尖閣映像:「情報の政治化」こそ問題の本質 | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

尖閣映像:「情報の政治化」こそ問題の本質

秘書です。
主任航海士の逮捕見送り関連記事です。


■「流出ビデオは国家機密か 「情報の政治化」が混乱招く」
11月16日読売新聞29面 防衛省防衛研究所主任研究官・小谷賢氏

「最近の海上保安庁のビデオ流出に関わる騒ぎは一体何なのだろうか。まずあのビデオが国家機密かどうかという点だが、機密とはそれが漏れれば国益に損失を与えるような情報のことである。今回の流出事案が日本の国益に損害を与えたかどうかはまだ判断できないが、少なくとも2001年に生じた海保と北朝鮮籍と見られる不審船の間に生じた銃撃戦のビデオの方がよほど秘匿度は高い。後者はすぐに国民に公開されたわけだが。」

「(国家機密について)最高裁判例では「実質的に秘密として保護するに値するもの」としているが、その定義は曖昧である。百歩譲って政府が今回のビデオを機密と判断したならば、それに「秘」の指定を行い封印しなければならない。ところがビデオは一部国会議員の前で上映され、その内容も議員の口から漏れた。もはやこうなるとビデオは秘密とは言えない。」

「今回の混乱は、元々秘匿度の低い情報を様々な配慮から秘密として取り扱おうとしたことに原因があると考える。これは政治化が情報を歪曲する「情報の政治化」と呼ばれる現象だ。この問題も古今東西見られるが、大抵の場合、情報の政治化は失敗に終わる。そして後世の評価も辛くなる。」

「さらに根本的な問題は、日本に国家機密をきちんと扱う制度や法律が未整備のままであるとうことである。」

→すぐに公開しておくべきものを公開しなかったという点で、「情報の政治化」をしてしまいましたね。

■「国策捜査」の末 最高検と現場対立 検証・尖閣ビデオ事件(上)
11月16日読売新聞(39面)
「捜査が進み、海上保安庁で映像がずさんに管理されていた実態が明らかになるにつれ、国家公務員法の守秘義務の対象となる「秘密」にあたるのかを疑問視する声も多く出始めた。」

「政府が一般公開を拒み続けてきた衝撃映像の流出翌日の5日。午後の記者会見で、仙谷官房長官が「故意に流出させたなら、明らかに国家公務員法違反。罰則付きの違反だ」と述べるなど、菅政権は当初から映像投稿者の刑事責任を重く見る姿勢を強調していた。その方針が大きく進んだのは7日。日曜日だったこの日の午後、ある警察幹部に突然、連絡が入った。「そちらで捜査を担当してもらえないか」。官邸サイドからの打診だった。この時点では、まだ海上保安庁が内部調査を進めている途中だっただけに、この幹部は「急に話が動き出したな」と驚いた。別の幹部は「政権が早くやりたいのだろう」と漏らした。」

「政府の焦りをくみ取ったかのように、翌8日午前には、海上保安庁が国家公務員法(守秘義務)違反などの容疑で、警視庁と東京地検に刑事告発。最高検も同日、異例の捜査開始宣言を行った。政府がひた隠しにしてきた映像がネット上に流出するという失態に、海保、警察、検察の3つの捜査機関がすべて動き、流出事件は、時の政権の意向に沿う「国策捜査」の様相を強く帯びていった。」

「問題の映像は、「秘密」の度合いが高くないーー。政治の強い意思のもとで進むかに見えた捜査は、逮捕回避という方向性が定まった。」

「「捜査は必要だったと思うが、そもそも普通に公開すれば良かったものを、これだけの大事件にしてしまったこと自体が問題だ」ある民主党議員は、沈んだ声で語った。」  

→官邸サイドからの打診?「国策捜査」的にやって、秘密保護法制までのりだして、この結果

→「そもそも普通に公開すれば良かったものを、これだけの大事件にしてしまったこと自体が問題だ」と気づいている民主党議員のみなさん、与党の自浄作用は?なぜ沈黙するのか?評論家ではないのですから、思いは行動で!


