北方領土問題:戦略的利益と強固な政治的リーダーシップがみられている(1) | 中川秀直オフィシャルブログ「志士の目」by Ameba

北方領土問題:戦略的利益と強固な政治的リーダーシップがみられている(1)

秘書です。
歴史上、北方領土問題が日本側に有利に動くときはどんなときか?

①ロシア(ソ連)の世界戦略の観点から、日本重視がロシアの戦略的利益にかなうと考えるとき(特に、他の国を牽制する必要があるとき)

→1955年1月に鳩山邸にドムニツキ―駐日ソ連代表部臨時代理が来たのと、ソ連が西ドイツに国交正常化の用意があると発表したのは同じころ。1956年の日ソ共同宣言は、1955-1956年のソ連・西ドイツ国交回復、オーストリアからのソ連軍撤退、フィンランドへのポルカラ基地返還の一環として考えるべきもの。

②日本とロシア(ソ連)の政治指導者が同時に強いリーダーシップをもっていて領土問題を解決できると考えられるとき

→今朝の読売新聞3面に「日本の政治は不安定で強いリーダーシップもない。領土問題の解決を目指す雰囲気もない」とのパノフ元大使の発言を引用。そして、記事は、鳩山政権が発足し、「半年以内に(領土問題で)国民の期待に応えたい」と大見えを切った時にはロシアでも対日関係改善への期待が高まった。だが進展がないまま退陣したことで失望へと変わった、としています。

以上の基本認識をもとに、ニュースをみてみましょう。



(1)日中露関係  

→70年代の中ソ対立時代、ソ連の覇権主義反対ということで中国は日本の北方領土の主張を支持。今日、ここが変化したのかどうかが注目点。

■北方領土めぐり詳報=中国メディア
時事通信 11月1日(月)21時13分配信
 【北京時事】中国国営中央テレビは1日、ロシアのメドベージェフ大統領の国後島訪問とこれに反発する日本の対応を詳しく報じた。尖閣諸島をめぐり日中両国が対立する中、北方領土問題を重ね合わせて見ようとする狙いもありそうだ。
 中央テレビは、菅直人首相が遺憾の意を表明し、前原誠司外相がロシア大使を呼び抗議したことなどを詳細に伝えた。 

■【露大統領北方領土訪問】中国、暗黙の支持か
2010.11.1 21:37産経新聞

 【北京=伊藤正】ロシアのメドベージェフ大統領が北方領土の国後島を視察したことについて、中国は国営メディアが日本側の反発などを含め事実関係を報道しただけで、論評していない。最近の中国漁船衝突事件で日中関係が悪化する一方、中露関係が緊密化する中で、北方四島を日本領としてきた中国の立場に変化が起こるかが注目される

 メドベージェフ大統領は9月下旬に訪中した際、日露戦争の激戦地、大連市旅順を最初に訪問、「いかなる歴史の歪曲(わいきょく)も許さない」と、第二次大戦後の旧ソ連による北方領土占拠を正当化する発言をした。同時期に北方領土訪問計画が伝わっており、漁船衝突事件で尖閣諸島領有権を主張する中国側と協調する狙いがあったとみられる。

 同大統領と胡錦濤中国国家主席との首脳会談では、第二次大戦戦勝65周年の共同声明に調印したが、胡主席はその中で「国家の核心的利益にかかわる重大問題で相互支持の堅持」を表明した。これは、対日領土問題での「共闘」を示唆したと受け止められた

 中国は従来、北方四島は日本領との立場をとってきた。特に、1980年代初期までの中ソ対立期には、四島占拠をソ連覇権主義の暴挙と非難し、四島返還運動を積極支持してきた。

 その後、中ソ関係が改善するにつれ、中国側は四島問題は「日本とソ連(ロシア)間の歴史遺留問題であり、両国で解決すべきだ」(中国当局筋)と変化したが、権威ある中国地図出版社発行の「世界地図集」はじめ、中国の地図は四島は日本領にしている

