ティーパーティの精神:向こうできちんと仕事をしなければ、彼らはクビなのだ | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

ティーパーティの精神:向こうできちんと仕事をしなければ、彼らはクビなのだ

秘書です。
アメリカの中間選挙のキーワードは「ティーパーティ」
この時代的潮流は、日本政治にはどのようにあらわれてくるでしょうか?
ボストン茶会事件という建国の原点の歴史、政党不信と草の根運動の伝統、納税者意識・・・
日本とは異なる文脈のものですが、下記のWSJ日本版の最後の気持だけは同じでしょう。
つまり「市民が主役」ということです。


■ティーパーティー、ついに政治の表舞台に
2010年 11月 2日 21:16 JST WSJ日本版
 マサチューセッツ州上院補選で無名のスコット・ブラウン氏が勝利したことで、既成の米政治勢力に「警告信号」が灯った。保守派の草の根運動「ティーパーティー」は、計算に入れるべき勢力だった。
 ラリー・リンチさんはこれに気が付いた。

「ティーパーティー・エクスプレス」はシャロン・アングル氏支持を決めた
 リンチさんは、マサチューセッツに住んでいない。彼は1100マイル(約1770km)離れたジョージア州ブランズウィックにいる。移民捜査局員を引退したリンチさんは、政府の支出や大企業の救済が「行き過ぎている」と感じ、「ゴールデン・アイルズ・ティーパーティー」に入会した。

 「われわれは皆、平均的なアメリカ人で、一生、自分の食い扶持(くいぶち)は自分で稼いだ。施しを受けないよう、生活のために働いたのだ」とリンチさんは語る。

 リンチさんは、選挙活動の献金を行わず、自分の車に(支持を示す)ステッカーを張ることもしなかった。しかし、彼は、マサチューセッツでの勝利が全米にアピールする良い機会になることを期待して、ブラウン氏に100ドルを送金。ブラウン氏が勝利した時、リンチさんは、この国で何かが変わったと確信した。彼はすぐにほかの3つの州のティーパーティー宛に小切手を切った。

 リンチさんは、「あったのは、結束の気持ちだけだった。人々がついに目を覚ましつつある、と感じた」と述べるとともに、「われわれが何かを変えられる。変化を起こせる」との思いを強くしたという。

 選挙結果に関わらず、2010年は、「ティーパーティー」の年として記憶されることになるだろう。ひとつには、国家的危機のなか、リンチさんや彼のような何千人もの普通の人々が政治参加を決意したからだ。始まって1年足らずのこのムーブメントは、2010年の政治勢力としては最強のものとなった。

 ティーパーティーによる擁立候補者が2010年に行われた選挙戦をすべて勝利した訳ではないし、2日のすべての選挙戦で優勢とはならないだろう。しかし、春と夏には、少なくとも数人のベテラン現職候補を予想に反して打ち破った。

 もっと大ざっぱに言えば、ティーパーティーの運動は、ブッシュ政権の終了とオバマ大統領の勝利で士気の下がった保守派層に「活力を与えた」――場合によっては「震え上がらせた」――のである。ティーパーティーの出現により、多くの新たな政治家がクローズアップされるとともに、民主党が守勢に立たされる形で、医療保険や支出といった問題について議論の見直しが行われたのだ。

 共和党下院指導部は、この秋までに、ティーパーティーの役割を利用した「公約」を作成している。ただ、共和党指導部からは、ティーパーティーの波に乗ることは両刃の剣になりかねないとの懸念も浮上。一方で、好機と捉える向きもあった。多くの議員は、大きな政府に異を唱え、草の根運動を標ぼうすることで、ティーパーティーの意思を反映させようと試みた。

 民主党は、これを「過激主義者」と片づけようと努力した――が、うまくいっていない。予備選が終わると、この政治の第3極ともいえるティーパーティーから資金と活動者が共和党に戻り、数百もの共和党候補に弾みをつける形となった。本紙とNBCの共同世論調査(10月実施)では、投票に行くと答えた有権者の3分の1以上がティーパーティーを支持すると回答している。

 そして、投票日間近、ティーパーティーは保守政治の支配的勢力となるとともに、独特の党派と「難しい質問」に象徴される運動となった。「ティーパーティーは第3の党になるのか?共和党に取って代わるのか?それはわからない。大きな問題だ」とアラバマ州モーガン郡のティーパーティーに入った白髪頭の引退実業家、マイク・パワーさん(61)は言う。