■尖閣諸島沖の中国漁船衝突と映像流出事件の経緯
(11月16日読売新聞(38面)の表をベースに加筆)

9月7日 尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突
9月8日 海保が中国人船長を逮捕
9月上旬 石垣海保が映像を編集して那覇地検に提出。第11管区海上保安本部にも報告用に送付
9月13日 船長以外の船員帰国
9月17日 11管が海上保安大学校に映像データを送信
9月19日 石垣簡易裁判所は中国人船長の拘置期限を29日までに延長
9月20日 フジタ社員4人が河北省石家荘市で中国当局に身柄拘束
9月21日 中国外務省の姜瑜副報道局長が定例会見で、尖閣諸島での衝突事故について「中国漁船が巡視船にぶつけられた」と主張し、海上保安庁に対し事故の模様を撮影したビデオを「最初から最後まで一部始終」公表するよう求めた
(9月中旬~下旬 主任航海士が海上保安学校の共有フォルダーから、映像をダウンロード。主任航海士がUSBメモリーに取り込む。)  
9月23日 中国の国営新華社通信は河北省石家荘市の国家安全機関が、同省の軍事管理区域に侵入し違法に軍事施設をビデオ撮影していたとして、日本人4人を取り調べていると伝えた
9月24日 那覇地検が中国人船長を処分保留で釈放すると発表
9月25日 中国人船長を釈放
9月29日 細野豪志民主党議員、篠原令氏、須川清司・内閣官房専門調査員の秘密訪中
9月30日 フジタ社員3人解放
     細野豪志民主党議員、篠原令氏、須川清司・内閣官房専門調査員帰国
     衆議院予算委員会は尖閣ビデオ提出を政府に要求することを決定
10月1日 仙谷官房長官は柳田稔法相、前原誠司外相、馬淵澄夫国土交通相らと首相官邸で協議し、国会からビデオ提出を正式に求められた場合の対応について対応の一任を受けた。その上で、仙谷官房長官は午後の記者会見で、国会からビデオ提出を正式に求められた場合の対応について「私が指導的に(政府内の)合意形成をする」と説明。その上で「刑事事件の証拠だから、捜査当局が責任を持って判断する」と述べ、最終判断は検察に委ねる考えを示した。
10月5日 ブリュッセルのASEM首脳会議の際に日中首脳「懇談」
10月8日  中国の反体制作家、劉暁波氏にノーベル平和賞
10月9日  中国当局が残る1人のフジタ社員を解放
10月18日 馬淵国交相が映像の厳重管理を指示
10月29日 ハノイのASEAN+3首脳会談の際の日中首脳会談が急きょキャンセル
10月30日 ハノイで日中首脳「懇談」 
11月1日 国会内で衆参両院の予算委員会理事らが約6分50秒に編集された映像を視聴
11月3日 米議会中間選挙で共和党が下院を制す
11月4日 主任航海士が自宅のパソコンで編集した映像を神戸市の漫画喫茶のパソコンからユーチューブに投稿。翌日、自宅から削除。
11月8日 海保が国家公務員法(守秘義務違反)などで東京地検と警視庁に告発
11月13日 横浜のAPEC首脳会談の際に日中首脳会談(22分間)
11月15日 捜査当局が主任航海士を逮捕しない方針を決定

→9月19日の中国人船長の拘置期限延長直後のフジタ社員拘束、フジタ社員拘束が公表された直後の船長解放。

→9月29日の細野訪中時に尖閣映像問題が話題に出たことを細野氏は11月15日のTBS系のニュース23クロスで語っていました。これ以後、首脳外交と映像公開がリンクすることに?

・10月18日の馬淵国交相が映像の厳重管理指示は、10・29前後のハノイ会談に向けての環境整備として位置付けられてしまうのか?
・10月29日の日中首脳会談のキャンセルと11月1日の国会での尖閣映像視聴との関係は?
・11月8日の海保が国家公務員法(守秘義務違反)などで東京地検と警視庁に告発したことは、11・13前後の横浜会談に向けての環境整備と位置づけられてしまうのか?(→日中首脳会談直後に逮捕しない方針を決定したことは、環境整備説を補強することになってしまいますが)


→ノーベル平和賞、米議会中間選挙の影響も忘れずに。影響しているのは双方の努力だけに限りません。


■ほとぼり冷めるのを…尖閣映像公開先延ばし?
(2010年11月16日03時03分 読売新聞)

尖閣諸島沖の中国漁船衝突の映像をインターネット上に投稿したことを告白した神戸海上保安部の主任航海士の逮捕が見送られる見通しとなったことを受け、政府は、今後もビデオ映像を公開するかどうかで苦慮しそうだ。

