映像流出:映像は調査研究用として「共有」?APEC後の逮捕判断? | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

映像流出:映像は調査研究用として「共有」?APEC後の逮捕判断?

秘書です。
海上保安庁は捜査機関ですが、捜査情報を同時に公益性を比較考量しながら広報用、研修用、調査研究用にも使っていた。
少なくとも10月18日の馬淵大臣の厳重管理の指示(これが海上保安庁文書管理規則に基づく秘密文書指定であればこの段階からは実質秘にあたるのかもしれませんが、昨日の内閣委員会質疑では仙谷官房長官は確認を避けました)までは、実は公益性の観点から調査研究用あるいは研修用としての重要性を認識する従来の認識のままだったのではないか?
なお、広報用の公益性については、当初、海保は広報用ビデオを作成する準備をしていたが、何らかの判断により、作成しなくなった(新聞報道は事件発生から半日して官邸からストップがかかったとしているが、昨日の内閣委員会質疑では仙谷官房長官はこれを否定)。


■尖閣映像、複数施設で閲覧可能…「秘密」疑問も
(2010年11月13日03時02分 読売新聞)

 尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡る映像流出事件で、流出映像は、神戸海上保安部の主任航海士(43)の供述などから、海上保安大学校(広島県)など海保内の複数の施設のパソコンで閲覧できたことが明らかになった

 主任航海士は「巡視艇のパソコンから入手した」と供述しており、当初、映像を作成した石垣海上保安部(沖縄県)で厳重管理していたとした海上保安庁の説明との間には、数々の矛盾が生じている。海保内部からも、映像の「秘密性」を疑う声が出ている

 主任航海士は、警視庁が事情聴取を中断した12日夜まで、映像の入手から流出までの状況をかなり具体的に供述している。

 まずは映像の入手ルート。捜査関係者によると、主任航海士の供述は「海上保安大学校のパソコンに接続し、巡視艇内の共用パソコンから公用USBメモリーで映像を持ち出した」というものだった。

 問題の映像は「説明用」に石垣海保で編集されたものだったが、警視庁の調べで、研修活動や映像分析などを行う海上保安大学校など複数の施設のパソコンに保存されていたことがわかったという

 石垣海保から大学校への“拡散”ルートは未解明だが、海保内部では、海保内のネットワークにある「ファイル共有」のシステムが使われた可能性を指摘する声もある。

 ネットワークに接続されたパソコンは約1万2000台。映像など大容量の電子データを送受信する場合、送り手が〈1〉ネットワークに接続したパソコンの共有ファイルに映像を保存〈2〉閲覧許可を与えるパソコンの管理番号を設定〈3〉ファイルを開くためのパスワードを設定――といった作業が必要だ。この場合、閲覧が許可されたパソコンを使い、ファイルが保存されたパソコンの管理番号とパスワードを入力すればデータの閲覧が可能になる。送り手が受け手に必要な暗号を連絡することで、ネットワークにつながる全国のパソコンで映像を見られるという。

 海上保安庁はこれまで、石垣海保だけの内部調査で「映像は石垣海保で厳重管理し、閲覧できたのも捜査にかかわった一部の職員だけだった」と説明してきた。

 しかし、10月18日に馬淵国土交通相が情報管理徹底の指示を出すまでは、石垣海保以外でも、記憶媒体やパソコンに映像が保存されていたことが判明。また、流出発覚後、海保はネットワーク上のデータ類について詳細な追跡調査をしていないこともわかった

 海保内部のこうした実態について、映像流出の発覚前に衝突事件の映像を見たという幹部の一人は「大臣の指示があるまで、あの映像に『秘密』という認識は薄かった」と証言している。

→捜査機関たる海保は、捜査情報であっても、広報用、研修用、調査研究用という公益性を優先して判断する場合があり、広報用ビデオについては何らかの理由(例えば外交あるいは政治的理由??)で作成はしなかったが、調査研究用あるいは研修用については、いつものように、海保職員が共有していたのではないのか?