 ティーパーティーは、今年初めの段階で、すでに数百ものグループが存在していたが、2つのグループが国政の舞台で勢いづいた。そのひとつが「ティーパーティー・パトリオット(愛国者)」で、支出に注目した超党派グループを謳っている。09年初めは電話会議を開催していた緩やかな統括組織で、当時、ジェニー・べス・マーティン氏とマーク・メックラー氏が率いていた。マーティン氏は、活動が始まった頃、家計を助けるためにアトランタ郊外でハウスクリーニングをしたこともある。メックラー氏は弁護士。「ティーパーティー・パトリオット」は、全国にある3000近くの地元のティーパーティー・グループと提携し、支出削減と政府のスリム化のメッセージを送っている、としている。

 もうひとつは、「ティーパーティー・エクスプレス」で、サクラメントの政治活動組織「Our Country Deserves Better」が運営し、バスツアーによる地方巡回を行っている。共和党系政治コンサルティング会社から生まれたため、かなり党派色の強い組織だった。現在、「ティーパーティー・エクスプレス」は40万人の支持者を抱え、元客室乗務員のエイミー・クレマー氏が主宰している。

 ティーパーティーの活動初期、マーティン氏とクレマー氏は同志だった。09年2月の電話会議で2人は知り合い、その会議後に一連の集会が行われ、「ティーパーティー・パトリオット」の創設へとつながった。しかし、その後、同組織の運営をめぐり2人の意見が対立、クレマー氏は「ティーパーティー・パトリオット」を追われた。

 2月には、第3のグループ「ティーパーティー・ネーション」がテネシー州ナッシュビルでティーパーティー全国大会を開催し、注目を浴びた。大会を組織したのはテネシーの弁護士、ジャドソン・フィリップス氏。彼は、この組織を利益追求型のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サイト)として設立した。全国大会には、全米から約600人の活動家が出席し、チケットの価格は549ドルと高額だった。

 しかし、この大会イベントは、活動に関わる多くのリーダーが歓迎されていないことで注目された。

 金曜夜の基調演説を行ったのは、ワールドネットデイリー・ドットコムという保守系ニュースサイトの創設者であり、編集長を務めるジョセフ・ファラー氏。彼は、大統領の出自を問う人々「birthers(バーサーズ)」を代弁し、オバマ大統領は米国生まれではないので、大統領になる資格はないと言い切る筋金入りの人物だ。ファーラー氏は言う。「私の夢は、バラク・オバマがアメリカのどこに行っても『出生証明書はどこ?』という看板を目にすることだ」

 メインスピーカーを務めたのは、元アラスカ州知事のサラ・ペイリン氏。ティーパーティーの中でも、彼女の本当の動機と野心は広く議論されている。ペイリン氏は、「ティーパーティーのムーブメントをできるだけ取り入れようとするとしたら、共和党は本当に利口だ」とコメントした。

 この「共和党がティーパーティーを取り込むべき」との発言は、ペイリン氏が大会「出演料」として10万ドルの報酬を受けたとの報道と同様、誠実な人々の怒りを買った。彼女はその後、受け取った金は保守派の活動のために寄付すると発表した。

 「ティーパーティー・パトリオット」の幹部の一部は、全国大会を認めず、同時並行で小規模な集会を開催した。全国レベルの調整役の1人であるマーティン氏は、組織の活動家らに「birther」の話をやめるよう促してきた。彼女自身、オバマ大統領の出自を受け入れる、としている。

 多くの共和党幹部は、向こう数カ月はティーパーティーへの態度を保留したままだろう。しかし、ペイリン氏などの幹部は、深く関わる意向を示している。

 全国大会が終わり、ティーパーティー集会1周年にあたる2月のある日、共和党のジョン・ベイナー下院院内総務は以下のように述べ、有権者に対する忠誠を明確にした。「ティーパーティーの動きは、誰がこの国の主役なのか我々に気づかせてくれた。もちろんそれは米国民だ」。ベイナー氏は、08年の銀行救済法案の可決を推し進め、活動家を激怒させた経緯がある。

 それから数週間後の3月20日、医療制度改革法案の可決を直前に控え、ワシントンの連邦議事堂で大規模集会を開くまでにティーパーティーは勢力を拡大。数千人のティーパーティー活動家とあらゆる保守系団体のメンバーが2日間議事堂に集結し、「法案を無効にしろ(Kill the bill)」と気勢を上げた。

 政界では、リベラル、保守の別を問わず、ティーパーティーの勢力が常に議論の的だった。この議論に対する答えが、表れ始めた。

 5月、上院議員を3期務めた現職のロバート・ベネット議員(共和、ユタ州)が予備選で落選し、共和党指導部はあぜんとした。ベネット氏は08年、オバマ大統領の銀行救済計画を支持、法案に賛成票を投じたことから、「ティーパーティー・エクスプレス」を含むティーパーティーの標的となったのだ。