 映像の扱いをめぐっては、自民党など野党は国民への一般公開を強く求めている。

 民主党の鉢呂吉雄国会対策委員長も15日、2010年度補正予算案の衆院での採決に野党側が応じる見返りとして、映像公開への善処を野党に約束した。

 政府は「ビデオ映像は捜査上の重要な証拠物」であり、公開すれば航海士に対する捜査に支障が生じるとして、慎重な姿勢を取ってきた。今回、航海士の逮捕が見送られる見通しとなったことで、政府に公開を求める圧力がいっそう高まることが予想される。

 ただ、政府内ではなお公開すべきではないとの意見が強い。

 アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議のため来日した中国の胡錦濤国家主席と菅首相との会談が、ぎりぎりの調整を経て13日に実現した直後だけに、「中国側への外交的配慮が必要だ」(政府関係者)との指摘もある。民主党内にも「与党がビデオ公開を求めても、公開するかどうかは政府の判断だ」と理解を示す声が少なくない。

 政府内には、「公開の時期を出来るだけ先延ばしし、国内外のほとぼりが冷めるのを待つのがいい」との声も出ている

→なんのため?政権批判を防ぐため?なんのための政権であり、なんのための政権交代だったのか?

■【海保職員「流出」】当初は投稿意図なし 「業務に役立つと思った」 
2010.11.16 00:00産経新聞
海上保安庁第5管区の入る合同庁舎前で待機する報道陣=15日、神戸市中央区(頼光和弘撮影) 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突をめぐる映像流出事件で、流出を認めた神戸海上保安部(神戸市)の海上保安官(43)が警視庁と東京地検の事情聴取に、巡視艇内から映像を持ち出した経緯について、「当初は流出させる意図はなかった」との説明をしていることが15日、捜査関係者への取材で分かった。保安官は「業務に役立つと思った」とも話しており、警視庁などは動画サイトへの投稿に至った詳しい動機について調べている。
 警視庁などの調べでは、映像は保安官の同僚が9月17日から21日ごろまでの間に、昇任試験用の資料などの保存場所だった海上保安大学校(広島県呉市)の共有フォルダーから入手。共有フォルダーは本来の保存場所でなく、同大職員が誤って保存していた。
 同大職員は「映像を消し忘れた」とも説明しており、当時は海保職員なら誰でも閲覧できる状態だった。
 捜査関係者によると、保安官は事情聴取に対し、「9月下旬、巡視艇内の共用パソコンで、同僚と初めて映像を閲覧した」と説明。国土交通省から情報管理徹底の指示が出される直前の10月中旬、周囲に気付かれないよう共用パソコンからUSBメモリーを使用して映像を抜き出していた。
 この時の状況について、保安官は「個人的な興味と業務に役立てるためだった」と警視庁などの事情聴取に説明しているという。
 「映像は自宅のパソコンに保存した」とも話しているが、捜索で押収したパソコンには映像が残されていなかった。
 警視庁などは今後も、保安官の供述があいまいな点などについてさらに捜査を進める方針。

→捜査情報以外の用途で海保で情報共有するのが従来からのやり方だった、ということでは?

■クローズアップ2010:尖閣映像・保安官逮捕見送り 「海保の管理に問題」
毎日新聞 2010年11月16日 東京朝刊
 ◇「悪質な流出」疑問符--捜査当局
 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡り、ビデオ映像を流出させた国家公務員法(守秘義務)違反の疑いが持たれている神戸海上保安部の海上保安官(43)の逮捕見送りが15日決まり、今後も在宅での調べが続けられる。だが、映像の「極秘性」や、事件の「悪質性」に疑問符がつくとの見方もあり、検察内部には保安官を正式に起訴することに消極的な意見も出始めている。【山本太一、山本将克、野口由紀】
 今月10日朝、保安官が流出を告白した直後から、警視庁捜査1課は逮捕を念頭に捜査を進めてきた。一部の警察幹部からは「強制捜査しかない」との意見も出ていた。
 だが、保安官が、親しい海保関係者らから私的に入手した映像を流出させた場合は「職務上知り得た秘密を漏らした」という罪が成立しない可能性がある。このため、映像の入手経路の解明が最優先課題となった。
 ところが、捜査の進展とともに、映像が海保側の管理上のミスから、海上保安大学校(広島県呉市)の共有フォルダーに閲覧制限がかけられないまま保存されていたことが判明。ずさんな情報管理が明らかになり「厳重に管理された秘密を漏らした悪質な事件」と言い切れない面が出てきた。「職務上の秘密と言えるか微妙な面がある」との見方もあり、逮捕に消極的な意見が強くなっていったという。
 そもそも衝突事件を巡っては中国人船長の釈放が国会で強く批判され、与野党から映像の全面公開を求める声があがっている。
 検察幹部は「全責任を保安官だけに負わせても国民の理解は得られない」との見方を示す。警察幹部も「保安官に同情的な世論に配慮したわけではない」と話す一方、「海保が厳格に情報を管理していれば映像流出はなかった。問題の本質は海保の情報管理にある」と指摘した。
 書類送検後の刑事処分には(1)正式に起訴して裁判にかける(2)略式起訴して罰金とする(3)起訴猶予などの不起訴処分とする--という三つの選択肢がある。
 守秘義務違反は法定刑が1年以下の懲役か50万円以下の罰金の「微罪」だ。しかし、正式な裁判になった場合は、映像の「秘密性」を立証するために、官房長官や国土交通相らの法廷証言が必要になる可能性も出てくるという
 「そこまでする必要がある事件なのかという気がしないでもない」。検察幹部は正式に裁判にかけないことを前提とした逮捕見送りであることを示唆しており、最終的には略式起訴か不起訴処分となる可能性があるとみられる。