■処罰の必要性焦点…捜査当局 海上保安官 逮捕できる?
(2010年11月12日 読売新聞)

 尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡る映像流出事件で、神戸海上保安部所属の巡視艇「うらなみ」主任航海士の海上保安官(43)に対する警視庁と東京地検の取り調べは、11日で2日間に及んだ。

 映像を流出させた行為について、捜査当局内では処罰の必要性があるかどうか、慎重に議論されているという。第5管区海上保安本部(神戸市)の庁舎では、主任航海士を“缶詰状態”にしての取り調べが続くが、捜査当局では「逮捕に踏み切るか避けるのか、見極めを付けなければ」という声が出始めた。

「職務上の秘密」議論

起訴は公平か

 今回の事件では、主任航海士の処罰の必要性について議論があり、捜査手法にも影響している。多く聞かれるのは、海保の巡視船に体当たりした中国漁船の船長が、処分保留で釈放され、処罰の機会は失われているのに、映像を公開した人が起訴されるのは、不公平ではないかという意見だ

 近年、問題となった国家公務員法違反事件でも、受刑者の経歴を漏らした刑務所の看守など、不起訴となっているケースが目立つ。今回も、同法違反が成り立つとしても、罰金刑や起訴猶予も考えられるケースだ。

 元検事の高井康行弁護士は「今回の事件は、世論がどう反応するかという要素も勘案しなければならない。検察が事件の着地点を決められないので、逮捕するかどうかも判断できないでいるのでは」と推測する。
入手元の解明続く

 主任航海士は神戸市の漫画喫茶に映像を持ち込み、動画投稿サイトに送信したことを認めたが、警視庁などは映像の入手ルートの解明を続けている。国家公務員法が定める守秘義務の対象が「職務上知り得た秘密」に限られるからだ。

 映像はもともと石垣海上保安部で編集された。主任航海士が同海保職員から個人のツテで映像を入手していた場合には「職務上知り得た秘密」とは言えなくなる可能性もあるが、映像が登録された海保のパソコンから映像を引き出していた場合は、守秘義務違反に問われる。ただ、映像がどの程度の秘密だったかは問題になる。管理の状況が甘いと、守秘義務の対象とは言えなくなる場合がある
日中関係

 横浜市で開かれているアジア太平洋経済協力会議(APEC)も影を落とす。政府は、13日からの首脳会議に出席する予定の中国の胡錦濤・国家主席との首脳会談を打診しており、漁船衝突事件以来、緊張関係が続く中国との関係修復に結びつけたい意向だ。

 中国外務省の副報道局長は11日、「ビデオの問題が中日関係を妨げ続けることを望まない」と発言し、日本側に配慮を求めた。

 捜査当局の幹部は「逮捕を選択すると、漁船衝突問題が改めてクローズアップされる。APECへの影響を考えれば、期間中の逮捕には慎重にならざるを得ない」と話している

捜査手法

 10日午後に5管本部で始まった主任航海士の取り調べは、11日も行われた。海保側は本人の了承を得て、主任航海士を同施設内に宿泊させた。

 元裁判官の川上拓一・早稲田大教授(刑事訴訟法)は「家族との連絡が制限されたり、常に行動を監視する人がいたりして、私的な空間が確保されないのであれば、違法な身柄の拘束にもなりかねない」と話す。

 警察幹部の1人は「あまり長引くと捜査の任意性が問われかねない。逮捕するのか、近く結論を出さなければ」と語った。

「映像は機密か」「国益損なわれたか」

 読売テレビ(大阪市)は11日のニュース番組で、「(主任航海士の)海上保安官が任意同行を求められる前に、直筆メモを残していた」と報じた。番組には、数日前に主任航海士を取材したという記者も出演し、「A4判の表裏にワープロと直筆で書かれたものだった」などと説明した。

 番組によると、メモには「映像流出が犯罪行為であるならば、映像が機密であるとの証明が必要ではないか」と記されていたほか、「これを機密とするのであれば、時の政府が自身に都合の悪いことはすべて機密にしてしまえば、何をやっても許されるのではないだろうか」などとも書かれていたとされる。

 さらに、「今回の件で我が国の国益は損なわれたのだろうか」「誰かの名誉を害したのか」「(中国船衝突事件の)捜査の妨げとなったのか」などともあり、読売テレビは「(主任航海士が)自分の行為を自問自答するような記述」と説明した


→船長釈放との比較考量、世論、APECでの首脳会談、海保の情報管理体制(管理の状況が甘いということは機密の認識がなかったということでは?)

■中国漁船・尖閣領海内接触:ビデオ流出 「自首」から3日目 当面任意で聴取へ <検証>
毎日新聞 2010年11月13日 東京朝刊

 ◇裏付け不十分
 沖縄・尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡るビデオ映像流出事件で、警視庁捜査1課は12日、関与を認めた第5管区海上保安本部(神戸市)の神戸海上保安部に所属する海上保安官(43)から、当面は任意で事情聴取を継続する方針を決めた。3日間にわたって国家公務員法(守秘義務)違反容疑で取り調べたが、容疑の裏付けが不十分と判断した。週明けにも逮捕の可否を判断するとみられるが、捜査は長期化の様相も見せ始めている。【山本太一、三木幸治、山本将克】