 中国がかつて、旧ソ連の四島占拠を非難してきた背景には反ソ主義の影響があったが、今日の中露両国は戦略的パートナーとして政治、経済、軍事など各分野で親密化、北朝鮮問題など対外政策でも協調するケースが増えた。

 中国筋によると、胡錦濤主席は、メドベージェフ大統領に北方領土問題で明確な支持をしたわけではないという。しかし中露関係が緊密化する中で、同大統領の視察について中国が暗黙の支持をしている可能性は否定できない。

 中国国内では、軍部を中心に保守派が台頭、ロシアと提携し日米と対抗する動きが強まり、中露がそれぞれ尖閣諸島と四島を領有する戦略的価値が語られている。「人民日報」傘下の「環球時報」(電子版)は、日中に続く日露関係の険悪化は日本への大打撃と報じた。

→中国の北方領土問題に対する変化に注目。


■【露大統領北方領土訪問】中露連携で対日攻勢 歪曲史観で「強い指導者」誇示
2010.11.1 23:15産経新聞
 【モスクワ=遠藤良介】ロシアのメドベージェフ大統領が1日、沖縄・尖閣諸島近海での中国漁船衝突事件で日中関係が悪化しているのを見計らったように、北方領土訪問を敢行した。中露の蜜月関係を背景に、領土問題をめぐる日本の主張を一気に封じるのが狙いだ。ロシアは今年に入り、旧ソ連の対日参戦(1945年8月9日)や北方領土の不法占拠を正当化する歴史認識でも、中国と連携を強めていた経緯がある。
 メドベージェフ大統領は2009年2月、当時の麻生太郎首相との会談で「型にはまらない独創的アプローチ」による領土問題の解決を提唱した。だが、メドベージェフ政権下では領土問題をめぐる対日圧力が強まる一方で、日本はそれに満足な対抗策を打ち出してこなかったのが現実だ
 ロシアは今年、日本が第二次大戦の降伏文書に署名した9月2日を事実上の対日戦勝記念日に制定し、極東各地で戦勝65年の行事を行った。新記念日制定の根底には「ソ連が朝鮮や満州、サハリン(樺太)を解放し、日本の降伏を早めた」との歪曲(わいきょく)した歴史観があり、ロシアは日本の領土返還運動を「歴史の捏造(ねつぞう)」(上院議長)と称するまでに増長している。
 9月末には、メドベージェフ大統領が中国を訪問し、胡錦濤国家主席との間で終戦65年に関する共同声明に署名。対日戦で両国が共闘したとの歴史認識を中国は尖閣諸島、ロシアは北方領土の領有権主張につなげる構図も鮮明になった。
 大統領の対日強硬姿勢には、2012年の大統領選に向けて「強い指導者」像を誇示する狙いもある。国内で高い人気を誇るプーチン首相(前大統領)との「双頭政権」にあってメドベージェフ氏には目立った業績がなく、再選の道を確保する上では日本への圧力を強めて保守層にアピールすることが有効だからだ。

 露政権は今年、旧ソ連秘密警察が第二次大戦中にポーランド軍将校ら2万人以上を銃殺した「カチンの森」事件を「スターリン体制の犯罪」と認め、ポーランドとの歴史的な和解に乗り出した。ポーランドが欧州連合(EU)内の対露“急先鋒(せんぽう)”として根強く事件の真相究明を求め、ロシアはEUとの関係改善を図る上でポーランドの意向を無視できなくなったためだ。