 秋までには、アラスカ、デラウエアの上院議員選、ニューヨーク州知事選で、ティーパーティーが推す候補者が共和党の古参議員を相手に予想外の勝利を収め、党の指名を獲得している。

 たとえば「ティーパーティー・エクスプレス」は、上院のハリー・リード民主党院内総務が議席を保有するネバダ州に照準を合わせた。彼の再選は厳しさを増しているようだ。

 リード氏は、上院議員を4期務め、ネバダでは伝説的な政治家だった。しかし、2010年に入り、景気悪化や彼のオバマ政権とのつながり、医療制度改革法案への反対や現職不利の雰囲気が広がるなか、彼は勢いを失っていった。

 ネバダ州で「ティーパーティー・エクスプレス」が白羽の矢を立てたのは、元州下院議員のシャロン・アングル氏だ。州議員時代のアングル氏は税支出反対の強硬姿勢で知られ、法案の採決では42議席の下院で「41対アングル」と揶揄されることもあった。

 アングル氏は現在、リード氏より若干優勢だ。リード氏は、民主党が総力を挙げて行った投票推進運動で息を吹き返している。

 「ティーパーティー・エクスプレス」はアラスカ州にまで活動を拡大。ペイリン氏の地元ではあるが、連携可能な地元組織はなかった。すぐさま「ティーパーティー・エクスプレス」は新たな組織を設立、約60万ドルの資金を投じて無名の弁護士、ジョー・ミラー氏を擁立した。共和党予備選では、現職の同州上院議員リサ・マカウスキ氏を抑え勝利、という予想外の結果をもたらした。

 ブッシュ政権が終わり、財政保守派は民主党の興隆に追いやられ、肩身の狭い思いをすると覚悟していた。しかし、ティーパーティーのおかげで保守派が息を吹き返した。しかし、ティーパーティーと共和党の関係は、より微妙になっている。双方に若干の不信感があり、共和党にリスクがある。特に、ティーパーティーの擁立候補が大量に議会に押し寄せる事態となった場合、彼らが妥協を許さない態度を貫けば、共和党内に対立が生じることが懸念される。

 一方、ティーパーティー側は、共和党を利用すべきと考えている。共和党の体制派が総崩れした場合、党指導部は自分たちを受け入れるしかない。

 意見対立で袂(たもと)を分けた「ティーパーティー・エクスプレス」のクレマー氏と「ティーパーティー・パトリオット」のマーティン氏だが、ティーパーティー運動が、政治で疎外感を味わった多くのアメリカ人に機会を提供しているとの見方では一致している。

 そして、誰が選ばれたとしても、政治家に説明責任を果たさせるために活動したい、と口を揃える。クレマー氏は言う。「ワシントンに行く人は、われわれの信頼を得たわけではない。向こうできちんと仕事をしなければ、彼らはクビなのだ

記者: Douglas A. Blackmon and Alexandra Berzon and Jennifer Levitz and Lauren Etter

→「永田町に行く人は、われわれの信頼を得たわけではない。向こうできちんと仕事をしなければ、彼らはクビなのだ」と置き換えれば、日本にも通用するのではないでしょうか。議員を落選させられる力です。日本でも、選挙のときは「市民が主役」といっておきながら、いざ統治がはじまると、尖閣ビデオを市民に公開したら日比谷焼き討ち事件が起きるかのとごき、国民に対する根本的不信感をもっているエスタブリッシュメントの党が、いま政権の座にあるわけです。

→民主党は「新しい公共」で市民参加といっておきながら、政治への市民参加は考えていないようですね。せいぜい、地方自治、パブリックコメント程度ではないか。司法において重罪の判決も無作為抽出の市民が判断する時代、政治があまりにも遅れていて、しかも、市民を排除するエスタブリッシュメントの政治をやりながら、統治不全に陥っている。

→「新しい公共」でいえば、行政分野あるいは社会分野のみを考えているのではないか。寄付税制はいいでしょう。しかし、どうも、寄付税制の対象団体と認めるかどうかのときに、官僚の現役出向を受け入れているかどうかが寄附に値する高い公共性があるかどうかの判断基準になるのではないか、という悪い予感がいたします。霞が関からみれば、税額控除の寄附は税金と同じもので官がコントロールすべきものでしょう。しかも、天下りへの視線が厳しいなかでは、税額控除の寄附を受ける高い公共性を持つ団体は、民主党版天下り政策であるところの官僚の現役出向の対象団体の一部となり、税額控除の寄附から出向した現役官僚の人件費が支出される結果になる可能性は極めて高いと考えられます。要警戒です。