 ■捜査

 保安官が上司に投稿を打ち明けたのは10日朝。海上保安庁からの告発を受け捜査を始めてからまだ2日で、捜査当局にとっては想定外の「自首」だった。

 捜査1課は動画投稿サイト「ユーチューブ」への発信元とみられる神戸市内の漫画喫茶を調べるために現地に派遣した捜査員を急きょ、保安官の取り調べに充てた。逮捕を見据えて、捜査は慌ただしく動き出した。

 「自分が流出させた」。保安官は調べにも関与を認めたが、細部の説明はあいまいだった。初日の聴取は午後9時半に終わったが、保安官は同僚に付き添われ5管にとどまった。3日間の調べに、9月下旬~10月中旬に映像を巡視艇のパソコンからUSBメモリーに取り込んで漫画喫茶に持ち込んで投稿し、帰宅するまでに壊して破棄したと話している。

 だが、巡視艇内のパソコンに映像は残っておらず、メモリーも見つからない。漫画喫茶のパソコンの通信記録も既に削除されていた。同僚らも巡視艇内で映像を見たというが、厳重に管理されていたはずの映像が船内で見られるようになった経緯の裏付けも終わっていない。

 供述の裏付けが取れないまま時間が経過し、幹部らの意見も割れ始めた。警察幹部からは「通常なら時間をかけて内偵捜査で容疑を固めたうえ、容疑者に聴取するようなハードルの高い事件だ」との声も漏れる。

 3日連続の取り調べ。「半分逮捕されたような状況」(保安官の弁護士)が続くことには検察内部からも難色を示す声があがった。5管に「軟禁」したままでの取り調べは限界を超えていた。

 ◇甘かった海保内部調査

 ■誤算

 事実の解明を困難にしている要因の一つが、海上保安庁の内部調査の甘さだ

 検察首脳は「海保に聞けば分かるはずの事実関係が出てこないのはおかしい」とため息をつく。

 海保は当初、映像は石垣海上保安部で「厳重に保管している」と説明。本庁や第11管区海上保安本部(那覇市)に送られたコピーは廃棄したとして、対象を石垣海保に絞って内部調査を行った。

 ところが、警視庁や東京地検の捜査で、海上保安大学校を経由して5管や、保安官が乗務していた巡視艇でも映像を見ることができたことが判明、海保の説明と矛盾する事実が明らかになった

 検察幹部は「初めから調査をやり直しているようなもの。流出経緯の特定には時間がかかる」と海保を批判。別の幹部は「外形的な事実関係が確定しないと逮捕をするかどうかという議論にも入れない」と説明する。

 ◇処罰めぐり意見分かれ

 ■今後

 捜査は今後どのように推移するのか。

 守秘義務違反での立件には、映像が「職務上知り得た秘密」であることを立証する必要がある。

 映像の一部が国会議員に公開されたことから、検察内部には「保護に値する秘密に当たらない」という見方もある。

 だが、検察首脳は「海保の人間が海保のパソコンで入手したのであれば、職務上知り得た秘密と言えるだろう」と指摘する。

 一方で、処罰すべきかどうかは意見が分かれる。

 法務・検察幹部は「国家機密を漏らした容疑者を英雄視するのはおかしい」と語るが、検察幹部は「漁船の中国人船長を不起訴にして、被害者である海保の人間を起訴するという判断が国民に理解されるのか」と指摘する。

 「国民の知る権利との関係をどう考えるか、難しい判断だ」との声も漏れる。

 ◇保安官が文書発表

 5管は13日未明、報道陣に対し、保安官直筆の文書を読み上げた。内容は以下の通り。(原文のまま)

 私○○はこのたび世間をお騒せしたこと及び多くの人々に多大なる御迷惑をおかけした事を一番最初に心からお詫び申し上げます。本日私がここに宿泊いたしますのは、貴方たちマスコミのおかげです。私がこの建物を出たならばさらに多大なる迷惑を多くの人々にかけてしまうからです。本日、私がここに泊るのは私の意志に基づくものであります。過熱した報道を少しはひかえて下さい。

 ◇弁護士を解任
 また保安官は、11日から2回面会した弁護士を解任した。

→行政情報で公になっていない「職務上知り得た情報」の全ての守秘義務の対象にするのか。実質秘の要件を課さないのか。捜査情報であるとともに公益上の観点から広報用、研修用、調査研究用で使用されることが優先されることのある情報の扱いです。ここは国民の知る権利の観点から重大な問題です。

■尖閣映像「海保大PCに接続、入手」…航海士
(2010年11月13日03時02分 読売新聞)