 ◇秘密保全法整備、説得力失い 政府批判に拍車も
 菅政権はビデオ映像の流出直後から国家公務員法(守秘義務)違反事件として逮捕・立件を求める方針を示してきた。しかし、海上保安官に同情的な世論も生まれており、捜査当局の逮捕見送りによって政府批判に拍車がかかることも予想される。仙谷由人官房長官は情報漏えいの厳罰化など秘密保全法制の整備を検討する考えも表明したが、その前提となる容疑の立件が揺らげば、法制化の動きは「批判をかわすためのすり替え」との指摘も受けそうだ。

 「(中国漁船の)船長を釈放しておいて、この方を逮捕したら、また人気が下がるとでも思っているのか」。自民党の石原伸晃幹事長は15日夜、仙谷氏らの不信任決議案を衆院に提出後、こう指摘してみせた。 

 仙谷氏は映像がネットに投稿された翌5日の記者会見で「そんなに時間をかけないで(流出元の)調査を捜査に移行させるかどうかの判断をしなければならない」と明言。中国に向け、「政府による意図的な公開」との見方を否定する狙いもあったとみられるが、かえって情報管理の不手際を批判され、統治能力に疑問符を付けられる状況に追い込まれた。

 一方の中国は映像流出を公然と批判することなく、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の開かれた横浜市で13日、日中首脳会談が実現。これが日本政府の対中配慮を一層印象づける形となり、石原氏は「会談を行うことが目的(の会談)だったとしか思えない。日本の外交が機能しているのか」と批判した

 国家公務員法の守秘義務違反の罰則は懲役1年以下か50万円以下の罰金。仙谷氏が厳罰化の検討を打ち出したことで、自衛隊法の5年以下や、米国から供与された装備情報などを対象とする秘密保護法の10年以下を参考に検討が進むとみられた。しかし、秘密保全法制整備には「表現の自由」との関係で反対論も根強い。捜査当局が逮捕に踏み切れない事件を契機に検討を始めても、理解を得るのは容易ではなさそうだ。【平田崇浩】

 ◇特定の相手に対する情報提供が罪に
 公務員の守秘義務違反事件の大半は、特定の相手に対する情報提供が罪に問われている。

 愛知県警の巡査長がフィリピンパブへの家宅捜索予定日を元上司の会社員に知らせたとして逮捕された07年の事件は、その後、謝礼の現金を受領していたことが判明、収賄事件に発展した。同年のイージス艦情報漏えい事件では、弁護側は裁判で「情報提供先が現職自衛官(当時)」などとして無罪を主張したが、1、2審とも執行猶予付きの有罪判決を言い渡され上告中だ。

 一方、08年のロシア大使館員への情報提供事件で書類送検された内閣情報調査室の元職員は、情報の重要性が低いことや、帰国したロシア大使館員の出頭拒否などを理由に起訴猶予となった。【鮎川耕史】

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 ◇公務員による最近の主な守秘義務違反事件
 ◆01年2月

 判事の妻が脅迫事件の捜査対象になっているとの情報を福岡地検次席検事が漏えいしたとして、市民らが次席検事を国家公務員法違反容疑で告発(最高検が指揮する検察当局が不起訴)