 ソ連の対日参戦と北方領土の不法占拠も同じ「スターリン体制の犯罪」でありながら、日本に対するロシアの態度は対照的だ。裏を返せば、日本外交の限界が垣間見える。

■中露:歴史問題で歩調「領土」正当性アピール
毎日新聞 2010年9月27日 11時16分(最終更新 9月27日 14時17分)
 【北京・浦松丈二】中国の胡錦濤国家主席は27日午前、訪中したロシアのメドベージェフ大統領と北京で会談。会談後、第二次世界大戦終結65周年を記念する共同声明を発表し、歴史問題で共同歩調を取る見通しだ。
 中露首脳会談は今年5回目。メドベージェフ大統領は26日、中国東北部の旅順港を訪れ、日露戦争や第二次大戦で旧日本軍と戦った兵士の墓地に献花した。中露の元兵士らと面会して「歴史をねじ曲げようとする勢力がいるため、真実を主張しなければならない」と訴えた。
 ロシアは北方領土について「第二次大戦の結果としてソ連(現ロシア)に移った」と主張し、領有権を主張する日本と対立。旧ソ連のスターリン時代の人権弾圧を非難する東欧諸国との間でも歴史問題を抱えている。
 中国は尖閣諸島(中国名・釣魚島)付近での衝突事件で、領有権を主張して日本と対立している。歴史問題での共同歩調には、中露それぞれが日本との間で抱える「領土問題」の正当性をアピールする狙いもありそうだ。
 メドベージェフ大統領は27日午後、温家宝首相や習近平国家副主席らと個別に会談。東シベリアの油田から中国に原油を送るパイプラインの完成式典に出席する予定だ。

→中国国際放送が11月1日21:21:05に伝えるところによれば、中露原油パイプラインにより、ロシアからの送油が開始された。中国税関総署は1日「ロシア・アムール州のスコボロジノと中国・黒龍江省の大慶を結ぶ原油パイプラインが1日から送油を開始した」と発表。それによると、このパイプラインによる中国への原油輸出量は11月に25万トン、12月には30万トンで、2011年1月1日からは両国間の契約により年間に1500万トンが供給される。契約期間は20年。つまり、大統領の北方領土入りと同じ日です。

■今やロシアは日本への第4の原油輸出国
アレクサンドル レトチェンコ 13.10.2010, 18:04 ロシアの声
 産経新聞が日本の経済産業省のデータを引用して報じたところでは「ロシアはこの一年で、90%以上も日本向け原油輸出量を増やし、日本の原油輸入市場ランキングで、イランとクウェートを抜き、6位から4位に躍進した。この他、ユジノサハリンスクにある液化天然ガス生産工場の製品のうち6割以上が日本向けとなっている。
 最近、日本の商社「三井」は、東シベリア及びバレンツ海のガス田開発に参加する心積もりを明らかにした。スポークスマンによれば「三井には、サハリン2プロジェクトにおいてガスプロム社と共同作業をした良い実例があり、ロシア側パートナーとの協力を今後も続けてゆきたいと望んでおり、可能性のある日露のあらゆる相互協力プロジェクトについて検討する考えだ。」
 そうした将来性あるプロジェクトについて、プーチン首相は、先日行ったロシア極東歴訪の際、次のように語っている-
 「ロシア極東の持つ可能性は、今すでに取り組まれているものよりも、ずっと大きい。第一に、現在あるプロジェクトを拡大する事が可能だし、第二に、重要さや規模において、これまでのものに勝るとも劣らない他のプロジェクトに手を染める事も可能だ。例えば、サハリン3プロジェクトの共同実現である。オホーツク海の大陸棚には、7億トンの原油と1兆5千億立方メートルの天然ガスが眠っており、今後、サハリン4・5・6・・・と続けてゆく事も決して夢ではない。」 
 これらプロジェクト実現化の際、重要な要素になっているのが、露日の地理的な近さであり、それと同時に、中東地域への原油・ガスの依存度を減らしてゆきたいとする日本の立場である。しかし、そうした依存について、懸念を抱いているのは何も日本ばかりではない。2週間前、メドヴェージェフ大統領が中国を公式訪問したが、訪問時両国首脳は、今後20年先を見据えたエネルギー協力の道筋を決めた数々の所謂「ロード・マップ」合意文書に署名した。その中には、中国向けロシア産原油の輸出保障、ガス供給の際の諸条件、中国原発用の原子炉2基の新たな建造等についての合意も含まれている
 世界有数のエネルギー資源国であるロシアは、エネルギー安全保障の理念と原則を積極的に提言しているが、アジア太平洋地域にとって、この問題は特別重要な意味を持ったものだ。この地域は、原油価格などが上昇する中でも、世界のトップを行く経済成長を遂げているし、工業生産のテンポも高いレベルにある。 又東南アジア・アセアン諸国も、内部での共同行動の深化、統一された経済システムの構築、アセアン加盟国を結ぶガスパイプライン網建設などを通じて、中東などへのエネルギー依存度を減らす事を目指している。エネルギー関連産業において豊かな実践経験を持つロシアは、自国領内でも又アセアン領内でも、共同プログラムを実現してゆく用意がある。北東及び東南アジア諸国は、ロシアからの原油や天然ガスの供給が持つ、三つの利点「速く確実で、かつ価格も手頃」というプラス面に惹かれている。まさにこうした利点により、今ロシアは新たな市場を手に入れつつあると言えよう。 
 ロシア上院連邦会議ロシア・アセアン委員会のアレクサンドル・トルシン副委員長は、次のように見ている- 
 「ロシアの隣国であるアジア太平洋諸国の目覚しい経済発展とロシアとのビジネス交流拡大は、互いに補い合うファクターになっており、この地域でロシアのビジネス界が立場を強めるための、高い可能性と条件を決定付けている。」 
 ビジネス・産業上の統合は、そのプロセスに加わっている各国の経済発展を促進するばかりでなく、アジア太平洋という巨大な地域の政治問題解決に向けた好ましい環境作りにも役立つだろう。