 尖閣諸島沖の中国漁船衝突を巡る映像流出事件で、神戸海上保安部所属の巡視艇「うらなみ」主任航海士の男性海上保安官(43)が警視庁と東京地検の調べに対し、「船内のパソコンから海上保安大学校(広島県呉市)のパソコンに接続し、映像を取り込んだ」と供述していることが捜査関係者への取材で分かった。

 警視庁と東京地検は12日も主任航海士を国家公務員法(守秘義務)違反容疑で取り調べたが、午後6時過ぎに打ち切った。13日以降も続けられる予定。逮捕の必要性についての判断は持ち越され、週明けに協議して最終判断するとみられる。

判断が持ち越された背景には、13日から横浜市で開かれ、中国の胡錦濤国家主席も出席するアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への配慮もあったとみられる

 捜査関係者によると、主任航海士は、問題の映像の入手・流出ルートについて詳細に供述しているという。

 それによると、9月中旬、「うらなみ」の船内にある共用パソコンで海上保安大学校のパソコンに接続し、共有フォルダーから問題の映像をダウンロードした。これを公用のUSBメモリーに保存し、第5管区海上保安本部(神戸市)の公用パソコンに取り込んだ。

 その後、私用のUSBメモリーに移して神戸市中央区の漫画喫茶に持ち込み、動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿した。警視庁幹部によると、主任航海士には海上保安大学校のパソコンへのアクセス権限があったという。

 海上保安大学校は職員への教育のほか、海保の業務に関する調査なども行っており、海保関係者によると、映像は調査研究用に海上保安大学校のパソコンに送られていた可能性があるという

→映像には調査研究用という公益性の判断による使用があったということですね。

■海保大学校の共有ホルダーから入手記事を印刷する

11月13日 日刊スポーツ
 尖閣諸島付近の中国漁船衝突の映像流出事件で、関与を認めている神戸海上保安部の海上保安官(43)が「海上保安大学校(広島県呉市)の共有フォルダーから映像を入手した」と話していることが12日、捜査関係者への取材で分かった。

 映像は一時、海上保安大学校の共有フォルダーから海保内のネット経由で入手可能な状態だったことも判明。この時期に映像が拡散したとみられ、警視庁は、保安官が巡視艇から大学校にアクセスし入手したとみて、大学校に捜査員を派遣して調べている。

 警視庁は12日、3日目となる聴取をした。捜査当局は、国家公務員法(守秘義務)違反に該当するか慎重に検討しており、週明けにも逮捕か書類送検かを判断する。保安官は聴取開始から12日まで神戸海保が入る庁舎にいたが、状況次第で帰宅もあり得る。

 捜査関係者によると、巡視艇のパソコンから映像を記憶媒体に取り込んだ形跡があった。保安官は、艇内のパソコンから公用の記憶媒体「USBメモリー」で映像を取り込み、個人用パソコンにデータを移動。そこから私物のUSBメモリーに取り込んだと話している。警視庁は、当初から私物を使うとセキュリティー機能が作動してしまうためとみている。

 保安官は当初「庁舎で見た」とも話していたが、その後「巡視艇内で見て入手した」と説明。「9月下旬から10月上旬に入手した」とし、映像を投稿後に「USBはインターネットカフェからの帰宅中に壊して捨てた」と話している。「国民に知らせたかった」などと動機を述べ、「別の映像を使い、自宅で動画サイトに投稿する練習をした」とも話している。

 捜査関係者によると、流出した映像は研修用に編集され、第11管区海上保安本部(那覇)から海上保安庁(東京)を経由して大学校に渡り、巡視艇のパソコンでも視聴できた。海保は「捜査資料で研修用ではない」としており食い違っている。

 4日に神戸市のインターネットカフェで映像を投稿、流出させ、5日朝に自宅のパソコンから削除したと説明している。(共同)


■尖閣映像「知る権利尊重されるべき」日弁連会長
(2010年11月12日20時50分 読売新聞)

 日本弁護士連合会の宇都宮健児会長は12日、高松市内で記者会見し、中国漁船衝突を巡る映像流出事件に関し、個人的見解としたうえで、「映像は、海上で何が起こったのかを明らかにする、国益に資する情報。国民の知る権利は尊重されるべきだ」との考えを示した。

 この事件で神戸海上保安部の主任航海士に対する任意の事情聴取が続いていることについては、「流出映像は『職務上知り得た秘密』だったのか、国家公務員法の守秘義務違反にあたるのか、という点で、捜査側も判断や取り扱いに慎重になっているのだろう」と述べた。四国弁護士会連合会の定期大会出席のため同市を訪れていた。