 ◆07年6月

 フィリピンパブの出入国管理法違反事件の捜査資料を元上司の会社員に渡したとして、愛知県警の巡査長を地方公務員法違反容疑で逮捕(名古屋地検が起訴)

 ◆07年12月

 海上自衛隊のイージス艦情報を同僚に漏らしたとして、海自3佐を日米秘密保護法違反容疑で逮捕(横浜地検が起訴)

 ◆08年1月

 在日ロシア大使館員に内政情報を提供し見返りに10万円を受け取ったとして、内閣情報調査室の元職員を収賄と国家公務員法違反容疑で書類送検(東京地検が起訴猶予)

 ◆08年3月

 読売新聞記者に中国海軍の潜水艦情報を漏らしたとして、航空自衛隊1佐を自衛隊法違反(秘密漏えい)容疑で書類送検(東京地検が起訴猶予)

 ◆09年2月

 収賄の容疑をかけられた前村長に捜査情報を漏らしたとして、奈良県警の警部を地方公務員法違反容疑で逮捕(奈良区検が警部を略式起訴)


■尖閣映像流出:11管と大学校の連絡ミス…閲覧制限かけず
毎日新聞 2010年11月16日 2時34分
 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡るビデオ映像流出事件で、第11管区海上保安本部(那覇市)の担当者が警視庁捜査1課などの調べに「映像は捜査資料なので、海上保安大学校(広島県呉市)の共有フォルダーに入れた後はすぐに消去されると考えていた」と話していることが捜査関係者への取材で分かった。一方、大学校側は届いていないと思い込み、映像は閲覧制限がかけられないまま5日間ほど放置された。警視庁捜査1課などは、11管と大学校の連絡ミスが映像流出の背景にあったとみて詳しい経緯を調べている。【山本太一、内橋寿明、小泉大士】

 ◇データ大容量、作業に行き違い
 捜査関係者によると、11管の担当者は、衝突事件の10日後の9月17日、「鑑定用として早く送ってほしい」との大学校側の要望に応える形で、映像を海保の庁内ネットワーク(イントラネット)を使って大学校の共有フォルダーに保存した。この際、映像の容量が大きかったため作業に手間取り、大学校側は届いていないと思い込んだという。

 このため映像は閲覧制限がかけられないままになっていた。11管の担当者は、映像を送った後も大学校側から連絡がないため、18~20日(土・日曜、敬老の日)の連休後の21日か22日にイントラネットで大学校の共有フォルダーを確認し、海保職員なら誰でも見られる状態になっていたことに気付いたという。

 この5日ほどの間に、神戸海上保安部の海上保安官(43)が乗船していた巡視艇「うらなみ」で、同僚が共有フォルダーに映像があるのを見つけダウンロード。保安官による流出につながった。

 神戸海上保安部が属する第5管区海上保安本部と第2管区海上保安本部(宮城県塩釜市)内からも数十件のアクセスがあったことが判明している。


■【海保職員「流出」】「私利私欲ではない」「一人でも多く見てもらいたかった」保安官のコメント
2010.11.16 01:40産経新聞

沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突をめぐる映像流出事件で、神戸海上保安部の海上保安官(43)は16日、小川恵司弁護士(第二東京弁護士会)を通じてコメントを出した。小川弁護士が読み上げたコメントは次の通り。

 「私が今回起こした事件により、国民の皆様、関係各位には、多大なるご迷惑をおかけしたことをおわび申し上げます。海上保安庁の皆様、中でもお世話になった方々や今回の件でご苦労されている方々に対しては、申し訳ない気持ちで一杯です。

 今回私が事件を起こしたのは、政治的主張や私利私欲に基づくものではありません。ただ広く1人でも多くの人に遠く離れた日本の海で起こっている出来事を見てもらい、1人ひとりが考え判断し、そして行動してほしかっただけです。

 私は、今回の行動が正しいと信じておりますが、反面、公務員のルールとしては許されないことだったと反省もしております

 私の心情をご理解いただければ幸いです」


→2.26事件とか5.15事件と比較する議論がありますが、本人は公務員としてのルールとして許されないことと覚悟をしており、決して、「純粋無罪」とか「愛国無罪」を主張しているわけではないようです。

→むしろ、公開してもいい情報を政治的思惑で非公開にすることの問題を、そこに政治的主張や私利私欲があったのか、そこを、しっかり議論したほうがいいのでは?