(2)日米中露関係 

→1954-1956年の鳩山民主党政権は、対米自立を掲げることで、少なくとも2島返還を合意させた。ところが2009-2010年の鳩山-菅政権は、日米関係を滅茶苦茶にすることで、北方領土問題についての今日の状況を招いた。

■北方領土、「日本を支持」=米
 (2010/11/02-06:23)時事通信
 【ワシントン時事】クローリー米国務次官補(広報担当)は1日の記者会見で、ロシアのメドベージェフ大統領が北方領土の国後島を初訪問したことについて、「北方領土に関しては日本を支持している」と述べるとともに、日ロ両国に平和条約の交渉を呼び掛けた。
 米政府はこれまでも4島返還を求める日本の主張を支持してきたが、オバマ政権に入ってこれを明言するのは初めて。
 同次官補は「(日ロ間に)領土問題があることは認識しており、北方領土に関しては日本を支持している」と説明した上で、「だからこそ長年にわたり、日ロ両国に平和条約を交渉するよう促している」と述べた。

→1956年8月19日のロンドンにおける重光=ダレス会談における北方領土問題と沖縄問題のリンク、それ以前における日本側からのサンフランシスコ講和条約の解釈の照会に対する回答との変化・・・。米国の北方領土問題についての日本支持には歴史的経緯があります。

■ギクシャクの日米関係、中露に突かれた?
(2010年11月1日14時40分 読売新聞)

 ロシアのメドベージェフ大統領が1日、北方領土の国後島を訪問したことについて、「ロシアに足元を見られた」など、民主党外交の危うさを改めて指摘する声が政府・民主党内からも出ている。

 民主党政権では、鳩山前首相時代に懸案の米軍普天間飛行場移設問題で迷走し、日本外交の基軸である日米関係はぎくしゃくしたままだ。尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件でも、中国人船長を逮捕しながら、中国が反発すると処分保留で釈放するなどちぐはぐな対応を見せた。中国側が強気の姿勢を崩さないのも、日米関係の現状や、一連の民主党外交の稚拙さが影響しているとの指摘がある

 メドベージェフ大統領が9月に北京を訪問し、中国の胡錦濤国家主席と「第2次大戦終結65周年に関する共同声明」に署名した際、政府内では「尖閣問題と北方領土問題を連携させる狙いではないか」と懸念する声が出ていたが、こうした見方が的中した格好だ。

 政府内では「日露の経済関係を考慮すれば、ロシアがさらに強硬に出ることはないだろう」との期待感もあるが、当面は「粘り強く日本の主張を訴え続けるしかない」のが実情だ。民主党政権は日米関係の再構築をはじめとする外交態勢の立て直しを迫られている。(政治部 穴井雄治)

→嗚呼、根拠のない楽観主義。日本のいまの経済力で・・・