治家、マスコミはどうして尖閣諸島で毎回、同じことを飽きもせず繰り返すのか。今回は、7月ごろから中国の漁船数十隻が尖閣諸島の領海に入って、活動していたという。マスコミが報道したのは9月7日で、そのうちの1隻がわが国の海上保安庁の巡視船に衝突したことを機に、初めてニュースとなった。それまで国民はわが国の領海を、中国の漁船が徘徊(はいかい)していたことをあまり認識していなかったのである。

 尖閣諸島は、明治28(1895)年にわが国の領土に編入された。翌29年、石垣島の古賀辰四郎氏が1島を除く4島を政府から借り上げて主島の魚釣島と南小島で鰹(かつお)節工場などを営み、昭和7年の払い下げで私有地とした。太平洋戦争が近づいて古賀氏が引き揚げると無人島になり、現在は埼玉県の日本人が所有している。

 したがって、周辺12カイリの海域はわが国の領海である。国際法上、外国船は軍艦を除いて通過できる(無害通航)ものの、活動したり徘徊したりすることは認められていない。海上保安庁の巡視船は領海を侵犯した外国船に対しては、その旨を通告して立ち退かせているものの、数十隻の漁船を相手に、追い払ってもまたくるというイタチごっこを繰り返すのは、並大抵の苦労ではなかろう。

 こんな事態を招いたのは、わが国政府、マスコミ、評論家らの事なかれ主義である。今回の出来事の責任は専ら、民主党政権の責任に帰されているが、事なかれ姿勢は、民主党の下ではひどすぎるといった程度の差こそあれ、自民党時代にも通底するものだ。

 ≪尖閣の発端は海洋法条約≫

 尖閣問題の発端は、1973年からの国連海洋法条約会議に象徴される「海洋の時代」の到来にある。それまで人類が開発し消費してきた陸上の資源がこのままでは枯渇するので、海の資源、特に海底に埋蔵されている資源が着目されるようになって、それを利用するルールが必要になった。

 条約の討議を前に、世界の沿岸国は自国の海を囲い込んで海洋調査を実施した。南米諸国は何と500カイリを主張、これを受け入れると世界の海の大半が排他的経済水域になり、公海はほとんどなくなってしまう。そこで200カイリで手打ちが行われたのである。

 わが国周辺の東シナ海、黄海でも68年、国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の調査が行われ、翌69年に結果が公表された。両海の大陸棚には、「中東に匹敵する石油が埋蔵されている可能性がある。特に尖閣諸島海域が最も有望」と報道されている。

 そうなると、わが国の石油企業4社が「日中中間線」の日本側海域に鉱区を設定し、台湾と韓国も鉱区を設けた。ところが、南北の幅が400カイリに満たない東シナ海の中央で3カ国・地域の設定鉱区が重なり、対立が生じた。

 ≪中国がつぶした日韓台開発≫

 そこで、岸信介元首相の仲介により、領土問題を棚上げし石油資源の開発に限定して、3カ国・地域による共同開発を実施するということで合意が成立した。だが、数カ月後の70年12月、突然、中国が新華社、続いて人民日報の評論員論文の形で、「東シナ海は中国の海であり、東シナ海の石油資源は中国の資源である」と主張し、特に日本に対し、「日本はまた中国の資源を略奪するのか。これは軍国主義ではないか」と激しく非難攻撃した。この恫喝(どうかつ)で共同開発計画は吹っ飛んでしまう。

 脅しは効果十分だった。以後、日本は、東シナ海の日本側海域での中国の活動に対しても、警告するだけで排除できないという状況が生まれている。最近では、中国は奄美大島に近い海域での調査も行い、日本側の中止警告を「ここは中国の海だ」と無視して調査を続けるようになっている。

 ここに至った背景には、さまざまな問題がある。例えば、80年代に入り、トウ小平の「改革開放」が実際に滑り出すや、「トウ小平は毛沢東と違う」と礼賛した人たちや、そうしないまでも、経済成長を遂げれば中国は「普通の国になる」と期待する人たちが現れた。そして、日本政府は気前よく、低利で長期の多額の政府開発援助(ODA)を提供、中国は日本を上回る高度経済成長を遂げた。

 ≪右手でビンタ、左手で要求≫

 筆者は50年前に大学院で中国研究を始めたとき、指導教授から、「中国人は相手より優位に立ったとき、嵩(かさ)にかかってくることがある。気をつけるように」、別の教授から「中国人は右手で人の横面をひっぱたきながら左手を出して金や物を要求することがある。よく覚えておくように」と言われたことがある。その時はまさかと思ったが、今回、拘束した中国船船長を帰国させたところ、中国側が「謝罪と賠償」を要求してきたあたりは、まさに、2人の教授の指摘した通りではないか。

 強大化してきた中国を無視することはもはやできない。何か起きたら慌てふためいて対応するのではなく、中国の過去の動向をよく分析して、対症療法でなく、戦略的に対応する必要がある。(ひらまつ しげお)